2017/11/12

働く犬に思う、それ本当にその犬に向いている?

(photo by WerberFabrik )

1ヶ月ほど前、CIA(Central Intelligence Agency=中央情報局)のブログに登場する犬たちが話題になりました。

CIAって、映画やドラマでスパイとかエージェントとかって出てくるあのCIAです。
え?そのCIAがブログ?しかも犬?って思いますよね。私も最初二度見しました。

国家の最高機密を扱う機関ですから、警備も最高レベル。施設では爆発物探知犬も任務についています。その探知犬たちはCIAが自前で訓練しているんだそうです。
ブログに登場したのはその訓練所に新しく入った犬たちのトレーニング日記。

興味深いと思ったのが、探知犬の候補を選ぶのにCIAのトレーナーが足を運ぶのは盲導犬など介助犬の訓練施設なのだそうです。そこで介助犬には向かないとされた犬をスカウトしてくるということ。
落ち着いていて我慢強く任務を遂行する必要のある介助犬と爆発物探知犬では求められる適性が全く違うそうです。言われてみれば、そりゃそうだって思いますね。

今秋の新入生としてスカウトされた6頭のラブラドールたちは全員介助犬になるにはエネルギッシュでハイパー過ぎると言われた犬たち。でもそのエネルギッシュさと好奇心は探知犬に必要な適性なのだそうです。

探知犬としての訓練を始めて2週間ほど後に、その6頭のうちのルルという黒ラブが「探知犬に向かない」として訓練から外されました。
SNSなどで話題になったのはこのルルのことでした。

ルルは決して能力が劣っていたわけではなかったようです。目的物をニオイで探すテストなどもちゃんと出来ていたそうです。ではなぜ訓練から外されたか?

トレーナーが言うには「ルルは訓練自体を全く楽しんでいなかった。時には命の危険もある任務に就いてもらうのに、好きじゃない楽しくないことを犬に強いることはできない。」とのことでした

ルルは2週間訓練を共にしたハンドラーの家庭に引き取られ、幸せな家庭犬として暮らしています。

私はこの話を読んでとても強い感銘を受けました。
介助犬と探知犬の適性の違いの話も深くうなずきましたし、何と言っても適性というのはただ単に「できる」というのとは違うのだという認識!
人間のために働いてくれる犬がその仕事を楽しんでできるかどうかに重きを置くという姿勢に嬉しくなりました。

(CIAの探知犬訓練日記はこちらで読めます。)

同時に思い出したのは7年前に自分のブログにも書いた、何度も何度も嘱託警察犬の試験に失敗したのに「努力」の末に合格したとして映画化までされたラブラドールの話でした。
あのブログ記事、かなり怒って書いたから今読むと激しいんだろうなあと思いながら読み返したら、確かに今なら使わないような言葉で書いているものの「なんだ、マトモなこと言ってるじゃないの」と思いました 笑。当時の自分にうん、そうだそうだって賛同しましたよ。)


そんなことを思っていたところに、昨日たまたま大手新聞のペット関連のサイトで、ある記事が目に入りました。

嘱託警察犬の試験に2回目で合格したという小型短頭種の犬のことを書いた記事でした。

(photo by carlosleucipo )

記事の中では「しつけ教室のトレーナーから、この子は物覚えがいいので警察犬に挑戦してはどうかと言われたのがきっかけ」と書かれていました。

家庭犬のしつけ教室の訓練で(いくら嘱託とは言え)警察犬の適性などわかるのか?

小型犬でも猟犬種ならまだしも、もともと愛玩犬として作られた犬種。しかも他の犬よりも嗅覚が発達していないと言われる短頭種。
犬自身が訓練を嫌がることもあったとか、物をくわえるのが苦手だったと記事に書かれていました。口の構造上、物をくわえるのが苦手なんて見ればわかることです。

CIAのルルの話を目にした後だったので、余計にこの記事を読んで心底がっかりしました。

ある任務について適性がないというのは、劣っているということではないし、克服しなくてはいけないことでもありません。
それを「努力」と呼び「美談」としてもてはやすのは人間のエゴだと私は思います。

犬は訓練次第で人間のために仕事をしてくれます。けれども彼らは言葉で「できるけど好きじゃない」とか「大好きな人がやれというからしてるけど本当はやりたくない」とか言うことができません。
だからトレーナーや飼い主は「できる/できない」だけでなく、本当に向いているのか、イヤイヤやっていないかをちゃんと見極めてやらなくてはいけません。

そして、犬の適性を無視して「努力して苦手を克服した素晴らしいストーリー」を作り上げるメディアに対して「おかしい」と思う感覚を忘れずにいたいものだと思います。



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