2018/01/25

No Kill=殺処分ゼロは魔法の言葉か?

この記事も掲載当時にかなり反響が大きかったもののひとつでした。
dog actuallyに書いていた私の記事は「アメリカの犬事情」という前提があったので、アメリカのNO KILL事情を入口にしましたが、日本で「殺処分ゼロを!」と声を上げている人にこそ考えていただきたい問題です。



(以下dog actually 2016年2月22日掲載記事より)

アメリカの動物保護の活動においてNo Kill(厳密には違うけれど殺処分ゼロのイメージ)という言葉や考え方は、この10年ほどの間にかなり浸透した感があります。
しかし一方でNo Killというコンセプトに対する疑問や反論も、緩やかなものから激しい対立まで様々な形で勃発している状態です。
No Killは手放しで素晴らしいものなのか?No Killを問題にする人は何が悪いと考えているのか、ちょっと考えてみたいと思います。


そもそもNo Killとはどういった状態を指すのでしょうか。実はこの定義は団体によってまちまちです。
共通しているのは「健康な動物、病気や怪我をしていても治療可能な動物は殺処分しない施設」ということ。さらに多くの場合は「問題行動があっても、それが修正可能な動物は殺処分しない」という件も加わります。
また数値基準として、シェルターに入所した動物のうち最低限90%が処分を免れることという条件も付きます。

つまり治療不可能な怪我や病気を負った動物の安楽死、または極端な攻撃性など修正不可能な問題行動を持った動物以外は殺処分しない、処分に該当する動物は10%未満というのがNo Killのおおまかな定義です。
ただし「治療不可能」の範囲は当該の保護団体の持つ医療施設や資金力によって大きく変わります。
「問題行動」に関してはさらにその差が大きく、経験豊富なトレーナーや動物行動学者を多く抱える団体、問題のある動物を隔離して管理できる十分な広さの施設を持つ団体では問題行動が殺処分の理由になる率は低くなります。(または問題行動は処分の理由にならない。)

ほとんどの場合No Killのシェルターは私営の保護団体のもので、税金で賄われている公営のアニマルシェルターでは、個人や保護団体に引き取られなかった動物は殺処分となるのが一般的です。


No Killのアニマルシェルター、魅力的な響きです。2011年にAP通信が1118人のペットオーナーを対象に行った聞き取り調査では、約7割の人が「アニマルシェルターはNo Killのポリシーであるべきだ」と答えており、No Kill人気の昨今の世論を反映しています。
人々はNo Killを望んでおり、そのポリシーを掲げるシェルターも増え、全国的に殺処分率は低下傾向にあります。素晴らしい......しかし問題はそんなにシンプルではないのです。

アニマルライツ(動物の権利)を標榜する団体には、No Killは形を変えた動物虐待であると強い反対の声をあげているところもあります。
「収容場所や収容数の都合のために動物を殺処分することのない施設が増えれば、行き場のない動物は放置され市街に溢れて、施設での安楽死処分よりも過酷な最後を遂げることになる。」「No Killはレスキュー・ホーダーの増加を助長する。(レスキュー・ホーダーはこちらを参照)」などが反対の主な理由です。
主張にやや極端なところはあるものの、これらの問題は確かに真剣に取り組まなくてはいけないことです。

小規模な保護団体ではNo Killのポリシーを掲げたものの増える動物の数を支えきれずに破綻してしまった所、持ちこたえてはいるものの動物たちの世話が行き届かなくなった所、譲渡率を上げるために飼い主候補の審査が緩くなり長年築いた信用を落としてしまった所などの例が多くあります。

我が家のミニピンがお世話になっていたシェルターもNo Killの場所でしたが、100匹以上の犬猫を抱えて清掃なども行き届いておらず、当時「No Killなら良いってもんじゃないんだなあ」と思ったのを覚えています。また、No Killのポリシーを貫くため譲渡率を上げねばならず、そのため見た目の可愛らしい若い動物しか引き取らない保護団体という問題も浮上しています。
保護団体の中には殺処分に関するポリシーをNo Killの基準と同じに定めているものの、自らをNo Killシェルターと呼ぶことを拒否しているところもあります。動物の命を預かることはそんなシンプルな言葉だけで表現できるものではない。引き取り、譲渡、殺処分全てにおいて明確な基準を示していくためにNo Killという言葉は使わないという主張です。
結局のところ、No Killというのは不幸な動物を減らすための手段のひとつであって、それ自体が目的になってしまっては上に挙げたような問題が起こってしまうのでしょう。
ただ殺処分を行わないというだけでなく、ペットの頭数過剰問題の元栓を閉めるための対策に取り組まないと、市街もシェルターも行き場のない動物で溢れることになってしまいます。
これらの対策は過去にも色々な形で紹介してきた、パピーミル規制のための法律、ペットショップでの生体販売規制の法律、避妊去勢手術の普及などがそれに当たります。

また人手や資金、敷地に限りのある小規模団体のネットワーク化を進めて、相互に助け合い補い合う仕組みも大事な対策のひとつで、これも各地の大規模団体が中心となって拡がりつつあります。

No Killという口当たりの良い言葉だけが一人歩きして問題が噴出している現在ですが、今は過渡期にあるのだと私は思っています。「殺処分をしない」という点だけに固執した団体で問題が起きたからと言って「殺処分をするべき」という主張は、短絡的だと言わざるを得ません。

私が書いているのはアメリカでの話ですが、日本の動物保護の取り組みなどを見ていても、ここ数年は「殺処分ゼロを目指して」という言葉を頻繁に目にするようになりました。自治体がこのような目標を掲げて取り組んでいる例も多いようです。

それ自体は素晴らしいことですが、殺処分ゼロというのはたくさんの取るべき対策の中のひとつであって、それ自体を目的にしていると歪みが生じるということを多くの方に知っていただきたいと思います。これは同じく目標としてよく取り上げられる言葉「終生飼養」にも言えることです。

No Killも殺処分ゼロも終生飼養も、その状態に持っていくことだけが目的ではないのです。動物が動物らしく健全に過ごす結果としての状態でなければ、それこそ形を変えた虐待になってしまいます。
No Kill や殺処分ゼロと言った分かりやすい言葉は人々の目を惹きつけ関心を持ってもらうためのツールのひとつです。それを唱えたからと言って理想が叶う魔法の言葉ではありません。そのことを胸に刻みつつ、ものごとを良い方向に変えていきたいものです。

レスキューホーダーという問題

レスキューホーダーを取り上げたこの記事も、たくさんの反響をいただきました。
2018年現在、日本では前代未聞の規模のレスキューホーディングが起こっています。
この記事に書いたアメリカの事例と違って、日本の場合は保護団体が破綻したら、その受け皿は別の保護団体しかないというところが頭の痛いところです。本来ならば、行政が公衆衛生の問題として部門を作るべきところが欠落しています。

ですから、日本の大規模レスキューホーダーには単純に「寄付しない」というマイナスの運動だけでなく、行政への働きかけがまずは先決かと思います。議員諸氏への直メールなどの継続、同志への呼びかけなどが団体への非難よりも優先事項。


(以下dog actually 2015年7月21日掲載記事より)


(photo by Timur85 )
このdog actuallyでも過去に何度かアニマル・ホーダー(病的に過剰な数の動物を収集する人)の記事がアップされて来ました。アニマル・ホーダーにもいくつかのタイプがありますが、今日はその中でも特に規模が大きくなりがちなレスキューホーダーというタイプのお話をしたいと思います。

大規模レスキューホーダー2例

2015年5月コロラド州で、チワワの保護団体代表を名乗っていた女性が動物虐待の容疑で逮捕されました。女性はロサンゼルスでチワワの保護団体を運営しており、常に200匹以上の犬を抱えていました。
当然ながら犬達の世話は行き届かず、不衛生な環境で痩せ衰えた犬達を見かねた人から通報や苦情が多く寄せられていました。
地元のアニマルコントロールやSPCA(動物虐待防止協会)などが犬を引き取り、本人は罰金や飼育禁止命令で処分されるということを何度か繰り返した後コロラド州に移住し、ここでも57匹のチワワを"保護"していた時についに逮捕となりました。この女性の裁判が今月に行われるため、このところニュースや雑誌で目にする機会が増えておりました。

また先月6月にはアラバマ州の私営アニマルシェルターにおいて、許可されている飼育数の3倍に当たる300匹近くの犬が深刻な飼育放棄の状態で発見されました。
シェルターにボランティアとして来ていた人が酷い惨状に耐えかねて警察に通報したことがきっかけで警察とASPCA(アメリカ動物虐待防止協会)が立ち入り犬達は保護されました。
このアニマルシェルターのオーナーの女性は「私が保護しなければ、この犬達は路上で命を落とすか、公営シェルターで殺処分になっていた。警察への通報は陰謀だ。」と主張していましたが、調査の結果7月16日に動物虐待の容疑で逮捕となりました。

この2件の事例は、どちらも正式に認可され登録番号も持つ保護団体であり、当初は確かに動物を救うために活動をしていた人々という典型的なレスキューホーダーです。アラバマのシェルターのオーナー女性は元アニマルコントロールの管理職であった前歴さえあります。
犬達は小さなクレートやケージに閉じ込められて運動させてもらうこともなく、食餌すら満足に与えられていない酷い健康状態だったのですが、どちらのオーナーも「犬達は全く問題なく、健康に過ごしていた。」と本当にそう思っていたとしか見えない様子で主張しているところも典型的です。

(photo by Alexas_photos )

大手ペット用品店が運営する動物保護基金PetSmart Charitiesはアメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)とアメリカ動物保護協会(HSUS)の動物虐待調査部門の責任者にレスキューホーダーについてのインタビューを行ったことがあります。それによると、このようなレスキュー・ホーダーは増加の傾向にあり、ホーディングによって崩壊する保護団体も少なくないとのことです。
レスキュー・ホーダーに陥りがちな団体や人の傾向としては、以下のようなものがあると両団体の担当者は語ります。

自分の能力の限界を認識していない。

経済的資源、人的資源、施設の大きさ、精神的なキャパシティ、引き受ける動物の数がこれらの限界に達した時にはどんなに辛くてもNOと言うことができなくては、結局関わった全ての人も動物も不幸にするという結果になってしまいます。
レスキュー・ホーダーになってしまう団体や人はこの限界の見極めが甘い、または全く見極めができないために上にあげた2例のような状態が起こります。

恐怖感、不信感が非常に強い。

「里親希望者が来たけれど、この家に行くと犬が不幸になるんじゃないか。」
「自分が引き取らなくては、この犬は殺処分になってしまう。」というような恐怖を必要以上に強く感じており、里親希望者や他の保護団体を信頼することができない。
目の前の動物を救うことができるのは自分しかいないという思い込みが非常に強く、動物を家庭に送り出すことも他の団体に助けを求めることも良しとしない。その結果、動物は次々に入ってくるが出て行くことがないのでパンク状態となってしまいます。

これらの傾向を見ていると、以前に紹介したマサチューセッツ州の保護団体Northeast Animal Shelterの代表シャパイロ氏の言葉が改めて頭に浮かびます。
シャパイロ氏の言う通り、たとえ小規模であっても団体やグループの運営には適性や能力が必要です。これらが欠けた時、最も被害を受けるのは皮肉なことに彼らが助けたいと思っていた動物達という結果になります。
またアメリカ屈指の団体のひとつBest Friends Animal Societyは、ひとつの団体にかかる負担を分散するために大小様々なレスキューグループや個人活動家をネットワーク化して、相互の情報や人的資源を共有するノウハウを作り上げています。
自分の手に負えないことは周囲に助けを求めてみる。そのためには互いに助け合いやすい環境を整備しておくことが何よりも大切です。これは日本においても保護活動の今後の大きな課題のひとつでもあると思います。

一般的にホーディングというのは精神疾患が根底にあると考えられていますが、レスキュー・ホーダーの場合も当初は動物達を助けたいと本当に思っていたものの、コントロールし切れない状況で精神的に押し潰され、正常な判断ができなくなってしまうのかもしれません。それ故に早い段階で助けを求められることが重要です。

一般の人の側の問題では、レスキューホーダーという存在を知らないと「自分を犠牲にしてまでたくさんの動物を救おうとする素晴らしい団体(人)」という印象を持ち、寄付などの支援を行うこともよくあります。ホーダーに援助をすることは、依存症に対してのイネイブラー(意識せずに依存症を助長してしまう支援者の意)となってしまうことを意味します。善意のつもりで行った支援がさらに動物たちを苦しめることになるので、大きな注意が必要です。

動物保護団体に支援をする時には、
・実際に動物達がどのように扱われているのか(出来れば自分の目で確かめる)

・動物の出入りの数がきちんと公表されているか、

・収支報告がきちんと公表されているか

などをチェックすることが大切です。
あまり楽しい話題ではありませんでしたが、まずは多くの人が知っておくことが第一歩です。

2018/01/23

犬にチョイスを与えること


このブログ、ほぼ2ヶ月近く放置して更新しておりませんでした。
2ヶ月の間dog actuallyの過去記事データを移すことに没頭して(と言っても合間合間にチビチビと)新記事を書く余裕がなかったんです。

改めてdog actuallyに書いた記事を読んでいると、未熟だったり妙に力んでたりで「あちゃー」と頭を抱えたくなるようなのが多々あったり、時事的な話題で「今更これを再アップしてもなー」という記事もあったり、まあとにかく自分の拙文にちょっと凹んだりもしていたわけです。

加筆したり、ちょこっと直したりしながら、またボチボチとアップしていきます。



さて、2018年最初の書き下ろし記事です。

少し前に「心にトラウマを抱えた犬をサポートするポイント」というテーマで文章を書いたことがあります。


その時に資料を読んでいて、ものすごく印象に残った一節があって、毎日散歩のたびに思い出しています。

「どんな生き物でも心にトラウマを植え付ける手っ取り早い方法は、すべての選択肢を取り上げること。」......というものです。

そんな風に植え付けられたトラウマは、生活の中で小さな選択の機会をできるだけ作ってやることで回復していきましょうと書かれていました。

最も酷い例で言えば、パピーミルで繁殖に使われている犬たち。彼らには寝る場所も運動も排泄も一切の選択の余地はないですね。
家庭で飼われている犬でも、外の小屋につながれたままで散歩はワンブロックを引っ張るだけなんていう状態では犬が自分で何かをチョイスするなんて無理な話。

衛生や安全に関わることでなければ、犬に自分で何かを選ぶチャンスを与えることが、犬の自信を築くためにも、健康な精神状態のためにも大切です。
散歩の時に何度かはどっちの方向に行くかを犬に任せる、どのおもちゃで遊びたいか犬自身が選ぶ、どこで寝るのかも犬に選ばせる、そういうことを積み重ねます。

これは「どんな生き物でも」と書かれている通り、人間でも同じですよね。
髪型から衣類、持ち物まで異常に厳しく管理するような校則、過干渉な親、横暴なブラック企業、こういうものが人格や精神にダメージになる理由のひとつは選択の機会が奪われていることですもんね。

そう思うと、生活の中のとても些細なことでも自分で考えて選ぶって素敵なことなんだなあと実感しています。

ニコニヤも1日に何度か何かを選択するというのをゲーム感覚で実行しています。
上の写真のニヤは妙に自信に満ち溢れてますが、これ以上自信満々になったらどうしよう(笑)


2018/01/22

ダンバー博士の犬の咬傷事故査定基準表

2012年に書いた記事ですが、この犬の咬傷の査定基準は今もまだ知名度が高くないと思うので、シェアなどしていただけると嬉しいです。

当時の記事では書いていないのですが、レベル1やレベル2の場合は犬の訓練だけでなく人間の訓練でかなりの数が防止できると思います。
人間が不躾に犬に触ろうとしたり、良かれと思ったことが犬にとってはとても不快なことだったりすると、イライラした犬が警告を発するというのはよくあることですね。
犬が発しているサインを読み取ることの大切さはもっともっと広めなくてはと思う今日この頃。


(以下dog actually 2012年7月2日掲載記事より)


(Image by Newhaircut)

Dr.イアン・ダンバーと言えば、犬の陽性強化訓練法の第一人者として日本でも多くの著書が翻訳され、講演も数多く行われているのでよくご存知の方が多いでしょう。
獣医師/動物行動学者であるダンバー博士は、1980年に当時はまだ珍しかった子犬向けのトレーニングスクールを設立して早い時期からの子犬の社会化の重要性を訴え続け、1993年にはペットドッグトレーナーの協会も設立しました。
現在は講演などで世界中を飛び回る一方、犬に関する様々な情報を提供するサイトDog Star Dailyの運営、同じく犬の情報サイトであるDogTime.comへの寄稿など精力的な活動を続けていらっしゃいます。
今日はそのダンバー博士が作成された6段階の「犬の咬傷事故査定基準表」をご紹介いたします。


レベル1

攻撃的な行動を見せるが、犬の歯と人の皮膚の接触は無い。

レベル2

犬の歯が人の皮膚に接触するが、歯による刺し傷は生じていない。
犬の歯が皮膚の上で動いたことにより、皮膚に深さ2.5mm未満の切り傷と少量の出血はあるが、皮膚に歯は突き立てられていない。

レベル3

1回の咬みつきにより1〜4カ所の歯による刺し傷が生じているが、どの傷も犬の犬歯の半分の深さには至らない。あるいは一方向への裂傷が見られる。
(被害者が咬まれた手を引いた、飼い主が犬を引き離した、犬が飛び上がって咬み、降りる際の重力がかかったなどの理由が考えられる。

レベル4

1回の咬みつきにより1〜4カ所の歯による刺し傷が生じており、そのうち少なくとも一カ所は犬の犬歯の半分以上の深さに至る。咬み傷の周囲に打撲傷が見られる。(犬が咬みついた後、そのまま数秒間押さえつけていたため)
または両方向への裂傷が見られる。(犬が咬みついた後、そのまま頭を振り回したため。)

レベル5

複数回の咬みつきにより、レベル4相当の傷が2カ所以上見られる。または、レベル4相当以上の傷を与える咬傷事故を複数回起こしている。

レベル6

被害者が死亡。

(Image by Indiamos)
全ての咬傷事故のうち99%以上を占めるのは、上記のレベル1とレベル2だと言われています。このレベルの事故を起こした犬は、危険な攻撃性があると言うよりも臆病であったり度の過ぎたやんちゃが原因である場合がほとんどです。これは根気づよく訓練を繰り返すことで、十分に修復が可能で再発も防止できるレベルです。

しかし、人を怪我させたという点にのみ焦点を当ててしまうと、非常に多くの飼い主がそれだけで犬をシェルターに連れて行って手放してしまいます。
そしてシェルターでは事故歴のある犬に引き取り手が見つかる率はたいへん低く、その結果、犬は殺処分になってしまうのです。

これでは十分に更正可能な軽犯罪で死刑になってしまうようなもので、犬にとって非常にアンフェアです。社会にとっても、飼い主の手で修復できる問題なのに税金を使ってシェルターに収容したり殺処分にするというのは、賢い選択とは言えません。
そのようなことのないように、査定をするための客観的な基準を設けることがとても重要なのです。

多くの動物保護団体でもこのダンバー博士の査定基準を採用しており、咬傷事故を起こしてしまった犬の、その後のリハビリの可能性を探るスケールとしています。

日本の場合はシェルターではなく保健所に連れて行かれると、もうそこで望みは完全に断たれます。それだけにこのような明確な査定基準の必要性はさらに高いと言えるでしょう。
また反対に、レベル4くらいの深刻なケースであるのに周囲が軽く判断してしまって、その後の十分な対策や訓練を行っていない場合もあります。これも明確な基準があれば、事の重大さがわかりやすくなります。

ちなみにダンバー博士は、レベル3では飼い主が厳格にルールを守った上で長い時間と忍耐を持って犬の訓練をすれば、修復と再発防止が可能としています。
レベル4では犬の危険度がグンと上がり、犬のプロフェッショナルが飼い主になることが望ましく、更に来客などの折には犬を鍵のかかる部屋に隔離、外出時にはマズルの着用と、厳しい制限を求めています。訓練によって修復できる見込みは非常に低いとしています。
そしてレベル5とレベル6では犬の安楽死処分が勧められています。
レベル4以上の犬の処遇については賛否の分かれるところだとは思いますが、今回はこのような基準があるという点にフォーカスしたいと思います。

どんな犬であっても絶対に咬まないとは言えません。このような査定基準を使うことがないのが一番ですが、もしもの時に冷静に客観的に対処できるよう、心に留めておきたいと思います。