2017/06/23

犬の胃拡張・胃捻転(GDV)予防手術について

このブログは基本的にdog actuallyに掲載した記事の記録として始めたものですが、da最後の記事のコメント欄で、グレートデーンの飼い主さんから胃捻転予防の為の手術についてのご質問をいただきました。
できれば記事にしたいような内容だったのですが、あいにく最終回のコメント欄だったため、ここで書くことにします。

前回、前々回と胃拡張・胃捻転のリスク要因について書いてきましたが、胃捻転の究極の予防法として、あらかじめ胃を腹壁に固定する手術を行っておくというものがあります。

(photo by Pexel )
GDVのハイリスクグループのグレートデーン。4歳以降のGDVの罹患率は25〜40%とも言われます。


この手術は英語でGastropexyと言い、よくPexyと略して呼ばれます。「うちの犬にPexyを受けさせるべきか」というのはアメリカでもよく議論が起こりますが、グレートデーンなど超大型犬の飼い主さんでは避妊去勢手術の際に同時に行うという人が多いようです。(アメリカでは避妊去勢手術はほぼ義務に近い形です。手術をしない場合、ほとんどの自治体では届け出と通常の数倍の登録料が必要になります。)
中型犬より小さい犬では、予防手術を受ける例はほとんどないと思います。(身近でも聞いたことがない)

手術の方法は大きく分けて、開腹をする一般的な手術と腹腔鏡を使った手術があります。
それぞれにメリットデメリットがあるので、手術を受ける場合は医師にしっかりと確認しておきましょう。

開腹手術は一般的な手法なので、手術を受ける病院を探すのが比較的簡単です。
術後の回復には2週間程度かまたはそれ以上かかる点はデメリットと言えるでしょう。
開腹手術の中でも、固定する箇所などによっていくつか種類があり、それぞれに固定の強度、手術の難易度、術後に起こり得るリスクも変わってきます。

実際に胃拡張または胃捻転が発症してしまって手術が必要になった場合は、再発を防ぐために胃を腹壁に固定する処置を行いますが、健康なうちに行う予防手術に比べて固定強度は低くなるようです。

腹腔鏡を使う手術は傷口や出血が開腹手術に比べてうんと少ないので、犬への負担が少なく術後の回復が早いのが大きなメリットです。
ただし、開腹手術よりも技術が必要で、経験のある病院を探すことが重要です。

胃捻転の予防手術だけでなく、腹腔鏡の手術は患者への負担を考えるととても良い方法なのですが、残念ながら日本の動物病院で取り入れているところはあまり多くないようです。興味のある方は「動物病院 腹腔鏡手術(または内視鏡手術)」などで検索なさってみてください。

この予防手術は胃が捻れることを防ぐもので、胃拡張を防ぐことはできません。ですから予防手術をしても、前々回にあげたリスク要因を避ける努力は必要です。しかし症状がシンプルな胃拡張だけならば処置も簡単に済むことが多く、救命率は格段に高くなります。

胃捻転も100%予防できるわけではないようですが、胃拡張から胃捻転に移行する時間を稼ぐことができれば命を救う確率も高くなります。

アメリカの場合、予防手術にかかる費用は500〜1000ドルくらい。決して安くはない金額ですが、胃捻転になった場合の手術費用は1500〜10000ドルと言われ、まさにゼロが一つ増える額になります。日本の場合、予防手術の費用はもう少し高い場合が多いようですが、胃捻転が起こった場合にゼロが一つ増えるのは同じようです。

超大型犬のブリーダーは手術を勧める人が多いようですが、日本ではまだあまり浸透していない手術なので、こういう方法もあると心に留めておかれると良いかと思います。

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