2019/04/12

除草剤の成分グリホサート とペットフード



(Image by Karsten Paulick from Pixabay ) ↑フードだけでなくこういうのも気をつけてね


モンサント社が開発した除草剤『ラウンドアップ』

アメリカ最大の農薬メーカーのモンサント社、その会社の除草剤ラウンドアップの発ガン性や食品への汚染についてはかねてから話題になっています。(モンサント社は2018年にドイツのバイエル社に買収されています。)

検索されると色々なニュースが出てくるかと思いますが「アメリカの犬たち」というブログタイトルの通り、ここでは犬に関することを書きます。

ラウンドアップの主成分は『グリホサート 』という化学薬品です。
2018年10月、アメリカのコーネル大学の生物工学および環境工学の研究者がグリホサート がどのくらい環境に波及し影響を与えているかという研究の一環として、市販されているペットフード中のグリホサート濃度を調査しました。

市販のペットフードのグリホサート 濃度は?

研究者たちは小売店から主要なブランドのドッグフードとキャットフード18種類を選び、調査分析を行いました。
18種類のフード全てが原材料に肉と野菜を含み、うち1種類は遺伝子組み換え作物不使用と認定されているものでした。
分析の結果は、全ての製品において1kgあたり約80〜2000μg(マイクログラム=100万分の1グラム。2000μg=2mg)の濃度でグリホサート残留物 が含まれていました。

家畜動物が低濃度のグリホサート に曝露した場合の影響に関するデータがなかったため、研究者は上記の分析結果を、グリホサート の対人間の許容摂取量ガイドラインと比較しています。
その結果、中央値の犬の曝露は、アメリカおよびEUで人間の許容摂取量として設定された数値の0.68〜2.5%と推定されました。
分析された製品のうち、最も汚染度の高かったもので比較すると、上記許容摂取量の7.3〜25%となります。

グリホサート はどの原材料に由来しているのか?


(Image by zefe wu from Pixabay )


研究チームは、グリホサート が製品中のどの原料に由来するのかを正確に特定することはできませんでした。
しかしグリホサート は動物に生体蓄積しないことが分かっているため、動物性タンパク質源である飼料動物に由来するとは考えられないとのことです。
製品中の総繊維量がグリホサート 濃度と相関していたため、植物性の原料由来であると考えられます。

グリホサート は除草剤ですので、本来なら作物そのものも枯らしてしまうおそれがあります。
そこでアメリカでグリホサート に強い耐性を持つように遺伝子組み換えされたトウモロコシおよび大豆が作られたことによって、グリホサート の使用量が劇的に増加したという背景があります。

それならトウモロコシや大豆が含まれる製品の汚染率が高いのでは?と思われますが、残念ながらこの研究ではそこまでは分かっていません。

もう一つ研究者を驚かせたのは、遺伝子組み換え作物不使用と認定された製品のグリホサート 濃度が高かったことです。
上記のトウモロコシおよび大豆の遺伝子組み換えの話と相反するように見えますね。
これはあくまでも私の推論ですが、遺伝子組み換え作物不使用と書いてあるような製品はもともとトウモロコシも大豆も使用されていないのではないかと思います。その上で、何かグリホサート が多く残留する他の原材料が使用されていたのではないでしょうか

研究者の見解は?


研究者は、グリホサート による直接的なリスクがあるようには見えないが、低用量とは言え長期的に摂取することの影響についてはまだ不明であるとしています。

研究者の一人は今回の調査でグリホサート 濃度が高かった製品を愛犬に与えていたそうですが、調査後はフードを変えたとのことです。しかし愛犬の健康状態に変化はなかったと報告しています。

私は論文全文は読んでいないのですが(有料だったもので、すみません😓)Science DailyとScience Directの要約を読んだところでは、研究者たちの論調は「まさかペットフードにこんなに含まれているとは予想以上だったので驚いたけれど、とても低い濃度だからそれほど心配しなくても大丈夫」という雰囲気を感じました😨


飼い主として、どう反応する?

以下は私個人の思うところです。
このコーネル大学の発表について「そうか、ペットフードから検出されているけれど微量だから心配しなくてもいいんだ。安心した!」...なんてことはありません。
当たり前ですが、そんなものが含まれていては困るし心配です。

しかし地球規模でこの除草剤が使用されている量を考えると、世界中どこの土壌にも水にもグリホサート が入り込んでいるのは間違いないでしょう。
なので、どんなに吟味したフードを選んでも、有機栽培の材料だけを使って手作りをしても完全にグリホサート から逃れることは不可能だろうなとも思っています。

だからと言って「何を食べても一緒」だとは思わないし「どうせ何もできないから」と諦めているわけではないですよ。
今の地球の環境では自分自身も愛犬も望ましくない化学物質を摂取してしまうことは、ある程度は避けられない。パニックになることなくそれを理解した上で、できる範囲でリスクの低い製品を選ぶようにしようと思います。

食物繊維を多く含む製品でグリホサート 濃度が高かったことが分かっているのは一つの手がかりになるでしょう。コーンや大豆を多用している製品も同様です。
可能であればオーガニック原料の製品を選ぶこともリスクの軽減になると思います。
腎臓や肝臓、免疫系の働きをサポートする高品質のハーブをプラスすること、腸内環境を良好に保つこと、常に適度な運動をすることで代謝を活発に保つこと、これらも健康リスクを軽減することに繋がります。

そして何より、ある程度は開き直って悩み過ぎずにいることも大切だと考えます。
食のことに疑心暗鬼になり過ぎてストレスになってしまっては、犬も人も免疫力も下がってしまう気がします。
何が危険度が高くて何がリスクが低いかを自分なりに勉強してできる範囲で実行し、犬が犬らしく生きるサポートをして笑って暮らそう、それが私の目標です。

あ、最後になりましたがバイエル社に対する規制を強くする署名活動などは世界中で行われています。何かを変えたいと思われる方はぜひ参加してみてくださいね。


《参考URL》












2019/04/04

ヒルズ・ドッグフードのリコールについて

ドッグフードに過剰なビタミンDで製品回収



2018年秋、アメリカのいくつかのペットフードメーカーから「製品中に過剰な量のビタミンDが含まれていることが判明した為、製品の自主回収を行います」という発表がありました。

自分でも良くないなと反省しているのですが、私は市販のドッグフードをあまり使わない為リコール情報は軽くチェックする程度で流してしまうことが多いのです。
けれど、そんな私でも去年の秋から始まって未だに終わらない「過剰な量のビタミンDに由来する製品回収」には「え?また?多いなあ」と思っていました。

「これはお知らせしておいた方が良さそう」と思い、ビタミンD の過剰摂取がもたらす健康被害の可能性について記事を一つ書いています。なぜビタミンDの過剰摂取が良くないのか、どんな症状が起きるのか説明しています。


ドッグフードに高レベルのビタミン混入で製品回収。犬の飼い主が知っておきたいこと。

一番たくさんの人の目に触れる場所にと思い、わんちゃんホンポにアップしたのですが、予想よりも反応が大きく「全然知らなかった」という人が多かったことにも驚きました。

最大の被害を出した大手メーカーの対応



上記の記事には書いていないのですが、今回の製品回収を行ったメーカーの中の最大手であるヒルズの対応は感心できるものではありませんでした。 

アメリカ食品医薬品局は2018年12月初旬に、ビタミンDの件で製品回収をしたメーカーをリストアップして発表しています。
高レベルのビタミンDの混入は、ペットフードのメーカーが原材料として仕入れているフード用マルチビタミンの業者がその配合を誤ったことが原因と伝えられています。

その業者から同じものを仕入れているメーカーには食品医薬品局からの通達がありますし、何よりも同業界内で大規模なリコールが起こっているのに知らない道理がないのですが、ヒルズはこの時点でリコールも行わず製品の製造と出荷を継続していました。

そして2019年1月下旬にヒルズはようやく製品の回収を発表しましたが、これは消費者から飼い犬の健康被害のクレームがあったことからでした。

他のメーカーとは販売量が桁違いに多い大手メーカーですから、その被害も桁違いでした。
2019年3月の時点でビタミンD過剰含有のフードに関連して命を落とした犬は数百匹、腎障害など健康被害に苦しむ犬は数千匹とも伝えられています。
皮肉なことに該当製品の中には処方食も多く含まれていました。もともと体調が悪かった犬たち、中でも腎臓の処方食を食べていた犬はビタミンDの過剰摂取で腎不全が急激に悪化して亡くなった例がたくさんあったようです。

1月下旬にヒルズが製品回収を行った際、ビタミンD過剰含有に該当するロットが公表されたのですが、その後アメリカ食品医薬品局が同社の他のロットも検査したところ、さらにビタミンD過剰の製品が見つかり、回収が延々と続いています。

ヒルズはビタミンの仕入れ先を非難するような論調のコメントを発表していますが、そもそもロット毎のサンプル抜き取り検査をしていれば簡単に発見できるエラーですし、回収をスタートしたのも他のメーカーに比べてずっと遅い時期でした。

当然のことながら、ヒルズに対しての集団訴訟はすでに複数起こっています。今後さらに増えていくことと思われますが、この対応なども引き続き注目して行きます。


日本への影響は?

日本に輸出された製品の中にも該当するものが少量ながらあったとのことで、日本ヒルズのウェブサイトでロット番号などが公表されています。

ヒルズの製品では、過剰なビタミンDの混入が確認されたのは缶詰ドッグフードのみでドライフードやキャットフードは安全とのことです。

他のメーカーではサンシャインミルズが複数のブランドで自主回収を行っています。このメーカーは小規模ながら日本で販売をしていますが、日本に輸出した製品の中には該当するものは無かったようです。
その他のメーカーは日本での販売はないと思うのですが、ヒルズ以外のビタミンD関連のリコールリストを貼っておきます。
https://www.fda.gov/animalveterinary/newsevents/ucm627485.htm


「私ならどうするかな?」という考察

さて、ここからは私が個人的に思うことです。
もし私がヒルズのフードをうちの犬たちに食べさせていたら、これを機会に全面的に止めることでしょう。メーカーが発表したロットの他に第三者の検査でさらに毒性のある製品が見つかったのですから、他は大丈夫と言われても信頼するのは難しいです。

もしなんらかの症状があって獣医師からこのメーカーの処方食を与えるように指示されたら、獣医師にその処方食は普通の製品に比べてどういう点が特別に違うのかを徹底的に確認して、それを踏まえた手作りにするか、もっと小規模なメーカーの処方食を探して「これではダメですか?」と確認するだろうと思います。

アニモンダ、フォルツァ10、ナチュラルハーベスト、などにも症状別の特別フードがありますし、宿南獣医師の療法食というものもあります。

以前にヒルズのフードの原材料にブドウが含まれているという記事を書いたことがあります。


リコール騒動の時に「そう言えばあれはどうなっただろう?」と同社のサイトで確認したら、原材料一覧からgrapeの文字は消えていました。
けれど、日本ヒルズのサイトの当該製品の原材料には相変わらずブドウが含まれています。

獣医師から処方されることも多いブランドですから「そうは言ってもこれ以外に与えるものがない」という方もいるかと思いますし、安直に「与えないでください!」とは言えませんが、本当に他の選択肢がないのかどうか、しっかり調べたり考えたりして大切な愛犬を守ってあげてください。