2018年現在、日本では前代未聞の規模のレスキューホーディングが起こっています。
この記事に書いたアメリカの事例と違って、日本の場合は保護団体が破綻したら、その受け皿は別の保護団体しかないというところが頭の痛いところです。本来ならば、行政が公衆衛生の問題として部門を作るべきところが欠落しています。
ですから、日本の大規模レスキューホーダーには単純に「寄付しない」というマイナスの運動だけでなく、行政への働きかけがまずは先決かと思います。議員諸氏への直メールなどの継続、同志への呼びかけなどが団体への非難よりも優先事項。
(以下dog actually 2015年7月21日掲載記事より)
このdog actuallyでも過去に何度かアニマル・ホーダー(病的に過剰な数の動物を収集する人)の記事がアップされて来ました。アニマル・ホーダーにもいくつかのタイプがありますが、今日はその中でも特に規模が大きくなりがちなレスキューホーダーというタイプのお話をしたいと思います。
大規模レスキューホーダー2例
2015年5月コロラド州で、チワワの保護団体代表を名乗っていた女性が動物虐待の容疑で逮捕されました。女性はロサンゼルスでチワワの保護団体を運営しており、常に200匹以上の犬を抱えていました。当然ながら犬達の世話は行き届かず、不衛生な環境で痩せ衰えた犬達を見かねた人から通報や苦情が多く寄せられていました。
地元のアニマルコントロールやSPCA(動物虐待防止協会)などが犬を引き取り、本人は罰金や飼育禁止命令で処分されるということを何度か繰り返した後コロラド州に移住し、ここでも57匹のチワワを"保護"していた時についに逮捕となりました。この女性の裁判が今月に行われるため、このところニュースや雑誌で目にする機会が増えておりました。
また先月6月にはアラバマ州の私営アニマルシェルターにおいて、許可されている飼育数の3倍に当たる300匹近くの犬が深刻な飼育放棄の状態で発見されました。
シェルターにボランティアとして来ていた人が酷い惨状に耐えかねて警察に通報したことがきっかけで警察とASPCA(アメリカ動物虐待防止協会)が立ち入り犬達は保護されました。
このアニマルシェルターのオーナーの女性は「私が保護しなければ、この犬達は路上で命を落とすか、公営シェルターで殺処分になっていた。警察への通報は陰謀だ。」と主張していましたが、調査の結果7月16日に動物虐待の容疑で逮捕となりました。
シェルターにボランティアとして来ていた人が酷い惨状に耐えかねて警察に通報したことがきっかけで警察とASPCA(アメリカ動物虐待防止協会)が立ち入り犬達は保護されました。
このアニマルシェルターのオーナーの女性は「私が保護しなければ、この犬達は路上で命を落とすか、公営シェルターで殺処分になっていた。警察への通報は陰謀だ。」と主張していましたが、調査の結果7月16日に動物虐待の容疑で逮捕となりました。
大手ペット用品店が運営する動物保護基金PetSmart Charitiesはアメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)とアメリカ動物保護協会(HSUS)の動物虐待調査部門の責任者にレスキューホーダーについてのインタビューを行ったことがあります。それによると、このようなレスキュー・ホーダーは増加の傾向にあり、ホーディングによって崩壊する保護団体も少なくないとのことです。
レスキュー・ホーダーに陥りがちな団体や人の傾向としては、以下のようなものがあると両団体の担当者は語ります。
自分の能力の限界を認識していない。
経済的資源、人的資源、施設の大きさ、精神的なキャパシティ、引き受ける動物の数がこれらの限界に達した時にはどんなに辛くてもNOと言うことができなくては、結局関わった全ての人も動物も不幸にするという結果になってしまいます。
レスキュー・ホーダーになってしまう団体や人はこの限界の見極めが甘い、または全く見極めができないために上にあげた2例のような状態が起こります。
レスキュー・ホーダーになってしまう団体や人はこの限界の見極めが甘い、または全く見極めができないために上にあげた2例のような状態が起こります。
恐怖感、不信感が非常に強い。
「里親希望者が来たけれど、この家に行くと犬が不幸になるんじゃないか。」
「自分が引き取らなくては、この犬は殺処分になってしまう。」というような恐怖を必要以上に強く感じており、里親希望者や他の保護団体を信頼することができない。
目の前の動物を救うことができるのは自分しかいないという思い込みが非常に強く、動物を家庭に送り出すことも他の団体に助けを求めることも良しとしない。その結果、動物は次々に入ってくるが出て行くことがないのでパンク状態となってしまいます。
「自分が引き取らなくては、この犬は殺処分になってしまう。」というような恐怖を必要以上に強く感じており、里親希望者や他の保護団体を信頼することができない。
目の前の動物を救うことができるのは自分しかいないという思い込みが非常に強く、動物を家庭に送り出すことも他の団体に助けを求めることも良しとしない。その結果、動物は次々に入ってくるが出て行くことがないのでパンク状態となってしまいます。
これらの傾向を見ていると、以前に紹介したマサチューセッツ州の保護団体Northeast Animal Shelterの代表シャパイロ氏の言葉が改めて頭に浮かびます。
シャパイロ氏の言う通り、たとえ小規模であっても団体やグループの運営には適性や能力が必要です。これらが欠けた時、最も被害を受けるのは皮肉なことに彼らが助けたいと思っていた動物達という結果になります。
またアメリカ屈指の団体のひとつBest Friends Animal Societyは、ひとつの団体にかかる負担を分散するために大小様々なレスキューグループや個人活動家をネットワーク化して、相互の情報や人的資源を共有するノウハウを作り上げています。
自分の手に負えないことは周囲に助けを求めてみる。そのためには互いに助け合いやすい環境を整備しておくことが何よりも大切です。これは日本においても保護活動の今後の大きな課題のひとつでもあると思います。
自分の手に負えないことは周囲に助けを求めてみる。そのためには互いに助け合いやすい環境を整備しておくことが何よりも大切です。これは日本においても保護活動の今後の大きな課題のひとつでもあると思います。
一般的にホーディングというのは精神疾患が根底にあると考えられていますが、レスキュー・ホーダーの場合も当初は動物達を助けたいと本当に思っていたものの、コントロールし切れない状況で精神的に押し潰され、正常な判断ができなくなってしまうのかもしれません。それ故に早い段階で助けを求められることが重要です。
一般の人の側の問題では、レスキューホーダーという存在を知らないと「自分を犠牲にしてまでたくさんの動物を救おうとする素晴らしい団体(人)」という印象を持ち、寄付などの支援を行うこともよくあります。ホーダーに援助をすることは、依存症に対してのイネイブラー(意識せずに依存症を助長してしまう支援者の意)となってしまうことを意味します。善意のつもりで行った支援がさらに動物たちを苦しめることになるので、大きな注意が必要です。
動物保護団体に支援をする時には、
・実際に動物達がどのように扱われているのか(出来れば自分の目で確かめる)
・動物の出入りの数がきちんと公表されているか、
・収支報告がきちんと公表されているか
などをチェックすることが大切です。
あまり楽しい話題ではありませんでしたが、まずは多くの人が知っておくことが第一歩です。
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