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2023/04/20

従来の不妊化手術と性腺温存型不妊化手術を比較

pic by Mohamed_hassan from Pixabay

犬の不妊化手術(避妊去勢)の新しい流れ

犬の不妊化手術は飼い主にとって「どうする?」の連続です。10年ほど前に不妊化手術による健康上の影響についての研究結果が発表されるようになってからは、さらに悩みも増えました。

従来の不妊化手術はオスならば陰嚢を切開して精巣を摘出、メスならば卵巣と子宮を摘出または卵巣のみを摘出します。精巣や卵巣は『性腺』であり、生殖のための精子や卵子を形成する他に性ホルモンを分泌する器官でもあります。性腺を取り除くことで性ホルモンの分泌がなくなることが、手術後の健康に良くも悪くも影響を与えると考えられています。

近年アメリカでは性腺を温存する不妊化手術の方法が人気を集めつつあります。オスの場合は精管切除(俗にいうパイプカット)メスの場合は卵巣を温存して子宮だけを摘出または卵管結紮が主なものです。手術以外では、オスの睾丸に避妊薬を注射またはオス犬に性ホルモンの作用を阻害する物質をマイクロチップのように皮下に埋め込むという化学的去勢と呼ばれる方法もありますが、家庭犬ではごく少数です。

2023年3月アメリカ獣医師会の会誌にクリス・ジンク獣医師のチームによって「犬における精管切除および卵巣温存避妊手術と性腺摘出または未避妊との健康および行動の比較」という論文が発表されました。ジンク獣医師は犬のスポーツ医学を専門としています。従来の不妊化手術である性腺摘出の方法では前十字靭帯断裂や股関節形成不全など整形外科的な疾患との関連が取り上げられているので、スポーツ医学専門医による調査は「なるほど」という感じです。


不妊化手術の有無と手術法の比較調査

ジンク獣医師の論文は、性腺を温存する不妊化手術を受けた犬と性腺を摘出する不妊化手術を受けた犬そして不妊化手術を全く受けていない犬の健康状態と行動を比較調査したものです。

(これ以降、性腺を温存する手術法は「精管切除」「卵巣温存」性腺を摘出する手術法は「従来の手術」と表記していきます。どちらの方法であれ手術をしていない場合は「未避妊」と表記します。)

調査は犬の飼い主へのアンケートという形で行われました。参加者はニューヨーク市のGood Dogという団体の会員向けニュースレターまたはFacebookを通じて募集されました。この団体は責任ある犬の繁殖を推進することをテーマに、優良ブリーダーまたは保護団体と飼い主の橋渡しを行なっています。

アンケートの内容は、犬の名前、体重、現在生きているかどうか、年齢(亡くなっている場合は死亡時の年齢)、不妊化の状態、不妊化している場合は手術の種類(精管切除か卵巣温存か従来の手術か)、その手術法を選んだ理由、手術時の年齢未避妊の場合はその理由、などがありました。

健康状態についての質問では、関節など整形外科的な疾患、ガン、甲状腺など内分泌疾患、肥満、生殖疾患、その他の疾患の診断の有無、診断時の年齢。行動についての質問では、攻撃性、不安、恐怖、その他問題行動(マーキング、マウントなど)について設定されていました。

集められた回答をロジスティック回帰分析、生存分析、記述統計を用いて、不妊化の状態と結果との関係を評価しました。
 ・ロジスティック回帰分析 いくつかの要因から(この場合は不妊化状態や年齢など)
  「ある事象の発生率」を分析する方法
 ・生存分析 ひとつの事象が発生するまでの予想される期間を分析する方法
 ・記述統計 収集したデータの平均や分散などを計算して分布を明らかにし、
  データの示す傾向や性質を把握する方法

アンケート調査の回答

集められた有効な回答は6,018件で、回答者の70%はアメリカ、16%がカナダからでした。

犬の平均年齢は8.85歳(1歳から21歳)

体重分布
4.5kg未満    3%
4.5〜 9.1kg   11% 
9.2〜18.2kg  21%
18.3〜27.3kg   33%
27.4〜36.4kg.  23%
36.5〜45.5kg  6%
45.5kg以上     4%

オス犬の生殖状態
未避妊     1,056
従来の去勢手術 1,672
精管切除      58

メス犬の生殖状態
未避妊        792
従来の不妊化  2,281
卵巣温存       159

・整形外科的問題(前十字靭帯損傷、股関節形成不全など)

全体モデルは統計的に有意(=相関関係が統計的に偶然とは考えにくい)でした。
関節や靭帯など整形外科的な疾患は性腺摘出(従来手術)と共に増加していました。
整形外科的疾患と診断された犬の数は
未避妊のオスでは72頭(7%)、未避妊メスでは26頭(3%)
従来の手術のオスでは353頭(21%)、従来手術のメスでは442頭(19%)
卵巣温存メスでは12頭(8%)、精管切除オスについては記載なし
年齢が高くサイズが大きくなるほど整形外科的疾患が増加していました。

・ガン(血管肉腫、リンパ腫、肥満細胞腫、骨肉腫、他すべての悪性新生物)

全体モデルは統計的に有意でした。
何らかのガンと診断されたことのある犬は従来の手術のオスでは464頭(28%)、従来の手術のメスでは582頭(26%)。
精管切除オスと卵巣温存メスの合計では23頭(10.6%)、未避妊のオスとメスの合計では205頭(11%)でした。

ガンと診断された年齢では、不妊化手術前(従来の手術)に診断された犬は98頭(2.5%)で診断時平均年齢は7.63歳。手術後にガンと診断された犬は942頭(23.8%)で診断時平均年齢は10.15歳。
精管切除と卵巣温存では手術前にガンと診断された犬はおらず、ガン診断時平均年齢は9.18歳。
未避妊の犬ではガン診断時平均年齢は9.3歳。
従来の手術の犬は全体的にガンと診断された数が多かったが、診断の年齢が遅い。性腺が存在した期間が長いほど、ガン診断の年齢が遅いという相関も見られた。
メス犬の乳腺腫瘍では、未避妊26頭(3.2%)従来の手術を受けた犬のうち手術前の診断が39頭(1.7%)手術後の診断が42頭(1.8%)卵巣温存では4頭(2.5%)でした。

・肥満

全体モデルは統計的に有意でした。
未避妊オスでは2頭(0.19%)未避妊メスでは0頭
従来手術のオスでは91頭(5%)従来手術のメスでは100頭(4%)
卵巣温存のメスでは1頭(0.6%)精管切除オスについては記載なし
ガンと違って、性腺が存在した期間の長さや年齢と肥満との間に関連は見られませんでした。

・内分泌疾患(甲状腺疾患、糖尿病など)

全体モデルは統計的に有意でした。
未避妊オスでは45頭(4%)未避妊メスでは12頭(1.5%)
従来手術のオスでは107頭(6%)従来手術のメスでは163頭(7%)
精管切除および卵巣温存については記載なし
性腺が存在する期間の長さは内分泌疾患の有無と関連が見られませんでした。

・生殖器疾患(子宮蓄膿症、前立腺炎など)

全体モデルは統計的に有意でした。
未避妊オスでは71頭(7%)、未避妊メスでは33頭(4%)
従来手術のオスでは6頭(0.4%)、従来手術のメスでは60頭(3%)
卵巣温存のメスでは11頭(7%)精管切除オスについては記載なし
性腺が存在する期間が長いほど生殖器疾患の確率が高くなっていました。

・その他の健康問題(心臓、腎臓、歯、目など)

全体モデルは統計的に有意でした。
その他の疾患の診断を受けた犬は
未避妊オスでは139頭(13%)、未避妊メスでは67頭(8%)
従来手術のオスでは288頭(17%)、従来手術のメスでは586頭(26%)
精管切除および卵巣温存については記載なし
性腺が存在する期間が長いほど、その他の健康問題を持つ確率が低下していました。
その他健康問題は年齢と体のサイズが大きくなるにつれて増加していました。

・問題行動(攻撃性、不安や恐怖に関連するもの)

全体モデルは統計的に有意でした。
未避妊オスでは373頭(35%)、未避妊メスでは221頭(28%)
従来手術のオスでは881頭(53%)、従来手術のメスでは939頭(41%)
卵巣温存メスでは69頭(43%)精管切除オスについては記載なし
性腺が存在する期間と体のサイズが大きくなるにつれて問題行動の発生は低下していました。

マーキングやマウントについては
未避妊オス133頭(13%)、未避妊メス32頭(4%)
従来の手術のオス187頭(11%)、従来の手術のメス133頭(6%)
精管切除のオス12頭(21%)、卵巣温存のメス16頭(10%)
不妊化の状態に関わらず、オス犬で有意に高くなっていました。
性腺が存在する期間が長いほど、マーキングやマウントは低下しました。

・生存期間の分析

生存期間、いわゆる寿命を犬の不妊化の状態によって分析したところ、未避妊の場合はオスメス共に従来の手術、精管切除、卵巣温存に比べて寿命が短いことがわかりました。

不妊化手術は性腺温存法に切り替えるべきなのか?


6,000頭以上の犬の飼い主から集められた回答の分析結果を簡単にまとめますと
  • 整形外科的疾患ー未避妊または卵巣温存では少ない
  • ガンー従来の手術法では未避妊よりも診断数が多い
  • 肥満ー従来の手術法と卵巣温存では未避妊よりも多い
  • 生殖器疾患ー従来の手術法でオスメス共に少ない
  • 問題行動ー未避妊では手術済みよりも少ない
これらは過去に発表された研究とほぼ一致しています。

この調査は、性腺を温存する精管切除や卵巣温存子宮摘出の不妊化手術を受けた犬の健康と行動を、未避妊または従来の性腺摘出の手術法を受けた犬と比較した初めてのものです。
分析結果からは精管切除や卵巣温存の方法は従来の手術よりも健康状態や行動面でより良い結果が得られる可能性が示されました。

では不妊化手術の方法は性腺温存方法に切り替えていくべきなのでしょうか?これについては研究者自身が「さらなる研究が必要である」と述べています。

この調査のデータは飼い主の記憶から得たもので、正確でなかったりバイアスがかかっている可能性という制限があります。さらに精管切除と卵巣温存のサンプル数が圧倒的に少ないことから、他と比較してグループ間の差を検出する際の正確性が低下した可能性もあります。

論文の中でも紹介されているアメリカ動物繁殖学者協会による性腺温存不妊化手術への見解は非常に参考になりますので、以下に要約します。

「卵巣温存子宮摘出術、卵管結紮、精管切除、化学的去勢などの性腺温存不妊化手術と、性腺を摘出する従来の不妊か手術との比較についてのアメリカ動物繁殖学者協会および動物繁殖学会は以下のように考えています。手術をするか否か、どの方法を取るか、実施する年齢はケースバイースであり、犬種、性別、健康状態、手術の目的、家庭環境、気質を考慮して飼い主と獣医師の間で決定されるべきです 。 

現時点でのエビデンスは決定的なものではないので、ガンの発生率や寿命について性腺がもたらすリスクとメリットのメカニズムが明確に理解されるまでは、不妊化手術の種類についての推奨は慎重にするべきです。

性腺温存不妊化手術 にもリスクがあります。卵巣温存法では子宮と子宮頸管を完全に切除します。子宮が一部でも残っていると性ホルモンにさらされ続けるため子宮膿腫などが発生するリスクがあります。子宮を全摘した後の膣壁は子宮頸部があった時のような強度は失われます。しかし卵巣が残っているためヒートは訪れ、未去勢のオス犬は惹きつけられます。強度が失われた膣壁で誤って交尾した場合、膣壁の剥離や腹膜炎によって生命を脅かす可能性があります。ヒートが訪れるものの子宮がないため血性分泌物が出ることがなく、飼い主がヒートに気づきにくくなるという点も大きなリスクです。卵巣温存に対応しているクリニックや病院が少ないことから、上記のようなアクシデントへの適切な対応が遅れる可能性もあります。

 また卵巣温存で不妊化手術をした犬が、後に卵巣に何らかの疾患を持った場合、卵巣を持ち上げている子宮が存在しないため卵巣の病変を取り除く外科処置が困難になる可能性があります。

オス犬の精管切除は受胎は防止しますが、テストステロンの産生や交尾能力には影響を与えません。また前立腺や精巣の病気の可能性は未避妊の場合と変わりません。」

 

精管切除も卵巣温存も、生殖能力は無くなるものの発情期の行動などは未避妊の場合と同じなので、飼い主は注意が必要です。特にメス犬の場合は上記のような理由で、ヒート中の行動には細心の注意で臨まなくてはなりません。

性腺が存在した期間の長さが将来の健康や行動に影響するのであれば、従来の性腺摘出の手術法を犬が完全に成犬になるまで遅らせることでリスク回避になる可能性もあります。

この調査はアメリカとカナダの飼い主がメインになっているため、犬の多くが大型犬であり、不妊化手術後の影響を受けやすいことも考慮に入れておく必要があります。過去の研究では、ほとんどの小型犬は不妊化手術後の整形外科的疾患やガンの発病に影響がありません。

論文著者や動物繁殖学者協会が 「ケースバイケースで獣医師とよく相談して」と書かれている通り、全ての犬にベストな唯一の方法というのは無いのです。

2020年にカリフォルニア大学デイビス校が発表した35犬種の不妊化手術ガイドラインのことを書いた記事を貼っておきます。

UCデイビス校獣医学部による35犬種の避妊去勢手術ガイドライン
35犬種の避妊去勢手術ガイドライン2 犬種別A~B
35犬種の避妊去勢手術ガイドライン3 犬種別C~E
35犬種の避妊去勢手術ガイドライン4 犬種別G~M
35犬種の避妊去勢手術ガイドライン5 犬種別P~Y
UCデイビス校獣医学部によるミックス犬体重別避妊去勢手術ガイドライン



そして忘れてはいけない犬の不妊化の社会的側面 

ここで紹介した調査研究は、それぞれの犬に最も適した不妊化手術の方法を決めるためのデータとして重要なものです。論文著者は性腺温存の不妊化手術を推奨しているわけではなく、この調査によって得られたエビデンスは、アメリカ獣医師会が2021年に発表した声明を支持するものだとしています。

アメリカ獣医師会の声明とは上記でリンクを貼ったカリフォルニア大学デイビス校の研究の直後に発表されたもので、「同会は獣医師が個々の患者について不妊化手術の潜在的リスクと利益を十分な情報によって全て考慮した上で、ケースバイケースの専門的判断を奨励します」としています。

UCデイビス校の研究はアメリカ獣医師会の中でも物議をかもし、少なからず批判もあるようです。しかし性腺摘出という従来の方法であっても、手術の時期を考慮することで健康や行動上のリスクを回避できる可能性は今回の調査でも示されました。ひとつの研究結果だけでなく、多くの研究機関や研究者によって違う角度から調査や研究された結果が重要であることがよくわかります。

繰り返しになりますが、全ての犬にとって理想的な不妊化手術の方法というものは無く、さまざまな固有の要因を飼い主と獣医師がひとつひとつチェックしながら最適解を探すしかないのです。研究結果はそのための有効なツールのひとつです。


そしてもうひとつ。

不妊化手術による健康への影響が取り上げられるたびに繰り返している「犬や猫の不妊化は医療上の問題の他に社会全体の問題でもある」という面も多くの人に心に留めておいて欲しいと思います。

下のリンクはUCデイビス校のガイドラインの後に当ブログに書いたものです。

犬や猫の避妊去勢は社会の問題でもある

(当時は避妊去勢という言葉を使っていたのですが、日本では不妊手術という言葉の方が一般的になっている流れを感じて、最近は不妊化手術という言葉を使っています。不妊手術ではなく「不妊化」にしているのは私のこだわりです。)

不妊化手術の影響についての話題が上がると、毎回ほぼ必ず「保護団体から言われて何も考えず手術してしまった」「保護犬も健康上の影響を考えるべき」という声が聞こえてきます。

手術の時期を遅らせているうちに殺処分になったり、手術を待つ間コンクリートの犬舎暮らしになることを考えると、たとえ将来の病気のリスクがあるとしても早く家庭に迎えられる方が動物福祉の上で望ましいと言えます。

精管切除や卵巣温存を採用した後の管理リスクなどを考慮すると、動物保護団体やアニマルシェルターの動物には向かないこともお分かりいただけると思います。

長くなりましたが、何らかの参考にしていただければ幸いです。



《参考URL》
Vasectomy and ovary-sparing spay in dogs: comparison of health and behavior outcomes with gonadectomized and sexually intact dogs
https://doi.org/10.2460/javma.22.08.0382

American College of Theriogenologists’ position statement on gonad-sparing sterilization procedures

2022/04/27

結局のところ犬の拡張型心筋症とフードに関連はあったのか?

 

Mat CoultonによるPixabayからの画像 

2018年7月にアメリカ食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration=FDA)が「獣医療機関から犬の拡張型心筋症(DCM)の症例が増えていると報告が届いている。患者の犬に共通していたのは、エンドウ豆、レンズ豆、ひよこ豆その他豆類やポテトを主原料とするフードを食べていることだった」という警告を発表しました。

そして約1年後の2019年6月に、新しいデータや証拠は何もない状態ながらFDAは拡張型心筋症と診断された犬が食べていたフードで10例以上の患者があった16ブランドを発表しました。(Acanaのフードが狙い撃ちにされていたのを覚えている方も多いはず!)

その後2021年8月にアメリカのタフツ大学獣医学部が「豆と芋を多く使っているフード」vs「豆と芋が含まれないフード」を比較分析した論文を発表しました。

グレインフリーフードと心臓病に関する新しい論文

上にリンクを貼った当ブログの記事にも書いていますが、この研究を発表したタフツ大学の研究所はネスレピュリナ社が出資したもので、この問題に関して独立した研究機関とは言えません。また上記の記事で紹介した論文の結論も仮説にとどまっており、結局は曖昧なままです。

では独立した研究機関による調査報告はなかったのか?

この点について、動物科学者/動物栄養士であるリンダ・ケース氏がご自身のブログにグレインフリーフードと拡張型心筋症に関する研究をリストアップして、その結果を検証していました。

簡単にざっと紹介しますと

2020年にアメリカのカンザス州立大学が発表した研究では、実験用に作った穀物使用フードと穀物フリーフードを2週間それぞれ6頭ずつのビーグルに与えて、便に排出された胆汁酸の量を調査しました。胆汁酸はタウリンと結び付いているので、これを調べることで体内のタウリンの状態が分かります。結果はタウリンの状態は穀物の有る無しの影響を受けていませんでした


2021年4月には、イタリアのナポリ大学が、市販の穀物フリーフードを1つのグループに、同じメーカーの穀物が使用されているフードをもう1つのグループに50日間与えて血中および血漿中のタウリン濃度を測定しましたが、やはり違いが見られませんでした。


2021年5月のカナダのサスカチュワン大学による研究では、豆類のような食物繊維を多く含むフードを長期的に与えるとタウリンの状態に影響する可能性が指摘されました。米(穀物)及び5種の豆類で6パターンのフードを作り、それぞれをビーグルに7日間与えた結果、食物繊維の多い豆類のフードではアミノ酸消化率の低下が見られたが血漿中のタウリン濃度は正常に保たれた。長期的にタウリンの状態に影響を与える可能性は上記下線のアミノ酸消化率の低下が理由です。


2021年10月にはセントキッツネイビス連邦のロス大学獣医学部が、タンパク質源がエンドウ豆タンパクの植物性フードと従来の動物性タンパク質フードをそれぞれ12週間与える対照実験を行なっています。植物性フードを与えられた犬たちは4週目で血中および血漿中のタウリン濃度が高くなっていました。12週後の測定では血液や心臓に臨床的な変化は認められませんでした。


2021年11月アメリカのイリノイ大学もビーグルを使って対照給餌実験を行い、その結果を発表しています。原材料の45%を緑レンズ豆で作ったフードと、チキンミールを使ったフードを3ヶ月間与えて、血中および血漿中のタウリン値を測定したところ、2つのフードに差異は見られませんでした。

上記のように2020年から2021年の間に主に犬の体内のタウリンの状態を調べるためにフードの比較実験が複数行われたわけですが、ものすごくザックリと簡単に平たくまとめると......

「炭水化物が豆か米か」または「タンパク質が豆かチキンミールか」で比べたけれど、豆を使ったらタウリンが不足して心臓病につながるという確固とした証拠は見つからなかったよ! ってことです。

これらの研究は同じ条件で飼育されている研究用ビーグルを使って緻密に調査されているのですが、豆の割合が市販のフードでは見られないほど高かったり、動物性タンパク質のグレードがチキンミールまたはチキン副産物ミールで、過去に標的にされた”プレミアムフード”としての穀物フリーフードと比較するには無理があるなあという印象も持ちました。

豆を使用したフードで焦点となるのが食物繊維の多さなら、大豆ミールやコーンミールを使ったフードでも植物性の食物繊維の量はかなり多いはずで、参考にはなるが決め手にはならないという感じです。

Sanna JågasによるPixabayからの画像 

 しかし、2022年3月にアメリカのBSMパートナーズという獣医栄養学調査機関とミズーリ大学獣医学部が発表した調査結果は全く違う視点のものでした。フードの成分ではなく2010年以降のグレインフリーフードの売り上げと犬の拡張型心筋症の発症数の推移を比較してみたのです。

私がニコを迎えた2005年には穀物フリーのフードというのはまだ販売されていませんでした。穀物を使っていないことを売りにしたフードが出始めたのは2010年です。ちょうど人間の食べ物でもグルテンフリーが脚光を浴び始め、小麦を敬遠する人が目立ち出した頃です。

ペットフードでは小麦の他にコーンも粗悪原材料の筆頭に挙げられていたので、小麦やコーンを使っていないというのが穀物フリーフードのスタート地点だったと記憶しています。

話を調査研究の内容に戻しましょう。

穀物フリーフードまたは豆類を多く使ったフードを食べることで犬の拡張型心筋症が増えるなら、穀物フリーまたは豆類多めフードの売り上げ増加に比例して犬の拡張型心筋症も増えるはずでは?という仮説に基づいて、フードの売り上げと拡張型心筋症の発症数が調査されました。

穀物フリーフードが市場に存在していなかった2009年、当然ながら市場でのシェア率はゼロでした。10年後の2019年には穀物フリーフードの市場でのシェア率は全体の29%、ドライフードだけを見ると43%を記録しました。金額ベースで言えば2011年の9億ドルから2019年には54億ドルと6倍になっています。

では拡張型心筋症の方は増えていたのでしょうか?地域的な偏りがないようアメリカ全土の循環器専門動物病院88機関にデータの提供を依頼し、うち14の病院から計68,297件のデータを受け取ることができました。これらのデータの2011年から2019年にかけての件数の推移を分析したところ、発症数は増えも減りもしていない横ばい状態でフードの売上との関連は示されませんでした。

この結果について研究者は「データ収集に限界はあるものの、穀物フリーまたは豆を多く使ったフードを与えられている犬が激増しているにも関わらず拡張型心筋症の発症数は横ばいであった。これらのフードと疾患に関連があるという証拠は見つからなかった」と結論づけています。

私自身が2018年からこの穀物フリーフードの件を見てきた範囲では、穀物フリーフードと心臓病の関連を取り沙汰しているのはアメリカだけです。イギリスやオーストラリアでは全国の動物病院のデータを一括管理して怪我や疾患の統計を取るシステムがありますが、拡張型心筋症が増えているというニュースは見聞きしたことがありません。(私が知っている範囲では、ですが)穀物を使わず豆を多く使っているフードはイギリスでもオーストラリアでも、その他の国々でも多く製造販売されています。

拡張型心筋症というのは複雑な病気で、今のところ最も研究されているのは遺伝による要素です。食物による関連も無いとは言えませんが「市販の穀物フリーフードが疾患を引き起こす!」と言えるほど単純なものではありません。

そもそも市販の穀物フリーフードの原材料も処方も千差万別で一括りにできるものではないですしね。

今や時代は移り変わって、気候変動や戦争の影響で食材の確保が2010年代とは比較にならないほど厳しくなっています。世相としては「穀物フリーフードが云々」と悠長なことを言っている場合ではないという空気です。

植物性のフードが犬や猫の健康に影響するのかどうか?代替食として昆虫や外来種の魚などはどうなのか?と言った問題の方が重要とも言えます。

フードの原材料についてはSMILESブログで、アメリカを中心にしたフードを取り巻く環境についてはこのブログでまた紹介して参ります。

(筆が遅いのは許して😖🙏)








2021/08/29

グレインフリーフードと心臓病に関する新しい論文

                               Image by Daniel Dan outsideclick from Pixabay


皆さま覚えていらっしゃるでしょうか。グレインフリー(穀物不使用)のドッグフードが犬の拡張型心筋症と関連があるかもしれないという報道と、それに対して私がよく腹を立てていたことを。


 2018年にアメリカ食品医薬品局(以下FDAと表記)が犬の拡張型心筋症(以下DCM)の増加と豆類、ポテト類を使ったグレインフリーフードに関連があるかもしれないという発表を行い、大きな話題になりました。

ブログ記事 FDA警告とグレインフリーフードと心臓病


同じ件に関して翌年2019年にはFDAが具体的なブランド名を発表して、賛否両論を巻き起こしました。

ブログ記事 FDAからの情報更新、グレインフリーフードと心臓病


警告だとかブランド名発表などで消費者を大きく不安にさせたにも関わらず、グレインフリーフードとDCMの関連を示す証拠は何もなく、発表の根拠となった症例も524件と非常に少ないものでした。(その後、追加の報告で約1100件になっている)

そして2021年8月、この件に関してアメリカのタフツ大学獣医学部の研究チームによるリサーチ結果が発表されました。

https://www.nature.com/articles/s41598-021-94464-2

2019年の発表の際に犬のDCMに関連する可能性が指摘されたブランドのフードについて、従来の調査方法ではこれらのフードと病気の関連性が説明できませんでした。今回はメタボロミクスを応用した分析方法で以前に名指しされたブランド9種と比較のための他ブランド9種が調査されました。

ブログタイトルはグレインフリーフードと書きましたが、今回の報告ではグレインフリーは問題となっていません。豆類、ジャガイモ、スイートポテトを焦点にしています。


2つのグループのフードをメタボロミクス分析

                               Image by Sue Lee from Pixabay 


2019年のFDAの発表では、DCM診断と報告された犬が食べていたフードを調べ10頭以上の症例があった16種のブランドが公表されました。今回はその中から9種が選ばれ分析の対象となりました。
選択の基準はフードの原材料上位20種の中に豆類、ジャガイモ、スイートポテトを含んでいることでした。このグループを便宜上「豆&イモグループ」と呼びます。
比較のための対照グループはこの条件に該当しない9種のフードが選ばれました。どちらのグループのフードも具体的なブランドや商品名は発表されていません。

これらのフードの分析はメタボロミクス(メタボローム解析)の手法で行われました。メタボロミクスというのは元々は医学や生命科学の分野で用いられており、対象となる生体に含まれる代謝物を包括的に解析することで生命現象を理解するための学問領域です。
近年、この方法は食品中の生化学的化合物を分析するのにも使われています。(例えば、加工食品の原材料となる野菜や卵などをメタボロミクス分析して、そこに含まれる化合物を特定して一定の数値のものだけを使用することで安定した品質を追求するためなどです。)

このようにして2グループ18種のドッグフードに含まれる830種類の生化学的化合物が特定され比較されました。

研究者の結論とFDAの見解

2グループのフードの生化学的化合物を比較したところ、豆&イモグループで濃度が有意に高かった化合物88種、豆&イモグループで濃度が有意に低かった化合物23種が特定されました。濃度の高い化合物の中で最大のカテゴリーはアミノ酸関連化合物と生体異物/植物化合物でした。濃度の低い化合物の最大のカテゴリーはビタミンB群でした。

豆&イモグループで濃度の高かったアミノ酸関連化合物は心臓組織へのカルニチンの利用に影響を与える可能性が指摘されています。
また濃度の低かったビタミンB群はタウリンとカルニチン合成に必要なものです。

タウリンもカルニチンも心筋の収縮に必要な栄養素で、心疾患のある犬では不足しがちです。

そして豆&イモグループで濃度の高かった化合物はエンドウ豆との関連が示されていると研究者は述べています。
というわけで、まだ仮説の段階で証明はできないがエンドウ豆は「パズルの1ピースだ」という表現がされています。

アメリカ食品医薬品局(FDA)はこの報告に対して「エンドウ豆も他の豆類も長年に渡ってペットフード に使われてきたので、本質的に危険だという証拠はない。今のところエンドウ豆の使用禁止は検討していない」と回答しています。

またFDAはDCMの症例として報告された件数は1,100件と発表しており、グレインフリーではないフードを食べている犬も含まれていると述べています。

引っかかる点

なるほど、確かにメタボロミクスで分析して特定した化合物がカルニチンの利用に影響があり、その化合物はエンドウ豆と関連していると言われたら、エンドウ豆のせいだろうか?と思わなくもない......。

しかし、豆&イモグループのビタミンB群が少ないというのは理解に苦しむところです。ドッグフードに添加されるビタミン類はあらかじめ配合されたものが使われており、AAFCOの基準に沿っているためどの会社も大差はないはず。論文の中ではビタミンB群は熱に弱いので添加のタイミングで破壊されることもあるのかもしれないと書かれていますが、それなら比較対照グループでも同じようなことが起こるはずでは?対照グループのフードはどんなものを使ったのだろうか?

そして以前からずっと指摘されていることですが、とにかく症例が少ない。

例えばイギリスでは王立獣医科大学がVeterinary Companion Animal Surveillance System(獣医学コンパニオンアニマル監視システム、頭文字をとってVetCompassと呼ばれている)という非営利研究プロジェクトを運営しています。
これはイギリス国内の一般の動物病院で診察を受けた際のデータが全て集められてコンピューターに記録され匿名化されて各種研究に使われます。イギリスで犬の怪我や疾患を調査する際には必ずと言っていいほどVetCompassのデータが使われます。何しろデータの数が圧倒的です。
1年間に診察を受けた犬の総数が分母になるため、何十万頭という数の中から有病率などを割り出します。

何もこれを真似しようというわけではありません。外国では特定の病気について調査する時にこれだけのデータを使っているという一例です。
一方アメリカ全国の犬の登録数は7500万頭いると言うのに、大学病院や循環器専門医からFDAに報告があった症例1,100件での研究は「それでいいのか?」という気がします。

そして最大の引っかかりは、2019年の記事にも書きましたがこの研究を行ったタフツ大学獣医学部にはネスレピュリナ社が出資して建設した研究所があり、大学とピュリナが共同で運営しているという点です。

再度書くけれど、商業製品の調査をするのに利害の絡むライバル社と関係のある研究施設にアメリカ食品医薬品局という公的な機関が協力を依頼するというのは倫理的におかしい。

とりあえず続報を待つことにしましょう。



《参考URL》

2020/09/14

UCデイビス校獣医学部によるミックス犬体重別避妊去勢手術ガイドライン

カリフォルニア大学デイビス校獣医学部が、35の犬種について避妊去勢手術と関節障害やガンのリスク増加の関連、それに伴う手術のガイドラインを発表したことをお伝えして来ました。
UCデイビス校獣医学部による35犬種の避妊去勢手術ガイドライン

研究チームは35犬種に続いてミックス犬の避妊去勢と疾患の関連、それに伴って避妊去勢手術の体重別ガイドラインも発表しました。
以前の犬種別の論文で使用されたのと同じデータベースを使用して、体重を5段階に分けたミックス犬のデータ分析が行われました。

調査の対象となったのは、関節障害では股関節形成不全、前十字靭帯断裂、肘関節形成不全の3種類、ガンではリンパ腫、肥満細胞腫、血管肉腫、骨肉腫の4種類です。
他にメス犬の乳腺腫瘍(早期避妊によって発病率が低下すると言われている)、子宮蓄膿症(避妊手術によって完全に予防できる)、尿失禁(避妊手術の影響で発症することがある)についても調査されていますが、これらについては実際に発病が増加する10歳以降のデータはほとんど含まれていない点は注意が必要です。
以上の条件は全て、純血種35種のガイドラインと共通するものです。

体重のカテゴリーは、10kg未満、10kg以上20kg未満、20kg以上30kg未満、30kg以上40kg未満、40kg以上の5段階でした。順を追って調査結果を記していきます。



体重10kg未満



研究対象となったのは計739頭。内訳は、未去勢オス152頭、去勢済みオス201頭、未避妊メス148頭、避妊済みメス238頭。

関節障害は未去勢オスで1例、未避妊メスの5%で報告されているが、オスメス共に避妊去勢によるリスクの増加は見られませんでした。
ガンは未去勢オスで7%、未避妊メスで2%、オスメス共に避妊去勢によるリスク増加は見られませんでした。

未避妊の6%と、2〜8歳での避妊手術をしたうちの5%が乳腺腫瘍と診断されています。
子宮蓄膿症は未避妊の3%で診断されました。尿失禁はありませんでした。  

純血種の多くの小型犬と同じく、10kg未満のミックス犬では避妊去勢手術による関節障害およびガンのリスク増加の関連は見られませんでした。
避妊去勢手術をする場合はかかりつけの獣医師と相談の上で決定することが大切です。


体重10kg以上20kg未満


研究対象となったのは計546頭。内訳は、未去勢オス94頭、去勢済みオス114頭、未避妊メス90頭、避妊済みメス248頭。

関節障害は未去勢オスと去勢済みオスに各1例ずつ、未避妊のメスでは5%で確認されましたが、避妊去勢手術によるリスクの増加はありませんでした。
ガンは未去勢オスでは7%、未避妊メスでは2%で確認され、やはり手術によるリスクの増加は見られませんでした。

未避妊の7%と、2〜8歳での避妊手術をしたうちの4%が乳腺腫瘍と診断されています。
子宮蓄膿症は未避妊の5%で診断されました。尿失禁は6ヶ月齢〜1歳の期間に避妊手術をしたメスの4〜6%で確認されました。  
10kg未満のグループと同じく、避妊去勢手術と関節障害およびガンのリスク増加の関連は見られませんでした。
避妊去勢手術をする場合はかかりつけの獣医師と相談の上で決定することが大切です。


体重20kg以上30kg未満



研究対象となったのは計992頭。内訳は、未去勢オス154頭、去勢済みオス257頭、未避妊メス129頭、避妊済みメス452頭。
このグループは避妊去勢と疾患の関連についての研究のきっかけとなったゴールデンレトリーバー 、ラブラドール、Gシェパードなどの犬のサイズカテゴリーです。

関節障害は未去勢オスでは3%、去勢時に6ヶ月齢未満と6ヶ月齢〜1歳未満ではどちらも5%に上昇しました。未避妊のメスでは4%で、避妊手術時6ヶ月齢未満では10%、6ヶ月齢〜1歳未満では12%と大幅に上昇しました。
オスメス共に1歳を超えてからの手術では関節障害の発病は増加しませんでした。
ガンは未去勢オス未避妊メス共に3%で確認されたが、手術によるリスクの増加は見られませんでした。

乳腺腫瘍は未避妊の4%と、2〜8歳での避妊手術をしたうちの2%が診断されています。
子宮蓄膿症は未避妊の5%で診断されました。尿失禁は1歳未満で避妊手術をしたメスの3%で確認されました。  
推奨されるガイドラインは、関節障害のリスク増加の点からオスメス共に1歳以降に手術をすることとしています。


体重30kg以上40kg未満


研究対象となったのは計604頭。内訳は、未去勢オス176頭、去勢済みオス196頭、未避妊メス57頭、避妊済みメス175頭’。

関節障害は未去勢オスでは8%で、6ヶ月齢未満の去勢では17%に、6ヶ月齢〜1歳未満では11%と増加リスクが上昇している。未避妊のメスでは関節障害の例は0だったが、6ヶ月齢未満の避妊手術では10%、6ヶ月齢〜1歳未満では23%と大幅に増加しました。
ガンは未去勢オスの発生率は15%で、有意とまでは言えないものの去勢されたグループよりも高かった。未避妊メスでは13%で確認され、やはり避妊済みのグループよりも有意とまでは言えないものの高かった

乳腺腫瘍は未避妊の2%と、2〜8歳での避妊手術をしたうちの4%が診断されています。
子宮蓄膿症は未避妊の7%で診断されました。尿失禁は6ヶ月齢未満で避妊手術をしたうちの9%で診断されました。  

推奨されるガイドラインは、関節障害のリスク増加の点からオスメスともに1歳以降に手術をすることで、これはメスの尿失禁のリスク回避にもなります。



体重40kg以上


研究対象となったのは計258匹。内訳は、未去勢オス88匹、去勢済みオス107匹、未避妊メス17匹、避妊済みメス46匹。

関節障害は未去勢オスでは9%で、6ヶ月齢未満の去勢では28%に、6ヶ月齢〜1歳未満では11%、1歳での手術でもなお11%と増加リスクが上昇している。未避妊のメスでは関節障害の例は17%で避妊手術による増加は見られませんでした
ガンは未去勢オスの発生率は10%、未避妊メスでは6%で確認され、避妊去勢手術による増加は見られませんでした

乳腺腫瘍の発生は確認されず、子宮蓄膿症は未避妊の16%で診断されました。(ただし、どちらもこの体重カテゴリーの未  避妊メスのサンプル数の少なさは考慮する必要があります)尿失禁は6ヶ月齢未満で避妊手術をしたうちの9%で診断されました。  

推奨されるガイドラインは、関節障害のリスク増加の点からオスでは2歳以降の手術を、メスでは関節障害の増加は見られませんが超大型犬は筋骨格の成長スピードが遅いことから手術をする場合は1歳以降を推奨します。


ガイドラインまとめ

それぞれの体重別のガイドラインは以上です。
このリサーチの主要な発見の1つはミックスまたは雑種と呼ばれる犬であっても、体重と避妊去勢と関節障害のリスク増加に関連性が見られたことです。

体重20kgを境にして、これを越えると早期の避妊去勢手術によって関節障害が発病するリスクが高くなっています。
体重20kg未満の犬では避妊去勢による関節障害リスクの増加は見られません。

ガンに関しては全ての体重カテゴリーで避妊去勢手術との明確な関連はありませんでした。これはミックス犬が持つ様々な犬種の多様性が、特定の犬種固有の対ガンの脆弱性を薄めていると言えそうです。

ミックス犬または雑種犬と避妊去勢手術というテーマで、最も大きな問題はその多くが保護犬であるという点でしょう。
アメリカの多くの州では、レスキューグループや保護施設が犬を譲渡する際には避妊去勢手術済みであることが法律で義務付けられています。そのような場合は「手術は1歳過ぎてからにしましょう」というような選択肢はありません。
かと言って、このようなガイドラインが無駄だというわけではありません。
成犬になった時の体重が20kgを越える犬は、関節障害のリスクが最大で20%程度高くなることを考えて、体重過多にならないよう管理をしっかりする、適切な運動で筋肉を保つ、定期的な健康診断を欠かさないなど対策をとっておきましょう。

犬の関節障害に関しては犬種ごとの遺伝子研究が多く行われています。まだ疾患に関連する遺伝子の特定はできていませんが、遺伝子座(遺伝子の位置)までは判ってきています。(ものすごくザックリ言いますと「これだ」と特定はできないが「だいたいこの辺りの遺伝子」という目星は付いているという状態です。)
股関節形成不全や前十字靭帯断裂などの遺伝子検査ができるようになれば、無駄に不安を抱える必要が無くなりますね。
イギリスでは関節障害のある犬を徹底して繁殖から外すよう管理した結果、ラブラドールやロットワイラー、ジャーマンシェパードなどの健全性が高くなっているという報告もあります。
避妊去勢手術は確かにリスク要因になり得ますが、遺伝的要因という最大のリスク要因があるということは多くの飼い主さんに知っておいていただきたい点です。


最後に

上にも書いた通り、保護犬にとって避妊去勢手術は避けて通れない道です。
この点については次の記事で、ロサンゼルス市が辿って来た歴史、殺処分率を下げるために奮闘して来られた獣医師について書きたいと思います。

それにしてもカリフォルニア大学デイビス校獣医学部はアメリカの獣医学教育のトップレベルだと思うのですが、なぜ従来の避妊去勢手術のリスクを挙げるばかりで精管結紮や卵管結紮(または卵巣温存)などの代替手段に全く言及しないんでしょうね😒




2020/09/02

35犬種の避妊去勢手術ガイドライン5 犬種別P〜Y

カリフォルニア大学デイビス校が発表した犬種別の避妊去勢時期のガイドラインにおいて、リストアップされた35犬種最後のグループP~Yで始まる犬種の具体的な数字です。

毎回書いていますが、統計の中で「ガン」と示されているのは血管肉腫、肥満細胞腫、骨肉腫、リンパ腫のどれかを指します。
関節障害については、股関節形成不全、前十字靭帯断裂、肘関節形成不全のどれかです。
上記のガンと関節障害の他に、乳腺腫瘍(2歳以前の避妊手術で予防効果が高いと言われる)、子宮蓄膿症(避妊手術で完全に予防できる)、尿失禁(避妊手術後に発症する場合がある)についても触れられています。ただしこれらの疾患は10歳以降に顕著に増加するのですが、このデータでは10歳以上の犬がほとんど含まれていないため、データとして限界があると研究者自身が述べています。

また各ガイドライン内で挙げられている疾患の発病率は、この研究対象集団(カリフォルニア大学デイビス校大学病院で診断された犬たち)の中での比率で、犬種全体の疾患の発病率ではないことにご注意ください。


ポメラニアン

Image by Sophia Nel from Pixabay 

研究対象となったのは計322頭。内訳は未去勢オス84頭、去勢済みオス69頭、未避妊メス65頭、避妊済みメス104頭
  • 避妊去勢の有無に関わらず、関節障害の発病は見られなかった
  • ガンに関しても避妊去勢によるリスク増加は見られなかった
  • 未避妊メスで乳腺腫瘍が1例、子宮蓄膿症は7%に見られた
  • 尿失禁の発生は見られなかった
  • 推奨ガイドラインは、オスメス共に避妊去勢手術と関節障害やガンとの関連は見られないため、避妊去勢手術を受ける場合は獣医師と相談の上で適切な時期を決定すること

プードル(トイ)

Image by Satoshi Kawaguchi from Pixabay 

なんと!アメリカンケネルクラブではトイ、ミニチュア、スタンダードの3つのプードルを全部同じ一つの犬種として登録しているそうです。
しかしこのガイドラインにおいて、小型犬のトイプードルと大型犬のスタンダードプードルを一緒にすることはデータの有効性の上からも疑問なので3種のプードルは個別に扱われています。

研究対象となったのは計238頭。未去勢オス49頭、去勢済みオス53頭、未避妊メス58頭、避妊済みメス78頭

  • 関節障害は未去勢のオスで4%に、未避妊のメスでは0で、避妊去勢手術によるリスクの明らかな増加は見られなかった
  • ガンは未去勢のオスで2%に、未避妊のメスでは0、手術済みのオスメス共にガンの発病は見られなかった
  • 未避妊メスの乳腺腫瘍は1例のみ、子宮蓄膿症と尿失禁はどちらも0だった
  • 推奨ガイドラインは、オスメス共に避妊去勢手術と関節障害やガンとの関連は見られないため、避妊去勢手術を受ける場合は獣医師と相談の上で適切な時期を決定すること
※下のミニチュアプードルの項目もご覧ください


プードル(ミニチュア)

Image by Petra Šolajová from Pixabay

日本ではあまり見かけませんが、アメリカでは小さい方のプードルと言えばトイよりもミニチュアの方が多いように思います。
ミニチュアプードルは体高28〜35cm、体重5.4〜9kgくらいとされているので、小型犬と中型犬のギリギリ境界線で小型犬という感じでしょうか。

研究対象となったのは計200頭。内訳は未去勢オス41頭、去勢済みオス60頭、未避妊メス30頭、避妊済みメス69頭

  • オスメス共に避妊去勢していないグループでは関節障害の発病は0だったが1歳未満で去勢されたオスでは前十字靭帯断裂の発病が9%と有意な増加を見せた。避妊済みメスでは関節障害の発病は無かった
  • 未去勢オスのガンの発病率は5%、未避妊メスでは0。避妊去勢済みのガン発病リスクの増加は見られなかった
  • 乳腺腫瘍は2〜8歳の間に避妊手術をしたメスで1例のみ、子宮蓄膿症は未避妊メスの6%で確認、尿失禁は6ヶ月齢未満の避妊手術で1例
  • 推奨ガイドラインは、1歳未満での去勢手術に伴って関節障害の有意な増加が見られたため去勢手術は1歳以降を推奨メスでは避妊手術との関連は見られないため、手術を受ける場合は獣医師と相談の上で適切な時期を決定すること
※ミニチュアプードルで報告された前十字靭帯断裂ですが、アメリカでは一般的に大型犬または超大型犬の疾患と考えられています。しかし日本ではトイプードルの前十字靭帯断裂はとても一般的なものだとされているので、トイプードルを飼っている方はこの点にご注意ください。
前十字靭帯断裂は遺伝的要因の強い疾患であることが判っていますので、日本においてトイプードルが長期的に超人気犬種であるがゆえの乱繁殖と、疾患の多発は無関係ではないと思われます。


プードル(スタンダード)

Image by digitalskennedy from Pixabay 

研究対象となったのは計275頭。内訳は未去勢オス47頭、去勢済みオス88頭、未避妊メス53頭、避妊済みメス87頭

  • 未去勢オス、未避妊メス共に2%に関節障害が発病していた。6ヶ月齢未満での去勢では関節障害の増加はあったが“有意”のラインである8%には達しなかった。避妊済みメスでは関節障害の発病は0だった
  • 未去勢オスのガンの発病率は4%、未避妊メスでは2%。1歳時に去勢したオスではガンの発病率が27%に増加し、それらは全てリンパ腫だった。避妊済みのメスではガンの有意な増加は見られなかった。
  • 未避妊メスの乳腺腫瘍の発病は4%、子宮蓄膿症は2%、尿失禁は2歳以降で避妊手術をした1例のみ
  • 推奨されるガイドラインは、去勢に伴うリンパ腫の増加に基づいて、オスの去勢手術は2歳以降を推奨。メスでは避妊手術との関連は見られないため、手術を受ける場合は獣医師と相談の上で適切な時期を決定すること


パグ

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研究対象となったのは計383頭。内訳は未去勢オス96頭、去勢済みオス106頭、未避妊メス63頭、避妊済みメス118頭

  • 避妊去勢手術による関節障害発病リスクの増加は見られなかった
  • 未去勢オスのガンの発病率は6%、未避妊メスでは8%で、避妊去勢によるガンのリスクの増加は見られなかった
  • 乳腺腫瘍の症例は0で、子宮蓄膿症は未避妊メスの5%に発病、尿失禁は0だった
  • 推奨されるガイドラインは、オスメス共に避妊去勢手術と関節障害やガンとの関連は見られなかったため、手術を希望する場合は獣医師と相談の上で適切な時期を決定すること
※パグの場合はこの研究対象となっている関節障害とは違いますが、骨格または神経障害から来ると考えられる歩行障害が3匹に1匹という高い割合で見られるという研究も発表されています。その他にも健康上の問題の多い犬種であることは認識しておく必要があります。


ロットワイラー

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ロットワイラーも、ジャーマンシェパードやラブラドールと並んで関節障害が多い犬の定番としてその名が上がります。

研究対象となったのは計849頭。内訳は未去勢オス315頭、去勢済みオス152頭、未避妊メス143頭、避妊済みメス239頭

  • 関節障害は未去勢オスで8%、未避妊メスで16%と既に高い割合で発病しているオス6ヶ月齢未満での去勢では10%、6ヶ月〜1歳未満での去勢では22%と有意に増加していた。メスではさらに顕著で、6ヶ月齢未満の避妊手術では43%の発病率となった。関節障害の主なものは前十字靭帯断裂だった
  • ガンは未去勢のオスで16%、未避妊のメスで11%と比較的高い発病率を示しているが、避妊去勢手術による増加は見られなかった
  • 未避妊メスの乳腺腫瘍は8%、2〜8歳で避妊手術で5%の発病率を示した。未避妊メスの子宮蓄膿症は12%、尿失禁は6ヶ月齢未満の避妊で4%、6ヶ月〜1歳未満の避妊手術では6%だった
  • 推奨されるガイドラインは、オスでは1歳未満の去勢手術による関節障害リスクのため1歳以降の手術、メスでは同じく関節障害リスクのため6ヶ月齢以降を推奨(乳腺腫瘍、子宮蓄膿症も比較的高い数字であることを考慮しても良さそうです。)

セントバーナード

Image by Ilona Krijgsman from Pixabay


セントバーナードも超大型犬種として研究対象に選ばれましたが、サンプル数は少なく、研究対象となったのは計94頭、未去勢オス26頭、去勢済みオス27頭、未避妊メス18頭、避妊済みメス23頭

  • 関節障害は未去勢オスで8%、未避妊メスで6%。オスでは去勢手術による関節障害のリスク増加は見られなかったが、6ヶ月齢未満での避妊手術をしたメスでは関節障害は100%発病していた(100%という数字はサンプル数の少なさによるところが大きい。具体的には避妊済みメス23頭のうち、6ヶ月齢未満で手術を受けたのは4頭。)
  • ガンは未去勢オスで4%、未避妊メスで11%だが、避妊去勢による顕著な増加はなかった
  • 乳腺腫瘍の発生は0で、子宮蓄膿症は15%、尿失禁は0だった(子宮蓄膿症に関しては15%という数字は高めに見えるが、サンプル数が少ないため実際には3例です。)
  • 推奨されるガイドラインは、オスではガンや関節障害と去勢の関連は見られず、メスでは6ヶ月齢未満で関節障害のリスクが高くなっているが、超大型犬は骨格や筋肉の発達がゆっくりなので、オスメス共に1歳以降が望ましい

シェトランドシープドッグ

Image by JacLou DL from Pixabay 

研究対象となったのは計133頭。内訳は未去勢オス31頭、去勢済みオス30頭、未避妊メス20頭、避妊済みメス52頭

  • 関節障害は未去勢オスでは0、未避妊メスで1例、去勢済みオスでは6ヶ月齢未満での手術の1例、避妊済みメスでは0
  • ガンは未去勢オスでは6%、未避妊メスでは0。避妊去勢手術によるリスクの増加は見られなかった
  • 乳腺腫瘍の発病は0、子宮蓄膿症は14%で確認、尿失禁は1歳時の避妊手術では33%で発病していた(この犬種も研究対象となったサンプル数が少ないことは考慮に入れておいた方が良いと思います。)
  • 推奨されるガイドラインは、オスでは関節障害やがんの顕著な増加は見られないため獣医師と相談の上で適切な時期を決定、メスでは尿失禁を回避するために2歳以降の手術を検討

シーズー

Image by No-longer-here from Pixabay 

小型犬の中では例外的に避妊手術の影響が認められた犬種です。
研究対象となったのは計432頭。内訳は未去勢オス104頭、去勢済みオス112頭、未避妊メス77頭、避妊済みメス139頭


  • 避妊去勢の有無、性別に関わらず、関節障害の発病は無かった
  • ガンは未去勢オス、未避妊メス、去勢済みオスでは0。6ヶ月例〜1歳未満で手術をしたメスでは7%、1歳時の避妊手術では18%に達した
  • 乳腺腫瘍は未避妊メスの3%、子宮蓄膿症は5%、尿失禁は0だった
  • 推奨されるガイドラインは、オスでは獣医師と相談の上で適切な時期を決定。メスではガンリスクの増加を受けて、2歳以降または6ヶ月齢に達する1〜2ヶ月前の避妊手術を推奨

ウエストハイランドホワイトテリア

Image by Morten Hjerpsted from Pixabay

研究対象となったのは計142頭。内訳は未去勢オス35頭、去勢済みオス33頭、未避妊メス28頭、避妊済みメス46頭

  • 未去勢オスで1例の関節障害が確認されたが、去勢済みオス、未避妊メス、避妊済みメスのいずれも関節障害の発病は0だった
  • ガンもいずれのグループも発病が確認されなかった
  • 乳腺腫瘍の発生は0、子宮蓄膿症は未避妊メスの7%、尿失禁は6ヶ月齢未満の避妊では14%、6ヶ月齢〜1歳未満の手術では6%で見られた
  • 推奨されるガイドラインは、オスでは獣医師と相談の上で適切な時期を決定。メスでは尿失禁のリスクを回避するため1歳以降の避妊手術を検討


ヨークシャーテリア

Image by Alois Grundner from Pixabay 

研究対象となったのは計685頭。内訳は未去勢オス134頭、去勢済みオス178頭、未避妊メス144頭、避妊済みメス229頭

  • 関節障害は未処置のオスメスで1%、避妊去勢手術による顕著な増加はなかった
  • ガンについても未処置のオスメスで1%、避妊去勢手術による顕著な増加はなかった
  • 乳腺腫瘍は未避妊メスで1%、2〜8歳時の避妊手術で1%。子宮蓄膿症は7%で確認。尿失禁は0だった
  • 推奨されるガイドラインは、関節障害やガンと避妊去勢手術の関連が見られないので獣医師と相談の上で適切な時期を決定すること

35犬種のガイドラインとしてリストアップされた犬種は以上です。
この後引き続き同研究者チームによる、ミックス犬体重別避妊去勢のガイドラインをアップして行きます。





《参考URL》

Assisting Decision-Making of Age of Neutering for 35 Breeds of Dogs:Associated Joint Disorders, Cancers, and Urinary Incontinence.
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2020.00388/full





2020/08/26

35犬種の避妊去勢手術ガイドライン4 犬種別G〜M

 UCデイビス校獣医学部が発表した犬種別の避妊去勢時期のガイドラインにおいて、リストアップされた35犬種のアルファベットG〜Mで始まる犬種の具体的な数字です
このガイドラインについては、いくつかに分けてブログをアップしていますが今回のG〜M にはこの研究の元祖となった避妊去勢の影響が顕著に現れる人気犬種ジャーマンシェパードやゴールデンレトリーバー が含まれています。
人気犬種であるためにいい加減な繁殖が蔓延していることも影響しているかもしれないですね。

統計の中でのガンは血管肉腫、肥満細胞腫、骨肉腫、リンパ腫のどれかを指します。
また関節障害は股関節形成不全、前十字靭帯断裂、肘関節形成不全のどれかです。

上記のガンと関節障害の他に、乳腺腫瘍(2歳以前の避妊手術で予防効果が高いと言われる)、子宮蓄膿症(避妊手術で完全に予防できる)、尿失禁(避妊手術後に発症する場合がある)についても触れられています。ただしこれらの疾患は10歳以降に顕著に増加するのですが、このデータでは10歳以上の犬がほとんど含まれていないため、データとして限界があると研究者自身が述べています。

また各ガイドライン内で挙げられている疾患の発病率は、この研究対象集団(カリフォルニア大学デイビス校大学病院で診断された犬たち)の中での比率で、犬種全体の疾患の発病率ではないことにご注意ください。


ジャーマンシェパード

Image by Yama Zsuzsanna Márkus from Pixabay 


ジャーマンシェパードは関節の疾患の多い犬種として知られていますが関連する遺伝子の研究も進んで来ています。
極端に傾斜した背中のラインを作り出す選択繁殖も、欧州では止めようという働きかけが始まっていますので、GSの未来に期待したいと思います。

研究対象となったのは1,257頭で、内訳は未去勢のオス514頭、去勢済みオス272頭、未避妊のメス173頭、避妊済みメス298頭

  • 未去勢のオスの関節障害発病率は6%、未避妊のメスでは5%
  • オスの関節障害は6ヶ月齢未満去勢で19%、6ヶ月〜1歳未満で18%、1〜2歳未満では9%に増加。メス6ヶ月齢未満避妊手術では20%、6ヶ月〜1歳未満で15%に増加
  • オスメス共に、避妊去勢手術はガンのリスク増加とは関連していなかった
  • 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病率は5%で、2〜8歳の避妊手術では6%
  • 未避妊のメスの子宮蓄膿症は3%、尿失禁は6ヶ月未満で避妊手術したメスの9%
  • 推奨されるガイドラインは、オスの去勢は関節障害を考慮して2歳以降、メスは関節障害と尿失禁を考慮して2歳以降とする


ゴールデンレトリーバー 

Image by Sabine Runge from Pixabay 


世界中で愛される超人気犬種ですが、様々な種類のガンの発症率の高さでよく知られています。
GRのガンに特化した研究も多く行われているので、いつの日かこの悲しい特徴が無くなって欲しいものです。

研究対象となったのは1,247頭、未去勢のオス318頭、去勢済みオス365頭、未避妊メス190頭、避妊済みメス374頭

  • 未去勢のオスの関節障害発病率は5%、未避妊のメスでは4%
  • オスの関節障害は6ヶ月齢未満の去勢では25%、6ヶ月〜1歳未満では11%と有意に増加。メスでは6ヶ月齢未満では18%、6ヶ月〜1歳未満では11%と増加した
  • ガンについてはオスは未去勢でも発病率が15%と高く、6ヶ月齢未満の去勢では19%、6ヶ月〜1歳未満では16%とやや増加した
  • 未避妊のメスのガンの発生率は5%だが、避妊手術時6ヶ月齢未満では11%、6ヶ月〜1歳未満では17%、1歳で14%、2〜8歳では14%と避妊手術の時期がいつであっても有意に増加していた
  • 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病率は1%、2〜8歳で手術した場合は4%
  • 未避妊のメスの子宮蓄膿症発病率は4%、尿失禁は報告されていない
  • 推奨されるガイドラインは、オスでは関節障害やガンのリスク増加に基づいて去勢手術は1歳以降、メスの場合は全ての避妊年齢でのガンリスク増加に基づいて避妊手術をしない、または1歳で手術してガンに対する警戒を続けることを推奨


    グレートデーン

    Image by Capri23auto from Pixabay 


    関節疾患のリスクが高いと思われる超大型犬種ですが、ちょっと意外な結果が出ています。

    研究対象となったのは353頭、未去勢のオス90頭、去勢済みオス103頭、未避妊メス69頭、避妊済みメス91頭

    • 関節障害は未去勢オスで1%、未避妊メスで2%と低く、避妊去勢手術とリスク増加の関連も見られなかった
    • 未去勢オスのガンの発病率は6%、未避妊メスでは3%。どちらも避妊去勢手術とリスク増加の関連は見られなかった
    • 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病率は2%で、子宮蓄膿症は6%で診断された。尿失禁は報告されていない
    • 推奨されるガイドラインは、避妊去勢とガンや関節障害との関連は見られないが、体のサイズが大きいため筋骨格系の発達が遅いという生理学を考慮すると、避妊去勢手術は1歳以降が望ましい

    アイリッシュウルフハウンド

    Image by David Mark from Pixabay 


    グレートデーンと並ぶ超大型犬種の代表。
    アメリカでは飼育数が少なく、サンプル数がかなり少ないのですが、超大型犬種の分析のために選ばれました。

    研究対象となったのは86頭で、未去勢オス30頭、去勢済みオス19頭、未避妊メス21頭、避妊済みメス16頭
    • 関節障害は未去勢オスで7%、未避妊メスでは0、避妊去勢手術済みの個体では関節障害は見られなかった
    • 未去勢オスのガンの発病率は8%、未避妊のメスでは21%と高い数字が見られた。1歳時に去勢したオスではガンの発病率は25%に増加、避妊済みメスではガンの増加は見られなかった
    • 乳腺腫瘍の発生は0で、子宮蓄膿症は5%で診断された。尿失禁は報告されていない
    • 推奨されるガイドラインは、オスの去勢手術ではガンの発生を考慮して2歳以降を、メスではガンや関節障害との関連は見られないが、体のサイズが大きいため筋骨格系の発達が遅いという生理学を考慮すると、避妊手術は1歳以降が望ましい


    ジャックラッセルテリア

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    研究対象となったのは全部で376頭。内訳は未去勢オス92糖、去勢済みオス87頭、未避妊メス84頭、避妊済みメス113頭。

    • 関節障害は未去勢オスでは0、未避妊メスで2%と低く、避妊去勢手術との関連も見られなかった
    • ガン発病も未去勢オスで3%、未避妊メスでは0で、手術との関連は見られなかった
    • 未避妊メスでは乳腺腫瘍と子宮蓄膿症の発病率はそれぞれ1%。2〜8歳の避妊手術では乳腺腫瘍が3%で診断された。尿失禁は診断されなかった
    • 推奨ガイドラインは、オスメス共に避妊去勢手術と関節障害やガンとの関連は見られないため、避妊去勢手術を受ける場合は獣医師と相談の上で適切な時期を決定すること

    ラブラドールレトリーバー

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    ゴールデンレトリーバー と並ぶ超人気犬種ですが、ラブラドールも関節障害が宿命のように思われている節があります。しかしイギリスでは関節障害を持つ犬のスクリーニングをしっかりと行い繁殖の管理に適用した結果、関節障害を持つ犬の数が減少しているというリサーチ結果が報告されています。股関節形成不全などの関節障害は決して避けられない運命ではないことが明らかになって来ています。

    研究対象となったのは1,933頭、内訳は未去勢オス714頭、去勢済みオス381頭、未避妊メス400頭、避妊済みメス438頭

    • 未去勢のオス、未避妊のメス共に関節障害があったのは6%。6ヶ月齢未満で去勢したオスでは13%に増加し、6ヶ月未満で避妊手術をしたメスでは11%、6ヶ月〜1歳未満では12%に増加した。
    • 未去勢のオスのガンの発病率は8%、未避妊のメスでは6%で、避妊去勢手術はリスク増加に関連していなかった
    • 未避妊のメスの乳腺腫瘍の発病率は1%、2〜8歳で手術した場合は2%だった
    • 未避妊メスの子宮蓄膿症は2%、尿失禁は避妊済みメスの2〜3%で報告された
    • 推奨ガイドラインは、関節障害の増加を考慮してオスの去勢は6ヶ月齢以降、メスの避妊手術は1歳以降とする


    マルチーズ

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    研究対象となったのは272頭、内訳は未去勢オス49頭、去勢済みオス72頭、未避妊メス65頭、避妊済みメス86頭。

    • 避妊去勢の状態に関わらず、関節障害の発生は0だった
    • ガンも未避妊のメスで1例のみで、他では報告がなかった
    • 乳腺腫瘍は2〜8歳で避妊手術を受けたうちの1匹のみ、子宮蓄膿症、尿失禁は発生しなかった
    • 推奨ガイドラインは、避妊去勢をする場合は獣医師と相談して適切な時期を決定する


    ミニチュアシュナウザー
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    研究対象となったのは231頭、内訳は未去勢オス47頭、去勢済みオス63頭、未避妊メス25頭、避妊済みメス96頭。


    • 避妊去勢の状態に関わらず、関節障害の発生は0だった
    • ガンの発病率は未去勢オスで4%、未避妊のメスでは0。避妊去勢手術によるリスク増加は見られなかった
    • 乳腺腫瘍の発病は0、子宮蓄膿症は4%、尿失禁は発生しなかった
    • 推奨ガイドラインは、避妊去勢をする場合は獣医師と相談して適切な時期を決定する


    《参考URL》
    Assisting Decision-Making of Age of Neutering for 35 Breeds of Dogs:Associated Joint Disorders, Cancers, and Urinary Incontinence.
    https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2020.00388/full


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