2017/08/28

シーザーさんとAmazonのコラボ企画Audible for Dogs

SNSでシーザー・ミラン氏をフォローしてる方は、ここ数日Audible for Dogsというトピックがいくつかポストされているのに気づかれたかと思います。

(illustration by mohamed1982eg )

犬のためのオーディオブックセレクション

AudibleというのはAmazonグループが提供するオーディオブック版のストリーミングサービス。NetflixやHuluのように毎月定額を支払うと、オーディオブックが聴き放題というもの。

そのAudibleで今月始まったのが、シーザーさんとAudibleのチームが共同でセレクトした犬に聴かせるためのオーディオブックのセレクション。

別に犬語でワフワフ言ってる声が録音されているのではなく、普通に人間が聴くオーディオブックの中から、声やトーンなどを基準に選ばれたものです。

Audibleのサイトでの紹介ページはこちら


シーザーさんが語る『犬のためのオーディオブックガイド』が無料ダウンロードできます。
(私もしたけどまだ聴いてない)

それからもうひとつ、これもシーザーさんが読み上げる『シェルタードッグを家に迎えるためのガイド』も無料ダウンロードができます。
こちらはひとつダウンロードするたびにAudibleの会社がノースショアアニマルリーグという保護団体に10セント寄付してくれます。
(ノースショアアニマルリーグってこの記事で紹介したルーイット氏の保護団体ね)

日本からでもダウンロードできるのかどうかわからなくて恐縮なのですが、試してみてどうだったか教えてくださると嬉しいです。

なぜ犬にオーディオブック?

さて、そもそもなんで犬にオーディオブックを聴かせるのか?
これはちょっと遡って2015年に発表されたイギリスのハートプリー大学の研究チームのリサーチ結果がベースになっています。
(確かdog actuallyでも尾形聡子さんが紹介されていたと思います。)

イギリスの保護施設で新しい家族を待っている犬たち31匹を対象に、クラシック音楽(ベートーベン)ポップスのオムニバスアルバム、周波数を調整した犬用音楽アルバム、『ナルニア国物語』のオーディオブック、無音、を流し、どの状態が一番リラックスした状態が観察され、吠えや唸りなど望ましくない行動が減ったかを調査したというものです。

結果、オーディオブックを聴かせた時が、犬が横になったり眠ったりと言ったリラックス状態が一番多く見られ、吠えなどの行動も最も少なかったそうです。

犬に音楽を聴かせると落ち着くというのも以前から言われていますが、音楽よりもリズムが一定で、普段聞いている人間の話し声に近く、しかも落ち着いたトーンのオーディオブックの方が犬にとっては好ましいようですね。

(この記事のひとつ前に再掲載しているdog actuallyの過去記事はシェルターの犬の犬舎の前で子供が本を読み聞かせるというものですが、こちらもやはり犬にリラクゼーション効果があるようです。)

上記のリサーチに加えて、シーザーさんのドッグサイコロジーセンターでは、100組のボランティアを募集して犬にオーディオブックを聴かせる体験を4週間続けてもらい、アンケート調査を行いました。
オーディオブックの読み手の性別や英語のアクセント、ジャンルなど違うタイプをいくつか渡し、飼い主が1時間以上留守にする時にオーディオブックを流して、その時の犬の様子をモニターカメラで録画するというものです。
その結果、76%の飼い主さんが「犬がリラックスして落ち着いていた」と答えたそうです。


次のお留守番の時に試してみる?

残念ながら日本のAmazonのオーディブルではシーザーさんのセレクションはやってないのですが、オーディブルのサービス自体は日本語で行われています。
タブレットやスマートTVを使って音声を流せるので便利です。

Amazon以外にも、無料のオーディオブックのサービスもありますし、YouTubeなどでもたくさん見つけることができますので、お留守番の時に試してみてはいかがでしょう。
犬にとっては負担になることは何もないですからね〜。

選ぶ時のコツは、犬をメインで世話している人と同じ性別の読み手を選び、できれば声のタイプなども似ているとベターだそうです。

2017/08/27

犬と子供のためのシェルタープログラム

犬に本を読み聞かせるという、ひと昔前なら一生に付されそうだったアイデアが、実はたくさんのメリットがあったというリサーチが発表されたのは2015年のことでした。それ以前には子供が犬に向かって本を読むことで苦手を克服するという、読み手の側のメリットに焦点があったため、付き合う犬の方に訓練が必要とされていたのでした(マイケル・ヴィックのところから保護されたジョニー・ジャスティスとかね。)

犬の側のメリットについては、この次の書き下ろし記事で詳しく書く予定。

それにしてもこの記事に登場するミズーリ州のヒューメインソサエティのプログラム、改めて読んでも本当に素晴らしい。犬にとってのメリット、子供たちへの教育、資金集めの方法、あらゆる面で行き届いていると思います。保護施設の運営者がこういうプログラムを実行できるような講習などが日本でも増えていくといいなあと思います。


(以下dog actually 2016年3月22日掲載記事より)
(photo by Kaz )


子供が訓練されたセラピー犬に向かって本の音読をすることで、子供たちの国語の能力の向上を図るというプログラムは過去にdog actuallyでも取り上げてきたことがあります。今日ご紹介したいのは同じように犬に向かって本を読むプログラムなのですが、子供たちによってセラピーが必要な犬たちが救われ、子供たちにも様々な利点のある画期的なものです。Shelter Buddies Reading Program(シェルターの仲間に本を読もうプログラム)と名付けられたプログラム、どんなものなのでしょうか。

このプログラムを始めたのはHumane Society of Missouri(以下HSM)アメリカはミズーリ州屈指の大規模なシェルターを持つNPO団体です。内容はと言いますと、シェルターの犬舎の前で、犬たちに向かって子供が本を音読するというもの。犬たちはもちろん特別な訓練などは受けていません。と言うよりも、むしろ人に慣れていない臆病な犬が主な対象になっています。
プログラムに参加できる子供たちの年齢は6歳から15歳。HSMのウェブサイトから参加申し込みを行い、5ドルの参加料を支払って登録します。登録を終えた子供たちは、10時間の研修に参加しなくてはなりません。ここで犬たちが怯えたりストレスを感じている時、喜んで愛情表現をしている時のシグナルの読み取り方、犬との接し方などを学びます。
研修を終えた子供たちは、保護者同伴でいつでも本を読みに訪れることができます。犬が興味を示して喜ぶシグナルを示した時にはシェルター職員の管理の下で子供が犬にトリーツを与えます。
従来の犬への音読プログラム同様に子供が本を読むことに自信をつけることができるのはもちろん、臆病な犬が人間に慣れるきっかけができる、子供の音読を聞くことで犬の気持ちが落ち着く、などの成果が見られるようになってきました。臆病過ぎる犬だけでなく、ハイパーで興奮気味の犬に対しても子供の音読は良い効果をもたらしていると言います。ビクビクと犬舎の隅っこにうずくまっていたり、興奮しすぎて飛んだり跳ねたりしている犬は里親希望者からは対象外とされがちですので、人に慣れ落ち着きを身につけた犬が増えることは譲渡率のアップにもつながります。
子供たちの方も、研修の場で知識を学ぶだけでなく、犬たちと関わることで動物保護への興味、他者への共感などを身につけることができます。犬にとっても子供にとってもwin-winのこのプログラム、2015年のクリスマスシーズンに開始され、たいへんな人気を博しています。現在は月に一度、新たな参加者の募集を行っているのですが、すぐに満席になる状態。HSMでは、同団体の管理する別のシェルターや猫を対象にしたプログラムも拡張する予定です。
こちらは犬たちに本を読み聞かせる子供たち。思わずニヤリと口元が緩むビデオです。


HSMでは他にも子供向けのプログラムがたくさん用意されています。いくつか例を挙げますと......。
●「シェルターペット、スタイル・メイクオーバー」対象年齢6~12歳
ボサボサ、ムクムク伸び放題の状態で保護された犬がシェルターの専属トリマーの手で綺麗に可愛らしく生まれ変わる様子を見学します。ペットのメイクオーバーのためのリボンやアクセサリー作りの時間もある半日コースのプログラムです。
●「獣医入門、君も科学者だ」対象年齢8~12歳
白衣とゴーグル、手袋を身につけて、獣医さんの仕事を見学します。フィラリア血液検査の顕微鏡を覗いたり、様々な寄生虫などのサンプルを目にする機会もあります。動物の様々な症状から診断を推理する時間、獣医の仕事についての質疑応答など、獣医になる夢を持つ子供にうってつけの半日コースのプログラムです。
●「夏休み週間シェルターキャンプ」対象年齢6~11歳
キャンプと言っても泊まりがけではなくて、9時から3時まで5日間のプログラムに参加します。プログラムは日替わりで「シェルター内の見学」「動物に関する色々な職業について学ぼう」「シェルターの動物たちのためのおもちゃ作り」など勉強と遊びをバランス良く取り入れたコースです。(3ヶ月の長期に渡る夏休みはアメリカの親たちの悩みの種です。小学生だけでの留守番は法律で禁止されているので、働く親にとって子供たちが昼間安全に過ごすことができる場というのはとても貴重なのです。)
これらのプログラムはいずれも有料で半日で35ドル、キャンプは270ドルになります。必要経費を差し引いた分はシェルターの活動資金にもなり、同時に次世代への動物保護の教育の場にもなっています。
こうしてシェルターの動物たちに親しんだ子供たちは、大人になった時にも動物虐待や飼育放棄からは縁遠くなることでしょうし、アニマルシェルターをより身近な存在として考えるようになります。シェルター発の楽しい学びの場がますます広がっていって欲しいものです。
【参考サイト】
Humane Society of Missouri


2017/08/20

犬の胃拡張・胃捻転リスク問題の補足

このブログを書き始めて、今のところの一番の功績は(自分で功績とか言っちゃうのもどうなのよって感じですね。すみません。)6月に書き下ろしでアップした「犬の胃拡張・胃捻転(GDV)リスク要因」の記事ではないかと思います。

何しろPVがじわじわと増え続けて22000を越えるという、dog actually現役時代並みの数字を出しております。

さて、様々なリスク要因を挙げた中で、一番反響が大きかったのが「フードの器を台の上に乗せて食べさせるのはGDVのリスクを高くする」というものです。

「器を高い位置にすることでリスクを低減する」と言われて実行していた方も多いだけに、「えーっ!」と思った方も多いのは尤もだろうなと思います。
そこで、今回はその補足。

アメリカでも「早食いを防止する」「食後の運動を控える」「一度にたくさん食べさせない」などはすんなりと受け入れられているのに比べて、この『器を高くする問題』は熱い議論になりがちなんですよ。

多分、反対のことを教えられ実行していたというのと、フードの器を床に置くと人間の視点では食べにくそうに見えるという2つの点が大きいのではないかと思います。
でも「dog GDV raised bowl」(犬 胃捻転 器 高くする)で検索すると、器の位置を高くすると危険としている情報のほとんどは獣医師や獣医学の研究者が書いたり監修したもので、「器の位置を高くした方が良い!」と主張しているのはほとんどが一般の飼い主によるもの、たまにブリーダーを名乗る人がいるという状態です。

犬の体の構造を落ち着いて考えてみると、床や地面の高さのものを食べる方が自然なことなのはストンと腑に落ちるんですよ。


言葉で書いて説明するとちょっとわかりにくいので、図にしてみました。

まずは器を台の上に置いて高くした場合↓

確かに口と器の位置関係で言えば食べやすそうに見えます、
けれど、この姿勢では犬の食道は曲がった状態で食べ物を胃に送り込むことになります。その際にどうしても空気が余分に入ってしまいますよね。


次に、器を床の上に置いた状態↓


頭を下げた姿勢で食べることで犬の食道は胃に向かってまっすぐの状態になります。

とても脚の長い犬種で床に直置きではどうしても食べにくそうな場合も、この食道がまっすぐになっている状態ということを意識すれば、ごく低い台を使っても良いと思います。
ただ、食べにくいということは早食いの防止=つまりGDVのリスクの低下要因にもなるわけですから、食べにくいことが必ずしも悪いわけではないのです。

野生の狼や狐などは皆、地面の高さで食べているわけですから、体の構造が低い位置から食べるのに適しているのもなるほどですね。

リスク低下要因を全て実行したからと言って、発症を100%予防できるわけではないのは、他の病気と同じですが、わざわざリスクを高くすることは避けたいものです。





God Made a Dog


dog actuallyの過去記事を再掲するというこのブログも、最近は更新が遅くて面目無いしだいです。

このGod Made a Dogの記事はちょっとした息抜き記事としてアップしたのですが、自分でもなかなか気に入っているもののひとつです。

このビデオを見るたびに「犬って本当に可愛いよなー」としみじみ胸を熱くしております。


(以下dog actually 2015年2月22日掲載記事より)

今年の2月、アメリカの国民的スポーツ行事・スーパーボウルの時に流れるテレビCMで、クライスラー社が「God Made A Farmer(神は農夫を創られた)」をテーマに自社トラックのコマーシャルを放送しました。このCMはたいへん好評で話題になったのですが、その10日ほど後にそのスタイルを真似た形で「God Made a Dog」というビデオが作られ、Youtubeにアップされました。
ビデオは6月の下旬にインターネット新聞のハフィントンポストで紹介されたのをきっかけに、ツイッターやフェイスブックなどSNSで爆発的に広がり大人気となりました。
犬を愛する人なら必ずやクスッと笑った後、ジーンと胸が熱くなるこのビデオ、まずはご覧くださいませ。




ナレーションの日本語訳は以下の通りです。
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そして9日目に、神は自らが創造された純真な目の子供らを見下ろし、こう言われた。
「あの者達には友が必要じゃ」
そこで神は犬を創られた。
神は言われた。
「朝には喜んで飛び起きてキッスの雨を降らし、
樹の根元にシッコを引っかけて、1日中眠りこけ、
また起きてまたキッスの嵐、
そしてテレビの光を浴びながら真夜中までも起きている。
そういう者が必要じゃ」
そこで神は犬を創られた。


神は言われた。
「自ら進んでオスワリをして次はマテ、
それからゴロンとでんぐり返り。
広い心で、必要の無い帽子をかぶせられても、
わけの分からない衣装を着せられても文句も言わぬ、
そういう者が必要じゃ。
気にすることも考えることもなく屁を放ち、
尻尾をクルクル追いかけて、
股ぐらをフンフン嗅ぐ。
棒をくわえて持って来て、
ペロッとなめて元気をくれる、
そういう者が必要じゃ。
そなたが何も成さなかったとしても、
何も得られなかったとしても、
勝利を収めなかったとしても、
成功しなかったとしても、
そんなことまるで気にせず評価することもなく、
ただいつもと同じように愛してくれる、
そういう者が必要じゃ。」

そこで神は犬を創られた。

神は言われた。
「橇を引いて走るほどに、
爆弾を探し出すほどに力強く、
それでいて赤子を愛し、
盲人を導くほどに心優しい、
そういう者が必要じゃ。
心が傷ついた時にはそっと頭をもたせかけ、
優しい瞳で慰めながらソファーの上で何もせずに1日中付き合ってくれる、
そういう者が必要じゃ。」
そこで神は犬を創られた。
(photo by skeeze )


「たとえ孤独の中にあっても、
我慢強く忠実な、
そういう者でなくてはならぬ。
いつもそなたを気にかけ、寄り添い、
鼻を押し付け、元気づけ、心鎮め、
イビキをかき、ヨダレをたらし、
ゴミを漁り、リスを追いかける、
そういう者が必要じゃ。
明るい無私の心で家族をひとつにする、
そういう者が必要じゃ。
一番の親友が「ドライブに行こうか」と言うと
ワンワン吠えてハアハア息を切らし、
尻尾をブンブン振って返事をする、
そういう者が必要じゃ。」
そこで神は犬を創られた。
(photo by TessDeGroot )

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いかがですか?
少し解説を付け加えますと、このナレーションの下敷きになっている「God Made A Farmer」というのは、1978年に大規模な農業のコンベンションにおいて、当時の人気ラジオパーソナリティーだったポール・ハーヴェイ氏が行ったスピーチです。聖書の第一章「創世記」の中で1日目~6日目に神が光や天地や人間を創造され、7日目に休息を取られたという説話を基に、「そして8日目に神は自らが創造された大地を見下ろし、これを世話する者が必要だと言われた。そこで神は農夫を創られた。」というフレーズで始まったスピーチで、農業に従事する人々を讃えるものでした。犬の讃歌であるこのビデオは、農夫に続いて神が創造されたのは犬であるということで、「そして9日目に」で始まっているというわけです。
さて、良かったらもう一度、ビデオを見返して愛犬のそばに腰を下ろしてみて下さい。目尻を下げて「もう、まったく犬ってやつは」って笑いたくなったり、愛犬を抱きしめたくなったり(こういう場合、たいてい犬は迷惑そうですが 笑)、優しい気持ちになっていらしたら幸いです。

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