2017/08/27

犬と子供のためのシェルタープログラム

犬に本を読み聞かせるという、ひと昔前なら一生に付されそうだったアイデアが、実はたくさんのメリットがあったというリサーチが発表されたのは2015年のことでした。それ以前には子供が犬に向かって本を読むことで苦手を克服するという、読み手の側のメリットに焦点があったため、付き合う犬の方に訓練が必要とされていたのでした(マイケル・ヴィックのところから保護されたジョニー・ジャスティスとかね。)

犬の側のメリットについては、この次の書き下ろし記事で詳しく書く予定。

それにしてもこの記事に登場するミズーリ州のヒューメインソサエティのプログラム、改めて読んでも本当に素晴らしい。犬にとってのメリット、子供たちへの教育、資金集めの方法、あらゆる面で行き届いていると思います。保護施設の運営者がこういうプログラムを実行できるような講習などが日本でも増えていくといいなあと思います。


(以下dog actually 2016年3月22日掲載記事より)
(photo by Kaz )


子供が訓練されたセラピー犬に向かって本の音読をすることで、子供たちの国語の能力の向上を図るというプログラムは過去にdog actuallyでも取り上げてきたことがあります。今日ご紹介したいのは同じように犬に向かって本を読むプログラムなのですが、子供たちによってセラピーが必要な犬たちが救われ、子供たちにも様々な利点のある画期的なものです。Shelter Buddies Reading Program(シェルターの仲間に本を読もうプログラム)と名付けられたプログラム、どんなものなのでしょうか。

このプログラムを始めたのはHumane Society of Missouri(以下HSM)アメリカはミズーリ州屈指の大規模なシェルターを持つNPO団体です。内容はと言いますと、シェルターの犬舎の前で、犬たちに向かって子供が本を音読するというもの。犬たちはもちろん特別な訓練などは受けていません。と言うよりも、むしろ人に慣れていない臆病な犬が主な対象になっています。
プログラムに参加できる子供たちの年齢は6歳から15歳。HSMのウェブサイトから参加申し込みを行い、5ドルの参加料を支払って登録します。登録を終えた子供たちは、10時間の研修に参加しなくてはなりません。ここで犬たちが怯えたりストレスを感じている時、喜んで愛情表現をしている時のシグナルの読み取り方、犬との接し方などを学びます。
研修を終えた子供たちは、保護者同伴でいつでも本を読みに訪れることができます。犬が興味を示して喜ぶシグナルを示した時にはシェルター職員の管理の下で子供が犬にトリーツを与えます。
従来の犬への音読プログラム同様に子供が本を読むことに自信をつけることができるのはもちろん、臆病な犬が人間に慣れるきっかけができる、子供の音読を聞くことで犬の気持ちが落ち着く、などの成果が見られるようになってきました。臆病過ぎる犬だけでなく、ハイパーで興奮気味の犬に対しても子供の音読は良い効果をもたらしていると言います。ビクビクと犬舎の隅っこにうずくまっていたり、興奮しすぎて飛んだり跳ねたりしている犬は里親希望者からは対象外とされがちですので、人に慣れ落ち着きを身につけた犬が増えることは譲渡率のアップにもつながります。
子供たちの方も、研修の場で知識を学ぶだけでなく、犬たちと関わることで動物保護への興味、他者への共感などを身につけることができます。犬にとっても子供にとってもwin-winのこのプログラム、2015年のクリスマスシーズンに開始され、たいへんな人気を博しています。現在は月に一度、新たな参加者の募集を行っているのですが、すぐに満席になる状態。HSMでは、同団体の管理する別のシェルターや猫を対象にしたプログラムも拡張する予定です。
こちらは犬たちに本を読み聞かせる子供たち。思わずニヤリと口元が緩むビデオです。


HSMでは他にも子供向けのプログラムがたくさん用意されています。いくつか例を挙げますと......。
●「シェルターペット、スタイル・メイクオーバー」対象年齢6~12歳
ボサボサ、ムクムク伸び放題の状態で保護された犬がシェルターの専属トリマーの手で綺麗に可愛らしく生まれ変わる様子を見学します。ペットのメイクオーバーのためのリボンやアクセサリー作りの時間もある半日コースのプログラムです。
●「獣医入門、君も科学者だ」対象年齢8~12歳
白衣とゴーグル、手袋を身につけて、獣医さんの仕事を見学します。フィラリア血液検査の顕微鏡を覗いたり、様々な寄生虫などのサンプルを目にする機会もあります。動物の様々な症状から診断を推理する時間、獣医の仕事についての質疑応答など、獣医になる夢を持つ子供にうってつけの半日コースのプログラムです。
●「夏休み週間シェルターキャンプ」対象年齢6~11歳
キャンプと言っても泊まりがけではなくて、9時から3時まで5日間のプログラムに参加します。プログラムは日替わりで「シェルター内の見学」「動物に関する色々な職業について学ぼう」「シェルターの動物たちのためのおもちゃ作り」など勉強と遊びをバランス良く取り入れたコースです。(3ヶ月の長期に渡る夏休みはアメリカの親たちの悩みの種です。小学生だけでの留守番は法律で禁止されているので、働く親にとって子供たちが昼間安全に過ごすことができる場というのはとても貴重なのです。)
これらのプログラムはいずれも有料で半日で35ドル、キャンプは270ドルになります。必要経費を差し引いた分はシェルターの活動資金にもなり、同時に次世代への動物保護の教育の場にもなっています。
こうしてシェルターの動物たちに親しんだ子供たちは、大人になった時にも動物虐待や飼育放棄からは縁遠くなることでしょうし、アニマルシェルターをより身近な存在として考えるようになります。シェルター発の楽しい学びの場がますます広がっていって欲しいものです。
【参考サイト】
Humane Society of Missouri


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