まずはアルファベット順にA〜Bで始まる犬種について具体的な数字をご紹介していきます。ここで言うガンは血管肉腫、肥満細胞種、骨肉腫、リンパ腫のどれかを指します。また関節障害は股関節形成不全、前十字靭帯断裂、肘関節形成不全のどれかです。
上記のガンと関節障害の他に、乳腺腫瘍(2歳以前の避妊手術で予防効果が高いと言われる)、子宮蓄膿症(避妊手術で完全に予防できる)、尿失禁(避妊手術後に発症する場合がある)についても触れられています。ただしこれらの疾患は10歳以降に顕著に増加するのですが、このデータでは10歳以上の犬がほとんど含まれていないため、データとして限界があると研究者自身が述べています。
また各ガイドライン内で挙げられている疾患の発病率は、この研究対象集団(カリフォルニア大学デイビス校大学病院で診断された犬たち)の中での比率で、犬種全体の疾患の発病率ではないことにご注意ください。
オーストラリアンキャトルドッグ
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研究対象となったのは1,037頭、内訳は未去勢のオス261頭、去勢済みのオス189頭、未避妊のメス298頭、避妊済みのメス289頭
- オス、メス共に避妊去勢手術の有無に関わらず関節障害の顕著な発病はなかった
- オス、メス共に避妊去勢手術の有無に関わらずガンの発病率は5%未満だった
- 未避妊のメスで乳腺腫瘍を発病したのは1%、2〜8歳の間に避妊手術をした場合では4%(※原文では2〜8ヶ月となっているのですがタイポと思われます)
- 未避妊のメスで子宮蓄膿症の発病率は2%
- 避妊手術後の尿失禁の発生は見られなかった
- この犬種では避妊去勢手術と関節障害およびガンとの関連が見られないため、手術を受ける場合は獣医師と相談して個別に時期を決定することを推奨
オーストラリアンシェパード
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研究対象となったのは440頭、内訳は未去勢のオス93頭、去勢済みのオス135頭、未避妊のメス76頭、避妊済みのメス136頭
- オス、メス共に避妊去勢手術は関節障害のリスクの明らかな増加には関連していなかった
- 未去勢のオスではガンの発病率が9%、未避妊のメスではガンの発病率は1%とかなりの差があった
- オスが去勢手術をした場合にもガンの発病率の増加は見られなかった
- 未避妊のメスでの乳腺腫瘍の発病はゼロだったが、2〜8歳での避妊手術では8%
- 未避妊のメスで子宮蓄膿症の発病率は5%
- 尿失禁の発生は早期(おそらく6ヶ月齢以前)に避妊した場合で1%
- 推奨されるガイドラインは、オス犬では去勢手術によるリスクの増加が見られなかったので獣医師と相談の上個別に決定。メス犬では6ヶ月齢以降の避妊手術を推奨。(乳腺腫瘍の数字を見ると6ヶ月以降2歳未満が良いのでは?と思われますが)
ビーグル
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研究対象は256頭、内訳は未去勢のオス42頭、去勢済みオス82頭、未避妊のメス45頭、避妊済みメス87頭。
- 未去勢のオスの関節障害発病の割合が2%に対し、1歳未満での去勢手術を受けたオスでは15%に増加している
- メスでは避妊処置の有無にかかわらず関節障害は発病していなかった
- オスメス共に避妊去勢済みでガン発病の増加は見られなかった
- 避妊済み未避妊共に乳腺腫瘍の発病は見られなかった
- 未避妊のメスで2例の子宮内膜症があった。
- 尿失禁の発生は早期(おそらく6ヶ月例以前)に避妊した場合で2%
- 推奨されるガイドラインは、オス犬の去勢手術は1歳以降。メス犬ではリスクの増加は見られなかったので獣医師と相談の上個別に決定
バーニーズマウンテンドッグ
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研究対象は235頭、内訳は未去勢のオス59頭、去勢済みオス74頭、未避妊のメス37頭、避妊済みメス65頭。
- 未去勢のオスの関節障害発病の割合が4%に対し、2歳未満での去勢手術を受けたオスでは24%に増加している
- メスの関節障害では6ヶ月齢以前に避妊手術をした場合は未避妊に比べて3倍超増加している
- オスメス共に避妊去勢無しのガン発病率は9%、去勢済みのオスではガンの増加は見られなかったが、メスでは6ヶ月齢以前の避妊手術で2倍に増加している
- 避妊済み、未避妊共に乳腺腫瘍の発病は見られなかった
- 未避妊のメスで5%に子宮内膜症があった。
- 尿失禁の発生は見られなかった
- 推奨されるガイドラインは、オス犬の去勢手術は2歳以降、メス犬では関節障害、ガン共に増加は著しくはないので獣医師と相談の上個別に決定(「著しくはない」というのは、それぞれ3倍と2倍になっているが件数自体が少ないという意味。でも6ヶ月齢以降が無難な気がしますよね)
ボーダーコリー
研究対象は399頭、内訳は未去勢のオス105頭、去勢済みオス85頭、未避妊のメス88頭、避妊済みメス121頭。
- オスメス共に避妊去勢手術の有無は関節障害の明らかな増加に関連していない
- 未去勢のオスのガンの発病率2%に対し、1歳未満での去勢手術では13%に増加している
- 未避妊のメスではガンの発病が見られなかったのに対し、1歳未満の避妊手術では11%に増加している
- 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病は1%
- 未避妊のメスの子宮内膜症発病は4%
- 避妊済みメスの尿失禁の発生は1例のみ
- 推奨されるガイドラインは、オスメス共に避妊去勢手術は1歳以降
ボストンテリア
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研究対象は292頭、内訳は未去勢のオス75頭、去勢済みオス67頭、未避妊のメス54頭、避妊済みメス96頭。
- オスメス共に避妊去勢手術の有無にかかわらず関節障害を発病した犬は0
- 未去勢のオスのガンの発病率5%に対し、1歳未満での去勢手術では12%に増加している
- メスの場合、避妊手術によるガン発病リスクの増加は見られなかった
- 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病は2%
- 未避妊のメスの子宮内膜症発病は7%
- 避妊済みメスの尿失禁の発生は2%
- 推奨されるガイドラインは、オス犬の去勢手術は1歳以降、メス犬では関節障害、ガン共に増加は見られないので獣医師と相談の上個別に決定
ボクサー
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研究対象は761頭、内訳は未去勢のオス220頭、去勢済みオス203頭、未避妊のメス128頭、避妊済みメス210頭。
- オスメス共に避妊去勢手術による関節障害の増加は見られない
- 未去勢のオスのガンの発病率17%に対し、2歳未満での去勢手術では32%に増加している
- 未避妊のメスのガンの発病率11%に対し、2歳未満での避妊手術では20%に増加している
- 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病は見られなかった
- 未避妊のメスの子宮内膜症発病は2%
- 避妊済みメスの尿失禁の発生は1%
- 推奨されるガイドラインは、オスメス共に避妊去勢手術は2歳以降
ブルドッグ
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研究対象は558頭、内訳は未去勢のオス198頭、去勢済みオス156頭、未避妊のメス90頭、避妊済みメス114頭。
- 未去勢のオスの関節障害発病率は7%、未避妊のメスでは5%
- 関節障害は、6ヶ月齢未満での去勢手術でオス15%、同じく6ヶ月齢未満での避妊手術でメス18%(ただし件数自体が少ないため有意性は認められていない)
- 避妊去勢をしていない場合、オスメスどちらもガンの発病率は6〜7%で、手術をしても有意な増加は見られなかった
- 未避妊のメスのガンの発病率11%に対し、2歳未満での避妊手術では20%に増加している
- 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病率は1〜2%
- 未避妊のメスの子宮内膜症発病は2%
- 避妊済みメスの尿失禁は見られなかった
- 推奨されるガイドラインは、オスメス共に避妊去勢手術の時期は獣医師と相談の上で個別に決定。関節障害について慎重になるなら6ヶ月齢以降。
頭文字C以降の犬種はまた順次アップしていきます。
《参考URL》
Assisting Decision-Making of Age of Neutering for 35 Breeds of Dogs:Associated Joint Disorders, Cancers, and Urinary Incontinence.
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2020.00388/full
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2020.00388/full
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