UCデイビス校獣医学部が発表した犬種別の避妊去勢時期のガイドラインにおいて、リストアップされた35犬種のアルファベットC〜Eで始まる犬種の具体的な数字です。
繰り返しになりますが、ここで言うガンは血管肉腫、肥満細胞腫、骨肉腫、リンパ腫のどれかを指します。
また関節障害は股関節形成不全、前十字靭帯断裂、肘関節形成不全のどれかです。
また各ガイドライン内で挙げられている疾患の発病率は、この研究対象集団(カリフォルニア大学デイビス校大学病院で診断された犬たち)の中での比率で、犬種全体の疾患の発病率ではないことにご注意ください。
キャバリアキングチャールズスパニエル
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研究対象となったのは286頭、内訳は未去勢のオス51頭、去勢済みのオス72頭、未避妊のメス87頭、避妊済みのメス76頭
- オス、メス共に避妊去勢手術は関節障害の増加と関連していなかった
- オス、メス共に避妊去勢手術はガンの増加と関連していなかった
- 未避妊のメスで乳腺腫瘍を発病した個体はいなかった
- 未避妊のメスで子宮蓄膿症の発病率は2%
- 避妊手術後の尿失禁の発生は見られなかった
- この犬種では避妊去勢手術と関節障害およびガンとの関連が見られないため、手術を受ける場合は獣医師と相談して個別に時期を決定することを推奨
チワワ
研究対象となったのは1,037頭、内訳は未去勢のオス261頭、去勢済みのオス189頭、未避妊のメス298頭、避妊済みのメス289頭
- オス、メス共に避妊去勢手術の有無に関わらず関節障害の顕著な発病はなかった
- オス、メス共に避妊去勢手術の有無に関わらずガンの発病率は5%未満だった
- 未避妊のメスで乳腺腫瘍を発病したのは1%、2〜8歳の間に避妊手術をした場合では4%
- 未避妊のメスで子宮蓄膿症の発病率は2%
- 避妊手術後の尿失禁の発生は見られなかった
- この犬種では避妊去勢手術と関節障害およびガンとの関連が見られないため、手術を受ける場合は獣医師と相談して個別に時期を決定することを推奨
コッカースパニエル
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研究対象となったのは371頭、内訳は未去勢のオス71頭、去勢済みのオス112頭、未避妊のメス61頭、避妊済みのメス127頭
- オス、メス共に避妊去勢未処置の場合、関節障害の発病は1〜3%。6ヶ月齢未満で去勢手術をしたオスでは関節障害の発病が11%と有意に増加した
- メスでは避妊手術と関節障害の関連は見られなかった
- オスでは去勢手術とガンの増加に関連は見られなかった
- 未避妊のメスではガンの発病は見られなかったが、2歳未満で避妊手術をした場合、肥満細胞腫の発病率が17%と大幅に増加した
- 未避妊のメスの乳腺腫瘍の発病率は11%、子宮蓄膿症は5%
- 避妊手術後の尿失禁の発生は見られなかった
- 推奨されるガイドラインは、オスの去勢手術は生後6ヶ月以降、メスの避妊手術は2歳以降。(未避妊の場合の乳腺腫瘍の発病率の高さにも注意)
コリー
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オリジナルの論文に、単にCollieとしか書かれていないのでラフコリーのことであろうと推測します。この辺り、ちょっと大雑把ですね。前回書いたブルドッグもイングリッシュブルドッグだろうと推測しますが、ちょっと引っかかりますね。
研究対象となったのは116頭、内訳は未去勢のオス29頭、去勢済みのオス26頭、未避妊のメス24頭、避妊済みのメス37頭。サンプルサイズはかなり小さいです。
- 未去勢のオスの関節障害の発病率は7%だが、オスメス共に避妊去勢は関節障害の増加には関連していない
- 未去勢のオスのガンの発病率は11%だが、去勢はガンの増加には関連していない
- 未避妊のメスではガンの発病は見られなかったが、6ヶ月未満で避妊手術をした場合、40%に増加した
- 未避妊のメスの乳腺腫瘍の発病率は4%、子宮蓄膿症の発病率は16%
- 1歳未満で避妊手術を受けたメスの13%に尿失禁が見られた
- 推奨されるガイドラインは、オスの場合は獣医師と相談の上個別に決定、メスの避妊手術はガンと尿失禁を考慮して1歳以降とする
コーギー(ペンブローク、カーディガン)
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ペンブロークとカーディガンという2つの違う犬種ですが、その違いはわずかなサイズの差だけなので、統計分析のため2犬種を合わせたデータが表示されています。
研究対象となったのは240頭、内訳は未去勢のオス42頭、去勢済みのオス78頭、未避妊のメス50頭、避妊済みのメス70頭。
- 未去勢のオスの関節障害の発病率は5%、未避妊のメスでは6%だが、オスメス共に避妊去勢は関節障害の有意な増加には関連していない
- コーギーは椎間板障害が懸念される犬種のひとつで、未去勢のオスの椎間板障害の発病率は3%、未避妊のメスでは8%
- 6ヶ月齢以前に去勢手術を受けたオスでは、椎間板障害の発生率は18%に増加した。メスの避妊手術は椎間板障害の増加に関連が見られなかった
- 未去勢のオスのガン発病率は5%、未避妊のメスでは6%
- 未避妊のメスの乳腺腫瘍の発病率は8%、子宮蓄膿症は0、避妊手術後の尿失禁の発生は0
- 推奨されるガイドラインは、オスの去勢手術は椎間板障害との関連から6ヶ月齢以降、メスの場合は獣医師と相談の上で個別に時期を決定する
ダックスフンド
アメリカでの研究なので、このダックスフンドはアメリカで主流のスタンダードダックスフンドだと推測します。
研究対象となったのは658頭、内訳は未去勢のオス177頭、去勢済みのオス170頭、未避妊のメス99頭、避妊済みのメス212頭。
- 避妊去勢処置の有無に関わらず、オスメスともに関節障害は見られなかった
- ダックスフンドも椎間板障害が懸念される犬種のひとつで、このサンプルでは未去勢のオスの53%、未避妊のメスの38%が椎間板障害と診断された。避妊去勢手術による増加は見られなかった
- 避妊去勢未処置の場合オスメス共にガン発病率は1%未満。避妊去勢によるガンのリスク上昇は見られなかった
- 未避妊のメスの乳腺腫瘍の発病率は1%、子宮蓄膿症の発病率は4%、避妊手術後の尿失禁の発生は0
- この犬種では避妊去勢手術と関節障害およびガンとの関連が見られないため、手術を受ける場合は獣医師と相談して個別に時期を決定することを推奨
ドーベルマンピンシャー
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研究対象となったのは358頭、内訳は未去勢のオス109頭、去勢済みのオス91頭、未避妊のメス53頭、避妊済みのメス108頭
- 未去勢のオスの関節障害の発病率は2%、未避妊のメスでは見られなかった
- 去勢手術後のオスでは関節障害の明らかな増加はなかったが、1歳未満で避妊手術をしたメスでは「有意に増えた」と言うレベルには達していないが11%に増加した
- 未去勢のオスのガンの発病率は2%、1歳時に去勢手術をした場合には6%に、2〜8歳の間に手術をした場合には13%と有意な増加を示した
- 未避妊のメスのガンの発病率は2%で、避妊手術によるガンの増加は見られなかった
- 未避妊のメスの乳腺腫瘍の発病率は2%、2〜8歳での避妊手術では4%
- 未避妊のメスの子宮蓄膿症の発病率は7%
- 尿失禁は6ヶ月齢未満での避妊手術では25%に、1〜2歳の間の手術では19%に見られた
- 推奨されるガイドラインは、オスの場合はやや変則的で1歳までに去勢手術をするか、または全く手術をしないかを推奨。メスの避妊手術は尿失禁を考慮して2歳以降を推奨
イングリッシュスプリンガースパニエル
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研究対象となったのは212頭、内訳は未去勢のオス52頭、去勢済みのオス57頭、未避妊のメス37頭、避妊済みのメス66頭
- 未去勢のオスの関節障害の発病率は5%、未避妊のメス8%で、避妊去勢手術によるリスクの増加は見られなかった
- オスメスともに避妊去勢していない場合のガンの発病率は6%で、避妊手術によるリスクの増加は見られなかった
- 未避妊のメスの乳腺腫瘍の発生率は6%、2〜8歳で避妊手術をした場合は15%
- 未避妊のメスで子宮蓄膿症と診断された個体は0
- 1歳未満で避妊手術をした場合尿失禁の発生率は13%、サンプルサイズがもっと大きくなるとさらに顕著になる可能性がある
- 推奨されるガイドラインは、オスの去勢手術は獣医師と相談して個別に時期を決定することを推奨、メスの避妊手術は尿失禁を考慮して1歳以降を推奨
《参考URL》
Assisting Decision-Making of Age of Neutering for 35 Breeds of Dogs:Associated Joint Disorders, Cancers, and Urinary Incontinence.
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2020.00388/full
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2020.00388/full
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