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2022/04/27

結局のところ犬の拡張型心筋症とフードに関連はあったのか?

 

Mat CoultonによるPixabayからの画像 

2018年7月にアメリカ食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration=FDA)が「獣医療機関から犬の拡張型心筋症(DCM)の症例が増えていると報告が届いている。患者の犬に共通していたのは、エンドウ豆、レンズ豆、ひよこ豆その他豆類やポテトを主原料とするフードを食べていることだった」という警告を発表しました。

そして約1年後の2019年6月に、新しいデータや証拠は何もない状態ながらFDAは拡張型心筋症と診断された犬が食べていたフードで10例以上の患者があった16ブランドを発表しました。(Acanaのフードが狙い撃ちにされていたのを覚えている方も多いはず!)

その後2021年8月にアメリカのタフツ大学獣医学部が「豆と芋を多く使っているフード」vs「豆と芋が含まれないフード」を比較分析した論文を発表しました。

グレインフリーフードと心臓病に関する新しい論文

上にリンクを貼った当ブログの記事にも書いていますが、この研究を発表したタフツ大学の研究所はネスレピュリナ社が出資したもので、この問題に関して独立した研究機関とは言えません。また上記の記事で紹介した論文の結論も仮説にとどまっており、結局は曖昧なままです。

では独立した研究機関による調査報告はなかったのか?

この点について、動物科学者/動物栄養士であるリンダ・ケース氏がご自身のブログにグレインフリーフードと拡張型心筋症に関する研究をリストアップして、その結果を検証していました。

簡単にざっと紹介しますと

2020年にアメリカのカンザス州立大学が発表した研究では、実験用に作った穀物使用フードと穀物フリーフードを2週間それぞれ6頭ずつのビーグルに与えて、便に排出された胆汁酸の量を調査しました。胆汁酸はタウリンと結び付いているので、これを調べることで体内のタウリンの状態が分かります。結果はタウリンの状態は穀物の有る無しの影響を受けていませんでした


2021年4月には、イタリアのナポリ大学が、市販の穀物フリーフードを1つのグループに、同じメーカーの穀物が使用されているフードをもう1つのグループに50日間与えて血中および血漿中のタウリン濃度を測定しましたが、やはり違いが見られませんでした。


2021年5月のカナダのサスカチュワン大学による研究では、豆類のような食物繊維を多く含むフードを長期的に与えるとタウリンの状態に影響する可能性が指摘されました。米(穀物)及び5種の豆類で6パターンのフードを作り、それぞれをビーグルに7日間与えた結果、食物繊維の多い豆類のフードではアミノ酸消化率の低下が見られたが血漿中のタウリン濃度は正常に保たれた。長期的にタウリンの状態に影響を与える可能性は上記下線のアミノ酸消化率の低下が理由です。


2021年10月にはセントキッツネイビス連邦のロス大学獣医学部が、タンパク質源がエンドウ豆タンパクの植物性フードと従来の動物性タンパク質フードをそれぞれ12週間与える対照実験を行なっています。植物性フードを与えられた犬たちは4週目で血中および血漿中のタウリン濃度が高くなっていました。12週後の測定では血液や心臓に臨床的な変化は認められませんでした。


2021年11月アメリカのイリノイ大学もビーグルを使って対照給餌実験を行い、その結果を発表しています。原材料の45%を緑レンズ豆で作ったフードと、チキンミールを使ったフードを3ヶ月間与えて、血中および血漿中のタウリン値を測定したところ、2つのフードに差異は見られませんでした。

上記のように2020年から2021年の間に主に犬の体内のタウリンの状態を調べるためにフードの比較実験が複数行われたわけですが、ものすごくザックリと簡単に平たくまとめると......

「炭水化物が豆か米か」または「タンパク質が豆かチキンミールか」で比べたけれど、豆を使ったらタウリンが不足して心臓病につながるという確固とした証拠は見つからなかったよ! ってことです。

これらの研究は同じ条件で飼育されている研究用ビーグルを使って緻密に調査されているのですが、豆の割合が市販のフードでは見られないほど高かったり、動物性タンパク質のグレードがチキンミールまたはチキン副産物ミールで、過去に標的にされた”プレミアムフード”としての穀物フリーフードと比較するには無理があるなあという印象も持ちました。

豆を使用したフードで焦点となるのが食物繊維の多さなら、大豆ミールやコーンミールを使ったフードでも植物性の食物繊維の量はかなり多いはずで、参考にはなるが決め手にはならないという感じです。

Sanna JågasによるPixabayからの画像 

 しかし、2022年3月にアメリカのBSMパートナーズという獣医栄養学調査機関とミズーリ大学獣医学部が発表した調査結果は全く違う視点のものでした。フードの成分ではなく2010年以降のグレインフリーフードの売り上げと犬の拡張型心筋症の発症数の推移を比較してみたのです。

私がニコを迎えた2005年には穀物フリーのフードというのはまだ販売されていませんでした。穀物を使っていないことを売りにしたフードが出始めたのは2010年です。ちょうど人間の食べ物でもグルテンフリーが脚光を浴び始め、小麦を敬遠する人が目立ち出した頃です。

ペットフードでは小麦の他にコーンも粗悪原材料の筆頭に挙げられていたので、小麦やコーンを使っていないというのが穀物フリーフードのスタート地点だったと記憶しています。

話を調査研究の内容に戻しましょう。

穀物フリーフードまたは豆類を多く使ったフードを食べることで犬の拡張型心筋症が増えるなら、穀物フリーまたは豆類多めフードの売り上げ増加に比例して犬の拡張型心筋症も増えるはずでは?という仮説に基づいて、フードの売り上げと拡張型心筋症の発症数が調査されました。

穀物フリーフードが市場に存在していなかった2009年、当然ながら市場でのシェア率はゼロでした。10年後の2019年には穀物フリーフードの市場でのシェア率は全体の29%、ドライフードだけを見ると43%を記録しました。金額ベースで言えば2011年の9億ドルから2019年には54億ドルと6倍になっています。

では拡張型心筋症の方は増えていたのでしょうか?地域的な偏りがないようアメリカ全土の循環器専門動物病院88機関にデータの提供を依頼し、うち14の病院から計68,297件のデータを受け取ることができました。これらのデータの2011年から2019年にかけての件数の推移を分析したところ、発症数は増えも減りもしていない横ばい状態でフードの売上との関連は示されませんでした。

この結果について研究者は「データ収集に限界はあるものの、穀物フリーまたは豆を多く使ったフードを与えられている犬が激増しているにも関わらず拡張型心筋症の発症数は横ばいであった。これらのフードと疾患に関連があるという証拠は見つからなかった」と結論づけています。

私自身が2018年からこの穀物フリーフードの件を見てきた範囲では、穀物フリーフードと心臓病の関連を取り沙汰しているのはアメリカだけです。イギリスやオーストラリアでは全国の動物病院のデータを一括管理して怪我や疾患の統計を取るシステムがありますが、拡張型心筋症が増えているというニュースは見聞きしたことがありません。(私が知っている範囲では、ですが)穀物を使わず豆を多く使っているフードはイギリスでもオーストラリアでも、その他の国々でも多く製造販売されています。

拡張型心筋症というのは複雑な病気で、今のところ最も研究されているのは遺伝による要素です。食物による関連も無いとは言えませんが「市販の穀物フリーフードが疾患を引き起こす!」と言えるほど単純なものではありません。

そもそも市販の穀物フリーフードの原材料も処方も千差万別で一括りにできるものではないですしね。

今や時代は移り変わって、気候変動や戦争の影響で食材の確保が2010年代とは比較にならないほど厳しくなっています。世相としては「穀物フリーフードが云々」と悠長なことを言っている場合ではないという空気です。

植物性のフードが犬や猫の健康に影響するのかどうか?代替食として昆虫や外来種の魚などはどうなのか?と言った問題の方が重要とも言えます。

フードの原材料についてはSMILESブログで、アメリカを中心にしたフードを取り巻く環境についてはこのブログでまた紹介して参ります。

(筆が遅いのは許して😖🙏)








2021/08/29

グレインフリーフードと心臓病に関する新しい論文

                               Image by Daniel Dan outsideclick from Pixabay


皆さま覚えていらっしゃるでしょうか。グレインフリー(穀物不使用)のドッグフードが犬の拡張型心筋症と関連があるかもしれないという報道と、それに対して私がよく腹を立てていたことを。


 2018年にアメリカ食品医薬品局(以下FDAと表記)が犬の拡張型心筋症(以下DCM)の増加と豆類、ポテト類を使ったグレインフリーフードに関連があるかもしれないという発表を行い、大きな話題になりました。

ブログ記事 FDA警告とグレインフリーフードと心臓病


同じ件に関して翌年2019年にはFDAが具体的なブランド名を発表して、賛否両論を巻き起こしました。

ブログ記事 FDAからの情報更新、グレインフリーフードと心臓病


警告だとかブランド名発表などで消費者を大きく不安にさせたにも関わらず、グレインフリーフードとDCMの関連を示す証拠は何もなく、発表の根拠となった症例も524件と非常に少ないものでした。(その後、追加の報告で約1100件になっている)

そして2021年8月、この件に関してアメリカのタフツ大学獣医学部の研究チームによるリサーチ結果が発表されました。

https://www.nature.com/articles/s41598-021-94464-2

2019年の発表の際に犬のDCMに関連する可能性が指摘されたブランドのフードについて、従来の調査方法ではこれらのフードと病気の関連性が説明できませんでした。今回はメタボロミクスを応用した分析方法で以前に名指しされたブランド9種と比較のための他ブランド9種が調査されました。

ブログタイトルはグレインフリーフードと書きましたが、今回の報告ではグレインフリーは問題となっていません。豆類、ジャガイモ、スイートポテトを焦点にしています。


2つのグループのフードをメタボロミクス分析

                               Image by Sue Lee from Pixabay 


2019年のFDAの発表では、DCM診断と報告された犬が食べていたフードを調べ10頭以上の症例があった16種のブランドが公表されました。今回はその中から9種が選ばれ分析の対象となりました。
選択の基準はフードの原材料上位20種の中に豆類、ジャガイモ、スイートポテトを含んでいることでした。このグループを便宜上「豆&イモグループ」と呼びます。
比較のための対照グループはこの条件に該当しない9種のフードが選ばれました。どちらのグループのフードも具体的なブランドや商品名は発表されていません。

これらのフードの分析はメタボロミクス(メタボローム解析)の手法で行われました。メタボロミクスというのは元々は医学や生命科学の分野で用いられており、対象となる生体に含まれる代謝物を包括的に解析することで生命現象を理解するための学問領域です。
近年、この方法は食品中の生化学的化合物を分析するのにも使われています。(例えば、加工食品の原材料となる野菜や卵などをメタボロミクス分析して、そこに含まれる化合物を特定して一定の数値のものだけを使用することで安定した品質を追求するためなどです。)

このようにして2グループ18種のドッグフードに含まれる830種類の生化学的化合物が特定され比較されました。

研究者の結論とFDAの見解

2グループのフードの生化学的化合物を比較したところ、豆&イモグループで濃度が有意に高かった化合物88種、豆&イモグループで濃度が有意に低かった化合物23種が特定されました。濃度の高い化合物の中で最大のカテゴリーはアミノ酸関連化合物と生体異物/植物化合物でした。濃度の低い化合物の最大のカテゴリーはビタミンB群でした。

豆&イモグループで濃度の高かったアミノ酸関連化合物は心臓組織へのカルニチンの利用に影響を与える可能性が指摘されています。
また濃度の低かったビタミンB群はタウリンとカルニチン合成に必要なものです。

タウリンもカルニチンも心筋の収縮に必要な栄養素で、心疾患のある犬では不足しがちです。

そして豆&イモグループで濃度の高かった化合物はエンドウ豆との関連が示されていると研究者は述べています。
というわけで、まだ仮説の段階で証明はできないがエンドウ豆は「パズルの1ピースだ」という表現がされています。

アメリカ食品医薬品局(FDA)はこの報告に対して「エンドウ豆も他の豆類も長年に渡ってペットフード に使われてきたので、本質的に危険だという証拠はない。今のところエンドウ豆の使用禁止は検討していない」と回答しています。

またFDAはDCMの症例として報告された件数は1,100件と発表しており、グレインフリーではないフードを食べている犬も含まれていると述べています。

引っかかる点

なるほど、確かにメタボロミクスで分析して特定した化合物がカルニチンの利用に影響があり、その化合物はエンドウ豆と関連していると言われたら、エンドウ豆のせいだろうか?と思わなくもない......。

しかし、豆&イモグループのビタミンB群が少ないというのは理解に苦しむところです。ドッグフードに添加されるビタミン類はあらかじめ配合されたものが使われており、AAFCOの基準に沿っているためどの会社も大差はないはず。論文の中ではビタミンB群は熱に弱いので添加のタイミングで破壊されることもあるのかもしれないと書かれていますが、それなら比較対照グループでも同じようなことが起こるはずでは?対照グループのフードはどんなものを使ったのだろうか?

そして以前からずっと指摘されていることですが、とにかく症例が少ない。

例えばイギリスでは王立獣医科大学がVeterinary Companion Animal Surveillance System(獣医学コンパニオンアニマル監視システム、頭文字をとってVetCompassと呼ばれている)という非営利研究プロジェクトを運営しています。
これはイギリス国内の一般の動物病院で診察を受けた際のデータが全て集められてコンピューターに記録され匿名化されて各種研究に使われます。イギリスで犬の怪我や疾患を調査する際には必ずと言っていいほどVetCompassのデータが使われます。何しろデータの数が圧倒的です。
1年間に診察を受けた犬の総数が分母になるため、何十万頭という数の中から有病率などを割り出します。

何もこれを真似しようというわけではありません。外国では特定の病気について調査する時にこれだけのデータを使っているという一例です。
一方アメリカ全国の犬の登録数は7500万頭いると言うのに、大学病院や循環器専門医からFDAに報告があった症例1,100件での研究は「それでいいのか?」という気がします。

そして最大の引っかかりは、2019年の記事にも書きましたがこの研究を行ったタフツ大学獣医学部にはネスレピュリナ社が出資して建設した研究所があり、大学とピュリナが共同で運営しているという点です。

再度書くけれど、商業製品の調査をするのに利害の絡むライバル社と関係のある研究施設にアメリカ食品医薬品局という公的な機関が協力を依頼するというのは倫理的におかしい。

とりあえず続報を待つことにしましょう。



《参考URL》

2020/06/10

ドッグフードの『ヒューマングレード』具体的にはどういうこと? 

Image by A_Different_Perspective from Pixabay 


“ヒューマングレードのドッグフード”

プレミアムフードと呼ばれる、価格が高めで原材料のこだわりをアピールしているフードの中には「ヒューマングレードです」とうたっているものも多いですね。

けれどそれらのフードの全てが『ヒューマングレードのペットフード』と呼べるかと言うと、厳密には違うのです。
このブログのタイトル「アメリカの犬たち」の通り、以下に書くのは全てアメリカの話ですが、日本でもアメリカ産のフードは広く利用されていますし、AAFCOの基準を採用しているメーカーも多いので、参考になさってください。

ヒューマングレードという言葉の意味は人間用の基準が適用されているということですが、もっと平たく言うとヒューマングレード=「食用(人間が食べることができる)」という意味です。
つまりヒューマングレードではない製品は「非食用(動物は食べることができるが人間の食用にはできない)」ということです。

昔、ニコが家に来てまだ1〜2年目の頃「だいじなニコが食べるものだから自分でも食べてみよう」とドッグフードをかじってみたりトリーツを食べてみたりしていたのですが、上記のような理由でヒューマングレードではないものを試食してみるのはお勧めしません。
(そんなことする人はあんまりいませんけれどね😅)


ヒューマングレードフードと表示しても良い条件とは

人間が食べることができるというのは、単に人間の食用の原材料を使っているというだけでは十分ではありません。
米国食品医薬品局(FDA)および米国農務省(USDA)が定める次の要件が満たされていればフードのラベルにヒューマングレードと表示することが許可されます。


  • 製品の全ての原材料が人間の食用に適していること
  • 製品の製造、梱包、保管が連邦規則第21条第110章に則って行われていること。  
人間の「食用」の製品は栄養価と安全性の両方を保つよう処理、輸送、保管されています。一方「非食用」の製品は栄養価や輸送保管中の品質の維持のための要件が食用よりもずっと緩くなります。
原材料だけでなく、製造ラインや製品のパッケージ、輸送保管方法にいたるまで人間の食品と同じ基準が適用されている場合に限り、「この製品はヒューマングレードです」と表示することができます。

つまりヒューマングレードのペットフードは、そうでないフードに比べて安全性が高いと言えます。(または安全である可能性が高い)
この厳しい基準のためヒューマングレードのペットフードを名乗ることができる製品はあまり多くはなく、価格はかなり高くなります。


ヒューマングレードとペットフードグレード

Image by Mat Coulton from Pixabay 


「あれ?でも最近フードの説明でヒューマングレードってよく見かけるようになったけど?」と思われました?
よく見かけるのは製品そのものはヒューマングレードと呼ぶ基準を満たしていないけれど、原材料は人間の食用に適したものを使っているという製品です。

このヒューマングレードとペットフードグレードの差と言うのがまた曖昧なんですねえ。

鶏肉を例にとって見てみましょう。
ペットフードグレードの鶏肉というのはスーパーで売っているような胸肉やもも肉を切り取った後の鶏ガラです。鶏ガラと言うにはかなり肉が多く残っているものと考えてください。
(これに内臓肉や頭などを加えて高温加熱して脂を搾り、挽いて粉末にしたものがチキンミールです。ミールの場合は使用される肉の規定がまた少し違うのは、以前にも書いた通りです。)

フードの原材料一覧で鶏肉とかチキンとか書かれている製品では、肉が多く付いた鶏ガラが使われている場合が多いようです。
原材料の表示でわざわざ「骨抜きチキン」と書いてある場合は、鶏ガラではないですよという意味ですね。

「ヒューマングレードの鶏肉使用」と表示した場合は、精肉が使われています。
またヒューマングレードだからといってオーガニック(農薬不使用)というわけでもありません。

また、ペットフードグレードの鶏肉を使っている製品の品質が低いとは限りません。
ヒューマングレードの鶏肉を使った製品は高品質の場合が多いですが、ヒューマングレードの原材料使用がフードの品質を保証するわけではありません。


結局は総合的に判断することが大切

ちょっとまとめてみましょう。
ヒューマングレードのペットフードというのは、原材料の全てと製品管理や輸送保管など全てが人間の食品と同じ基準で製造されているという意味です。
価格もかなり高くなり、フリーズドライ、調理済みチルドタイプ(ホームメイドタイプを冷蔵で販売)、生食用冷凍パックなどが多いです。

ドライフードや缶詰フードで「ヒューマングレードの原材料使用」と表示されている場合、原材料(全てまたは一部)だけが人間の食用に適したものということです。

ヒューマングレードを標榜していなくても、高い品質のドッグフードはあります。ヒューマングレードの原材料使用という表示に必要以上に惑わされないことも大切です。

結局のところは原材料全体をよく吟味して判断しなくてはいけないということですね。

《参考URL》
https://thesciencedog.com/2019/01/15/tastes-like-chicken/
https://thesciencedog.com/2020/05/20/human-grade-dog-foods-some-science/

2019/07/04

FDAからの情報更新、グレインフリーフードと心臓病

Image by Ernesto Rodriguez from Pixabay 


2018年7月にアメリカ食品医薬品局(FDA)が、犬の拡張型心筋症(DCM)の増加とエンドウ豆、レンズ豆等の豆類およびポテト類を主成分とするドッグフードに関連があるかもしれないという警告を発表してから、ちょうど1年の2019年6月末に新しい情報が報告されました。
FDA Investigation into Potential Link between Certain Diets and Canine Dilated Cardiomyopathy

しかし結果から先に言いますと、確実なことは未だ何もわかっていない状態です。
FDAは、DCMと診断された犬の頭数や犬種など具体的なデータの発表と共に、診断された犬たちが食べていたフードのうち10例以上の報告があった16ブランドのリストも発表しました。

まずはFDAが発表した具体的な数字をいくつかご紹介します。

ここでカウントされている「FDAに報告された拡張型心筋症」とは犬または猫を対象として獣医師または獣医循環器専門医によって診断された症例を指します。
DCMと診断されなかった一般的な心臓に関する症状の報告は含まれません。

2014年1月1日から2019年4月30日までの間にFDAに報告されたDCMの症例は524件。
うち犬が515件、猫が9件。

一般的にDCMはドーベルマンやグレートデーンなど、大型犬〜超大型犬に多い遺伝性疾患と認識されています。

しかし515件のうち、複数の報告があった犬種は従来考えられていた犬種にとどまらず以下の通りです。

アフガンハウンド、オーストラリアンキャトルドッグ、
ビーグル、ベルジアンタービュレン、ボーダーコリー、
ボストンテリア、ブルテリア、チワワ、ダルメシアン、
イングリッシュコッカースパニエル、フレンチブルドッグ、
イングリッシュスプリンガースパニエル、
フラットコーテッドレトリーバー、ゴードンセッター、
アイリッシュセッター、ジャックラッセルテリア、
ソフトコーテッドウィートンテリア、マルチーズ、
ミニチュアシュナウザー、ポメラニアン
オールドイングリッシュシープドッグ、パグ
ポルトガルウォータードッグ、ローデシアンリッジバック、
ロットワイラー、ラフコリー、サルーキ、サモエド、
シュナウザー、シェパード、スタンダードダックスフント、
スタフォードシャーブルテリア、ヴィズラ、ウィペット、
ヨークシャーテリア、レトリーバー(G、L)

ここに1匹ずつの症例報告の犬種もプラスしたら「どんな犬種でもDCMに罹る可能性がある」と言えるくらいの種類の多さです。

また遺伝型DCMは7歳くらいのシニア期以降に表れる傾向がありますが
報告された症例はこれにも当てはまりませんでした。

診断された犬の平均年齢は6.6歳 年齢の幅は4ヶ月齢〜16歳
同じく 犬の平均体重は30kg     体重の幅は1.8kg〜96kg

性別は オス58.7% メス41.3%

診断された犬たちが食べていたものを調べると、515件中452件がドライフードでした。
他にはウェットフード、混合、手作り食、生食がありました。

診断された犬が食べていた市販のフードは91%がグレインフリーフードで、93%にエンドウ豆、レンズ豆が含まれていました。
動物性のタンパク質源は多様で、最も一般的だったのはチキン、ラム、魚でした。他にはカンガルーやバイソンなどのエキゾチックミートも含まれていました。
タンパク質源はどれかの種類が取り立てて多勢という傾向はありませんでした。

DCMにはタウリンの欠乏が関連しています。タウリンはタンパク質源に含まれるシステインとメチオニンの2種のアミノ酸から体内合成されます。
診断された犬たちが食べていたグレインフリーフードはどれもシステインとメチオニンの必要量を満たしていました。

FDAは該当する犬の血液、尿、便、DNAを採取して病理組織検査を行なっています。
検査は定期的に繰り返し行われているそうです。
フードも様々な方向からテストが繰り返されています。

(FDAのレポートは、どんなテストをしているかの説明に大半を費やしており、そのほとんどの行き着く先は「今のところ判らない」「さらなる調査を続ける予定」となっています。とてもカジュアルに言うと肝心な中身のないレポートです。)  

テストの内容の他に列記されているのは、FDAがどんな団体や研究者と協力しているかということで、これも消費者にとって役に立つ情報ではありません。

様々なメディアがセンセーショナルに取り上げている「拡張型心筋症に関連する可能性のある16ブランド」のリストですが、反対に言えばこれくらいしか他のメディアで取り上げられる情報がないからです。

しかしFDA自身がレポートの中で
"DCMの診断テスト及び治療は、複雑で高額な治療費がかかる可能性があるため、FDAへの症例の報告は実際よりもずっと少ないと考えられる"
と書いている通り、現実の世界で拡張型心筋症を患っている犬は報告されているよりもずっと多いはずで、その犬たちが何を食べているのかを調べる方法はありません。

以前にも同じことを書いていますが、愛犬を大学病院や循環器専門医に連れて来る飼い主がアカナのフードを食べさせている確率が高くても不思議はないでしょうし、ペディグリーなどの超低価格フードを食べさせている飼い主の割合は限りなく低いはずです。
そしてそういう激安フードを食べている犬がDCMを発症していたとしても気づかれない可能性も高いでしょう。

そのような側面を考えると、このリストに挙げられた16ブランドを避けることが問題解決につながるとは思い難いです。

とは言っても、愛犬にこのリストの中のフードを与えることは心配だという方のお気持ちは良くわかります。
その場合、単純にフードのブランドを変えるだけなく、いくつかのブランドをローテーションすることが大切です。
ローテーションすることで同じ種類の食材を長期間食べ続けることをある程度は防ぐことができ、影響を小さくすることができます。

またゴールデンレトリーバーやコッカースパニエルのように遺伝的にタウリン欠乏症になりやすい犬種はもちろんのこと、そうでない犬種もタウリンのサプリメントを摂ることは心臓の健康をサポートするために有効です。

タウリンのサプリメントについては一応かかりつけの獣医さんに相談してみてください。
良いサプリメントを処方してくださる場合もあるし、アドバイスを頂けることもあるかもしれません。
(残念ながら、相談しても満足の行く答えをもらえない場合もあります。)

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さて、ここからはFDAのレポートの内容とは別に、その裏側と言うか、ちょっとウンザリする話です。
                                     Image by Tumisu from Pixabay 
このレポートの中にFDAが協力を依頼している3名の獣医学及び獣医栄養学博士の名前が挙がっています。
その中の一人、タフツ大学のリサ・フリーマン博士は2018年にグレインフリーフードとDCMの関連について非常に”面白い”署名記事を書いています。

原文はこちら
A broken heart: Risk of heart disease in boutique or grain free diets and exotic ingredients

昨年FDAが最初の警告を出した直後の8月に発表された記事です。
フリーマン博士は犬の心臓病に関連する危険な食餌はグレインフリーフードだけでなく、ブティックフードと呼ばれる小規模な会社が作っているフード、エキゾチックと呼ばれる非伝統的な食材が使われたフード(カンガルーやバイソン、変わった果物など)そして手作り食や生食だと述べています。

博士の主張は以下の通り。
穀物は伝統的にドッグフードに使われている原料で悪者にされるべきものではない。
小規模なフードメーカーが風変わりな原材料で作るフードは、巧みなマーケティングで良いものだと思い込ませているだけ。
賢明な飼い主はフード製造の長い実績を持つ大規模メーカーが穀物やチキンなど従来の原材料で作ったフードを与えるべき。
そして何より、一般の飼い主はドッグフードを選ぶ時にラベルの原材料一覧を読むのをやめるべき!

びっくりして開いた口がふさがらなくなるか、鼻で嗤ってしまうか、怒り心頭になるかはお任せします。

そしてアメリカンケネルクラブは今回のFDAのレポートを紹介するに当たって、このフリーマン博士の言葉を引用しています。
未だ具体的な因果関係はわかっていないけれど、としながらも、専門家の意見として小規模メーカーを非難する言葉を誘導的に使っている。
原文→  What Dog Owners Need to Know About FDA's Grain-Free Diet Alert

タフツ大学にはピュリナが資金を出して設立し、大学の獣医学部と共同で運営している研究施設があります。もちろんフリーマン博士もこの施設の運営に携わっています。

また別の獣医学博士が所属するカリフォルニア大学デイビス校はロイヤルカナンやペディグリーのメーカーであるマースペットケアと、共同で研究をしたり研究施設を設立したりと言った40年に渡る協力関係があります。

3人の博士のうちの最後の方が所属するフロリダ大学もピュリナからの様々な形の寄付、共同研究を行っています。

ヒルズもまた、3つの大学の全てに寄付をしています。

大学を含めて研究機関はどこも資金集めに苦労していますし、企業が寄付や共同研究という形で資金援助をすることは悪いことではありません。社会全体としてはむしろ望ましいことです。

しかしFDAという公共の機関がドッグフードの安全性について調査をするに当たって、利害の絡む企業に関連する博士を採用するのは避けるべきでしょう。

マーズもピュリナもヒルズもトウモロコシや小麦などの穀類をたっぷり使ったフードを製造販売している大企業です。彼らにとって小規模メーカーがこだわりの原材料で作る高価格フードが売れることは、都合の良いことではありません。

このグレインフリーフードと心臓病の関連について、私が感じているモヤモヤを分かっていただけたでしょうか?

2019/04/12

除草剤の成分グリホサート とペットフード



(Image by Karsten Paulick from Pixabay ) ↑フードだけでなくこういうのも気をつけてね


モンサント社が開発した除草剤『ラウンドアップ』

アメリカ最大の農薬メーカーのモンサント社、その会社の除草剤ラウンドアップの発ガン性や食品への汚染についてはかねてから話題になっています。(モンサント社は2018年にドイツのバイエル社に買収されています。)

検索されると色々なニュースが出てくるかと思いますが「アメリカの犬たち」というブログタイトルの通り、ここでは犬に関することを書きます。

ラウンドアップの主成分は『グリホサート 』という化学薬品です。
2018年10月、アメリカのコーネル大学の生物工学および環境工学の研究者がグリホサート がどのくらい環境に波及し影響を与えているかという研究の一環として、市販されているペットフード中のグリホサート濃度を調査しました。

市販のペットフードのグリホサート 濃度は?

研究者たちは小売店から主要なブランドのドッグフードとキャットフード18種類を選び、調査分析を行いました。
18種類のフード全てが原材料に肉と野菜を含み、うち1種類は遺伝子組み換え作物不使用と認定されているものでした。
分析の結果は、全ての製品において1kgあたり約80〜2000μg(マイクログラム=100万分の1グラム。2000μg=2mg)の濃度でグリホサート残留物 が含まれていました。

家畜動物が低濃度のグリホサート に曝露した場合の影響に関するデータがなかったため、研究者は上記の分析結果を、グリホサート の対人間の許容摂取量ガイドラインと比較しています。
その結果、中央値の犬の曝露は、アメリカおよびEUで人間の許容摂取量として設定された数値の0.68〜2.5%と推定されました。
分析された製品のうち、最も汚染度の高かったもので比較すると、上記許容摂取量の7.3〜25%となります。

グリホサート はどの原材料に由来しているのか?


(Image by zefe wu from Pixabay )


研究チームは、グリホサート が製品中のどの原料に由来するのかを正確に特定することはできませんでした。
しかしグリホサート は動物に生体蓄積しないことが分かっているため、動物性タンパク質源である飼料動物に由来するとは考えられないとのことです。
製品中の総繊維量がグリホサート 濃度と相関していたため、植物性の原料由来であると考えられます。

グリホサート は除草剤ですので、本来なら作物そのものも枯らしてしまうおそれがあります。
そこでアメリカでグリホサート に強い耐性を持つように遺伝子組み換えされたトウモロコシおよび大豆が作られたことによって、グリホサート の使用量が劇的に増加したという背景があります。

それならトウモロコシや大豆が含まれる製品の汚染率が高いのでは?と思われますが、残念ながらこの研究ではそこまでは分かっていません。

もう一つ研究者を驚かせたのは、遺伝子組み換え作物不使用と認定された製品のグリホサート 濃度が高かったことです。
上記のトウモロコシおよび大豆の遺伝子組み換えの話と相反するように見えますね。
これはあくまでも私の推論ですが、遺伝子組み換え作物不使用と書いてあるような製品はもともとトウモロコシも大豆も使用されていないのではないかと思います。その上で、何かグリホサート が多く残留する他の原材料が使用されていたのではないでしょうか

研究者の見解は?


研究者は、グリホサート による直接的なリスクがあるようには見えないが、低用量とは言え長期的に摂取することの影響についてはまだ不明であるとしています。

研究者の一人は今回の調査でグリホサート 濃度が高かった製品を愛犬に与えていたそうですが、調査後はフードを変えたとのことです。しかし愛犬の健康状態に変化はなかったと報告しています。

私は論文全文は読んでいないのですが(有料だったもので、すみません😓)Science DailyとScience Directの要約を読んだところでは、研究者たちの論調は「まさかペットフードにこんなに含まれているとは予想以上だったので驚いたけれど、とても低い濃度だからそれほど心配しなくても大丈夫」という雰囲気を感じました😨


飼い主として、どう反応する?

以下は私個人の思うところです。
このコーネル大学の発表について「そうか、ペットフードから検出されているけれど微量だから心配しなくてもいいんだ。安心した!」...なんてことはありません。
当たり前ですが、そんなものが含まれていては困るし心配です。

しかし地球規模でこの除草剤が使用されている量を考えると、世界中どこの土壌にも水にもグリホサート が入り込んでいるのは間違いないでしょう。
なので、どんなに吟味したフードを選んでも、有機栽培の材料だけを使って手作りをしても完全にグリホサート から逃れることは不可能だろうなとも思っています。

だからと言って「何を食べても一緒」だとは思わないし「どうせ何もできないから」と諦めているわけではないですよ。
今の地球の環境では自分自身も愛犬も望ましくない化学物質を摂取してしまうことは、ある程度は避けられない。パニックになることなくそれを理解した上で、できる範囲でリスクの低い製品を選ぶようにしようと思います。

食物繊維を多く含む製品でグリホサート 濃度が高かったことが分かっているのは一つの手がかりになるでしょう。コーンや大豆を多用している製品も同様です。
可能であればオーガニック原料の製品を選ぶこともリスクの軽減になると思います。
腎臓や肝臓、免疫系の働きをサポートする高品質のハーブをプラスすること、腸内環境を良好に保つこと、常に適度な運動をすることで代謝を活発に保つこと、これらも健康リスクを軽減することに繋がります。

そして何より、ある程度は開き直って悩み過ぎずにいることも大切だと考えます。
食のことに疑心暗鬼になり過ぎてストレスになってしまっては、犬も人も免疫力も下がってしまう気がします。
何が危険度が高くて何がリスクが低いかを自分なりに勉強してできる範囲で実行し、犬が犬らしく生きるサポートをして笑って暮らそう、それが私の目標です。

あ、最後になりましたがバイエル社に対する規制を強くする署名活動などは世界中で行われています。何かを変えたいと思われる方はぜひ参加してみてくださいね。


《参考URL》












2019/04/04

ヒルズ・ドッグフードのリコールについて

ドッグフードに過剰なビタミンDで製品回収



2018年秋、アメリカのいくつかのペットフードメーカーから「製品中に過剰な量のビタミンDが含まれていることが判明した為、製品の自主回収を行います」という発表がありました。

自分でも良くないなと反省しているのですが、私は市販のドッグフードをあまり使わない為リコール情報は軽くチェックする程度で流してしまうことが多いのです。
けれど、そんな私でも去年の秋から始まって未だに終わらない「過剰な量のビタミンDに由来する製品回収」には「え?また?多いなあ」と思っていました。

「これはお知らせしておいた方が良さそう」と思い、ビタミンD の過剰摂取がもたらす健康被害の可能性について記事を一つ書いています。なぜビタミンDの過剰摂取が良くないのか、どんな症状が起きるのか説明しています。


ドッグフードに高レベルのビタミン混入で製品回収。犬の飼い主が知っておきたいこと。

一番たくさんの人の目に触れる場所にと思い、わんちゃんホンポにアップしたのですが、予想よりも反応が大きく「全然知らなかった」という人が多かったことにも驚きました。

最大の被害を出した大手メーカーの対応



上記の記事には書いていないのですが、今回の製品回収を行ったメーカーの中の最大手であるヒルズの対応は感心できるものではありませんでした。 

アメリカ食品医薬品局は2018年12月初旬に、ビタミンDの件で製品回収をしたメーカーをリストアップして発表しています。
高レベルのビタミンDの混入は、ペットフードのメーカーが原材料として仕入れているフード用マルチビタミンの業者がその配合を誤ったことが原因と伝えられています。

その業者から同じものを仕入れているメーカーには食品医薬品局からの通達がありますし、何よりも同業界内で大規模なリコールが起こっているのに知らない道理がないのですが、ヒルズはこの時点でリコールも行わず製品の製造と出荷を継続していました。

そして2019年1月下旬にヒルズはようやく製品の回収を発表しましたが、これは消費者から飼い犬の健康被害のクレームがあったことからでした。

他のメーカーとは販売量が桁違いに多い大手メーカーですから、その被害も桁違いでした。
2019年3月の時点でビタミンD過剰含有のフードに関連して命を落とした犬は数百匹、腎障害など健康被害に苦しむ犬は数千匹とも伝えられています。
皮肉なことに該当製品の中には処方食も多く含まれていました。もともと体調が悪かった犬たち、中でも腎臓の処方食を食べていた犬はビタミンDの過剰摂取で腎不全が急激に悪化して亡くなった例がたくさんあったようです。

1月下旬にヒルズが製品回収を行った際、ビタミンD過剰含有に該当するロットが公表されたのですが、その後アメリカ食品医薬品局が同社の他のロットも検査したところ、さらにビタミンD過剰の製品が見つかり、回収が延々と続いています。

ヒルズはビタミンの仕入れ先を非難するような論調のコメントを発表していますが、そもそもロット毎のサンプル抜き取り検査をしていれば簡単に発見できるエラーですし、回収をスタートしたのも他のメーカーに比べてずっと遅い時期でした。

当然のことながら、ヒルズに対しての集団訴訟はすでに複数起こっています。今後さらに増えていくことと思われますが、この対応なども引き続き注目して行きます。


日本への影響は?

日本に輸出された製品の中にも該当するものが少量ながらあったとのことで、日本ヒルズのウェブサイトでロット番号などが公表されています。

ヒルズの製品では、過剰なビタミンDの混入が確認されたのは缶詰ドッグフードのみでドライフードやキャットフードは安全とのことです。

他のメーカーではサンシャインミルズが複数のブランドで自主回収を行っています。このメーカーは小規模ながら日本で販売をしていますが、日本に輸出した製品の中には該当するものは無かったようです。
その他のメーカーは日本での販売はないと思うのですが、ヒルズ以外のビタミンD関連のリコールリストを貼っておきます。
https://www.fda.gov/animalveterinary/newsevents/ucm627485.htm


「私ならどうするかな?」という考察

さて、ここからは私が個人的に思うことです。
もし私がヒルズのフードをうちの犬たちに食べさせていたら、これを機会に全面的に止めることでしょう。メーカーが発表したロットの他に第三者の検査でさらに毒性のある製品が見つかったのですから、他は大丈夫と言われても信頼するのは難しいです。

もしなんらかの症状があって獣医師からこのメーカーの処方食を与えるように指示されたら、獣医師にその処方食は普通の製品に比べてどういう点が特別に違うのかを徹底的に確認して、それを踏まえた手作りにするか、もっと小規模なメーカーの処方食を探して「これではダメですか?」と確認するだろうと思います。

アニモンダ、フォルツァ10、ナチュラルハーベスト、などにも症状別の特別フードがありますし、宿南獣医師の療法食というものもあります。

以前にヒルズのフードの原材料にブドウが含まれているという記事を書いたことがあります。


リコール騒動の時に「そう言えばあれはどうなっただろう?」と同社のサイトで確認したら、原材料一覧からgrapeの文字は消えていました。
けれど、日本ヒルズのサイトの当該製品の原材料には相変わらずブドウが含まれています。

獣医師から処方されることも多いブランドですから「そうは言ってもこれ以外に与えるものがない」という方もいるかと思いますし、安直に「与えないでください!」とは言えませんが、本当に他の選択肢がないのかどうか、しっかり調べたり考えたりして大切な愛犬を守ってあげてください。


2019/03/05

短頭種の犬たちの健全性と福祉のために、オーストラリアの獣医師が訴えること


前回の記事はカナダの話でしたが、今回のはオーストラリアの獣医師の話題です。
「アメリカの犬たち」という看板に偽り有りですみません😅



photo by StockSnap


短頭種の犬の健康問題

2008年にイギリスのBBCが『Pedigree Dogs Exposure』(NHK放送時邦題『イギリス 犬たちの悲鳴 ブリーディングが引き起こす遺伝病』)を放送して以来、行き過ぎた犬種スタンダードや犬の健康を無視したブリーディングのせいで、純血種の犬の間に生まれながらの疾患や障害が蔓延していることが知られるようになってきました。

オーストラリアでは2016年にRSPCA(王立動物虐待防止協会)と獣医師協会が共同で、短頭種の犬の健康問題についての啓蒙キャンペーンが行われました。
そして今年2019年の初頭に、科学誌『Animals』に9名の獣医師が連名で、短頭種の健康がどれほど害されているかを具体的に示した論文を発表しました。
短頭種の中でも特にその傾向が顕著なパグ、イングリッシュブルドッグ、フレンチブルドッグ、ボストンテリアが多く取り上げられています。

また科学誌を購読する層よりもさらに一般的な飼い主に声を届けるために、ネット上で一般向けの記事を書き、無料での再利用を許可しました。
その内容をご紹介していきます。

慢性的な呼吸困難

短頭種の犬の健康の問題の中でも、特に深刻で数も多いのが呼吸に関するものです。
「短頭種気道症候群」または「短頭種気道閉塞症候群」と呼ばれるものですが、英語の頭文字を取って以降はBOASと表記します。
短頭種の犬はマズルの長い犬に比べてずっと口の中のスペースが狭くなっています。そこに鼻、舌、軟口蓋、歯が押し込まれているため、自動的に気道が狭くなり、呼吸に影響を及ぼしています。
姿勢や運動などで十分に酸素が取り入れられないと、BOASが起こります。

BOASの主な症状は以下のようなものです。
  • ゼーゼーヒューヒューという呼吸音
  • 呼吸困難
  • 吐き気
  • チアノーゼ
  • 異常な体温上昇
  • 失神
気温が高くなると、犬は舌を出してハアハアすることで体温調節を行いますが、短頭種の犬がそれをすると上気道が腫れて呼吸ができなくなり、生命に関わるリスクが高くなります。
パグ、フレンチブル、イングリッシュブルでは、他の犬種に比べてこの上気道障害が起こるリスクが3.5倍にもなると言われています。
多くの航空会社が短頭種の犬の搭乗を断っているのはこのためです。

起きて運動している時だけでなく、短頭種の呼吸問題は睡眠中にも続きます。
気道が塞がるのを避けるために、座ったまま眠ったり、おもちゃなどを咥えたまま眠ったりする犬も少なくありません。短頭種の犬の約1割は口を開けたままでないと寝ることができないのだそうです。

呼吸の問題は酸素を取り入れられないだけでなく、二酸化炭素を十分に排出できないことにもつながり、血中の二酸化炭素濃度が高くなることでphバランスが崩れ酸性血症を起こす恐れもあります。


問題は呼吸だけにとどまらない



呼吸の他にも極端に短い頭蓋骨のせいで起こる健康上の問題があります。
外見からわかりやすいのは目の問題です。パグは目が飛び出しているので目を怪我しやすいというのはよく言われますが、短頭種の犬ではその顔の形状のせいで瞼を完全に閉じられない障害が起こります。それが角膜腫瘍の原因となり失明につながる場合もあります。
短頭種の犬700匹を対象にした研究では、31匹に角膜腫瘍が発見されたのだそうです。これは短頭種以外の犬の約20倍の割合になります。

顔周辺だけでなく、脊髄奇形や歩行障害も、これら短頭種の犬の大きな問題です。ブルドッグやボストンテリアのチャームポイントと考えられているクルンと巻いた尻尾スクリューテイルは脊髄の変形によって起こったものです。
またパグの3匹に1匹は神経障害から来ると思われる歩行障害があるという研究結果も出ています。この神経障害も極端に短い頭蓋骨から来ていると考えられます。

顔のシワは皮膚疾患の温床となりやすく、それを搔こうとして飛び出した目を怪我するという二重の弊害も起こりがちです。

出産時にもその頭蓋骨の形が問題になります。短頭種の犬の出産では帝王切開が一般的で、フレンチブルやボストンテリアでは約8割、イングリッシュブルドッグでは約9割が帝王切開となります。

短頭種の犬は麻酔時のリスクも他の犬種よりも高くなるのですが、皮肉なことに手術を必要とする事態が多く起こるのも短頭種の犬たちです。

身体的な問題だけでなく、短頭種の短い顔は行動上の問題にも繋がっています。
マズルのある犬が恐怖を感じた時や、相手に近づくなという表現で唇を持ち上げ歯を見せる表情、短頭種の犬は構造上あの表情ができません。
これは犬同士のコミュニケーションにとって大きな障害となります。

また顎の形のせいで咀嚼能力が低下しています。犬にとって何かを噛むことはストレス軽減にもつながる行動なので、犬のストレスコントロールにも影響を与えます。

これは2016年にRSPCAが制作した短頭種の犬の健康に警鐘を鳴らす動画です。
1:28で示される犬の頭蓋骨をみると、この形がいかに不自然なのかが良くわかります。
1:33で登場する100年前のパグとブルドッグの姿もご覧ください。
                                        

にも関わらず!短頭種は人気犬種

書いているだけで、短頭種の犬たちが気の毒で泣けてきそうです。
けれども、飼い主でさえこれらの健康問題がここまで深刻なことだと知らなかったり、犬が変わった座り方をしたり不器用に歩く姿を「かわいい」で済ませて障害だと気づいていなかったりする例も少なくないのです。

そして新しく犬を飼おうとする人が、パグやフレンチブルの愛らしい顔に魅せられて購入するために、山のような健康問題を抱えた犬が次々に繁殖されています。

イギリスのケネルクラブUKKCでは2007年から現在までの間に、フレンチブルドッグの登録数は3104%増、パグは193%増、イングリッシュブルドッグは96%増になっているそうです。

オーストラリアのアANKCでは、フレンチブル11.3%増、パグ320%増、イングリッシュブルドッグ324%増となっています。

さらに購入者の好みは「より鼻ペチャで、より小型の犬」というトレンドを作り、商業ブリーダーがそれに応えて、より多くの健康問題を背負わされた犬を作り出しています。
                                
短頭種の中でも特に問題が顕著なパグ、フレンチブル、イングリッシュブル、ボストンテリアが話題の中心になっていますが、キャバリアキングチャールズスパニエルやペキニーズなど、他の短頭種の犬もここに挙げたような問題に無縁ではありません。

獣医師に期待される役割とは

Animals誌に論文を発表した獣医師たちは、獣医師なかでも開業医にとって、特定の犬種の問題を大きく取り上げることの難しさを指摘しています。

その難しさを一言で言えば「顧客が離れてしまう」これに尽きます。
病院に来る犬の中には当然短頭種の犬たちもたくさんいます。その飼い主さんたちにすれば、ここに書いたようなことを突きつけられれば、責められているような気持ちになったり、不快に思う人もいるでしょう。
それで多くの顧客が離れてしまえば、開業医などは死活問題です。

論文の著者である獣医学博士たちは、豪ニューサウスウェールズ州の獣医師の宣誓文を引用しています。
「動物福祉、動物と人間の健康、獣医療サービスの利用者と地域社会の利益のために獣医科学を倫理的かつ良心的に実践する」
この宣誓に基づいて、ブリーディングが原因で起きる犬の健康問題を指摘し、改善に手を尽くすことは職業上の義務であるとしています。

具体的には、これから犬を飼おうという人へは教育やアドバイスを。
短頭犬種の飼い主に対しては、すべての病気や障害の可能性を伝え、ライフスタイルの改善や予防のアドバイスをすること。そしてアクシデントで妊娠が起きないように避妊去勢処置を勧めること。

顧客に短頭種のブリーダーがいる場合には、健全なブリーディングのための教育や指導を行うこと。
ブリーダーが非協力的な場合、獣医師はケネルクラブと協力しての介入が可能なのだそうです。

短頭種の犬の他にも

人間が「愛らしい」と思う姿に近づけるために、犬としての健全性を犠牲にされている短頭種の犬たち。

彼らはあまりにもその問題が数多く顕著なために、行き過ぎた犬種スタンダードの代表的な例としてしばしば取り上げられます。
けれど短頭種だけでなく、バセットハウンドやダックスフンドの長い胴、ジャーマンシェパードの極端に傾斜した背中など、機能を無視した犬種スタンダードの犠牲になっている犬は多く存在します。

また猫ではスコティッシュフォールドは、人間が作り出した悲劇の最たるものです。
折れ曲がった耳が可愛らしいからと、折れ耳の猫を選択して繁殖させ猫種として固定させたものです。
しかし折れ耳は遺伝子の変異で起こった軟骨の奇形であり、その影響は耳だけでなく手足にも現れ、歩行障害や痛みに生涯苦しむ猫を作り出す結果になりました。

この問題について知る人、考える人が1人でも多く増えていくことを心から望みます。
一朝一夕に片の付く問題ではありませんが「可愛いからと言って何をやってもいいなんてことはないんだよ」と声を大にして伝えたいと思います。


《参考URL》


2018/09/30

FDA警告とグレインフリーフードと心臓病


(image by GDJ )

2018年7月にアメリカ食品医薬品局(FDA)が発表した「獣医療機関から犬の拡張型心筋症(DCM)の症例が増えていると報告が届いている。患者の犬に共通していたのは、エンドウ豆、レンズ豆、ひよこ豆その他豆類やポテトを主原料とするフードを食べていることだった」という警告が出されたことはご存知の方も多いかと思います。

この件はアメリカでも大きな騒ぎとなり、ドッグフード市場はちょっとしたパニックに陥りました。

上記原材料はグレインフリー(穀物不使用)フードに使われていることが多いため「グレインフリーのフードを食べると心臓病になる!」と言うヒステリックな情報が飛び交いました。

日本でもFDAの最初の警告は犬関連のサイトなどで取り上げられましたが、その後の追加など詳細は届いていないですよね?
もっと早くに紹介できれば良かったのですが、なかなか手が回らず遅くなってしまいました。

前回の記事で紹介した「犬と炭水化物」についての考察を書かれたリンダ・ケイス氏の書かれた文章とFDAの追加情報をベースに、私の考えたところも交えて書いていきます。


最初にクリアにしておきたいこと

  • 最初の警告には「エンドウ豆、レンズ豆、その他の豆類、ポテト、これらのたんぱく質、デンプン、繊維などの成分が原材料一覧の前半に多く列記され、それらが主成分であることを示しているフード」と書かれており、グレインフリーのフードという言葉は出て来ていません。
  • さらにFDAは上記原材料と拡張型心筋症(DCM)の因果関係についても「今の所わからない」と発表しています。
  • FDAは最初の発表では症例の件数に言及していませんでしたが、のちに「最初の発表時には犬30件猫7件の心臓病が散発的に報告された」と述べています。また獣医学心臓医のコミュニティでは約150件の報告が寄せられているとのことです。
  • FDAの発表では具体的なメーカーやブランド名については一切触れられていません。

注目すべきはグレインではなくタウリン

FDAの最初の発表の後、アメリカの犬ブロガーや獣医師が無分別に「グレインフリーのフードが危ない」と書き立てたために、大げさ過ぎたり不確かだったりする情報が独り歩きしています。

リンダ・ケイス氏は犬情報サイトWhole Dog Journal に、この拡張型心筋症と食餌の関連について詳しいレポートを寄稿しています。
私がここで書いていることはケイス氏の記事から得た知識や情報を参照しています。彼女の書いたものが、たくさん読んだ記事の中で最も冷静で、過去の研究で明らかになっていることをベースにしており、公平だったからです。
また、自分自身がFDAの発表を読んだ時に感じたり考えたりしたことと共通する部分もありました。

今回FDAが特定の原材料とDCMの関連を取り上げていますが、DCMにはタウリン欠乏症が大きく関係しています。
簡単に言えばタウリンが欠乏すると心臓は健康な機能を保てなくなります。
今回FDAに報告された犬も血中のタウリン濃度が低下している犬が多く、タウリンの補充が有効だったことが判っているそうです。

実はドッグフードの原料とタウリン欠乏症の関連については、過去にも取り上げられ因果関係が明らかになっているものも多いそうです。
それを元に考えると、今回の豆類やポテト類のことも見えてくることがあります。

                              
(photo by ulleo )



タウリンの再利用、タウリンの排出

タウリンというのはアミノ酸の一種ですが、多くの場合は肉類に含まれているシステインとメチオニンという2種類のアミノ酸を使って体内で合成されます。

過去15年間で、犬のタウリン欠乏については「ラム&ライスフード」「大豆をベースにしたフード」「米ぬか(ライスブラン)」「ビートパルプ」「高繊維フード」との関連が取り上げられています。


「ラム&ライスフード」については、原材料のラムミール(ラム肉ではない。ラムの枝肉から人間用の食肉を取り分けた後の、肉・骨・腱・脂肪などを細かく挽き加熱〜乾燥させたもの)の加工の過程でタンパク質が高温加熱で損傷し、システインとメチオニンがタウリン合成に利用できない状態になったと推測されています。(推測であって、証明
はされていない)またタンパク質を高温加熱した時に発生する物質はタウリンを分解する腸内細菌を増加させることが判っています。

大豆をベースにしたフードは、脱脂大豆をタンパク源として使っているフードです。肉や魚には天然のタウリンが含まれていますが植物性のタンパク質にはタウリンは含まれません。


また体内に取り込まれたタウリンは胆汁と結合して小腸に分泌され消化活動を助けるのですが、そのタウリンは本来はまた体内に戻って再利用されます。しかしその時に腸内に米ぬか、ビートパルプ、セルロース(不溶性食物繊維)が大量にあると、タウリンを便と一緒に排出してしまいます。これらの繊維源が低タンパク質のフードに含まれると犬の血中タウリンレベルを低下させることは、最近の研究で明らかになっているそうです。


これらのタウリン欠乏を起こさせると考えられる要因は複雑に絡み合っており、単純に「ラム&ライス」のフードを食べると心臓が悪くなる!というものではありません。ここに遺伝的な要素や、犬種特有の体質なども加味されて疾患へとつながるので、単純に「〇〇が含まれるフードはダメ」という主張は意味がないわけです。


今回FDAが問題にした原材料では、エンドウ豆やレンズ豆は植物性タンパク質が豊富な食材です。ですからこれらが多く含まれ、その分肉や魚が少ないフードではタウリン欠乏の一要素になり得ます。
またエンドウ豆、レンズ豆、ヒヨコ豆、その他豆類はどれも不溶性の食物繊維が豊富でもあります。
FDAが発表したリストの中のポテトにはジャガイモだけでなくスイートポテトも含まれます。スイートポテトも食物繊維が豊富な食品です。ジャガイモは不溶性の食物繊維はそれほど多くありませんが、含まれるデンプン質の一部が犬には消化しにくく食物繊維と似た働きをするのだそうです。

しかし、原材料一覧にこれらの食材が含まれていれば全てが危険というわけではありません。これらの原材料が使われているが、動物性のタンパク質も複数の種類が多く使われているフードや、問題の材料が使われてはいても原材料一覧の下位にある場合にはそれほど心配する必要はないと思われます。


グレインフリーに罪はない?


(photo by MartinPosta )

FDAの発表があった後、(あまり質のよろしくない)ブロガーや、フードや食事に関する知識があるとは思えない獣医師が「グレインフリーのフードは危険」と騒ぎ、中には特定のメーカーやブランドを非難する文章がネット上に溢れました。

そして非難されるメーカーやブランドは決まって小規模に高品質フードを作っている会社でした。


しかし、この騒ぎの最中にスーパーやペットショップで目につくフードの原材料一覧を片っ端から読んでいくと、グレインフリーのプレミアムフードどころか、動物性タンパク質が極端に少ないようなタイプのフードにも豆類やポテトが使われているものがたくさんありました。

また、FDAにDCMの症例が増えていると報告を出したのは心臓専門医を多く抱える循環器系専門病院でした。愛犬にそのような高度医療を受けさせる飼い主がグレインフリーのプレミアムフードを食べさせていても何の不思議もないのでは?と私は感じています。
(グレインフリーが本当に良いかどうかは別として)
反対に、スーパーで山積みになっている超低価格フードを食べている犬が心臓を悪くしても、気づかれることなく「寿命かな?」と亡くなっていくことがあっても不思議ではないと思うのです。
経済的なことを言うのは嫌らしい感じがしますが、統計を取ってみるとそうなるのではないかなと言う推測です。

しかし、そもそもグレインフリーが今までもてはやされて来たことには私は疑問を感じていました。犬は何千年にも渡って人間から穀物を与えられていたはずだからです。

......というわけで、豆類やポテトが含まれることが危険というわけではなく、フードの原材料一覧をよく見てバランスを考えてみてください。

そして、該当するフードを食べていても食べていなくても、何か具合が悪そうなことがあれば、迷わず病院に行ってくださいね。


《参考URL》











2018/09/05

犬と炭水化物、ブログThe Science Dogより


(photo by 137859 )


犬の食餌のことを考える時、手作りであれドッグフードであれ、常に悩ましく論争になりがちな問題のひとつが『炭水化物=でんぷん質』ですね。

「犬は本来肉食なのだから炭水化物は必要ない」「肉食である犬に炭水化物を与えることは体の負担になる」こんな意見もあれば、また一方で「犬は人間と長い年月一緒に暮らす間に炭水化物を消化できるように進化して来た」「エネルギー源としての炭水化物はある程度必要」という意見もある。

私はうちの犬たちには、炭水化物は常に与えて来ました。長い年月の間に何度か「え、やっぱりあんまり食べさせないほうがいいのかな?」と迷って炭水化物を減らし、犬たちの体重を適正に保てなかったこともありました。

そんな紆余曲折を経て、自分自身の中では結論が出ているのですが、この論争は相変わらずあちこちで火の手を上げています。

つい先日、普段よく読んでいるブログに「なるほど」と思った記事に出会いました。
ブログの名はThe Science Dog 著者はリンダ・P・ケイス氏、ドッグトレーナーで獣医学栄養士でもありサイエンスライターとして犬のトレーニングと栄養学について多くの記事を書いている人です。
(アメリカでの獣医学栄養士は、獣医師の資格を得た後にさらに大学で教育を受けて学位を取得しなくてはいけない難易度の高いものです。)

ケイス氏の文章を以下にまとめてみましたのでご覧ください。


(photo by Ella87 )


「犬と炭水化物」

このテーマが引き合いに出される時、必ず上がる2つの主題があります。

『犬は肉食動物であり、食餌に炭水化物は必要ない』?

この主題の前半は間違い、後半は本当です。
犬は雑食性の動物です。犬と雑食という言葉はしばしば議論の火元となりますが、雑食というのはただ単にその生き物が動物由来のものと植物由来のものを食べ、その両方から必要な栄養素を摂取できるという意味です。


「雑食性」という言葉は、犬が捕食者ではないとか、肉を食べることを好まないという意味はありません。肉からも野菜からも栄養素を得ることができる身体能力だけを表します。


後半部分に移りましょう。これはその通り、犬は栄養学的には炭水化物を摂取する必要はありません。
しかし調理済の炭水化物はとても消化の良いエネルギー源となり得ます。これはつまり犬の食餌に炭水化物が含まれているとそれがエネルギー源に回され、食餌中のタンパク質はエネルギー源となる必要がなくなり、身体組織の構築や修復、免疫系の支援のために利用できることを意味します。
したがって犬の食餌に一定の量の炭水化物が含まれることにはメリットがあると言えます。

 『犬は効率的に炭水化物を消化することができない』?

これは明らかに間違いです。犬は人間と同様に調理された炭水化物を効率よく消化します。

米、麦、トウモロコシなどを挽いて生の状態で犬に与えたときの消化率は約60%ですが、同じものを加熱調理した場合は消化率は100%近くまで上がります。


犬と炭水化物の消化については、2013年にスウェーデンのウプサラ大学のエリック・アクセルソン博士が、家畜化に関連する犬の遺伝的な変化を明らかにした論文を発表しています。


キーとなるのはAMY2Bと命名された遺伝子です。この遺伝子のコピー数は、膵臓で分泌するデンプン分解酵素の膵アミラーゼと関連します。
単純に言ってしまうと、AMY2Bという遺伝子のコピー数が多ければ、膵アミラーゼの分泌も多くなり、より高い炭水化物の消化能力を持つということです。
平均すると、犬のAMY2B遺伝子はオオカミの約7倍も多いことが判っています。人間が調理した穀類を食べ、犬がその残飯を食べていたことから、犬の身体は炭水化物を消化しやすい形に進化していったのだろうと考えられています。

このように、犬は炭水化物を消化吸収することができ、かつ炭水化物を摂取するメリットもあります。
しかし、それは犬が炭水化物の割合が高い食事を摂る方が良いということではありません。


ではどんなバランスの食餌が犬にとって理想的なのか?

近年の栄養学では、多くの鳥類、魚類、哺乳類など幅広い種の生き物が、たんぱく質・脂肪・炭水化物が一貫して含まれる食べ物を自ら選択し、健康に最適と思われる摂取量を調整してバランスを取っていると言われています。

犬よりも先に研究されたイエネコの場合、猫たちは一貫してタンパク質と脂肪が多く炭水化物が少ない食事を選択することが判明しました。これは野生のネコ科動物と一致しています。

犬の場合、自主的に食べ物を選択させると脂肪およびタンパク質が多く炭水化物が少ない食事を選びました。
エネルギー量の割合で言えば、犬の選択は30〜38%のタンパク質、59〜63%の脂肪、3〜7%の炭水化物でした。ただし、実験開始当初はこのように高脂肪の食餌を好んだのですが、数日のうちに脂肪の割合が減りたんぱく質の割合が増えていきました。

犬が食事の栄養素の割合を選択できるようにする実験を10日間行った時、彼らはカロリーを過剰に摂取する傾向があり、平均すると10日間で約1.5kgの体重の増加があったそうです。


また、同じことをオオカミで実験すると炭水化物が1%しかない食べ物を選んだということです。




総合すると......

  • 犬は先祖のオオカミ(および現代のオオカミ)と比べて、炭水化物をよりよく消化することができます。
  • この消化能力のアップは、遺伝子の変化で膵アミラーゼ(消化酵素)の産生が増えたことも一因です。
  • そのため犬は調理された炭水化物を非常に効率的に消化します。
  • 犬の食生活に一定レベルの炭水化物を含めることは、効率の良いエネルギー源となり、タンパク質の有効利用にもつながります。
  • 犬は選択肢を与えられると、炭水化物が少なくタンパク質と脂肪が多い食事を優先的に選択します。このタイプの食餌を制御なしの自己選択で与えた場合、過剰消費と体重増加につながる可能性があります。




しかし、上記の情報のいずれも「犬が炭水化物を摂取しないこと」または「犬が一定量の炭水化物を摂取すること」が、犬の活力、健康状態を維持する能力、慢性的な健康問題の発症や寿命の長さになんらかの影響を与えるという証拠にはなりません。

また犬がタンパク質や脂肪が多く炭水化物が少ない食事を好むという事実は、そのような食餌がより健康的であるとか病気を予防する証拠であると混同してはなりません。
現時点では、私たちは単に知らないのです。

以上、緑の字の部分がケイス氏のブログを要約したものです。
「犬と炭水化物」について、きちんと判明していることと、未だ判っていないことがはっきりと述べられているので、情報の整理にも役立つのではないかと思います。

犬は他の動物に比べてあまりにも長く人間と一緒に暮らしているので、犬たち自身も食べ物の理想のバランスには自覚がないように見えますね。

この記事に先駆けて再掲した「犬に穀物、与えるべきか?避けるべきか?」を最初にdog actuallyにアップした時SNSなどで「だから結局どっちなの!?」というコメントがいくつか付いたことがありました。

でも生き物の体の問題は白か黒か、ゼロか100かでスパッと割り切れるものではないのです。
ケイス氏の文章はそのことをよく表していると思います。

やたらと炭水化物の割合が高い市販のフードも、「犬に炭水化物?とんでもない!」という極端な意見も、個々の犬に目を向けることを忘れている気がします。



下のリストはケイス氏が参照した論文です。興味のある方は読んでみてくださいね。

参照 The Science Dog ~Dogs and Carbs, Its Complicated 


  1. Axelsson E, Ratnakumar A, Arendt ML, et al. The genomic signature of dog domestication reveals adaptation to a starch-rich diet. Nature 2013; 495:360-364. https://www.nature.com/articles/nature11837
  2. Arendt M, Fall, T, Lindblad-Toh K, Axelsson E. Amylase activity is associated with AMY2B copy numbers in dogs: Implications for dog domestication, diet and diabetes. Animal Genetics 2014; 45(5):716-22. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24975239
  3. Arendt M, Cairns KM, Ballard JWO, Savolainen P, Axelsson E. Diet adaptation in dogs reflects spread of prehistoric agriculture. Heredity 2016; 117(5):301-396. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27406651
  4. Reiter T, Jagoda E, Capellini TD. Dietary variation and evolution of gene copy number among dog breeds. PLOSone 2016; 11(2):e0148899. https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0148899
  5. Hewson-Hughes AK, Hewson-Hughes VL, Miller AT, et al. Geometric analysis of macronutrient selection in the adult domestic cat, Felis catus. Journal of Experimental Biology 2011; 214(Pt6):1039-51. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21346132
  6. Hewson-Hughes AK, Colyer A, Simpson SJ, Raubenheimer D. Balancing macronutrient intake in a mammalian carnivore: disentangling the influences of flavor and nutrition. Royal Society of Open Science 2016; 3:160081. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27429768
  7. Hewson-Hughes AK, Hewson-Hughes VL, Colyer A, et al. Geometric analysis of macronutrient selection in breeds of the domestic dog, Canis lupus familiarisBehavioral Ecology 2013; 24(1):293-304. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23243377
  8. Roberts MT, BErmingham EN, Cave NJ, Young W, McKenzie CM, Thomas DG. Macronutrient intake of dogs, self-selecting diets varying in composition offered ad libitum. Journal of Animal Physiology and Nutrition 2018; 102(2):568-575. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29024089

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