2018/03/13

ヒルズ・ドッグフードの原材料一覧にある「ブドウ」の表記

犬に食べさせてはいけない食べ物のリストに必ず入っている「ブドウ」
玉ねぎやチョコレートの次くらいにはメジャーな危険食べ物ですよね?

それがドッグフードの原材料に使われていたら?
しかも原材料一覧にしっかりと表記されていたら?
「え?なんで?」って思いますよね。さらにそれが療法食のメーカーとしてよく知られているヒルズのフードだと言うと、驚かれる方も多いのではないでしょうか。

ブドウやレーズンがなぜ犬や猫にとって危険なのかというメカニズムは今のところ明らかになっていません。けれどもブドウまたはレーズンを食べて腎不全が起こった例は多数報告されています。
どうしてそんなものがわざわざ原材料に使われているのでしょうか?


ヒルズ・サイエンスダイエットとブドウ

ペットフードに関する情報をかなり冷静に伝えるTRUTH about pet food.comというサイトがあります。ヒルズのドッグフードのブドウ問題は、あるペット用品店オーナーが顧客から「ドッグフードにブドウが入ってるけど大丈夫?」と質問を受け、各所に問い合わせをした経緯として掲載されていたものです。

ペット用品店オーナーはペットフードの原材料に関する法規や規制にたいへん造詣の深い人で、サイトに問い合わせる以前に食品医薬品局(FDA)、ヒルズ社にも問い合わせをしていました。

原材料の一覧にGrape(ブドウ)が含まれていたのは、サイエンスダイエットの小型犬成犬用、同じく小型犬7歳以上用、もうひとつはプリスクリプションダイエット(療法食)ブレーンエイジングケア用でした。

日本で販売されているサイエンスダイエットの同じ種類のものを確認したら、こちらも確かに原材料一覧の真ん中あたりにブドウの表記がありました。
療法食ではブレーンエイジングケアというものは日本のサイトでは見つかりませんでした。

こちらが、同社のサイトに掲載されている原材料一覧です。
トリ肉(チキン、ターキー)、トウモロコシ、小麦、米、動物性油脂、トリ肉エキス、植物性油脂、亜麻仁、ポークエキス、トマト、柑橘類、ブドウ、ホウレンソウ、ミネラル類(ナトリウム、カリウム、クロライド、銅、鉄、マンガン、セレン、亜鉛、ヨウ素)、ビタミン類(A、B1、B2、B6、B12、C、D3、E、ベータカロテン、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、 コリン)、アミノ酸類(タウリン)、酸化防止剤 (ミックストコフェロール、ローズマリー抽出 物、緑茶抽出物) 
 https://www.hills.co.jp/dog-food/sd-adult-small-and-toy-breed-dog-food-dry より

FDA、ヒルズ社、AAFCOとのやりとりの経緯

さて元々の情報がアメリカのものですので正確に書きますと、アメリカのパッケージに原材料として表記されていたのはDried Grape Pomaceという名称でした。Pomaceというのは搾りかすです。ジュースなどを搾った後のブドウの搾りかすを乾燥させたものです。

(日本のペットフードの原材料の表記ではミールも副産物も「肉」と表記してもOKなのと同様に、乾燥させた搾りかすもブドウと表記しているようですね。同様に「トマト」「柑橘類」と書かれているのも英語表記ではDried Pomace。ジュースなどを搾ったあとの繊維を乾燥させたものです。)

件のショップオーナーは、まず食品医薬品局(FDA)のサイトでDried Grape Pomaceというものが「安全と認められる動物飼料原材料のリスト」に含まれているかを確認しました。
答えは「NO」 FDAが安全と認めている原材料ではないということです。

次にヒルズ社に問い合わせをしたそうです。
回答は「すべての原材料は安全なものです」というもので、「ブドウとブルーベリーの混合エキスの安全性について」という研究のリンクが添付されていたそうです。
はい、率直に言って「話にならない」ですね。

そこでショップオーナーはTRUTH about pet food.comに連絡を取り、サイト管理者がAAFCOに問い合わせをしました。
AAFCOとはアメリカ飼料検査官協会の頭文字を取った略称で、すべての動物飼料の表記や原材料の規定をしている機関です。

AAFCOでは法に沿ったペットフードの原材料の定義を規定しています。この中にDried Grape Pomaceというものの定義は含まれておらず、それはすなわち原材料として使用してはならないということです。
ブドウの前に表記されているトマトDried Tomato Pomace や柑橘類Dried Citrus Pulpは使用が認められていて、AAFCOに定義が在るものです。
(わかりやすく言えば、使用しても良い原材料を決めるのはFDAや各州の農業省。AAFCOはそれら原材料の一覧を作ってそれぞれを定義する辞書を作っている。辞書に載っていないものを原材料にすることはできない。)

ヒルズ社の工場があるケンタッキー州の農業省はヒルズ社に連絡を取り、原材料からブドウを取り除くことと、パッケージの表記を訂正することを指導する予定だそうです。指導に従わない場合には同製品を流通から撤退させることが命令されます。




(photo by HG-Fotografie )


なぜわざわざブドウを使ったのかは謎のまま

ヒルズ社への問い合わせの結果は上記のようなものですし、農業省からヒルズ社への指導の結果はまだ一般にはわからない状態ですので、なぜドッグフードにブドウが使われたのかはわからないままです。
(キャットフードには使われていません。)

犬に食べさせてはいけないと言われる食品なのにドッグフードに使われることがあるものと言えば、アボカドとニンニクがあります。
しかしこれらは危険のメカニズムが明らかになっていて、安全な種類や使用量が明確なので、メーカーがリスク管理をすれば栄養面などのメリットが享受できるものです。
しかしブドウはなぜ健康被害が出るのかがわかっていないので、管理のしようがありません。

個人的にはヒルズのフードは、動物性たんぱく質がミールという形でしか使われていないこと(日本語ではチキンとかビーフとか書かれていますが、中身はミールです。)と、穀類の量が多すぎると感じるので、うちの犬たちに食べさせようとは思いません。
でも健康被害が出るかもしれず、AAFCOの定義していない原材料を使うというのは、別の次元の話ですよねえ。

アメリカでは前述したような措置が取られるようですが、日本では指導などはないと思います。(改めて調べておきます。)
危険な可能性のあるフードを食べさせたくないという方は、このブドウの件を心に留めておいてくださいね。

《参考URL》

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