このガイドラインについては、いくつかに分けてブログをアップしていますが今回のG〜M にはこの研究の元祖となった避妊去勢の影響が顕著に現れる人気犬種ジャーマンシェパードやゴールデンレトリーバー が含まれています。
人気犬種であるためにいい加減な繁殖が蔓延していることも影響しているかもしれないですね。
統計の中でのガンは血管肉腫、肥満細胞腫、骨肉腫、リンパ腫のどれかを指します。
また関節障害は股関節形成不全、前十字靭帯断裂、肘関節形成不全のどれかです。
また関節障害は股関節形成不全、前十字靭帯断裂、肘関節形成不全のどれかです。
また各ガイドライン内で挙げられている疾患の発病率は、この研究対象集団(カリフォルニア大学デイビス校大学病院で診断された犬たち)の中での比率で、犬種全体の疾患の発病率ではないことにご注意ください。
ジャーマンシェパード
Image by Yama Zsuzsanna Márkus from Pixabay
ジャーマンシェパードは関節の疾患の多い犬種として知られていますが関連する遺伝子の研究も進んで来ています。
極端に傾斜した背中のラインを作り出す選択繁殖も、欧州では止めようという働きかけが始まっていますので、GSの未来に期待したいと思います。
研究対象となったのは1,257頭で、内訳は未去勢のオス514頭、去勢済みオス272頭、未避妊のメス173頭、避妊済みメス298頭
研究対象となったのは1,257頭で、内訳は未去勢のオス514頭、去勢済みオス272頭、未避妊のメス173頭、避妊済みメス298頭
- 未去勢のオスの関節障害発病率は6%、未避妊のメスでは5%
- オスの関節障害は6ヶ月齢未満去勢で19%、6ヶ月〜1歳未満で18%、1〜2歳未満では9%に増加。メス6ヶ月齢未満避妊手術では20%、6ヶ月〜1歳未満で15%に増加
- オスメス共に、避妊去勢手術はガンのリスク増加とは関連していなかった
- 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病率は5%で、2〜8歳の避妊手術では6%
- 未避妊のメスの子宮蓄膿症は3%、尿失禁は6ヶ月未満で避妊手術したメスの9%
- 推奨されるガイドラインは、オスの去勢は関節障害を考慮して2歳以降、メスは関節障害と尿失禁を考慮して2歳以降とする
ゴールデンレトリーバー
Image by Sabine Runge from Pixabay
世界中で愛される超人気犬種ですが、様々な種類のガンの発症率の高さでよく知られています。
GRのガンに特化した研究も多く行われているので、いつの日かこの悲しい特徴が無くなって欲しいものです。
GRのガンに特化した研究も多く行われているので、いつの日かこの悲しい特徴が無くなって欲しいものです。
研究対象となったのは1,247頭、未去勢のオス318頭、去勢済みオス365頭、未避妊メス190頭、避妊済みメス374頭
- 未去勢のオスの関節障害発病率は5%、未避妊のメスでは4%
- オスの関節障害は6ヶ月齢未満の去勢では25%、6ヶ月〜1歳未満では11%と有意に増加。メスでは6ヶ月齢未満では18%、6ヶ月〜1歳未満では11%と増加した
- ガンについてはオスは未去勢でも発病率が15%と高く、6ヶ月齢未満の去勢では19%、6ヶ月〜1歳未満では16%とやや増加した
- 未避妊のメスのガンの発生率は5%だが、避妊手術時6ヶ月齢未満では11%、6ヶ月〜1歳未満では17%、1歳で14%、2〜8歳では14%と避妊手術の時期がいつであっても有意に増加していた
- 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病率は1%、2〜8歳で手術した場合は4%
- 未避妊のメスの子宮蓄膿症発病率は4%、尿失禁は報告されていない
- 推奨されるガイドラインは、オスでは関節障害やガンのリスク増加に基づいて去勢手術は1歳以降、メスの場合は全ての避妊年齢でのガンリスク増加に基づいて避妊手術をしない、または1歳で手術してガンに対する警戒を続けることを推奨
グレートデーン
Image by Capri23auto from Pixabay
関節疾患のリスクが高いと思われる超大型犬種ですが、ちょっと意外な結果が出ています。
研究対象となったのは353頭、未去勢のオス90頭、去勢済みオス103頭、未避妊メス69頭、避妊済みメス91頭
- 関節障害は未去勢オスで1%、未避妊メスで2%と低く、避妊去勢手術とリスク増加の関連も見られなかった
- 未去勢オスのガンの発病率は6%、未避妊メスでは3%。どちらも避妊去勢手術とリスク増加の関連は見られなかった
- 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病率は2%で、子宮蓄膿症は6%で診断された。尿失禁は報告されていない
- 推奨されるガイドラインは、避妊去勢とガンや関節障害との関連は見られないが、体のサイズが大きいため筋骨格系の発達が遅いという生理学を考慮すると、避妊去勢手術は1歳以降が望ましい
アイリッシュウルフハウンド
Image by David Mark from Pixabay
グレートデーンと並ぶ超大型犬種の代表。
アメリカでは飼育数が少なく、サンプル数がかなり少ないのですが、超大型犬種の分析のために選ばれました。
研究対象となったのは86頭で、未去勢オス30頭、去勢済みオス19頭、未避妊メス21頭、避妊済みメス16頭
- 関節障害は未去勢オスで7%、未避妊メスでは0、避妊去勢手術済みの個体では関節障害は見られなかった
- 未去勢オスのガンの発病率は8%、未避妊のメスでは21%と高い数字が見られた。1歳時に去勢したオスではガンの発病率は25%に増加、避妊済みメスではガンの増加は見られなかった
- 乳腺腫瘍の発生は0で、子宮蓄膿症は5%で診断された。尿失禁は報告されていない
- 推奨されるガイドラインは、オスの去勢手術ではガンの発生を考慮して2歳以降を、メスではガンや関節障害との関連は見られないが、体のサイズが大きいため筋骨格系の発達が遅いという生理学を考慮すると、避妊手術は1歳以降が望ましい
ジャックラッセルテリア
研究対象となったのは全部で376頭。内訳は未去勢オス92糖、去勢済みオス87頭、未避妊メス84頭、避妊済みメス113頭。
- 関節障害は未去勢オスでは0、未避妊メスで2%と低く、避妊去勢手術との関連も見られなかった
- ガン発病も未去勢オスで3%、未避妊メスでは0で、手術との関連は見られなかった
- 未避妊メスでは乳腺腫瘍と子宮蓄膿症の発病率はそれぞれ1%。2〜8歳の避妊手術では乳腺腫瘍が3%で診断された。尿失禁は診断されなかった
- 推奨ガイドラインは、オスメス共に避妊去勢手術と関節障害やガンとの関連は見られないため、避妊去勢手術を受ける場合は獣医師と相談の上で適切な時期を決定すること
ラブラドールレトリーバー
Image by DesignerColeman from Pixabay
ゴールデンレトリーバー と並ぶ超人気犬種ですが、ラブラドールも関節障害が宿命のように思われている節があります。しかしイギリスでは関節障害を持つ犬のスクリーニングをしっかりと行い繁殖の管理に適用した結果、関節障害を持つ犬の数が減少しているというリサーチ結果が報告されています。股関節形成不全などの関節障害は決して避けられない運命ではないことが明らかになって来ています。
研究対象となったのは1,933頭、内訳は未去勢オス714頭、去勢済みオス381頭、未避妊メス400頭、避妊済みメス438頭
- 未去勢のオス、未避妊のメス共に関節障害があったのは6%。6ヶ月齢未満で去勢したオスでは13%に増加し、6ヶ月未満で避妊手術をしたメスでは11%、6ヶ月〜1歳未満では12%に増加した。
- 未去勢のオスのガンの発病率は8%、未避妊のメスでは6%で、避妊去勢手術はリスク増加に関連していなかった
- 未避妊のメスの乳腺腫瘍の発病率は1%、2〜8歳で手術した場合は2%だった
- 未避妊メスの子宮蓄膿症は2%、尿失禁は避妊済みメスの2〜3%で報告された
- 推奨ガイドラインは、関節障害の増加を考慮してオスの去勢は6ヶ月齢以降、メスの避妊手術は1歳以降とする
マルチーズ
Image by RitaE from Pixabay
研究対象となったのは272頭、内訳は未去勢オス49頭、去勢済みオス72頭、未避妊メス65頭、避妊済みメス86頭。
- 避妊去勢の状態に関わらず、関節障害の発生は0だった
- ガンも未避妊のメスで1例のみで、他では報告がなかった
- 乳腺腫瘍は2〜8歳で避妊手術を受けたうちの1匹のみ、子宮蓄膿症、尿失禁は発生しなかった
- 推奨ガイドラインは、避妊去勢をする場合は獣医師と相談して適切な時期を決定する
ミニチュアシュナウザー
Image by Free-Photos from Pixabay
研究対象となったのは231頭、内訳は未去勢オス47頭、去勢済みオス63頭、未避妊メス25頭、避妊済みメス96頭。
- 避妊去勢の状態に関わらず、関節障害の発生は0だった
- ガンの発病率は未去勢オスで4%、未避妊のメスでは0。避妊去勢手術によるリスク増加は見られなかった
- 乳腺腫瘍の発病は0、子宮蓄膿症は4%、尿失禁は発生しなかった
- 推奨ガイドラインは、避妊去勢をする場合は獣医師と相談して適切な時期を決定する
《参考URL》
Assisting Decision-Making of Age of Neutering for 35 Breeds of Dogs:Associated Joint Disorders, Cancers, and Urinary Incontinence.
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2020.00388/full
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2020.00388/full
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