2020/08/26

35犬種の避妊去勢手術ガイドライン4 犬種別G〜M

 UCデイビス校獣医学部が発表した犬種別の避妊去勢時期のガイドラインにおいて、リストアップされた35犬種のアルファベットG〜Mで始まる犬種の具体的な数字です
このガイドラインについては、いくつかに分けてブログをアップしていますが今回のG〜M にはこの研究の元祖となった避妊去勢の影響が顕著に現れる人気犬種ジャーマンシェパードやゴールデンレトリーバー が含まれています。
人気犬種であるためにいい加減な繁殖が蔓延していることも影響しているかもしれないですね。

統計の中でのガンは血管肉腫、肥満細胞腫、骨肉腫、リンパ腫のどれかを指します。
また関節障害は股関節形成不全、前十字靭帯断裂、肘関節形成不全のどれかです。

上記のガンと関節障害の他に、乳腺腫瘍(2歳以前の避妊手術で予防効果が高いと言われる)、子宮蓄膿症(避妊手術で完全に予防できる)、尿失禁(避妊手術後に発症する場合がある)についても触れられています。ただしこれらの疾患は10歳以降に顕著に増加するのですが、このデータでは10歳以上の犬がほとんど含まれていないため、データとして限界があると研究者自身が述べています。

また各ガイドライン内で挙げられている疾患の発病率は、この研究対象集団(カリフォルニア大学デイビス校大学病院で診断された犬たち)の中での比率で、犬種全体の疾患の発病率ではないことにご注意ください。


ジャーマンシェパード

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ジャーマンシェパードは関節の疾患の多い犬種として知られていますが関連する遺伝子の研究も進んで来ています。
極端に傾斜した背中のラインを作り出す選択繁殖も、欧州では止めようという働きかけが始まっていますので、GSの未来に期待したいと思います。

研究対象となったのは1,257頭で、内訳は未去勢のオス514頭、去勢済みオス272頭、未避妊のメス173頭、避妊済みメス298頭

  • 未去勢のオスの関節障害発病率は6%、未避妊のメスでは5%
  • オスの関節障害は6ヶ月齢未満去勢で19%、6ヶ月〜1歳未満で18%、1〜2歳未満では9%に増加。メス6ヶ月齢未満避妊手術では20%、6ヶ月〜1歳未満で15%に増加
  • オスメス共に、避妊去勢手術はガンのリスク増加とは関連していなかった
  • 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病率は5%で、2〜8歳の避妊手術では6%
  • 未避妊のメスの子宮蓄膿症は3%、尿失禁は6ヶ月未満で避妊手術したメスの9%
  • 推奨されるガイドラインは、オスの去勢は関節障害を考慮して2歳以降、メスは関節障害と尿失禁を考慮して2歳以降とする


ゴールデンレトリーバー 

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世界中で愛される超人気犬種ですが、様々な種類のガンの発症率の高さでよく知られています。
GRのガンに特化した研究も多く行われているので、いつの日かこの悲しい特徴が無くなって欲しいものです。

研究対象となったのは1,247頭、未去勢のオス318頭、去勢済みオス365頭、未避妊メス190頭、避妊済みメス374頭

  • 未去勢のオスの関節障害発病率は5%、未避妊のメスでは4%
  • オスの関節障害は6ヶ月齢未満の去勢では25%、6ヶ月〜1歳未満では11%と有意に増加。メスでは6ヶ月齢未満では18%、6ヶ月〜1歳未満では11%と増加した
  • ガンについてはオスは未去勢でも発病率が15%と高く、6ヶ月齢未満の去勢では19%、6ヶ月〜1歳未満では16%とやや増加した
  • 未避妊のメスのガンの発生率は5%だが、避妊手術時6ヶ月齢未満では11%、6ヶ月〜1歳未満では17%、1歳で14%、2〜8歳では14%と避妊手術の時期がいつであっても有意に増加していた
  • 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病率は1%、2〜8歳で手術した場合は4%
  • 未避妊のメスの子宮蓄膿症発病率は4%、尿失禁は報告されていない
  • 推奨されるガイドラインは、オスでは関節障害やガンのリスク増加に基づいて去勢手術は1歳以降、メスの場合は全ての避妊年齢でのガンリスク増加に基づいて避妊手術をしない、または1歳で手術してガンに対する警戒を続けることを推奨


    グレートデーン

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    関節疾患のリスクが高いと思われる超大型犬種ですが、ちょっと意外な結果が出ています。

    研究対象となったのは353頭、未去勢のオス90頭、去勢済みオス103頭、未避妊メス69頭、避妊済みメス91頭

    • 関節障害は未去勢オスで1%、未避妊メスで2%と低く、避妊去勢手術とリスク増加の関連も見られなかった
    • 未去勢オスのガンの発病率は6%、未避妊メスでは3%。どちらも避妊去勢手術とリスク増加の関連は見られなかった
    • 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病率は2%で、子宮蓄膿症は6%で診断された。尿失禁は報告されていない
    • 推奨されるガイドラインは、避妊去勢とガンや関節障害との関連は見られないが、体のサイズが大きいため筋骨格系の発達が遅いという生理学を考慮すると、避妊去勢手術は1歳以降が望ましい

    アイリッシュウルフハウンド

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    グレートデーンと並ぶ超大型犬種の代表。
    アメリカでは飼育数が少なく、サンプル数がかなり少ないのですが、超大型犬種の分析のために選ばれました。

    研究対象となったのは86頭で、未去勢オス30頭、去勢済みオス19頭、未避妊メス21頭、避妊済みメス16頭
    • 関節障害は未去勢オスで7%、未避妊メスでは0、避妊去勢手術済みの個体では関節障害は見られなかった
    • 未去勢オスのガンの発病率は8%、未避妊のメスでは21%と高い数字が見られた。1歳時に去勢したオスではガンの発病率は25%に増加、避妊済みメスではガンの増加は見られなかった
    • 乳腺腫瘍の発生は0で、子宮蓄膿症は5%で診断された。尿失禁は報告されていない
    • 推奨されるガイドラインは、オスの去勢手術ではガンの発生を考慮して2歳以降を、メスではガンや関節障害との関連は見られないが、体のサイズが大きいため筋骨格系の発達が遅いという生理学を考慮すると、避妊手術は1歳以降が望ましい


    ジャックラッセルテリア

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    研究対象となったのは全部で376頭。内訳は未去勢オス92糖、去勢済みオス87頭、未避妊メス84頭、避妊済みメス113頭。

    • 関節障害は未去勢オスでは0、未避妊メスで2%と低く、避妊去勢手術との関連も見られなかった
    • ガン発病も未去勢オスで3%、未避妊メスでは0で、手術との関連は見られなかった
    • 未避妊メスでは乳腺腫瘍と子宮蓄膿症の発病率はそれぞれ1%。2〜8歳の避妊手術では乳腺腫瘍が3%で診断された。尿失禁は診断されなかった
    • 推奨ガイドラインは、オスメス共に避妊去勢手術と関節障害やガンとの関連は見られないため、避妊去勢手術を受ける場合は獣医師と相談の上で適切な時期を決定すること

    ラブラドールレトリーバー

    Image by DesignerColeman from Pixabay 

    ゴールデンレトリーバー と並ぶ超人気犬種ですが、ラブラドールも関節障害が宿命のように思われている節があります。しかしイギリスでは関節障害を持つ犬のスクリーニングをしっかりと行い繁殖の管理に適用した結果、関節障害を持つ犬の数が減少しているというリサーチ結果が報告されています。股関節形成不全などの関節障害は決して避けられない運命ではないことが明らかになって来ています。

    研究対象となったのは1,933頭、内訳は未去勢オス714頭、去勢済みオス381頭、未避妊メス400頭、避妊済みメス438頭

    • 未去勢のオス、未避妊のメス共に関節障害があったのは6%。6ヶ月齢未満で去勢したオスでは13%に増加し、6ヶ月未満で避妊手術をしたメスでは11%、6ヶ月〜1歳未満では12%に増加した。
    • 未去勢のオスのガンの発病率は8%、未避妊のメスでは6%で、避妊去勢手術はリスク増加に関連していなかった
    • 未避妊のメスの乳腺腫瘍の発病率は1%、2〜8歳で手術した場合は2%だった
    • 未避妊メスの子宮蓄膿症は2%、尿失禁は避妊済みメスの2〜3%で報告された
    • 推奨ガイドラインは、関節障害の増加を考慮してオスの去勢は6ヶ月齢以降、メスの避妊手術は1歳以降とする


    マルチーズ

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    研究対象となったのは272頭、内訳は未去勢オス49頭、去勢済みオス72頭、未避妊メス65頭、避妊済みメス86頭。

    • 避妊去勢の状態に関わらず、関節障害の発生は0だった
    • ガンも未避妊のメスで1例のみで、他では報告がなかった
    • 乳腺腫瘍は2〜8歳で避妊手術を受けたうちの1匹のみ、子宮蓄膿症、尿失禁は発生しなかった
    • 推奨ガイドラインは、避妊去勢をする場合は獣医師と相談して適切な時期を決定する


    ミニチュアシュナウザー
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    研究対象となったのは231頭、内訳は未去勢オス47頭、去勢済みオス63頭、未避妊メス25頭、避妊済みメス96頭。


    • 避妊去勢の状態に関わらず、関節障害の発生は0だった
    • ガンの発病率は未去勢オスで4%、未避妊のメスでは0。避妊去勢手術によるリスク増加は見られなかった
    • 乳腺腫瘍の発病は0、子宮蓄膿症は4%、尿失禁は発生しなかった
    • 推奨ガイドラインは、避妊去勢をする場合は獣医師と相談して適切な時期を決定する


    《参考URL》
    Assisting Decision-Making of Age of Neutering for 35 Breeds of Dogs:Associated Joint Disorders, Cancers, and Urinary Incontinence.
    https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2020.00388/full


    2020/08/19

    35犬種の避妊去勢手術ガイドライン3 犬種別C〜E



    UCデイビス校獣医学部が発表した犬種別の避妊去勢時期のガイドラインにおいて、リストアップされた35犬種のアルファベットCEで始まる犬種の具体的な数字です

    繰り返しになりますが、ここで言うガンは血管肉腫、肥満細胞腫、骨肉腫、リンパ腫のどれかを指します。
    また関節障害は股関節形成不全、前十字靭帯断裂、肘関節形成不全のどれかです。

    上記のガンと関節障害の他に、乳腺腫瘍(2歳以前の避妊手術で予防効果が高いと言われる)、子宮蓄膿症(避妊手術で完全に予防できる)、尿失禁(避妊手術後に発症する場合がある)についても触れられています。ただしこれらの疾患は10歳以降に顕著に増加するのですが、このデータでは10歳以上の犬がほとんど含まれていないため、データとして限界があると研究者自身が述べています。

    また各ガイドライン内で挙げられている疾患の発病率は、この研究対象集団(カリフォルニア大学デイビス校大学病院で診断された犬たち)の中での比率で、犬種全体の疾患の発病率ではないことにご注意ください。

    キャバリアキングチャールズスパニエル

    Image by Alexas_Fotos from Pixabay


    研究対象となったのは286頭、内訳は未去勢のオス51頭、去勢済みのオス72頭、未避妊のメス87頭、避妊済みのメス76頭
    • オス、メス共に避妊去勢手術は関節障害の増加と関連していなかっ
    • オス、メス共に避妊去勢手術はガンの増加と関連していなかっ
    • 未避妊のメスで乳腺腫瘍を発病した個体はいなかっ
    • 未避妊のメスで子宮蓄膿症の発病率は2
    • 避妊手術後の尿失禁の発生は見られなかっ
    • この犬種では避妊去勢手術と関節障害およびガンとの関連が見られないため、手術を受ける場合は獣医師と相談して個別に時期を決定することを推


    チワワ


    Image by a-mblomma from Pixabay 


    研究対象となったのは1,037頭、内訳は未去勢のオス261頭去勢済みのオス189頭、未避妊のメス298頭、避妊済みのメス289頭


    • オス、メス共に避妊去勢手術の有無に関わらず関節障害の顕著な発病はなかった
    • オス、メス共に避妊去勢手術の有無に関わらずガンの発病率は5%未満だった
    • 未避妊のメスで乳腺腫瘍を発病したのは1%、2〜8歳の間に避妊手術をした場合では4%
    • 未避妊のメスで子宮蓄膿症の発病率は2
    • 避妊手術後の尿失禁の発生は見られなかっ
    • この犬種では避妊去勢手術と関節障害およびガンとの関連が見られないため、手術を受ける場合は獣医師と相談して個別に時期を決定することを推


    コッカースパニエル


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    研究対象となったのは371頭、内訳は未去勢のオス71頭、去勢済みのオス112頭、未避妊のメス61頭、避妊済みのメス127頭
    • オス、メス共に避妊去勢未処置の場合、関節障害の発病は13%。6ヶ月齢未満で去勢手術をしたオスでは関節障害の発病が11%と有意に増加し
    • メスでは避妊手術と関節障害の関連は見られなかっ
    • オスでは去勢手術とガンの増加に関連は見られなかっ
    • 未避妊のメスではガンの発病は見られなかったが、2歳未満で避妊手術をした場合、肥満細胞腫の発病率が17%と大幅に増加し
    • 未避妊のメスの乳腺腫瘍の発病率は11%、子宮蓄膿症は5
    • 避妊手術後の尿失禁の発生は見られなかっ
    • 推奨されるガイドラインは、オスの去勢手術は生後6ヶ月以降、メスの避妊手術は2歳以降。(未避妊の場合の乳腺腫瘍の発病率の高さにも注意


    コリー

    Image by No-longer-here from Pixabay 


    オリジナルの論文に、単にCollieとしか書かれていないのでラフコリーのことであろうと推測します。この辺り、ちょっと大雑把ですね。前回書いたブルドッグもイングリッシュブルドッグだろうと推測しますが、ちょっと引っかかりますね。

    研究対象となったのは116頭、内訳は未去勢のオス29頭、去勢済みのオス26頭、未避妊のメス24頭、避妊済みのメス37頭。サンプルサイズはかなり小さいです
    • 未去勢のオスの関節障害の発病率は7%だが、オスメス共に避妊去勢は関節障害の増加には関連していな
    • 未去勢のオスのガンの発病率は11%だが、去勢はガンの増加には関連していな
    • 未避妊のメスではガンの発病は見られなかったが、6ヶ月未満で避妊手術をした場合、40%に増加し
    • 未避妊のメスの乳腺腫瘍の発病率は4%、子宮蓄膿症の発病率は16
    • 1歳未満で避妊手術を受けたメスの13%に尿失禁が見られ
    • 推奨されるガイドラインは、オスの場合は獣医師と相談の上個別に決定、メスの避妊手術はガンと尿失禁を考慮して1歳以降とす


    コーギー(ペンブローク、カーディガン)


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    ペンブロークとカーディガンという2つの違う犬種ですが、その違いはわずかなサイズの差だけなので、統計分析のため2犬種を合わせたデータが表示されています。
    研究対象となったのは240頭、内訳は未去勢のオス42頭、去勢済みのオス78頭、未避妊のメス50頭、避妊済みのメス70頭

    • 未去勢のオスの関節障害の発病率は5%、未避妊のメスでは6%だが、オスメス共に避妊去勢は関節障害の有意な増加には関連していない
    • コーギーは椎間板障害が懸念される犬種のひとつで、未去勢のオスの椎間板障害の発病率は3%、未避妊のメスでは8%
    • 6ヶ月齢以前に去勢手術を受けたオスでは、椎間板障害の発生率は18%に増加した。メスの避妊手術は椎間板障害の増加に関連が見られなかった
    • 未去勢のオスのガン発病率は5%、未避妊のメスでは6%
    • 未避妊のメスの乳腺腫瘍の発病率は8%、子宮蓄膿症は0、避妊手術後の尿失禁の発生は0
    • 推奨されるガイドラインは、オスの去勢手術は椎間板障害との関連から6ヶ月齢以降、メスの場合は獣医師と相談の上で個別に時期を決定する


    ダックスフンド

    Image by ArtTower from Pixabay  


    アメリカでの研究なので、このダックスフンドはアメリカで主流のスタンダードダックスフンドだと推測します
    研究対象となったのは658頭、内訳は未去勢のオス177頭、去勢済みのオス170頭、未避妊のメス99頭、避妊済みのメス212頭
    • 避妊去勢処置の有無に関わらず、オスメスともに関節障害は見られなかっ
    • ダックスフンドも椎間板障害が懸念される犬種のひとつで、このサンプルでは未去勢のオスの53%、未避妊のメスの38%が椎間板障害と診断された。避妊去勢手術による増加は見られなかっ
    • 避妊去勢未処置の場合オスメス共にガン発病率は1%未満。避妊去勢によるガンのリスク上昇は見られなかっ
    • 未避妊のメスの乳腺腫瘍の発病率は1%、子宮蓄膿症の発病率は4%、避妊手術後の尿失禁の発生は0
    • この犬種では避妊去勢手術と関節障害およびガンとの関連が見られないため、手術を受ける場合は獣医師と相談して個別に時期を決定することを推


      ドーベルマンピンシャー

    Image by Jens Lanckman from Pixabay 


    研究対象となったのは358頭、内訳は未去勢のオス109頭、去勢済みのオス91頭、未避妊のメス53頭、避妊済みのメス108頭
    • 未去勢のオスの関節障害の発病率は2%、未避妊のメスでは見られなかっ
    • 去勢手術後のオスでは関節障害の明らかな増加はなかったが、1歳未満で避妊手術をしたメスでは「有意に増えた」と言うレベルには達していないが11%に増加した
    • 未去勢のオスのガンの発病率は2%、1歳時に去勢手術をした場合には6%に、2〜8歳の間に手術をした場合には13%と有意な増加を示した
    • 未避妊のメスのガンの発病率は2%で、避妊手術によるガンの増加は見られなかった
    • 未避妊のメスの乳腺腫瘍の発病率は2%、28歳での避妊手術では4
    • 未避妊のメスの子宮蓄膿症の発病率は7%
    • 尿失禁は6ヶ月齢未満での避妊手術では25%に、1〜2歳の間の手術では19%に見られた
    • 推奨されるガイドラインは、オスの場合はやや変則的で1歳までに去勢手術をするか、または全く手術をしないかを推奨。メスの避妊手術は尿失禁を考慮して2歳以降を推


    イングリッシュスプリンガースパニエル

    Image by onthegoTam from Pixabay


    研究対象となったのは212頭、内訳は未去勢のオス52頭、去勢済みのオス57頭、未避妊のメス37頭、避妊済みのメス66頭
    • 未去勢のオスの関節障害の発病率は5%、未避妊のメス8%で、避妊去勢手術によるリスクの増加は見られなかっ
    • オスメスともに避妊去勢していない場合のガンの発病率は6%で、避妊手術によるリスクの増加は見られなかっ
    • 未避妊のメスの乳腺腫瘍の発生率は6%、28歳で避妊手術をした場合は15
    • 未避妊のメスで子宮蓄膿症と診断された個体は0
    • 1歳未満で避妊手術をした場合尿失禁の発生率は13、サンプルサイズがもっと大きくなるとさらに顕著になる可能性があ
    • 推奨されるガイドラインは、オスの去勢手術は獣医師と相談して個別に時期を決定することを推奨、メスの避妊手術は尿失禁を考慮して1歳以降を推



    《参考URL》
    Assisting Decision-Making of Age of Neutering for 35 Breeds of Dogs:Associated Joint Disorders, Cancers, and Urinary Incontinence.
    https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2020.00388/full

    2020/08/04

    35犬種の避妊去勢手術ガイドライン2 犬種別A〜B


    まずはアルファベット順にA〜Bで始まる犬種について具体的な数字をご紹介していきます。ここで言うガンは血管肉腫、肥満細胞種、骨肉腫、リンパ腫のどれかを指します。また関節障害は股関節形成不全、前十字靭帯断裂、肘関節形成不全のどれかです。

    上記のガンと関節障害の他に、乳腺腫瘍(2歳以前の避妊手術で予防効果が高いと言われる)、子宮蓄膿症(避妊手術で完全に予防できる)、尿失禁(避妊手術後に発症する場合がある)についても触れられています。ただしこれらの疾患は10歳以降に顕著に増加するのですが、このデータでは10歳以上の犬がほとんど含まれていないため、データとして限界があると研究者自身が述べています。

    また各ガイドライン内で挙げられている疾患の発病率は、この研究対象集団(カリフォルニア大学デイビス校大学病院で診断された犬たち)の中での比率で、犬種全体の疾患の発病率ではないことにご注意ください。


    オーストラリアンキャトルドッグ

    Image by marion802105 from Pixabay  



    研究対象となったのは1,037頭、内訳は未去勢のオス261頭、去勢済みのオス189頭、未避妊のメス298頭、避妊済みのメス289頭
    • オス、メス共に避妊去勢手術の有無に関わらず関節障害の顕著な発病はなかっ
    • オス、メス共に避妊去勢手術の有無に関わらずガンの発病率は5%未満だっ
    • 未避妊のメスで乳腺腫瘍を発病したのは1%、28歳の間に避妊手術をした場合では4%(原文では28ヶ月となっているのですがタイポと思われます
    • 未避妊のメスで子宮蓄膿症の発病率は2
    • 避妊手術後の尿失禁の発生は見られなかっ
    • この犬種では避妊去勢手術と関節障害およびガンとの関連が見られないため、手術を受ける場合は獣医師と相談して個別に時期を決定することを推


    オーストラリアンシェパード



    研究対象となったのは440頭、内訳は未去勢のオス93頭、去勢済みのオス135頭、未避妊のメス76頭、避妊済みのメス136頭

    • オス、メス共に避妊去勢手術は関節障害のリスクの明らかな増加には関連していなかった
    • 未去勢のオスではガンの発病率が9%、未避妊のメスではガンの発病率は1%とかなりの差があった
    • オスが去勢手術をした場合にもガンの発病率の増加は見られなかった
    • 未避妊のメスでの乳腺腫瘍の発病はゼロだったが、28歳での避妊手術では8
    • 未避妊のメスで子宮蓄膿症の発病率は5
    • 尿失禁の発生は早期(おそらく6ヶ月齢以前)に避妊した場合で1
    • 推奨されるガイドラインは、オス犬では去勢手術によるリスクの増加が見られなかったので獣医師と相談の上個別に決定。メス犬では6ヶ月齢以降の避妊手術を推奨。(乳腺腫瘍の数字を見ると6ヶ月以降2歳未満が良いのでは?と思われますが)

      ビーグル

    Image by brezenlady from Pixabay 



    研究対象は256頭、内訳は未去勢のオス42頭、去勢済みオス82頭、未避妊のメス45頭、避妊済みメス87頭
    • 未去勢のオスの関節障害発病の割合が2%に対し、1歳未満での去勢手術を受けたオスでは15%に増加している
    • メスでは避妊処置の有無にかかわらず関節障害は発病していなかった
    • オスメス共に避妊去勢済みでガン発病の増加は見られなかった
    • 避妊済み未避妊共に乳腺腫瘍の発病は見られなかった
    • 未避妊のメスで2例の子宮内膜症があった。
    • 尿失禁の発生は早期(おそらく6ヶ月例以前)に避妊した場合で2
    • 推奨されるガイドラインは、オス犬の去勢手術は1歳以降。メス犬ではリスクの増加は見られなかったので獣医師と相談の上個別に決定


    バーニーズマウンテンドッグ

    Image by u_wggibce2 from Pixabay 



    研究対象は235頭、内訳は未去勢のオス59頭、去勢済みオス74頭、未避妊のメス37頭、避妊済みメス65頭

    • 未去勢のオスの関節障害発病の割合が4%に対し、2歳未満での去勢手術を受けたオスでは24%に増加している
    • メスの関節障害では6ヶ月齢以前に避妊手術をした場合は未避妊に比べて3倍超増加している
    • オスメス共に避妊去勢無しのガン発病率は9%、去勢済みのオスではガンの増加は見られなかったが、メスでは6ヶ月齢以前の避妊手術で2倍に増加している
    • 避妊済み、未避妊共に乳腺腫瘍の発病は見られなかった
    • 未避妊のメスで5%に子宮内膜症があった。
    • 尿失禁の発生は見られなかった
    • 推奨されるガイドラインは、オス犬の去勢手術は2歳以降、メス犬では関節障害、ガン共に増加は著しくはないので獣医師と相談の上個別に決定(「著しくはない」というのは、それぞれ3倍と2倍になっているが件数自体が少ないという意味。でも6ヶ月齢以降が無難な気がしますよね)



    ボーダーコリー 

    Image by Katrin B. from Pixabay 


    研究対象は399頭、内訳は未去勢のオス105頭、去勢済みオス85頭、未避妊のメス88頭、避妊済みメス121頭
    • オスメス共に避妊去勢手術の有無は関節障害の明らかな増加に関連していない
    • 未去勢のオスのガンの発病率2%に対し、1歳未満での去勢手術では13%に増加している
    • 未避妊のメスではガンの発病が見られなかったのに対し、1歳未満の避妊手術では11%に増加している
    • 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病は1
    • 未避妊のメスの子宮内膜症発病は4
    • 避妊済みメスの尿失禁の発生は1例のみ
    • 推奨されるガイドラインは、オスメス共に避妊去勢手術は1歳以降


    ボストンテリア

    Image by Samantha Scott from Pixabay 



    研究対象は292頭、内訳は未去勢のオス75頭、去勢済みオス67頭、未避妊のメス54頭、避妊済みメス96頭
    • オスメス共に避妊去勢手術の有無にかかわらず関節障害を発病した犬は0
    • 未去勢のオスのガンの発病率5%に対し、1歳未満での去勢手術では12%に増加している
    • メスの場合、避妊手術によるガン発病リスクの増加は見られなかった
    • 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病は2
    • 未避妊のメスの子宮内膜症発病は7
    • 避妊済みメスの尿失禁の発生は2
    • 推奨されるガイドラインは、オス犬の去勢手術は1歳以降、メス犬では関節障害、ガン共に増加は見られないので獣医師と相談の上個別に決定


    ボクサー

    Image by Alexas_Fotos from Pixabay 


    研究対象は761頭、内訳は未去勢のオス220頭、去勢済みオス203頭、未避妊のメス128頭、避妊済みメス210頭
    • オスメス共に避妊去勢手術による関節障害の増加は見られない
    • 未去勢のオスのガンの発病率17%に対し、2歳未満での去勢手術では32%に増加している
    • 未避妊のメスのガンの発病率11%に対し、2歳未満での避妊手術では20%に増加している
    • 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病は見られなかった
    • 未避妊のメスの子宮内膜症発病は2
    • 避妊済みメスの尿失禁の発生は1
    • 推奨されるガイドラインは、オスメス共に避妊去勢手術は2歳以降


    ブルドッグ

    Image by Sven Lachmann from Pixabay 


    研究対象は558頭、内訳は未去勢のオス198頭、去勢済みオス156頭、未避妊のメス90頭、避妊済みメス114頭
    • 未去勢のオスの関節障害発病率は7%、未避妊のメスでは5
    • 関節障害は、6ヶ月齢未満での去勢手術でオス15%、同じく6ヶ月齢未満での避妊手術でメス18%(ただし件数自体が少ないため有意性は認められていない)
    • 避妊去勢をしていない場合、オスメスどちらもガンの発病率は67%で、手術をしても有意な増加は見られなかった
    • 未避妊のメスのガンの発病率11%に対し、2歳未満での避妊手術では20%に増加している
    • 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病率は12
    • 未避妊のメスの子宮内膜症発病は2
    • 避妊済みメスの尿失禁は見られなかった
    • 推奨されるガイドラインは、オスメス共に避妊去勢手術の時期は獣医師と相談の上で個別に決定。関節障害について慎重になるなら6ヶ月齢以降。


    頭文字C以降の犬種はまた順次アップしていきます。




    《参考URL》
    Assisting Decision-Making of Age of Neutering for 35 Breeds of Dogs:Associated Joint Disorders, Cancers, and Urinary Incontinence.
    https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2020.00388/full

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