2018/03/25

愛犬に寄る年波


先月からニヤの体調のことで気ぜわしい日々が続いて、自分が書いたこの記事のことを思い出していました。

「寄る年波って本当にそうだわ〜。なんか気がついたらものすごく潮が満ちて焦りまくってる気分。」と思いながら読み返して感慨にふけっていました。

2017年2月の記事ですからほんの1年ほど前のことなのですが、この後もっと頻繁にニコニヤのお腹の調子に悩まされることになるとは、この時は想像していなかったなあ。

幸いお腹の方は、野菜類に火を通すようにしてから落ち着いていますが、ニヤの関節炎や心臓肥大という別の「波」が来ているのは、ブログに書いている通り。

この文章はdog actuallyの記事としてはちょっと異色で、ニコのことを詳しく書いたものですが、SMILESのブログよりは少しあらたまった感じで自分でも好きなものです。

下のニコの写真は1枚目が2017年の2月、2枚目が今年のもの。
比べるとマズルが白くなっているけれど「なんだ、あんまり変わってないじゃない」と思ったのは悪あがきかな(笑)



(以下dog actually 2017年2月6日掲載記事より)








『寄る年波』というのは「年が寄る」と「波が寄る」をかけた言葉だそうだ。
 毎日の生活の中では変わっていないつもりでも気がつくと年を取ったなあと実感するあの感じは、じわじわと波が満ちてくる(あるいは引いていく)感じとよく似ていて、昔の人はうまいことを言うものだと感心する。
自分のこともそうなのだが、私が今ここで書いているのは、もちろんうちの犬のことだ。
うちのニコが先日お腹を下した。ただ下しただけなら1日ほど絶食して重湯に塩ひとつまみとカモミールをパラパラ入れたものだけ飲ませておけば、翌日にはたいてい治っているのだが、先日は下したところに結構な量の血が混じっていたので「これはすぐに病院に行かなくては!」と少し焦った。何しろ自分の犬が血便をしたなんて初めての体験だったもので。
血液検査も検便も特に異常は見当たらなくて、本犬も体はピンピン元気だったので「たいしたことはないでしょう」と抗生剤をもらって帰ってきた。
便も翌々日にはすっかり元に戻って「本当にたいしたことなかった......。」と拍子抜けしたのだった。
ニコは9歳あたりまでほとんど下痢をしたことがなかった。一度だけドッグパークで2匹のハウンドに挟み撃ちで襲われた日の夜にストレスからか下痢をしたことがあったが、それっきりだ(幸い大きな怪我はなかった。)
だが9歳になった頃から1年に1~2回はお腹が緩くなるようになってきた。昔は「鋼鉄の胃腸」なんて呼んでいたのだが、今はアルミの胃腸くらいになった感じだ。
思えば、10歳になった頃に「いよいよ本格的にシニアか」と思ったものの、運動量も食餌の量も変わらないし足腰の衰えなども全く感じないのでちょっと油断していたかもしれない。
1月の下旬は雨が多くて気温の低い日が続いていたので、体を温める食材を意識するとか小型のヒーターを出してくるとか気を配るべきだった。
今回は犬の神様が「ちょっと気持ちを引き締めるために赤いのを混ぜておこうか」と手配をしてくださったのだと思っておこう。
毎年冬の時期には体重が減りがちになるので食餌の量も調整するのだが、1日の絶食と翌日のお粥食で体重もまた減ってしまった!


当たり前だけれど、愛犬のことは毎日見ている。
何か変わったことがないかと目で見て手で触って匂いも嗅いで注意をしている。
だけど毎日見ているからこそ見落としてしまうこともあり得る。
加齢は『寄る年波』なのだ。波のようにジワジワと来るかと思うと、突然ザッパーンと来ることもある。

幸いブログを書いているおかげで、何年前のいつ体調を崩したかとか、その頃の外見はどんな風だったのかはいつでもすぐに見返すことができる。毎日の観察では気がつきにくい事柄を確認するためにも、意識して古い記録に目を通すようにしようと肝に銘じた。
ブログだけでなく、今は手軽に記録を残せるSNSもいろいろあるし、写真もスマホで気軽に撮影して整理しておける。そういう形で愛犬の日々を記録しておくことは健康管理の上でも本当にお勧めだ。何も公開して人に読んでもらう必要はない。写真を撮って、気がついたことや起こったことを箇条書きで書いておくだけでいい。
愛犬の毎日の記録はそういう実用的な意味合いもあるのだが、私はこれを「老後の楽しみ」とも呼んでいる。
いつか自分がもっと年をとった時に、ニコやニヤと過ごした時間をゆっくりと味わうための記録でもある。犬と自分、両方に寄ってくる年波とうまく付き合っていくために今日もいそいそと記録をつけていこう。

2018/03/13

ヒルズ・ドッグフードの原材料一覧にある「ブドウ」の表記

犬に食べさせてはいけない食べ物のリストに必ず入っている「ブドウ」
玉ねぎやチョコレートの次くらいにはメジャーな危険食べ物ですよね?

それがドッグフードの原材料に使われていたら?
しかも原材料一覧にしっかりと表記されていたら?
「え?なんで?」って思いますよね。さらにそれが療法食のメーカーとしてよく知られているヒルズのフードだと言うと、驚かれる方も多いのではないでしょうか。

ブドウやレーズンがなぜ犬や猫にとって危険なのかというメカニズムは今のところ明らかになっていません。けれどもブドウまたはレーズンを食べて腎不全が起こった例は多数報告されています。
どうしてそんなものがわざわざ原材料に使われているのでしょうか?


ヒルズ・サイエンスダイエットとブドウ

ペットフードに関する情報をかなり冷静に伝えるTRUTH about pet food.comというサイトがあります。ヒルズのドッグフードのブドウ問題は、あるペット用品店オーナーが顧客から「ドッグフードにブドウが入ってるけど大丈夫?」と質問を受け、各所に問い合わせをした経緯として掲載されていたものです。

ペット用品店オーナーはペットフードの原材料に関する法規や規制にたいへん造詣の深い人で、サイトに問い合わせる以前に食品医薬品局(FDA)、ヒルズ社にも問い合わせをしていました。

原材料の一覧にGrape(ブドウ)が含まれていたのは、サイエンスダイエットの小型犬成犬用、同じく小型犬7歳以上用、もうひとつはプリスクリプションダイエット(療法食)ブレーンエイジングケア用でした。

日本で販売されているサイエンスダイエットの同じ種類のものを確認したら、こちらも確かに原材料一覧の真ん中あたりにブドウの表記がありました。
療法食ではブレーンエイジングケアというものは日本のサイトでは見つかりませんでした。

こちらが、同社のサイトに掲載されている原材料一覧です。
トリ肉(チキン、ターキー)、トウモロコシ、小麦、米、動物性油脂、トリ肉エキス、植物性油脂、亜麻仁、ポークエキス、トマト、柑橘類、ブドウ、ホウレンソウ、ミネラル類(ナトリウム、カリウム、クロライド、銅、鉄、マンガン、セレン、亜鉛、ヨウ素)、ビタミン類(A、B1、B2、B6、B12、C、D3、E、ベータカロテン、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、 コリン)、アミノ酸類(タウリン)、酸化防止剤 (ミックストコフェロール、ローズマリー抽出 物、緑茶抽出物) 
 https://www.hills.co.jp/dog-food/sd-adult-small-and-toy-breed-dog-food-dry より

FDA、ヒルズ社、AAFCOとのやりとりの経緯

さて元々の情報がアメリカのものですので正確に書きますと、アメリカのパッケージに原材料として表記されていたのはDried Grape Pomaceという名称でした。Pomaceというのは搾りかすです。ジュースなどを搾った後のブドウの搾りかすを乾燥させたものです。

(日本のペットフードの原材料の表記ではミールも副産物も「肉」と表記してもOKなのと同様に、乾燥させた搾りかすもブドウと表記しているようですね。同様に「トマト」「柑橘類」と書かれているのも英語表記ではDried Pomace。ジュースなどを搾ったあとの繊維を乾燥させたものです。)

件のショップオーナーは、まず食品医薬品局(FDA)のサイトでDried Grape Pomaceというものが「安全と認められる動物飼料原材料のリスト」に含まれているかを確認しました。
答えは「NO」 FDAが安全と認めている原材料ではないということです。

次にヒルズ社に問い合わせをしたそうです。
回答は「すべての原材料は安全なものです」というもので、「ブドウとブルーベリーの混合エキスの安全性について」という研究のリンクが添付されていたそうです。
はい、率直に言って「話にならない」ですね。

そこでショップオーナーはTRUTH about pet food.comに連絡を取り、サイト管理者がAAFCOに問い合わせをしました。
AAFCOとはアメリカ飼料検査官協会の頭文字を取った略称で、すべての動物飼料の表記や原材料の規定をしている機関です。

AAFCOでは法に沿ったペットフードの原材料の定義を規定しています。この中にDried Grape Pomaceというものの定義は含まれておらず、それはすなわち原材料として使用してはならないということです。
ブドウの前に表記されているトマトDried Tomato Pomace や柑橘類Dried Citrus Pulpは使用が認められていて、AAFCOに定義が在るものです。
(わかりやすく言えば、使用しても良い原材料を決めるのはFDAや各州の農業省。AAFCOはそれら原材料の一覧を作ってそれぞれを定義する辞書を作っている。辞書に載っていないものを原材料にすることはできない。)

ヒルズ社の工場があるケンタッキー州の農業省はヒルズ社に連絡を取り、原材料からブドウを取り除くことと、パッケージの表記を訂正することを指導する予定だそうです。指導に従わない場合には同製品を流通から撤退させることが命令されます。




(photo by HG-Fotografie )


なぜわざわざブドウを使ったのかは謎のまま

ヒルズ社への問い合わせの結果は上記のようなものですし、農業省からヒルズ社への指導の結果はまだ一般にはわからない状態ですので、なぜドッグフードにブドウが使われたのかはわからないままです。
(キャットフードには使われていません。)

犬に食べさせてはいけないと言われる食品なのにドッグフードに使われることがあるものと言えば、アボカドとニンニクがあります。
しかしこれらは危険のメカニズムが明らかになっていて、安全な種類や使用量が明確なので、メーカーがリスク管理をすれば栄養面などのメリットが享受できるものです。
しかしブドウはなぜ健康被害が出るのかがわかっていないので、管理のしようがありません。

個人的にはヒルズのフードは、動物性たんぱく質がミールという形でしか使われていないこと(日本語ではチキンとかビーフとか書かれていますが、中身はミールです。)と、穀類の量が多すぎると感じるので、うちの犬たちに食べさせようとは思いません。
でも健康被害が出るかもしれず、AAFCOの定義していない原材料を使うというのは、別の次元の話ですよねえ。

アメリカでは前述したような措置が取られるようですが、日本では指導などはないと思います。(改めて調べておきます。)
危険な可能性のあるフードを食べさせたくないという方は、このブドウの件を心に留めておいてくださいね。

《参考URL》

ドッグフードから検出された殺処分用の麻酔薬

(screenshot from http://www.gravytraindog.com )

1ヶ月ほど前になりますが、テレビを見ているとドッグフードから動物の殺処分に使われる麻酔薬ペントバルビタールが検出されたというニュースが流れました。

とんでもないことだしショッキングだと報道されるのも当然なのですが、ペットフードにまつわることを色々読んでいると「ああ、そういうこともあるだろうなあ」と感じてしまいました。よくある扇動的なサイトではなくて、FDA(Food and Drug Administration アメリカ食品医薬品局)やAAFCO(アメリカ飼料検査官協会)が公表しているペットフードに関する規定と市場に出回っているフードを見て考えたら、少なくともテレビCMやパッケージでうたわれているフードの素晴らしさが真実じゃないことくらいはわかります。

Gravy Trainのフード

さて、今回薬物が検出されたのはGravy Trainというブランドの缶詰フード。日本では発売されていません。
予想はしていたけれど、このフードものすごく安いです。一番安いところだと1缶45セントくらいで買える。
原材料を見ると、さてどこから手をつけたらいいか?というくらい、何も良いところがない。
原材料の一番最初にあがっているのは大豆ミール。これは大豆油を搾った残りを挽いたもの。
その次がミート副産物。何の肉か書いていないけれど、副産物の場合ミートだけで済ませて良いのは牛・豚・羊・山羊の4種に限られるので、それらの肉の内臓と血液と骨が主なはず。
その次は小麦粉で、その次が動物性脂肪。何の動物の脂肪か書かれていません。この辺り怪しいですね。
そして堂々とビーフの名前が書いてある割に、この次にようやくビーフの名前が出てきます。これは缶のラベルにwith BEEFと書かれている通り「with と書けば3%ルール」が適用されて、ビーフは全体の3%含まれていればOKなんですね。
(この記事の前に過去記事をあらかじめ再掲載しておいたのは、これに関連するから)

でも、どんなに理想から遠くかけ離れていても、犬が食べて命を落とすようなものでなければいいんですよ。

大問題なのは、動物を殺処分するための薬物が混入して、命を落とした犬がいるということ。しかも、それが見つかった過程がまた酷い。



↑ABC7ニュースのサイトに飛ぶので、興味のある方はご覧ください。

薬物はどこから混入した?

薬物混入が発覚したのは、被害者の家族とテレビ局とそのパートナーの研究所の調査のおかげでした。メーカーが自主的に発見してリコールしたからではないんですね。

きっかけは2016年の年末にGravy Trainのフードを食べた、ある家庭の犬たちが苦しみ始めて1匹が命を落としてしまったこと。

飼い主さん家族はフードの残りを専門の研究所に送って調査をしてもらい、亡くなった犬の体は獣医学の病理学者に検視を依頼しました。

そうして検出されたのが、前述したペントバルビタール。動物の殺処分に使われる麻酔薬です。(麻酔薬だけど、量の調整で殺処分に使われる。)
この薬が使用されるのは犬・猫・馬に限り、食用にされる牛や羊などに使用することは禁止されています。

この調査はワシントンDCのABC局と局がパートナーとして依頼した研究所に引き継がれました。
24ブランド62サンプルの缶詰フードにペントバルビタールが含まれていないかを検査を繰り返しました。1つのブランドに付き、違うロット、違う購入先などの条件で検査が行われました。
その結果、あらゆる条件で繰り返し薬物が検出されたのが前出のGravy Trainでした。15の缶を検査して薬物が含まれていたのが9缶。実に60%がアウト!

過去記事で「FDAは動物飼料に使うミールには屠殺以外の方法で死んだ動物を使うことを許している」と書きましたが、正確には「ミールの規定に屠殺された動物の肉という指定はない」なんですね。
言ってみれば、FDAはメーカーのために規制の抜け道を作り、メーカーはそれをありがたく使っているというわけ。

屠殺された以外の動物というのは、事故や病気で死んだ動物という意味ですが、そういう動物を引き取る専門業者というものがあり、食用の家畜動物も、殺処分になった犬・猫・馬もどちらも扱っているという業者も少なくないようです。
まだあくまでも推測ですが、多分そうやって回収した後ペットフードメーカーに卸すもののなかに殺処分になった動物が混ざってしまったのが、薬物混入の原因ではないかと言われています。(手違いなのか、故意なのかはまだわかりません。)

テレビ局がこれらの検査結果を報道したのが先月のことで、ここまで来てメーカーはようやく製品の回収を始めました。
2016年末の被害者の後にも命を落とした犬がいて、その家族がメーカーに苦情を申し立ててもいたのに、メーカーによる調査もリコールも行われなかったんですね。
被害家族には製品の割引クーポンが送られて来たという笑えない冗談みたいなオチまでついています。

メーカーもようやく自社による調査を始めたようですが、詳細はまだ伝えられていません。また続報があれば更新します。

この問題といっしょに、有名な療法食のブランドのことも書こうかと思っていたのですが、長くなり過ぎたので、それは明日にします。

フード選びは本当に悩ましい。高ければ安心というわけではないけれど、安すぎるものはやっぱりどう考えても安全面で不安が残りますね。
ラベルの読み方も知っておかないと、わからないことがたくさんあります。
明日はそのラベルの読み方についてちょっと掘り下げてみます。


2018/03/12

アメリカンドッグフードの表示規定2

長かったので2つに分けた記事の後半です。
本文の中でも書いていて、繰り返しになりますが、
ミールや副産物が使われている=4Dミートが使われているではありません!

他の部分にも目を向けて、総合的にフードの品質を判断することが大切です。


(以下dog actually 2012年4月23日掲載記事より)
(photo by Counselling )



さて、先にあげたルールのパーセンテージの規定にはミールや副産物は含まれないと書きました。ではミールや副産物ってなんでしょう?牛肉や鶏肉などの肉との違いは?
FDAでは牛肉や鶏肉など「肉」の定義を「屠殺された動物の筋組織」としています。

「ミール」の定義は「血液、毛、角、皮、胃、腸、またその内容物を除いた動物の組織を加工したもの」としています。
なんだかちょっとオドロオドロしい感じで、イメージが湧きにくいですね。

ミールはペットフードのパッケージの原材料一覧の中ではチキンミールやラムミールという形で表示されているのが普通です。AAFCOの定義では「細かく挽き、乾燥させた動物の組織。血液、毛、ひづめ、角、皮、胃腸とその内容物は含まない。」としています。簡単に言えば肉を挽いて乾燥させたものですね。フィッシュミールの場合は丸ごとの魚を細かく挽いて乾燥させたものを言います。
これらミールは上記ルールのパーセンテージの規定外ですが、フードの原材料の中でタンパク源としての大きな役割を果たしています。

副産物(by-product)は食肉副産物とかチキン副産物という形で表示されます。
AAFCOは食肉副産物を「肉以外の動物の組織。肺、脾臓、腎臓、脳、肝臓、血液、骨、胃、腸、その内容物を含む。ただし毛、角、歯、ひづめは含まない。」としています。チキン(家禽)副産物は「肉以外の家禽の組織。頭、首、足、卵管内容物、腸を含む。ただし羽は含まない。」としています。

このミールと副産物、「プレミアム」と呼ばれるフードでは使っていないことを大きく宣伝に使ったり、フードの選び方指南等では副産物は避けましょうと言われているのもよく目にします。実際に原材料一覧を見て副産物が使われていないフードを選んでいる方も多いのではないでしょうか。

しかし食餌を手作りしている方などでは、わざわざ鶏の頭や足を買って来て与えたり、内臓肉を取り寄せたりしている人もたくさんいます。それとフードに含まれる副産物とでは何が違うのでしょうか?
それはFDAが定める規定の違いです。FDAは動物向けの飼料のミールや副産物には「屠殺以外で死んだ動物の組織」を使うことを許可しています。人間の食料としては流通することができない、病気や事故で死んだ食肉動物(いわゆる4Dミート)ということですね。
誤解のないように書いておくと、全てのミールや副産物が病気や事故で死んだ食肉動物から作られているというわけではありません。普通に食肉用に屠殺された動物の肉や内臓肉を使っている製品も多くあります。そこは製造している会社を信用するしかないところです。

ところで今回この記事を書くにあたり、日本で販売されているドッグフードの原材料一覧を色々見て驚いたことがありました。
それはアメリカと日本両方で販売している同じ製品で、アメリカの原材料にはby-productとあるのに日本の原材料表では「副産物」の文字を見ることが非常に少なかったこと。アメリカと日本で処方を変えている?そんなことをしたら値段が3倍にも4倍にもなってしまうはず。

答えは簡単。日本での原材料表示は鶏肉も鶏肉副産物もチキンミールも全部一緒にして「鶏肉」「チキン等肉類」というような書き方が許されているから。
2009年6月からペットフード安全法が施行されていますが、こんな言葉のトリックもたくさんあります。肉の種類の後に「等」「類」などと付いていない表示のフードもありますし、副産物を使っていることをきちんと表示しているフードもあります。

その辺りをきちんと見極めて選んでいくのは消費者の仕事。日本であれアメリカであれ、愛犬の為に目を光らせていたいものです。

アメリカンドッグフードの表示規定1

私がdog actuallyに書いたペットフードの原材料の表記に関する記事ではこれが一番古いものです。
このブログの1つ前の記事で「ミールや副産物の内容自体は悪いものではない」と書きました。けれども「ミールや副産物(バイプロダクト)が使われているフードは避けましょう」という声が根強くある理由、メーカーによってはミールや副産物を原材料に使いませんと宣言する理由はこの記事の中にあります。

日本でもアメリカでもペットフードの原材料や品質を語る情報には、不正確で冷静さを欠いたものが多く見られます。確かに私自身も「酷い内容だな」と思うフードはたくさんありますが、正確な情報を基にしなくては正しい判断はできないと思っています。

この記事は長かったので2つに分割しました。

(以下dog actually 2012年4月23日掲載記事より)

(photo by carterse)

愛犬が毎日食べるもの。手作り派、生食派、ドライフード派、缶詰派、色々な選択肢がありますが、意外と知られていないのがドライや缶詰などの市販のフードの原材料の表示の意味。
今回紹介するのはアメリカでのペットフードの表示規定の一部ですが、アメリカからの輸入品のフードを買っている方も多いと思いますし、日本で販売されているペットフードの大多数はアメリカのAAFCOの基準をもとにしていますので、日本の消費者の方にも参考にして頂けると思います。

アメリカで市販されるペットフードについてはFood and Drug Administration(FDA=アメリカ食品医薬品局)とThe Association of American Feed Control Officials(AAFCO=アメリカ飼料検査官協会)の2つの機関で管理されています。
FDAは動物飼料に使用する原材料の法規制や安全性の確保・調査を行い、ペットフードのラベル表示に関しては、どの動物用のフードか・内容量・製造者の名前と所在地・原材料一覧などを表示することや、その方法を規定しています。
AAFCOは動物飼料の栄養基準のガイドラインを提供するための機関で、ラベルの表示に関してはもっと詳細に、原材料名、栄養分析、給餌方法、カロリーなどの記載を規定しています。AAFCOのガイドラインは世界基準になっており、日本のペットフード公正取引協議会の規約もAAFCOのガイドラインを基準にしています。
AAFCOでは原材料名や商品名の定義も定めているので、これを知っているとペットフードのラベルから色んなことを読み取れるようになります。
ではまずAAFCOが規定する"商品名"のルールからお話していきましょうか。

・『95%ルール』

商品名を「Beef Dog Food」「Beef for Dogs」というシンプルな表示にする場合、その製品は原材料のうち少なくとも95%を牛肉が占めなくていけません。
「チキン&レバードッグフード」などのように2つの原材料が商品名に表示される場合は2種類の合計が95%です。この場合、先に書かれているチキンの割合の方が多く含まれると決められています。
95%ルールが適用されるのは動物性の原材料のみで、つまり「ラム&ライスドッグフード」という商品名をつけることはできません。またこの場合のビーフやチキン、ラムというのは動物の筋肉部分の肉を指し、ミールや副産物は含まれません。
このルールが当てはまるのは缶詰、冷凍、フリーズドライのフードがほとんどで、ドライフードでは当てはまるものはありません。当然ながら、かなりの高級フードというわけですね。

・『25%ルール』

これは多くのドライや缶詰フードに当てはまるルールです。「Beef Dinner for Dogs」「Beef Formula for Dogs」のように原材料の後にディナーやフォーミュラという言葉のつく商品名をつける場合、原材料のうち牛肉の占める割合は25%以上95%未満でなくてはいけません。
また「チキン&ライスフォーミュラ」のように2つの原材料が商品名に表示される場合は2種類の合計が25%以上を占めなくてはいけません。
ただし95%ルールと違って、この場合は動物性と植物性の組み合わせもOKです。2種類の原材料のうち1つは少なくとも全体の3%含まれていることが必要です。つまり「チキン&フィッシュフォーミュラ」という商品名であれば、少なくとも原材料全体の3%はフィッシュが使われていなくてはいけないということです。ここでも25%の中にミールや副産物は含まれません。

・『3%ルール』

これはWITHルールとも呼ばれるルールで、非常にトリッキーなので覚えておかれると良いと思います。
「Dog Food With Beef」のように"with"という言葉の後に原材料の名前が来る商品名のフードに含まれるべき牛肉の割合は全体の3%です。
「Beef Dog Food」ならば牛肉の割合は95%以上必要、「Dog Food With Beef」ならば牛肉の割合は3%でOKということです。
また「Beef Formula With Cheese」という商品名のフードがあれば、それは25%以上の牛肉と3%のチーズが含まれるということですね。紛らわしくて混乱してきますが、知っておきたいポイントです。

(次の記事に続きます)

2018/03/11

ドッグフードのお肉の定義

2015年に書いた記事です。

dog actuallyでは基本的に「アメリカの犬事情」が私の守備範囲でしたので、この記事で書いたペットフードの肉の定義もアメリカのことです。

参考までに日本ではミールの定義がアメリカとは違います。
日本の基準では、ミールには肉粉と肉骨粉があります。
肉粉とは精肉として人間の食用部分を切り取った後に残った肉と切り取った脂肪を脱脂した後、挽いて乾燥させたものです。
搾った脂は食用油脂などの製品になります。
肉粉には内臓も含まれます。毛、歯、ひづめは含まれません。
肉骨粉には、肉、脂肪、内臓の他、骨、ひづめ、なども含まれます。
家禽の場合は頭、足、内臓、羽も含まれます。

つまり日本産のフードの原材料で◯◯ミールというと、アメリカ基準の副産物と呼ばれるものも含まれているということです。




(以下 dog actually 2015年7月6日掲載記事より)


(photo by Lernestorod )


愛犬が毎日食べているドッグフード、原材料に様々なお肉が使われていますね。その具体的な定義ってどうなっているんだろうと思われたことはありませんか。
今回ご紹介する表示規定はAssociation of American Feed Control Officials(AAFCO=アメリカ飼料検査官協会)が定めているものですが、日本のペットフード公正取引協議会の基準もAAFCOの栄養基準を採用していますので、皆さんが普段ご愛犬に与えているフードの参考になるかと思います。

ペットショップや専門店で手に入るペットフードのパッケージには大きな塊のお肉や新鮮そうなサーモンの切り身など、人間が食べても美味しそうな食材の写真やイラストが描かれています。パッケージの裏の原材料表を見ると、表に描かれていたイメージとは裏腹に牛肉や鮭といった文字が見当たらない!?なんてこともよくあります。用心深くフードを吟味する飼い主さんならパッケージの表だけでなく、原材料一覧をじっくり読んでフードを選んで来られることもあるでしょう。
実際には、ペットフードにパッケージのようなきれいな切り身部分だけが使用されているということはあまりありません(高級缶フードなどでは塊のお肉がゴロッと入っていることもありますが。)ペットフードに使用されている食肉の具体的な規定は以下のようになっています。

  • 家畜肉(牛肉、豚肉、羊肉、バイソンなど)

屠殺された家畜の筋組織を指す。ただし通常筋肉に付随している脂肪、軟骨、腱、神経、血管及び心臓を含む。骨は含まれない。
フードの製造者は牛肉、豚肉など、何の肉を使っているかを表示することができます。単に「肉」とだけ表示する場合は牛、豚、羊、山羊の4種のみが許されます。その他の肉を使用している場合はバッファローやベニソンなどと個別に明記する必要があります。
ちなみに原材料表の中でよく目にする「ミール(肉粉)」の規定は、加熱加工した(多くは挽いて乾燥させている)動物の組織のことです。血液、毛、ひづめ、角、皮、胃腸とその内容物は含みません。家畜肉の規定とは違って、牛、豚、羊、山羊以外の動物の肉を使用している場合も単に「ミートミール」と表示することができます。
家畜肉にもミールにも含まれない、肺、脾臓、脳、肝臓、血液、骨、胃、腸及びその内容物は食肉副産物(バイプロダクト)と呼ばれます。食肉副産物には毛、角、歯、ひづめは含まれません。家畜肉の場合と同じように、単に食肉副産物と表示できるのは牛、豚、羊、山羊の4種のみで、それ以外の動物を原料にした場合には個別の表示が必要です。

  • 家禽肉(鶏肉、七面鳥、アヒルなど)

骨抜き、または骨付きの家禽の肉と皮を指す。頭、足、内臓は含まない。
チキンミール、ターキーミールなどの家禽ミールは肉、皮、骨を細かく挽いて乾燥加工したものです。羽、頭、足、内臓は含まれません。
家禽肉にもミールにも含まれない、頭、足、内臓、卵管内容物は家禽副産物(バイプロダクト)と呼ばれます。ここには羽は含まれません。

  • 魚肉

魚まるごと全て、またはフィレ部分を切り落とした後の残りの部分を指す。
つまり原材料に鮭、マグロと魚の名が書かれていれば頭も骨も内臓も使われていると考えて差し支えありません。
魚肉を挽いて乾燥加工したものはフィッシュミールと呼ばれます。

多くの場合、ペットフードには肉でも魚でも人間が食べない骨や内臓肉が使用されています。これは栄養的な面ではむしろ優れたことで、決して悪いことではありません。
ただ、フードによってお腹がゆるくなったり便秘気味になったりする場合、「牛肉」と表示されている原料に含まれる腱や靭帯が消化不良の原因になっていたり、ミールに含まれる骨が便を固くする原因になることもあるので、フードに使われる原材料の詳細な意味を知っておくのは大切なことです。

家畜肉のミールの項で、具体的な肉の種類を書かずに「ミートミール」という表示をすることができると書きましたが、メーカーによって「ラムミール」「ダックミール」などと種類を明記している場合も多くあります。
また日本では、原材料に鶏肉、チキンミール、鶏肉副産物のうち2つ又は3つが含まれている場合「鶏肉など」「鶏肉類」という表示をすることができますが、これもメーカーによってきちんと個別に表示している場合も多く見られます。

アレルギーが疑われる食材を避けたい場合や、愛犬が食べているものを把握しておくという意味でも、具体的な表示をしているフードというのは選択の理由のひとつになるかと思います。
フードの原材料一覧、眺めていると自然と眉間にシワが寄ってしまうのですが、大切な愛犬のために知っておきたいものです。
【参考サイト】

そのペットフードのラベル、正しいですか?

2014年にこの記事をアップした時にはFacebookやTwitterなどに「どこのメーカーなのかが分かればいいのに」という声がたくさんアップされていました。
「そりゃそうだよねえ」と思いつつ、研究者としてはメーカー相手にそんなリスクを抱えるわけにはいかないから、これは仕方がない部分ですよね。気になるけど。

(dog actually 2014年10月27日掲載記事より)




(image by OpenClipart-Vectors )

愛犬のために頭を悩ませて選ぶペットフード。私もペットフード売り場で、眉間にシワを寄せてラベルとにらめっこしながら、原材料や添加物を吟味してフードを選ぶ一人ですが、もしもそのラベルに表示されている内容が正しくないとしたら?そんなショッキングな研究論文が発表されました。もちろん全てのペットフードのラベルが信用できないと言うわけではありませんので、心を落ち着けて詳しい続きをご覧ください。


ペットフードのラベルの表示の誤りに関する論文が発表されたのは、食の安全に関する研究を扱う国際的な科学誌「Food Control」。研究リサーチを行ったのはカリフォルニア州オレンジ郡にあるチャップマン大学のフードサイエンス・プログラムです。
研究対象となったのは一般的に販売されている52種類のペットフードです。それぞれのフードからDNAを抽出し、牛、ヤギ、羊、鶏、ガチョウ、七面鳥、豚、馬の肉が含まれるかどうかをテストしました。

結果は52の製品のうち、31のペットフードはラベルに記載されている通りの原材料が使われていました。
20のペットフードにラベル記載に誤りがある可能性があり、そのうちの16のフードにはラベルに記載されていない肉(上記8種の肉のうちのどれか)が含まれていました。

ラベルに記載されていないのに、実際には含まれていた肉の種類で最も多かったのは豚肉でした。
また20のうち3つのフードではラベルに記載されている通りの種類の肉ではあるが、その形態が表示とは違うものが含まれていました。例えばラベルには「鶏肉」とのみ書かれているけれど、実際には「鶏副産物」が含まれていたというようなことです。

そして52のうち残り1つのペットフードには、ラベルに記載されておらず確認のとれない肉が含まれていました。俗に「ミステリーミート」と呼ばれる物です。

52のどの製品にも馬の肉は含まれていませんでした。昨年、ヨーロッパとアメリカのスーパーマーケットやファストフード店で牛ひき肉と称して馬肉が販売されていた件を受けて、これが最も懸念されていたことで、そもそもこのリサーチを行うきっかけでもありました。
(日本では高級食材、健康的な肉として人気の高い馬肉ですが、アメリカでは馬肉を食べる文化がありません。そのため国内には馬の屠殺場も無く、食用に適する肉かどうか検査されずに流通しているというところが問題になります。)

ラベルに記載されている原材料とは違うものが含まれることで、最も危険に晒されるのは食物アレルギーのある動物です。せっかくラベルを確認して避けたはずの食材が含まれていては話になりません。
今回のリサーチを行った研究員は、ラベルの誤表記がたまたま起こった偶発的なものなのか、故意に仕組まれたものなのか、また生産工程のどの時点で起こっているのかは分からないとして、今後さらなる研究リサーチが必要であるとしています。
「ペットフードの製造や原材料表示については、連邦レベルと州レベルの両方で規制が有り基準が定められてはいます。しかし食材の調達が国をまたいで行われグローバル化の進んだ現代においては、食品偽装や誤表記が発生する可能性はますます膨れ上がっていると言えるでしょう。」というのは、論文の共著者のひとりロザリー・ヘルバーグ博士の言葉です。


さて、上に示した画像は我が家に買い置きしてあるウェットフードのラベル表記です。英語の細かい文字がビッシリ詰まっていて恐縮なのですが、見て頂くと良い内容の原材料だとお分かり頂けるかと思います。

でもこれが信用できないとしたら?私はこのフードの原材料を疑ってかかるべきでしょうか?私は今のところ、このメーカーのフードを信用して購入し続けるつもりです。元々あれこれと調べたり、実際に購入して吟味して辿り着いたメーカーなので、ここはもう腹を決めて信頼するしかないと思っています。

こんな記事を書くと、今お手元にあるフードが不安になる方もいらっしゃるかもしれません。しかし今現在ご愛犬が元気でいるならそれで良しとして、飼い主がドーンと構えていることも大切ではないかと思います。
その上で、情報としてペットフードの中にはラベルに表記されているのとは違う原材料が使われているものもあるという可能性を知っておき、「ここならば」と信頼できる製造メーカーや販売店を選んでおく。
愛犬の毎日の食餌、安心して自信を持って与えられるようにしておきたいですね。


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