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2019/02/27

カナダの先住民居留地で成功しつつある野犬対策

このブログはタイトルの通り、アメリカの犬のことをメインに書いているのですが、今回はカナダのお話です。ちょっと例外。


カナダのシクシカ地区の野犬対策


(photo by SandeepHanda )



日本でも多くの地域で野犬の増加が問題になっていると聞きます。
そして絶望的に大きく失敗している広島を始めとして、何か効果的な対策を講じた自治体というのはまだ耳にしたことがありません(私の勉強不足で、有ったらごめんなさい。)

ここで紹介するのはカナダの先住民居留地での野犬対策です。
先住民居留地というのは、古い言い方ではカナダ・インディアン、現在はファースト・ネーションと呼ばれているカナダの先住民の人たちのために政府が定めた特別居住区です。
カナダ全体のファースト・ネーションの約半数の人々が居留地に住んでいるのだそうです。

その居留地の一つ、アルバータ州の都市カルガリーの東に位置するシクシカ居留地がこのお話の舞台です。

この地域の人々の犬との付き合い方は昔ながらの放し飼いです。犬の所有者はあいまいな感じで、犬たちは居留地の中を自由に歩き回り、地域全体でゆるーく犬を見ているというものだそうです。

しかし数百年前にファースト・ネーションの人々だけがこの地に住み、犬と共に狩りなどをしていた時代のようには、犬と人の共存は機能しなくなっています。

放し飼いの犬たちはあちこちで子供を産み、所有者のいない野犬となって増え続けてしまいました。
放し飼いの犬も野犬も一緒になってうろつき、ゴミなどを漁るようにもなりました。
そして2016年には子供の被害を含む、野犬による深刻な事故が相次いで、シクシカの法務機関が対策に乗り出しました。


Alberta Spay Neuter Task Force

自治体の機関が対策を立てるに当たって最初に行ったことは、先住民居留地の犬たちを専門にしている犬の保護団体『Alberta Spay Neuter Task Force=アルバータ避妊去勢任務部隊』(以下ASNTF)に連絡を取り相談することでした。

ASNTFは一般からの寄付金だけで運営しているNPOです。2008年以来、8つの避妊去勢専門クリニックを建てて安価な避妊去勢手術を提供し続けています。

ASNTFは自治体の依頼を受けて、パートナーとしてシクシカ居留地の野犬対策に立ち上がりました。

対策は、国際コンパニオンアニマルマネージメント白書が推薦する方法と、同団体の経験および専門知識に基づいて、5つのそれぞれに違う方向から立てられました。


・法による規制

これは犬に関する法律を作ることと、その法を執行していく組織を作ることの2つの柱から成ります。

シクシカ居留地内の犬は全て鑑札登録されることが義務付けられました。登録さえすれば今のところは、従来通り犬の放し飼いは認められています。
鑑札登録で個体識別がし易くなり、飼い主がいないことがわかった犬は捕獲して保護施設に入れられました。
法を執行する機関として動物ケア&コントロール官が制定され、上記の任務に当たっています。
ASNTFはこれらの活動の指導とトレーニングを提供しました。

・住民への教育

犬との付き合い方、飼育の仕方について住民の意識向上のための教育はASTNFが行いました。
地域のイベントにはブースを出して参加し、デモンストレーションを行いました。また地元の教育者と協力して学校のためのカリキュラムやプログラムを作成し実施しました。
大人向けの教育プログラムも作成し戸別訪問で野犬対策の説明なども行いました。

・避妊去勢の徹底

ASNTFはこの地区にも避妊去勢クリニックを開いて、住民向けに安価な手術を提供しています。
また犬の鑑札登録の際、犬が避妊去勢手術を受けていれば登録料が無料になるようにして、避妊去勢率を上げるようにしています。
所有者のいない犬たちも、保護施設で避妊去勢手術を受けます。

・保護施設への収容

鑑札登録をしていない犬、そして咬傷事故歴のある犬は保護施設に収容されました。
犬たちはここでリハビリテーションを受けて、新しい家庭へとリホームされます。
リホームが難しいと判断された犬は、別の協力保護団体のサンクチュアリ施設で生涯を過ごします。

・食料資源へのアクセスを制限

ASNTFは、放し飼いの犬たちには飼い主が決まった場所で決まった時間に給餌するようプログラムを設計しました。フードも保護団体から提供されます。
またコミュニティ全体に犬が荒らせないゴミ容器を設置し、犬が拾い食いすることを制限できるようにしました。
家庭で給餌されればゴミを漁らずに済むし、ゴミを漁っている時に人間に追い払われればエサを奪われると思って咬みつく事故にも繋がりますから、これは大切なことです。

(photo by Activedia )


成果

上記のような取り組みの結果、2017年は犬の咬傷事故は前年比32%減少しました。数字に現れている部分だけではなく、住民の多くが「以前よりも安心して道を歩けるようになった」と感想を述べています。

ASNTFはこの成果について「ただ犬を捕獲して収容するだけでも、避妊去勢するだけでもこの結果は出せなかったでしょう。多角的な方向から取り組むことが成功のポイントです。中でも住民への教育は我々の活動の焦点と言えます。」と述べています。


この多角的な方向からの総合的な取り組みというのは日本の(失敗している)自治体には見られないものです。
何もこれと同じ方法を取らなくてはいけないと言うのではありません。
けれども、自治体は何も新しいことに取り組まずに、特定の保護団体に機械的に犬を送り続ける方法では状況が改善しないことは明白です。

野犬と言えば、悪名高いのはロシアやルーマニアですが、伝え聞くところでは片っ端から殺処分するのが彼らの方法です。しかし野犬の問題が解決に向かっているとは言えないようです。
これらの国の野犬がたいへん危険なのは、人間から犬への暴力的な扱いも理由の一つではないかと思います。

シクシカ地区で咬傷事故が減ったのも、犬側の問題よりも人間への教育が功を奏したのではないでしょうか。
犬への正しい接し方を教育する一方で、この地域の昔からの文化である犬の放し飼いという部分には寛容であることも、この対策の注目すべき点だと思います。

文化や背景が全く違う外国のやり方を全面的に目標にするよりも、いろいろな事例をたくさん知って消化することは大切です。

カナダのこの例は、日本の自治体にも参考になるところが大いにあるのではないかと考えます。


2018/03/13

ヒルズ・ドッグフードの原材料一覧にある「ブドウ」の表記

犬に食べさせてはいけない食べ物のリストに必ず入っている「ブドウ」
玉ねぎやチョコレートの次くらいにはメジャーな危険食べ物ですよね?

それがドッグフードの原材料に使われていたら?
しかも原材料一覧にしっかりと表記されていたら?
「え?なんで?」って思いますよね。さらにそれが療法食のメーカーとしてよく知られているヒルズのフードだと言うと、驚かれる方も多いのではないでしょうか。

ブドウやレーズンがなぜ犬や猫にとって危険なのかというメカニズムは今のところ明らかになっていません。けれどもブドウまたはレーズンを食べて腎不全が起こった例は多数報告されています。
どうしてそんなものがわざわざ原材料に使われているのでしょうか?


ヒルズ・サイエンスダイエットとブドウ

ペットフードに関する情報をかなり冷静に伝えるTRUTH about pet food.comというサイトがあります。ヒルズのドッグフードのブドウ問題は、あるペット用品店オーナーが顧客から「ドッグフードにブドウが入ってるけど大丈夫?」と質問を受け、各所に問い合わせをした経緯として掲載されていたものです。

ペット用品店オーナーはペットフードの原材料に関する法規や規制にたいへん造詣の深い人で、サイトに問い合わせる以前に食品医薬品局(FDA)、ヒルズ社にも問い合わせをしていました。

原材料の一覧にGrape(ブドウ)が含まれていたのは、サイエンスダイエットの小型犬成犬用、同じく小型犬7歳以上用、もうひとつはプリスクリプションダイエット(療法食)ブレーンエイジングケア用でした。

日本で販売されているサイエンスダイエットの同じ種類のものを確認したら、こちらも確かに原材料一覧の真ん中あたりにブドウの表記がありました。
療法食ではブレーンエイジングケアというものは日本のサイトでは見つかりませんでした。

こちらが、同社のサイトに掲載されている原材料一覧です。
トリ肉(チキン、ターキー)、トウモロコシ、小麦、米、動物性油脂、トリ肉エキス、植物性油脂、亜麻仁、ポークエキス、トマト、柑橘類、ブドウ、ホウレンソウ、ミネラル類(ナトリウム、カリウム、クロライド、銅、鉄、マンガン、セレン、亜鉛、ヨウ素)、ビタミン類(A、B1、B2、B6、B12、C、D3、E、ベータカロテン、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、 コリン)、アミノ酸類(タウリン)、酸化防止剤 (ミックストコフェロール、ローズマリー抽出 物、緑茶抽出物) 
 https://www.hills.co.jp/dog-food/sd-adult-small-and-toy-breed-dog-food-dry より

FDA、ヒルズ社、AAFCOとのやりとりの経緯

さて元々の情報がアメリカのものですので正確に書きますと、アメリカのパッケージに原材料として表記されていたのはDried Grape Pomaceという名称でした。Pomaceというのは搾りかすです。ジュースなどを搾った後のブドウの搾りかすを乾燥させたものです。

(日本のペットフードの原材料の表記ではミールも副産物も「肉」と表記してもOKなのと同様に、乾燥させた搾りかすもブドウと表記しているようですね。同様に「トマト」「柑橘類」と書かれているのも英語表記ではDried Pomace。ジュースなどを搾ったあとの繊維を乾燥させたものです。)

件のショップオーナーは、まず食品医薬品局(FDA)のサイトでDried Grape Pomaceというものが「安全と認められる動物飼料原材料のリスト」に含まれているかを確認しました。
答えは「NO」 FDAが安全と認めている原材料ではないということです。

次にヒルズ社に問い合わせをしたそうです。
回答は「すべての原材料は安全なものです」というもので、「ブドウとブルーベリーの混合エキスの安全性について」という研究のリンクが添付されていたそうです。
はい、率直に言って「話にならない」ですね。

そこでショップオーナーはTRUTH about pet food.comに連絡を取り、サイト管理者がAAFCOに問い合わせをしました。
AAFCOとはアメリカ飼料検査官協会の頭文字を取った略称で、すべての動物飼料の表記や原材料の規定をしている機関です。

AAFCOでは法に沿ったペットフードの原材料の定義を規定しています。この中にDried Grape Pomaceというものの定義は含まれておらず、それはすなわち原材料として使用してはならないということです。
ブドウの前に表記されているトマトDried Tomato Pomace や柑橘類Dried Citrus Pulpは使用が認められていて、AAFCOに定義が在るものです。
(わかりやすく言えば、使用しても良い原材料を決めるのはFDAや各州の農業省。AAFCOはそれら原材料の一覧を作ってそれぞれを定義する辞書を作っている。辞書に載っていないものを原材料にすることはできない。)

ヒルズ社の工場があるケンタッキー州の農業省はヒルズ社に連絡を取り、原材料からブドウを取り除くことと、パッケージの表記を訂正することを指導する予定だそうです。指導に従わない場合には同製品を流通から撤退させることが命令されます。




(photo by HG-Fotografie )


なぜわざわざブドウを使ったのかは謎のまま

ヒルズ社への問い合わせの結果は上記のようなものですし、農業省からヒルズ社への指導の結果はまだ一般にはわからない状態ですので、なぜドッグフードにブドウが使われたのかはわからないままです。
(キャットフードには使われていません。)

犬に食べさせてはいけないと言われる食品なのにドッグフードに使われることがあるものと言えば、アボカドとニンニクがあります。
しかしこれらは危険のメカニズムが明らかになっていて、安全な種類や使用量が明確なので、メーカーがリスク管理をすれば栄養面などのメリットが享受できるものです。
しかしブドウはなぜ健康被害が出るのかがわかっていないので、管理のしようがありません。

個人的にはヒルズのフードは、動物性たんぱく質がミールという形でしか使われていないこと(日本語ではチキンとかビーフとか書かれていますが、中身はミールです。)と、穀類の量が多すぎると感じるので、うちの犬たちに食べさせようとは思いません。
でも健康被害が出るかもしれず、AAFCOの定義していない原材料を使うというのは、別の次元の話ですよねえ。

アメリカでは前述したような措置が取られるようですが、日本では指導などはないと思います。(改めて調べておきます。)
危険な可能性のあるフードを食べさせたくないという方は、このブドウの件を心に留めておいてくださいね。

《参考URL》

2018/03/12

アメリカンドッグフードの表示規定2

長かったので2つに分けた記事の後半です。
本文の中でも書いていて、繰り返しになりますが、
ミールや副産物が使われている=4Dミートが使われているではありません!

他の部分にも目を向けて、総合的にフードの品質を判断することが大切です。


(以下dog actually 2012年4月23日掲載記事より)
(photo by Counselling )



さて、先にあげたルールのパーセンテージの規定にはミールや副産物は含まれないと書きました。ではミールや副産物ってなんでしょう?牛肉や鶏肉などの肉との違いは?
FDAでは牛肉や鶏肉など「肉」の定義を「屠殺された動物の筋組織」としています。

「ミール」の定義は「血液、毛、角、皮、胃、腸、またその内容物を除いた動物の組織を加工したもの」としています。
なんだかちょっとオドロオドロしい感じで、イメージが湧きにくいですね。

ミールはペットフードのパッケージの原材料一覧の中ではチキンミールやラムミールという形で表示されているのが普通です。AAFCOの定義では「細かく挽き、乾燥させた動物の組織。血液、毛、ひづめ、角、皮、胃腸とその内容物は含まない。」としています。簡単に言えば肉を挽いて乾燥させたものですね。フィッシュミールの場合は丸ごとの魚を細かく挽いて乾燥させたものを言います。
これらミールは上記ルールのパーセンテージの規定外ですが、フードの原材料の中でタンパク源としての大きな役割を果たしています。

副産物(by-product)は食肉副産物とかチキン副産物という形で表示されます。
AAFCOは食肉副産物を「肉以外の動物の組織。肺、脾臓、腎臓、脳、肝臓、血液、骨、胃、腸、その内容物を含む。ただし毛、角、歯、ひづめは含まない。」としています。チキン(家禽)副産物は「肉以外の家禽の組織。頭、首、足、卵管内容物、腸を含む。ただし羽は含まない。」としています。

このミールと副産物、「プレミアム」と呼ばれるフードでは使っていないことを大きく宣伝に使ったり、フードの選び方指南等では副産物は避けましょうと言われているのもよく目にします。実際に原材料一覧を見て副産物が使われていないフードを選んでいる方も多いのではないでしょうか。

しかし食餌を手作りしている方などでは、わざわざ鶏の頭や足を買って来て与えたり、内臓肉を取り寄せたりしている人もたくさんいます。それとフードに含まれる副産物とでは何が違うのでしょうか?
それはFDAが定める規定の違いです。FDAは動物向けの飼料のミールや副産物には「屠殺以外で死んだ動物の組織」を使うことを許可しています。人間の食料としては流通することができない、病気や事故で死んだ食肉動物(いわゆる4Dミート)ということですね。
誤解のないように書いておくと、全てのミールや副産物が病気や事故で死んだ食肉動物から作られているというわけではありません。普通に食肉用に屠殺された動物の肉や内臓肉を使っている製品も多くあります。そこは製造している会社を信用するしかないところです。

ところで今回この記事を書くにあたり、日本で販売されているドッグフードの原材料一覧を色々見て驚いたことがありました。
それはアメリカと日本両方で販売している同じ製品で、アメリカの原材料にはby-productとあるのに日本の原材料表では「副産物」の文字を見ることが非常に少なかったこと。アメリカと日本で処方を変えている?そんなことをしたら値段が3倍にも4倍にもなってしまうはず。

答えは簡単。日本での原材料表示は鶏肉も鶏肉副産物もチキンミールも全部一緒にして「鶏肉」「チキン等肉類」というような書き方が許されているから。
2009年6月からペットフード安全法が施行されていますが、こんな言葉のトリックもたくさんあります。肉の種類の後に「等」「類」などと付いていない表示のフードもありますし、副産物を使っていることをきちんと表示しているフードもあります。

その辺りをきちんと見極めて選んでいくのは消費者の仕事。日本であれアメリカであれ、愛犬の為に目を光らせていたいものです。

アメリカンドッグフードの表示規定1

私がdog actuallyに書いたペットフードの原材料の表記に関する記事ではこれが一番古いものです。
このブログの1つ前の記事で「ミールや副産物の内容自体は悪いものではない」と書きました。けれども「ミールや副産物(バイプロダクト)が使われているフードは避けましょう」という声が根強くある理由、メーカーによってはミールや副産物を原材料に使いませんと宣言する理由はこの記事の中にあります。

日本でもアメリカでもペットフードの原材料や品質を語る情報には、不正確で冷静さを欠いたものが多く見られます。確かに私自身も「酷い内容だな」と思うフードはたくさんありますが、正確な情報を基にしなくては正しい判断はできないと思っています。

この記事は長かったので2つに分割しました。

(以下dog actually 2012年4月23日掲載記事より)

(photo by carterse)

愛犬が毎日食べるもの。手作り派、生食派、ドライフード派、缶詰派、色々な選択肢がありますが、意外と知られていないのがドライや缶詰などの市販のフードの原材料の表示の意味。
今回紹介するのはアメリカでのペットフードの表示規定の一部ですが、アメリカからの輸入品のフードを買っている方も多いと思いますし、日本で販売されているペットフードの大多数はアメリカのAAFCOの基準をもとにしていますので、日本の消費者の方にも参考にして頂けると思います。

アメリカで市販されるペットフードについてはFood and Drug Administration(FDA=アメリカ食品医薬品局)とThe Association of American Feed Control Officials(AAFCO=アメリカ飼料検査官協会)の2つの機関で管理されています。
FDAは動物飼料に使用する原材料の法規制や安全性の確保・調査を行い、ペットフードのラベル表示に関しては、どの動物用のフードか・内容量・製造者の名前と所在地・原材料一覧などを表示することや、その方法を規定しています。
AAFCOは動物飼料の栄養基準のガイドラインを提供するための機関で、ラベルの表示に関してはもっと詳細に、原材料名、栄養分析、給餌方法、カロリーなどの記載を規定しています。AAFCOのガイドラインは世界基準になっており、日本のペットフード公正取引協議会の規約もAAFCOのガイドラインを基準にしています。
AAFCOでは原材料名や商品名の定義も定めているので、これを知っているとペットフードのラベルから色んなことを読み取れるようになります。
ではまずAAFCOが規定する"商品名"のルールからお話していきましょうか。

・『95%ルール』

商品名を「Beef Dog Food」「Beef for Dogs」というシンプルな表示にする場合、その製品は原材料のうち少なくとも95%を牛肉が占めなくていけません。
「チキン&レバードッグフード」などのように2つの原材料が商品名に表示される場合は2種類の合計が95%です。この場合、先に書かれているチキンの割合の方が多く含まれると決められています。
95%ルールが適用されるのは動物性の原材料のみで、つまり「ラム&ライスドッグフード」という商品名をつけることはできません。またこの場合のビーフやチキン、ラムというのは動物の筋肉部分の肉を指し、ミールや副産物は含まれません。
このルールが当てはまるのは缶詰、冷凍、フリーズドライのフードがほとんどで、ドライフードでは当てはまるものはありません。当然ながら、かなりの高級フードというわけですね。

・『25%ルール』

これは多くのドライや缶詰フードに当てはまるルールです。「Beef Dinner for Dogs」「Beef Formula for Dogs」のように原材料の後にディナーやフォーミュラという言葉のつく商品名をつける場合、原材料のうち牛肉の占める割合は25%以上95%未満でなくてはいけません。
また「チキン&ライスフォーミュラ」のように2つの原材料が商品名に表示される場合は2種類の合計が25%以上を占めなくてはいけません。
ただし95%ルールと違って、この場合は動物性と植物性の組み合わせもOKです。2種類の原材料のうち1つは少なくとも全体の3%含まれていることが必要です。つまり「チキン&フィッシュフォーミュラ」という商品名であれば、少なくとも原材料全体の3%はフィッシュが使われていなくてはいけないということです。ここでも25%の中にミールや副産物は含まれません。

・『3%ルール』

これはWITHルールとも呼ばれるルールで、非常にトリッキーなので覚えておかれると良いと思います。
「Dog Food With Beef」のように"with"という言葉の後に原材料の名前が来る商品名のフードに含まれるべき牛肉の割合は全体の3%です。
「Beef Dog Food」ならば牛肉の割合は95%以上必要、「Dog Food With Beef」ならば牛肉の割合は3%でOKということです。
また「Beef Formula With Cheese」という商品名のフードがあれば、それは25%以上の牛肉と3%のチーズが含まれるということですね。紛らわしくて混乱してきますが、知っておきたいポイントです。

(次の記事に続きます)

2018/02/25

モントリオールの特定犬種規制のその後

(photo by Crazypitbull )

もっと早くにアップしようと思っていたのに、なかなか時間が取れなくてすっかり遅くなってしまいました。
2016年にカナダのモントリオール市で持ち上がったピットブルタイプの犬の飼育禁止の条例の続報です。

この記事に先立って、以前にdog actuallyに書いた特定犬種規制が持つ問題点の記事を再掲しています。

2016年にはSMILES@LAのブログでこの問題を書いたのですが、今読み返してみるとすごい勢いで怒っていてちょっと驚いた(自分で書いたのにね)

当時モントリオールがピットブルタイプの犬の飼い主に課した要件は次のもの。

・飼い主は18歳以上で犯罪歴がないこと
・登録料150ドルを支払って、飼育許可証を受けること
・公共の場に出るときにはマズルガード着用
・外出の際は1.25mのリードを使用
・要件を満たさない場合は、殺処分命令を下す

しかもこの要件が発表されて1週間以内に許可証を受けなくてはいけないという無茶なものでした。

結局、この件は動物保護団体や反対派の議員が裁判所に違法性を訴え、条例施行の一時停止命令が下りました。

その後、ピットタイプの犬の飼い主は2017年の4月上旬の期日までに飼育許可証を取らなくてはいけないということになりました。


この間も動物保護団体や賛同する人々によって、特定犬種規制に反対する運動はさまざまな形で続いていました。


そして2017年12月、ピットブルタイプの犬に関する規制が解除され、2018年5月には犬種ではなく飼い主の責任に焦点を当てた法律を制定することが市長によってアナウンスされました。


「え?この突然の方向転換はなに?」と驚きですが、選挙によって市長が違う人物に変わったんですね。

この選挙に関してどんな詳細があったのか、残念ながらわからないのですが、運動を続けた人々の努力なしにはなかったことでしょう。



(photo by TC-TORRES )


モントリオールの市議会ではペットの飼い主たちへの教育を討議の中心的なテーマにするとのこと。
また、犯罪歴や動物虐待の履歴がある場合、ペットの飼育を禁止することも検討しているそうです。
現在モントリオール市は、市のウェブサイトでアンケート調査の実施や、市民が提案を書き込むことができるように設定しているそうです。

モントリオール市、良い方向に向かっているようでよかったです。
犬による咬傷事故が怖いという人々にとっても、特定の犬種だけ規制するというのは意味のないことですもんね。ピットブルタイプの犬に咬まれなくても、他の犬種に咬まれたら同じことですから。

モントリオール市のあるケベック州では州議会が特定犬種の規制を希望しているようで、まだまだ安心はできません。けれどもこのモントリオールの特定犬種規制の条例を無効にした実績を持つ人々の熱意と行動を信じたいと思います。

市民による地道な運動や投票が、犬を取り巻く環境を変えた実例のひとつとして知っていただけたら幸いです。


2018/02/20

特定犬種規制法〜規制すべきは誰なのか?

2012年に書いた記事ですね。当時あちこちで大きく取り上げられた北アイルランドのレノックスの話から書き始めています。
アメリカにおいては特定犬種規制法は非常にゆっくりとしたペースで廃止されつつあります。あまりにゆっくり過ぎてほとんどわからないくらいで、社会全体としてはピットブルタイプの犬たちへの偏見も変わっていないなあという気はします。
日本ではまだ特定危険犬種という概念自体を知らない人も多いような印象ですが、それが良いことか悪いことかは私も判断しかねています。
でも犬の飼い主に限らず一般常識として「咬まない犬種というものはない。犬の問題行動を引き起こすのはほとんどの場合は人間の責任」ということは多く知れ渡って欲しいと思います。


(dog actually 2012年8月20日掲載記事より)

(photo by Lexus2D) 『差別ではなく教育を』


1ヶ月程前のことですが、日本のオンラインニュースなどでも取り上げられた、北アイルランドの特定犬種規制法のニュースがありました。レノックスという名のピットブルタイプの犬が規制法に抵触したために飼い主から取り上げられ、殺処分されたというものです。ラブラドール×ブルドッグミックスのレノックスは「見た目がピットブルに似ていた」という理由で殺処分となりました。咬傷事故歴も脱走歴もなく、DNA検査で禁止犬種の血は入っていないことも証明されていたというのに。
私の住むアメリカでも、この件は愛犬家を中心に大きな関心を呼び、特定犬種規制法(Breed Specific Legislation=BSL)に対する反対運動の気運が高まってきています。
アメリカの法律のことをお話する時いつも書いているように、アメリカでは州ごとに定められてる法律が違います。アメリカ全土を共通してカバーする連邦法においては、犬種を規制するための法律は設けられていません。特定犬種の飼育を規制する、又は犬種規制を禁止する法律は各州ごとに州法で定められます。州法に特に定めがない場合、郡や市ごとの条例で犬種規制法が設置されている場合もあります。
アメリカでは現在、コロラド州、フロリダ州、イリノイ州、メイン州、ミネソタ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、オクラホマ州、ペンシルバニア州、テキサス州、バージニア州の11州が、それぞれの地方自治体に対し特定犬種規制法を制定することを州法によって禁止しています(コロラド、フロリダ等は地方自治特例により、一部特定犬種の飼育を禁止している自治体もあります)。
カリフォルニア州も特定犬種規制法を制定することを禁じている州ですが、特定の犬種に対して避妊去勢処置を義務づける条例の制定は許可しています。また2012年10月には、マサチューセッツ州で特定犬種規制法を禁止する州法がスタートする予定です。
現在は特定犬種の飼育を禁止する条例を制定している郡や市の中にも、犬種規制法を見直すための住民投票を行ったり、その結果、条例を廃止する自治体も少しずつ増えてきています。犬種で危険度を判断するのではなく、それぞれの犬の行動や飼育環境に焦点を当て、危険かどうかを判断しなくてはいけないという動きがあるのは喜ばしいことです。

規制犬種の定番ピットブルやロットワイラーの他に、ジャーマンシェパードやドーベルマンが規制対象となっていることも少なくない。見た目が似ているということだけで飼育が禁止され連行されて殺処分されてしまうような自治体であれば、我が家の犬だって十分に対象になり得るのだ(実際この体重13kgの犬がドーベルマン雑種ということで、うちの家の保険料は割り増しになっている)。生まれた場所がLAだったから良かったものの、ひとごととは思えなくて特定犬種規制法には本当に胸が痛む。規制犬種は他にアメリカンブルドッグ、マスティフ、ダルメシアン、チャウチャウ、秋田犬、これらの雑種が含まれることもある。
アメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)でも、特定犬種規制法が役に立たず無駄であるだけでなく、却って公共の安全を脅かすものであるとアナウンスを続けています。
ASPCAがあげる特定犬種規制法の問題点は
  • 規制犬種を飼育している飼い主が、犬を人目につかないようにするため屋外に連れ出さず、犬の登録やマイクロチップの処置もせず、必要な医療措置さえも避けるようになり、結果としてストレスを溜めた犬は公共の安全と犬自身の健康の両方にとって危険なものとなる。
  • 特定の犬種を規制した場合、ほとんどの場合犠牲になるのは責任を持って犬を飼育している飼い主と、攻撃性も事故歴もない無実の犬である。飼い主は法的な闘いのために精神面と経済面で多大な負担を強いられ、最悪の場合は犬の命も奪われる。
  • 犬種を規制することにのみ公共の資源(人手や税金)が使われ、本当に規制されるべきことがおろそかになって公共の安全を脅かす。犬の登録、リードの着用、闘犬の禁止、つなぎ飼いの禁止、避妊去勢処置の徹底、これらは犬種の規制よりもずっと大切で効果的な安全措置である。
  • 特定の犬種を禁止することで、かえってその犬種に価値を見出す無責任な人間を喜ばせることとなる。禁止犬種のアウトローなイメージを自分達に重ね合わせたギャングメンバーの間でピットブルの飼育が増えたのが、格好の例である。
犬の咬傷死亡事故の件数などを管理しているアメリカ疾病予防管理センター(United States Centers for Disease Control=CDC)は、咬傷事故と犬種を関連づけることに意味を見出さず、かえって規制犬種以外の犬による咬傷事故を招きやすくする可能性を指摘しています。このことからCDCは犬種規制法を支持しないとの決定を下しています。
CDCでは、咬傷事故に関して犬種よりも顕著ないくつかの傾向も示しており、その中でも特に目につくのは避妊去勢処置の有無、社会化とトレーニングの有無であるとしています。
具体的には
  • 咬傷事故の70%以上は未去勢の雄犬によるものである。
  • 未去勢雄犬の咬傷事故件数は去勢済み雄犬の2.6倍にのぼる。
  • つなぎ飼いの犬による咬傷事故件数は、つながれていない犬の2.8倍にのぼる。
  • 咬傷死亡事故を起こした犬の97%は避妊去勢処置がされていなかった。
  • 咬傷死亡事故を起こした犬の78%はペットではなく、護衛、闘犬、繁殖などのために飼われていた。
  • 咬傷死亡事故の84%は飼い主の無責任な行動が引き金になっていた。虐待、ネグレクト、監督無しに子供と接触させる、等。
アメリカにおいては、避妊去勢処置は飼い主の責任であるという意識が一般的なので、避妊去勢処置をしていない層と社会化やトレーニングをしていない層が重なる部分が大きいのも上記の数字の一因ではないかと、個人的には考えています。
これらの傾向を見れば、規制すべきは犬ではなくて、飼い主である人間の行動であることがよくわかります。
日本ではいくつかの県で特定の犬種の飼育に関して規制する条例がありますが、その規制自体が「犬の係留義務」「檻、囲い等の障壁の中で飼養」など、上記の咬傷事故を誘発する事例に当てはまるものです。
規制すべきは犬種ではなく、犬の飼育環境やトレーニングのやり方を決める人間の方であると世界中の国で認識されて欲しいと切に願います。それこそが無意味に殺処分される犬をなくし、犬による不幸な事故を減らしていくことにつながると考えます。

2017/11/04

カリフォルニア州のペットショップでの生体販売禁止の法律に反対した団体

(photo by Skitterphoto )


さて、前回からの続きです。

商業的に繁殖された犬、猫、うさぎを店頭で販売することを禁止するカリフォルニア州法の法案が提出された時に、当然ながら反対派も存在しました。

ペット業界合同諮問委員会や、ブリーダー及びペットショップなどの小売業協会は生産した(イヤな言葉ですね)動物を販売する機会が減るわけですから当然反対の立場でした。

そして反対派の筆頭に立ったのはアメリカンケネルクラブ(AKC)でした。
(AKCはパピーミル撲滅運動などの際には毎度毎度大規模な反対運動を展開するんですけれどね。)

今回のAKCは「この法律によって、カリフォルニア州のペットラバーは選択の幅が狭められ欲しくもない保護犬を押し付けられることになる。一般の人が犬に関する知識を持った専門家や責任ある良質なブリーダーに接触することをできなくするものだ。」というキャンペーンを実施しました。

これは言うまでもなく大ウソ誤りで、保護犬ではない純血種の犬を迎えたい人は小規模に家庭などできちんとブリーディングをしているブリーダーにコンタクトを取ることができます。
(ブリーダーに認められないと子犬を譲ってもらえないとか、何年も待たなくてはいけないとかいう場合はありますけれどね。)

きちんとしたシリアスブリーダーなら、ペットショップに子犬を卸すことなどあり得ないので、この法律が成立しても何の影響もありません。

反対派のブリーダーの中には
「この法律が施行されると、隣国のメキシコだけでなく遠く離れたエジプトや韓国などから犬を連れてきてペットショップで販売されるようになる。これらの国の犬は恐ろしい伝染病や寄生虫を持っているのが普通である。」と主張して、署名サイトで反対署名を募る者さえいました。
幸か不幸か、カリフォルニアだけで十分な保護犬が発生しますので、外国から犬を連れてくる必要はないんですけれどね。

(メキシコは隣だし、実際メキシコの保護犬がカリフォルニアに来ることはあるけれど、エジプトとか韓国とかどこから出てきたんでしょうね。それにしてもすごい主張だ 笑)

幸いにも反対派の活動は実ることなく、この新しい法律が制定されました。
法案が可決された影には議員だけでなく、ベストフレンズアニマルソサエティやラストチャンスフォーアニマルズなどの大規模保護団体の協力もありました。
(Last Chance for Animalsというのは以前にシーザーさんの番組でパピーミルに潜入取材をした時に協力していた団体です。こちらね。)

一般の人の中にも「保護犬なんか欲しくない」「家庭でやってるようなブリーダーは敷居が高い」として、ペットショップで動物が買えないことを不満に思う人はいるんですけれどね。売ってなければ仕方がないわけで、やっぱりこういう法律を作ってガッチリと根元を締めることは不可欠だと思います。

来年は5年に一度の動物愛護法改正の年。国民が意見を届ける場も設けられるはずです。そんな時、外国の例でも具体的な例を挙げることは説得力を生みます。
ささやかながら参考になれば幸いです。



2017/11/02

商業的に繁殖された犬・猫・うさぎの店頭販売を禁止、カリフォルニア州

(photo by JACLOU-DL )

9月、カリフォルニア州のペットショップでは商業的に繁殖された犬・猫・うさぎを店頭で販売することを禁止するという州法が可決されました。
前記事のdog actuallyのロサンゼルス市の事例と同じく、店頭で取引が許されるのは一定の基準を満たした保護施設やレスキュー団体経由の動物のみとなります。
これに違反した場合は500ドルの罰金が課せられます。
(罰金は動物1匹につき500ドル。10匹違法に販売すれば5000ドルの罰金。)

10月にはブラウン州知事が署名をして、無事に新しい法律が成立。
実際に法律が施行されるのは2019年1月1日からです。
現在アメリカでは230以上の市や郡などの自治体で同様の条例が施行されていますが、州としての州法の成立はアメリカ全体でも初めてです。

この法律の一番の目的はパピーミルやキティファクトリーと呼ばれる非人道的な繁殖施設で生まれた動物の流通経路を断つことにあります。

そしてもうひとつは、公営私営を問わず保護施設で新しい家族を待っている動物の引き取り先の間口を広げることを目指しています。

(photo by ksphotofive )


報道などでは「ペットショップではシェルターから来た犬・猫・うさぎだけしか販売することができない。」という表現も見られますが、実際にはペットショップの店頭を譲渡会の会場として提供するという形がメインです。大規模なペットショップでは常設のアダプションセンターがあり、主に猫が展示飼育されている場合もあります。

いずれにせよ『販売』という言葉から連想される、シェルターから子犬や子猫を仕入れてきて店頭でそれを販売するというような形ではありません。
カリフォルニアの大きな都市では、もう既に同様の条例が施行されているところが多いので、今さら特に変わることもないという感じですね。

ペットショップの店頭で譲渡が成立した場合の料金も、シェルターで動物を譲渡してもらった時と同じ条件とすることと法で定められています。
ペットショップに連れてこられた動物がもともと居たシェルターや団体の譲渡条件が適用されます。
(シェルターによって料金はかなり違うが、だいたい30〜300ドル。一番多い価格帯は200ドルくらい。)
料金には避妊去勢手術、ワクチン、マイクロチップの料金が含まれています。

今回成立した法律では店頭販売の禁止の他に、うさぎ、モルモット、ハムスター、ブタ、鳥、爬虫類などペットとして所有することが認められている動物が保護施設に連れてこられた場合の扱いも明確にしています。
どうやら従来は、これらの動物は犬や猫に比べて保護期間や譲渡条件などの基準が曖昧だったようで、今回の法律で犬や猫に定められているのと同じ基準を適用するとされました。
(従来の基準がちょっと見つけられなかったんですが、わかり次第追記します。)


このように、カリフォルニアの新しい法律については「州としては初めて」という大きな意味はありますが、内容自体は既に各地で施行されている条例とほぼ同じものです。
他の州でも同様の州法が成立していって欲しいものです。

今回の法律の可決に至るまでは、様々な団体からの反対運動もあったのですが、それは次回に紹介します。

どんな団体が反対したか、わかります?


《参考URL》
https://leginfo.legislature.ca.gov/faces/billNavClient.xhtml?bill_id=201720180AB485



2017/10/31

ペットショップ新条例、ロサンゼルス市の場合

先日、カリフォルニア州がペットショップで商業繁殖された子犬や子猫の販売を禁止する法律ができたことは、すでにあちこちで報道されています。詳細をこのブログにも書こうと思っていますが、その前に2012年に同様の条例がロサンゼルス市で可決された時の記事をアップしておこうと思います。

犬のこととは別だけど、記事の冒頭が大統領選が終わったという件で始まってることに隔世の感。たった5年前なのにねえ。オバマ大統領が2期目を決めたばかりだった頃ね。あぁ、あの日に帰りたい...。




(illustration via comicvector )

(以下dog actually 2012年11月12日掲載記事より)

熱狂のアメリカ大統領選は幕を下ろしましたが、そのちょうど1週間くらい前にカリフォルニア州ロサンゼルス市で、ある条例が可決されました。
条例の内容は、ロサンゼルス市内にあるペットショップ、その他小売店や商業施設において、営利的に繁殖された犬、猫、うさぎを販売することを禁止するというものです。

新しい条例の条文では「営利的に繁殖された犬・猫・うさぎの販売は、行くあてがなくアニマルシェルターで命を終える動物が増加する一因となっている。
これら営利的に繁殖された犬・猫・うさぎの店頭での販売を禁止することは、アニマルシェルターにおける動物の殺処分率を低下させ、譲渡率を上昇させるために有効である。」と述べています。
ここで言う「営利的に繁殖された犬・猫・うさぎ」と言うのはパピーミルやキティファクトリーと呼ばれる大規模で非人道的な商業的繁殖施設や、
無許可で繁殖〜販売を行うバックヤードブリーダーのことを指します。
条例の施行は来年の6月からで、それ以降は実質的にロサンゼルス市内で犬・猫・うさぎの生体展示販売を行うことは違法となります。条文では「ただし、公営のアニマルシェルターまたは市の認可を受けたNPO団体やレスキューグループから来た動物は除く」とされています。これはもちろん、アニマルシェルターから動物を仕入れて店頭で販売するという意味ではなく、現在もう既に大手のペット用品店チェーンが行っているようなシェルターの動物の譲渡会のことを指しています。ペットショップが店頭で保護動物の譲渡会などを行う場合は、正式に認可されている団体から来ている動物であることを示す証明書を呈示することが義務づけられます。
同様の条例は北米の他の都市でも数多く施行されていますが、ロサンゼルスはその中でも最大の規模の自治体であるため、他の州の自治体への影響も大きく、現在シカゴでもロサンゼルスと同様の条例が検討されているところです。
しかし、この条例案が可決されるまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。当然ながら小売店側からの反発もあり、またペットショップでの動物の買い手である一般市民からも「動物をどこから手に入れるかは市民の自由であるはずだ」という声もあがっていました。
条例案は長年にわたって動物福祉に力を尽くして来たポール・コレッツ市会議員を中心に作られて来ました。また今回の条例可決に大きな役割を果たしたのは、全米で最大の規模の私営動物保護団体ベストフレンズアニマルソサエティでもありました。
(ベストフレンズアニマルソサエティとロサンゼルス市のコラボレーションについては、この記事で詳しく書いています)
同団体のパピーミル対策部門責任者であるエリザベス・オレック氏は、コレッツ市会議員とともに市長や市検事に2年半に渡って働きかけてきました。そこには、パピーミルへの潜入調査の報告なども含まれています。このペットショップ新条例は、議員と民間団体、それを応援する市民の声、そして行政の共同作業の賜物なのです。
店頭での動物の販売を禁止するこの条例では、許可を得て個人で活動しているブリーダーは対象になっていません。ロサンゼルス市では犬や猫を繁殖して販売をする場合、動物1頭につき年間120ドルの料金を支払って許可証を発行してもらわなくてはなりません。許可証は1家庭に対して2通まで発行され、1頭の動物は1年に1回の繁殖しか許されていません。
許可証申請以前の90日以内の間に動物が獣医での健康診断を受けていること、過去に動物虐待やネグレクトの前歴がないことなどの条件が課せられ、さらに、出産後は産まれた犬や猫が生後8週齢に達するまで母親から離すことの禁止、ワクチン接種をしていない幼齢動物の販売や譲渡の禁止といった規制もあります。
これらの要件を満たさずに動物の繁殖を行い、売買することは、違法なバックヤードブリーダーとみなされ取り締まりの対象となります。
2013年6月以降、ロサンゼルスにおいて犬が欲しいと思った人はシェルターや保護団体からアダプトするか、責任ある個人ブリーダーから直接子犬を購入するか、どちらかの選択になるということです。
2011年度のロサンゼルス市のアニマルシェルターに連れて来られた犬の数は約35,000頭、猫は約22,000頭。そのうち、犬の25%、猫の57%が殺処分となっています。治療のできない病気や怪我、改善不可能とされた問題行動などの理由よりもずっと多い主な殺処分の理由は、「貰い手がみつからない」というものでした。
健康で、人間の素晴らしい伴侶になる可能性のあった動物達が無駄に命を落とすことがなくなるよう、条例が正しく運用され、幸せな動物と人間が増えることを願って止みません。

2017/05/25

ミズーリ州におけるパピーミルを巡る闘い (2)

これは一つ前の記事の続きにあたります。
パピーミルと呼ばれる繁殖施設に対して広さやケアの回数など具体的な数値で規制を求めることで、逃げ道をなくしようとした法案がどんな風になったかを書きました。

(以下 dog actually 2011年7月4日掲載記事より)

(photo by Mary Haight )

前回、2010年のミズーリ州の住民投票において、パピーミルを規制する法案が通ったところまで書きました。
賛成派が僅差で勝利を得た「法案B」は「Puppy Mill Cruelty Prevention Act(パピーミル虐待防止条例)通称PMCPA」と正式名称が定められ、2011年11月から施行されることになっていました。
しかし民主主義の基本を無視したとも言えるドンデン返しが起こったのは 2011年4月13日のことでした。ミズーリ州下院議会において、この住民投票の無効を訴える議員投票が実施されたのです。しかも賛成多数の結果、住民投票の結果が却下され、PMCPAの犬の扱いに関する改善案がすっかり削除されてしまったのです。
予定通りに条例が施行されることになれば、多くの繁殖施設が立ち行かなくなるとして犬繁殖業の代表が議会に直訴したことが、この議員投票のきっかけと考えられています。
この議員投票の結果を承認するか、または拒否するかは最終的に州知事の手に委ねられます。
もちろん民意を無視したこの投票には多くの抗議の声があげられました。ASPCA(米国動物虐待防止協会)を始め多くの動物保護団体が、州知事宛にこの投票結果を拒否するように嘆願を送ろうと全国に呼びかけました。
もしもこのままミズーリ州がパピーミルを認める方向へと進んで行くと、パピーミルに関して同じような傾向のあるオクラホマ州やテキサス州、ネブラスカ州、ハワイ州などでも同じような悪い方向へと流れていく可能性が出て来ます。問題はミズーリ州民のことだけではないのです。
結果としては、州知事もさすがに投票結果をまるごと承認するわけには行かなかったようで「妥協案」を提案してきました。そしてPMCPAは驚くべき早さで思わぬ方向に転がって行きました。議員投票からわずか5日後の4月18日にミズーリ州農務局、犬繁殖業の代表者達、そして地元の動物保護団体などが一堂に会して「妥協案」を承認したのです。「妥協案」はさらにその2日後には上下院両議会を通過し、4月27日には州知事の署名を得て、正式に法律として成立しました。
ミズーリ州のパピーミルの状況改善にあたって、ずっと先頭に立って行動してきたASPCAはこの場には呼ばれず、妥協案の承認には一切タッチしていません。なぜならこの妥協案は、到底ASPCA(ひいては心ある動物福祉関係者ならば誰でも)が容認できるものではなかったからです。
絶対に外すことはできないと考えられていた具体的な数値による規制。これらの数値が全て削除されたのです。ケージの具体的な広さや高さが法令の中に組み込まれることはありませんでした。室温についても同じく、具体的な数値は削除されました。運動や獣医師による検診も法によって強制することはできなくなり、何よりも悪いことに雌犬の出産回数の制限も設けられることがなかったのです。
これらの広さ、高さ、回数、温度といった具体的な数値こそがこの法案のキーとも言うべきものであったのに、ミズーリ州議会と州知事は多数派の住民の意思を無視する形でこの法案を骨抜きにしてしまったというわけです。
ミズーリ州の州政は人々を大きく失望させましたが、諦めさせることはできませんでした。ASPCAもHSUS(米国動物保護協会)もミズーリ州の犬繁殖施設へのチェックの目をより一層厳しくしており、この州には今多くの国民の注目が集まっています。
ミズーリ州知事は、妥協案を取入れた新しい法をより厳しく実行するため、繁殖施設を管理する州農務局関係機関に資金と人員を追加することを発表しました。
ASPCAは現在、有権者の権利を守るための活動をしている団体とタッグを組んで新たな法改正または元々の「法案B」の復活、それに向けての住民投票をおこすべく活動を始めています。今度は議会によって民意を覆されることがないように、慎重に緻密に計画を進めています。
ミズーリ州におけるパピーミルをめぐる闘いは今も激しく続いています。そんな中、6月中旬にテキサス州において犬と猫の商業繁殖施設を規制する法律が正式に州知事の署名を得て施行されることとなりました。テキサス州もミズーリ州と同じく「パピーミル野放しの州」の1つだったのですが、11頭以上の雌犬または雌猫を飼育し、年間20頭以上の動物を販売している施設における動物のケージの大きさや材質についての規定が設けられることになったのです。また今までは繁殖施設への立入検査というものは行われていなかったのが、取り締まり機関による検査が実施されるよう法で定められました。決して十分とは言えませんが、これをきっかけにアメリカにいくつか残された「野放し地域」にも正しい規制が作られていくことを願って止みません。
これはASPCAの捜査チームがミズーリ州のある犬繁殖施設に出向き、70頭の犬達を保護した時の動画です。

ケージの床面がむき出しの金網なのは、排泄物の掃除の手間を省くためです。犬達の肉球には金網が食い込み、怪我を負います。ここにいる犬達はこの金網の中以外の場所を知らずに生きて来て、こうして保護された時に生まれて初めて人間に撫でられたり抱かれたりということを経験したのです。
アメリカの例をあげて記事を書きましたが、日本にも全く同じような施設がたくさん存在します。そしてこういう場所で産まれた犬の多くは生体展示販売をしているペットショップに卸されたり、インターネットでの通信販売で流通されます。そういった所で動物を買うことが、パピーミルに資金をつぎ込むことになるのだと多くの方が認識して下さることを望みます。
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この記事を書いてから書いてから6年が経つ2017年現在もミズーリ州における動物繁殖施設の数値規制は実現されていません。けれども世論の高まりに押される形で、施設への視察や査定は頻繁に行われるようになったようです。2017年に政権が代わり、ミズーリ州のみならず動物福祉に関しては一つ進んだかと思うと二つ後退したような状態が続いていますが、諦めることなく闘いを続ける人々がいることは忘れずにいたいと思います。


ミズーリ州におけるパピーミルを巡る闘い(1)

私がdog actuallyで初めて動物福祉に関する法律のことを書いた記事です。
また自分では知っているつもりだったパピーミルのことも、改めてじっくりと書かれたものを読むことで「そうだったんだ」という発見もあり、自分自身にとっても学ぶことの多い記事でした。

(以下dog actually 2011年6月20日掲載記事より)
「パピーミル」、直訳すると「子犬工場」。このサイトに来て下さる皆さんならば、パピーミルという言葉が何を意味するかご存知の方も多いでしょう。ASPCA(米国動物虐待防止協会)ではパピーミルのことを「犬の福祉よりも経済効率と金銭的利益が優先される大規模な商業繁殖施設」と定義しています。アメリカに於いても、パピーミルは犬を取り巻く環境の中で大きな問題の1つであり、ASPCAやHSUS(米国動物保護協会)を始め多くの人々がこれらの施設の犬達を助け守り、ひいてはパピーミルを撲滅させるべく闘いを続けています。
さて、このような施設にいる犬達の命や生活を守るためには規制や法律が必要です。しかし残念ながらアメリカの法律の世界においては「パピーミル」を定義する言葉がないのです。アメリカ全土の法律である連邦法には、犬や猫の商業繁殖施設を経営する者は所定の免許を取得しなくてはならない、施設は定期的に米国農務省の検査を受けなくてはならない、などの規定はありますが、動物を守るための法律は実質上無いに等しい状態です。
州ごとの州法では、2008年に初めてバージニア州において商業繁殖施設で飼育する成犬の数を最高50頭までとする法律が施行され、その後ルイジアナ州、オレゴン州、ワシントン州が同様の州法を施行することとなりました。このように連邦法よりも一歩進んだ対応をしている州がある一方、いくつかの州では商業繁殖施設を規制する法律が全くない野放し状態とも言える所も存在します。
今日のタイトルにあげたミズーリ州も「パピーミル野放し状態」の場所です。州全体で3,000以上のパピーミルがあると言われており、これは全米のパピーミルの数では一位、約30%にあたる数字です。ミズーリ州は「パピーミルのメッカ」「アメリカのパピーミル首都」と言うありがたくない称号まで持っているほどです。
そのミズーリ州で、2010年画期的な法案が提出されました。「犬の商業繁殖施設において、虐待に該当する犬の取り扱いを無くし、全ての犬に適切な待遇を与えるための規制」通称「法案B」と呼ばれた、案の内容は以下の通りです。
1. 十分な食餌と清潔な水の供給
  • 適切な栄養成分の食餌を少なくとも1日に1度は与えること
  • 凍ったり汚染されていない清潔な水を常時飲めるようにしておくこと
2. 必要に応じた医療ケアの供給
  • 最低限、1年に1度は資格のある獣医師による健康診断を受けさせること
  • 人道的に安楽死を取るしかやむを得ない場合は、資格のある獣医師の手によって、全米獣医師協会承認の法律で定められた手法を取ること
  • 3. 気候条件から身を守るための適切な居住空間の供給
    • 金網等ではない平面の床のある屋内施設にいつでも行き来できる環境を造ること
    • クレートが他の動物のクレートの上に積み上げられたような状態ではないこと
    • 最低1日に1度は居住空間の清掃を行うこと
    • 室温は45°F(7.2℃)を下回らず、85°F(29.4℃)を上回らないこと
    4. 手足を伸ばしたり横になるのに十分な広さのある空間の提供
    • 犬の頭の上に最低30cmの空間があること
    • 体長63.5cm未満の犬には最低1.16平方mの広さを確保すること
    • 体長63.5-89cmの犬には最低1.86平方mの広さを確保すること
    • 体長89cm以上の犬には最低2.79平方mの広さを確保すること
    5. 定期的な運動の提供
    • 管理された屋外への行き来を可能にすること
    • 屋外の施設は最低限屋内の居住空間の2倍の広さを確保すること
    6. 出産後から次の繁殖までの十分な休養
    • 18ヶ月の間に2回を越える出産をさせてはならない
    7. 1つの施設において管理する犬の上限は50匹、そのうち繁殖に使う雌犬は10匹を上限とする
    全てが最低限の当たり前のことのように思えますが、その最低限の環境すら与えられていないのがパピーミルの犬達です。法律上「パピーミル」を定義する言葉がない以上、上記のようにそれぞれの項目に具体的な数値が言及されていることは必要不可欠です。
    この法案は2010年11月の中間選挙の折に、ミズーリ州住民の住民投票にかけられました。この動画はその時の「法案Bに賛成の投票を!」と呼びかけるキャンペーンのCMです。

    3,000以上ものパピーミルが存在するということは、そこから経済的恩恵を受けている人間も大勢いるということ。それはすなわち、この法案に反対する人間がたくさんいるということでもあります。法案Bに対する反対派のキャンペーンも大きなものでした。「州の一大産業である犬の繁殖業への規制は、経済的ダメージが大き過ぎる。」「犬の値段が上がって、誰もが犬を飼うことが難しくなる。」「施設の規模を強制的に縮小させることで行き場のない犬が出て来る。」これらが反対派の主張の主なものでした。
    アメリカンケネルクラブ(AKC)も、この法案に反対する団体の1つでした。「法案の内容が通れば、責任ある繁殖をしているブリーダーに経済的な負担がかかることになる。そもそもブリーダーの質というのは管理している犬の数に左右されるものではない。犬を購入したい人々やブリーダーに負担を強いることになるこの法案は可決されるべきではない。」というのがAKCの主張でした。負担を強いるべきでないと主張する対象が、犬ではなくて購入者や繁殖者の方なのですね。
    そして住民投票の結果、僅差ではありましたがパピーミル規制法案は賛成票が多数を勝ち取りました。10頭以上の犬を飼育している繁殖業者は約1年後の2011年11月までに、この法案で示された規定の数値を満たさなくてはいけないということになったのです。ミズーリ州民でなくても、アメリカの犬を愛する人達の多くが賛成派の勝利に胸をなで下ろしました。
    しかし・・・ことは簡単には進まなかったのです。何が起こったのかは次回に続きます。

2017/05/24

生態展示販売禁止 - アルバカーキー市の場合


dog actuallyへの初出は2011年5月23日。
ペットショップで商業的に繁殖された犬や猫を販売することを条例で禁止する自治体は確実に増え続けており、2017年5月現在18州179都市でこの記事で紹介しているアルバカーキー市と同様の規制が実施されています。

これらの規制の重要な点は単純に店舗での販売を禁止しているだけでなく、子犬や子猫を自家繁殖することが制度的に難しくなり、たとえアクシデントで増えてしまった場合にも金銭的なペナルティが課して同じ失敗を繰り返す可能性を低くするシステムを作っていることです。保護された犬を譲渡するだけではペットの頭数過剰問題は解決しない、まずは元栓を閉めなくてはいけないというのが、アメリカの多くの自治体が選択した方法です。

(以下、dog actually 2011年5月23日掲載記事より)

日本でも、犬をめぐる様々な問題の温床として問題視されているペットショップでの生体展示販売。アメリカのいくつかの都市では、条例によって犬や猫の生体展示販売が禁止されています。その中でもアメリカで一番最初に犬と猫の展示販売禁止の条例を施行した、ニューメキシコ州アルバカーキー市の例をご紹介いたします。
同市は、もともとは動物の扱いに関して進歩的な街であったわけでありません。このような法案が出たきっかけは、同規模の都市に比べて、殺処分しなく てはいけない動物の数があまりにも多く、そのために多額の税金が費やされることに業を煮やしての結果でした。法案が提出された2006年当時、年間約 27,000頭の犬や猫がシェルターに持ち込まれ、約15,000頭が殺処分されていました。これらのことに年間約400万ドル(為替レートではなく生活 感覚で言えば年間約4億円という感じです)の費用が費やされていました。
犬の数の過剰の背景の1つがパピーミルと呼ばれる犬の繁殖施設です。ペットショップで売られている犬達の多くがパピーミルから供給されています。生体展示販売の禁止はパピーミル取り締まり策の一環でもありました。
ま たパピーミルだけでなく、適切な飼い方をせずに故意またはアクシデントの自家繁殖を繰り返すタイプの飼い主に関しても、法による規制の必要性が求められて いました(このようなタイプの行動は対人間の家庭内暴力との関連性が高いという統計があるのも、積極的な行政の介入が望まれた理由でもあります)。
こうしてThe Humane and Ethical Animal Rules and Treatment (HEART) Ordinance 「人道的且つ倫理的な動物の扱いに関する規定と条例」と名付けられた法案がアルバカーキー市議会に提出され可決されたのが2006年、実際に条例が施行されたのは2007年のことでした。
条 例では、市が発行する許可証を取得した者以外は犬や猫の販売をしてはいけないという規定になっています。これは道ばたや新聞に「子犬譲ります」といった広 告を出して売る事、物品との交換をすること、単純に譲渡することも含まれます。これに違反した場合は90日間の禁固刑プラス500ドルの罰金が課せられま す。
また、ペットショップ等の小売業には犬や猫の販売許可証を発行しないことも規定されています。つまりこれでバックヤードブリーダーと呼ばれる小遣い稼ぎの自家繁殖と、ペットショップでの生体展示販売が成り立たなくなるというわけです。


これは大手チェーンのペットショップに飾られているポスター。生態展示販売の禁止の条例のない都市でも、株式上場しているような大手企業はすでに犬や猫の販売を止めている。こうして「まずは里親になることを考えて」という呼びかけを行い、シェルターと提携した譲渡会も行う。それらの犬へのしつけ教室やグルーミング、ケア用品やフードの販売などでビジネスが成立するからだ。

条例では、犬や猫の登録料に関しても詳細に規定されています。避妊去勢手術を施された犬や猫に関しては登録料は一頭あたり年間6ドル。これが避妊去勢手術をしていない犬や猫だと登録料は年間一頭あたり年間150ドルになります(医療上の理由で手術ができない場合は、医師の証明を提出することでこの対象外となります)。避妊去勢手術は市が安価なサービスの提供もしています。
さらに犬や猫を繁殖させた場合には、出産後1週間以内に届出をし て、正式な許可証を得る必要があります。これが出産一回あたり150ドル。この許可証は一家庭において、12ヶ月の間に4回以上発行することはできませ ん。また、一頭の雌に関しては12ヶ月の間に1つの許可証しか発行されません。これもバックヤードブリーダー対策の1つです。
正規のブリーダーであっても、年間150ドルの登録料と出産一回あたり150ドルの許可証発行は義務づけられています。それだけの覚悟のある者しか、犬や猫の繁殖をしてはいけないという暗黙の了解というわけです。
もちろん、この登録料の支払い証明と繁殖の許可証がなくては、販売の許可証を得ることはできません。違反した場合は上記の通りの刑罰と罰金が待っています。
このような行政の努力の結果、条例が施行された2007年から2010年の間にシェルターからもらわれて行く動物の数は年間23%増加し、殺処分される動物の数は年間35%減少していきました。

持ち込まれる動物の数が減少し、もらわれて行く動物の数が増えるということは、施設にいる動物達の待遇が改善されるということでもあります。アルバカーキー市最大の私営動物保護施設Animal Humane New Mexicoでは、市全体の犬猫を取り巻く環境の改善を受けて、2010年に大規模な施設の改築を行うことができました。人々が動物シェルターに関して持っている、従来の暗い哀しいイメージを払拭する、ブティックシェルターと呼ばれる明るくて洒落た雰囲気の保護施設をオープンさせたのです。それまではショッピングモールの中にあるペットショップに子犬や子猫を見物に行っていた親子連れが、気軽にシェルターに訪れるような流れができつつあります。
アルバカーキー市のこの動きは、その後アメリカの多くの場所に飛び火して、カリフォルニアのレイクタホ、ウエストハリウッド、テキサスのオースティン等で同じような条例が施行され、成果をあげ始めています。
まだまだ主流派とは言えませんが、生体展示販売禁止の流れは確実に育ちつつあります。結果、不幸な犬が一頭でも減る事を心から願います。
無責任なペットショップの犬達の供給源であるパピーミル規制についても、気になる動きがあるのですが、これはまた別の機会に。 


従来の不妊化手術と性腺温存型不妊化手術を比較

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