2017/06/05

愛犬のフードボウルの中の動物のこと

これは予想していたよりも多くの反響があって、自分でもちょっと驚いた記事でした。
1枚目の写真のニコニヤごはんが現在よりも野菜多めなのも懐かしい感じ。

6年経った今も市販のペットフードに『人道的基準合格』というものは見かけません。まあこれはさすがに商売としての採算を考えれば、企業にそこまで求めるのは酷かなという気はします。それよりもこの問題はペットフードだけに限らない食肉にされる家畜全体の福祉という面で考えるべきでしょう。
「ペットは可愛がるくせに牛肉や豚肉は食べるのか」という、こういう問題を挙げると必ず出てくる声もありますが、人であれ犬であれ命を賄うために他の命を頂くことを悪としているわけではないというのが大前提です。どうしても頂かなければいけない命なら、せめて可能な限り快適に生きて、可能な限り苦痛のない最期を、という話です。

また本文中で言及しているHumane Society が販売していた肉を使っていないヴィーガンペットフードは2017年現在はもう販売されていない様子。そりゃあいくら何でも無理だものねえ。

(以下、dog actually2011年9月12日記事より)


アメリカは東海岸ニューイングランド地方の小さな州、ニューハンプシャー州にRolling Dog Farmという非営利団体の動物保護施設があります。ここは盲目であったり耳が聴こえなかったりする身体障害のある犬達が暮らす施設で、現在は犬の他に猫や馬なども暮らしており、いずれも何らかの障害を持つ動物達です。多くの動物達は障害ゆえに里親が見つからないとして他のシェルターから移送されて来た者達です。
犬達の数は現在35頭、相応しい縁組があれば一般の家庭にもらわれていくこともあり、そうでなければ広い敷地内で仲間の犬達とオーナーのスミス夫妻と共に、生涯をここで過ごします。
そんなRolling Dog Farmでは、犬達に与える食餌に関して2~3年前から試行錯誤を繰り返しつつユニークな活動をしています。
2000年に活動を始めた当初、スミス夫妻は犬達に与える食餌の「質」を重視していました。華やかなコマーシャルやきれいなパッケージに惑わされることなく、本当に高品質のドッグフードと、そうでないものを見極めて給餌をしていました。
しかし数年前、夫妻はふと「このドッグフードの原料になっている動物達はどんな風に生きてどんな風に死んでいったのだろうか?」という思いに至ったそうです。
アメリカにおいても、日本と同じように犬の食餌にこだわる飼い主は多く、「生食派」「手作り派」「高品質フード派」がそれぞれの説を主張する光景はよく見られます。
ファクトリーファームと呼ばれる生産性のみを重視した、羽根も伸ばせない環境の鶏や、身動きもできない柵の中の豚や牛、それらの動物に投与される抗生物質。より健康的な食を求めるためと、抗議の表明としてそのような肉を避けて、オーガニック食品を選ぶ人々もたくさんいます。犬用のフードにもオーガニック飼育の肉を使ったものが多く出回っています。

しかしオーガニック飼育では、生きている間動物が何を食べて、どのように扱われるべきかは規定されていますが、どのように死んでいくか、つまり屠殺の方法までは規定されていません。もちろん、非オーガニック飼育の動物に比べれば人道的な環境で育てられているのですが、スミス夫妻はそれだけでは納得して犬達にその肉を与える気にはなれませんでした。彼らは自分達が愛する犬達のために命をくれる動物に対しても、フェアーで人道的であることを強く求めたのです。
スミス夫妻、彼ら自身は肉はもとより、卵や乳製品も食べないヴィーガンとして暮らしています。(卵や乳製品がOKのベジタリアンよりも厳しい。)
そこで最初に彼らが考えたのは、ファームの犬達にもベジタリアンとして生きてもらうことでした。
しかし(当然ながら)この試みは失敗に終わりました。犬達の中には出された食餌に全く口をつけない者も出る始末。ましてや彼らのファームには犬よりも肉食の性質の強い猫達もいるのです。
スミス夫妻は「プランB」を実行に移すことにしました。
ところで余談ですが、The Humane Society of the United States(米国動物保護協会)では「Humane Choice(人道的な選択)」と名付けた、独自のドッグフードの販売を行っています。原材料は全てオーガニック栽培の玄米、大豆、ヒマワリの種、蕎麦、キビ等。つまり植物性の原料のみのヴィーガンドッグフードです。興味のある方はリンク先をごらんになってみて下さい。

さて、話を戻しましょう。
スミス夫妻の「プランB」それは自分達が納得のいく環境で自らの手で動物を育てて、納得のいく環境で可能な限り苦痛の少ない屠殺を行うというものでした。
幸い彼らには独自に牛を飼うだけの十分なスペースもあり、家族経営で小規模の屠殺場と契約することもできました。
自らの手で育てた動物の命を頂くというのは、ある意味究極の選択であり、彼らにとっては苦渋の決断でもありました。しかし今のところ、Rolling Dog Farmでは犬や猫達が食べる肉はこのような方法で確保されています。
とは言え、いくら動物福祉を真剣に考えている人でも、スミス夫妻のファームのような方法は一般家庭では不可能です。
そこで夫妻は、一般家庭でも出来る「人道的な食べ物」を手に入れる方法を述べています。
まずは近隣の農場から直接肉や卵を買うこと。そこで動物がどのように扱われているか自分の目で確かめて、購入するのです。たいていの場合、一家庭では多過ぎる量が一単位になるので友人や近所の人達と分け合うという方法で。
もっと簡単な方法はスーパーマーケットなどで「Animal Welfare Approved(動物福祉基準承認済)」や「Certified Humane(人道的基準合格)」の印のついた肉を購入すること。これらは生きている間の環境だけでなく、運送方法や屠殺方法にいたるまで、可能な限り動物に苦痛を与えない方法を採用しているという証明です。
この証明のついた食肉はどこの店でも手に入るというわけにはいきませんが、出来る範囲でこういうものを購入すること、また地元のスーパー等にHumane Meatの販売をするよう問い合わせをすることなどで、少しずつ流れを変えていくことができるとスミス夫妻は訴えています。
また、オーガニック食品をメインに扱う大手スーパーチェーンWhole Foods Marketは自社で流通する食肉に関して独自の動物福祉面でのレーティングを設け、ファクトリーファームの食肉は一切販売しないと明言しています。
残念ながら今のところ、このような動物福祉の基準に合格した食肉を使っているとうたっているドッグフードはアメリカには存在しません。単にオーガニック飼育されたというだけでなく、運搬や屠殺にまで配慮された食肉だけを愛犬に与えたいと思うならば、家庭で手作りの食餌を用意しなくてはならないというわけです。
家畜の福祉については、アメリカはEC諸国の基準に比べるとたいへんに遅れています。そしてそれを何とか変えていきたいと活動をしている人もたくさんいます。
愛犬のフードボウルの中の肉も元は命のあった動物です。何を、どのように選ぶか、消費者が正しい選択をしていくことが動物福祉の流れを作っていくと心に銘じていたいと思います。
日本では無理な話だ、遠い外国の話だと思われる方もいるかもしれません。しかし消費者が知ろうとすること、生産者や業者に「買うこと」「買わないこと」でメッセージを届けることで良い流れを作ることが出来るのはどこでも同じ。
愛犬に命をくれる動物達のためにも良い世界を作っていきたいものですね。
【参考サイト】
The Bark How to Raise Humane Dog Food

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