2018/07/04

殺処分を減らすためにアメリカが選んだ方法

これは2012年に書いた記事で、いま読み返すとずいぶんと青臭くて小っ恥ずかしい感じです。特に最後のNO KILLのくだりとかね。

この記事で紹介したマーヴィン・マッキー獣医師は現在も現役で活躍しておられます。マッキー先生がロサンゼルスの犬猫の殺処分数を減らすために立ち上がった1970年代に比べると、動物医療の研究も進み変化した部分もありますが、保護して譲渡するだけでなく「蛇口を締めることの大切さ」を訴えかけ働きかけた功績は、今の日本の現状にとって大いに参考になると思います。


(以下dog actually 2012年3月掲載記事より)

前々回に書いた記事「ARK訪問記」で、大阪能勢町にあるアニマルレフュージ関西(ARK)さんを訪れた折のことでした。
私が「ロサンゼルスから来ました」と自己紹介をすると、アーク代表のエリザベス・オリバーさんが「ロサンゼルスにはマッキー先生がいますね。犬や猫の不妊手術の第一人者ですよ。マッキー先生は本当にユニークですごい人です。」と、ある獣医師のお話をして下さいました。

マッキー先生ことW・マーヴィン・マッキー氏は現在70代ながら現役で活躍されている獣医師です。
1976年にロサンゼルス市内に最初の避妊去勢手術専門のクリニックを開業し、現在は3軒のクリニックを運営しています。彼のクリニックは避妊去勢手術のみに特化することで、低価格で、より多くの手術を提供することに主眼が置かれています。

最初のクリニックが開業した1970年代はアニマルシェルターの動物の暗黒時代でもありました。ロサンゼルスだけでなく、アメリカのどこのシェルターも行き場のない動物でいっぱいで、貰い手のない動物達は次々に殺処分。

1971年にはロサンゼルス市では11万頭以上の犬と猫が殺処分されました。これは1960年に統計を取り始めて以来最悪の数字で、さすがに行政側がなんとかしなくてはと腰を上げた最初の年となりました。

LA市がとった方法はとにかく無制限に産まれて来る犬や猫の数を減らすことでした。そのためにアメリカで初めて公共サービスとして低価格での犬猫の避妊去勢手術のためのクリニックを設置したのです。

マッキー獣医師もその流れに乗る形で76年に最初のクリニックを開業するとともに、ペットの頭数過剰問題に積極的に取り組み始めました。

獣医師仲間と共同で次々に避妊去勢手術クリニックを開業し、公営私営を問わずアニマルシェルターと積極的に協力し合って、シェルターにいる動物は必ず避妊去勢手術を施してから新しい里親に引き渡すというシステムも確立していきました。
現在は自治体と協力して、一定の所得以下の飼い主は申請をすれば無料で避妊去勢手術が受けられるシステムも出来ています。



(illustration by PaliGraficas )


マッキー獣医師のアニマルバースコントロールクリニックの手術料金は70ドルです。
他には特別車両を使った移動式クリニックというのも多く、定期的に地域を巡回して手術を受け付けているシステムもあります。
自治体による移動クリニックは無料の場合が多く、そうでない場合も30ドル〜50ドルというのが相場です。

マッキー獣医師のクリニックでは1日平均40頭の動物の避妊去勢手術が行われます。この数字を可能にしているのはマッキー獣医師が発案した安全で簡便な手術法です。この手術法をアメリカ全土の獣医師に広めるための活動も幅広く行われて来ました。その一環として実施されたのが、実際の手術の様子を録画し多くの獣医療関係者に無料で配布することです。
(アークさんにもこの手術方法のDVDのコピーが用意されておりました。マッキー獣医師の活動は今やアメリカ国内に留まらず、ヨーロッパ、日本、オーストラリア、ブラジル、メキシコなど多くの地域に広まっています。)

これらの活動が開始された1970年代にはアメリカ全土で避妊去勢手術を施された犬の率は10%未満でした。猫にいたってはさらに酷く、その率は1%以下。
ロサンゼルス市を皮切りに全国で始まった避妊去勢手術の普及が功を奏し、現在では手術を施された犬の率は全体の3分の2以上に、猫は80%以上が手術済みとなっています。

そしてその結果、ロサンゼルス市では2007年に犬猫の殺処分数が史上最低の15,009頭にまで抑えられました。史上最悪だった1971年から見れば86%の減少です。

アメリカ全土で見れば、1970年には年間2000万頭の犬猫が殺処分されていたのですが、2011年には約300万頭にまで減少させることができました。(残念ながら08年と09年にはリーマンショックに端を発した極端な景気の悪化により、シェルターに連れて来られる動物の増加、シェルターから引き取られる動物の減少が起こり、殺処分数は増加してしまいました。2010年以降は再び緩やかに減少基調に戻っています。)
しかもASPCA(アメリカ動物虐待防止協会)によると、この40年の間に家庭で飼育されているペットの数そのものは約2倍に増えています。

確かに年間300万頭の犬猫が殺処分されているのは莫大な数字であり、まだまだ改善していかなくてはいけないことがたくさんあります。しかし避妊去勢手術の徹底によって殺処分数は確実に減らして行けることは実証されました。


(photo by jaminriverside )

先にも述べたように、アニマルシェルターや動物保護団体から動物を引き取る場合は、避妊去勢手術済みであることが大前提です。
しかし、ペットショップやブリーダーから購入した動物にまで避妊去勢手術を徹底させるためにアメリカはどのような方法を取ったでしょうか?
それは手術をすることで金銭的なメリットを発生させることです。

アメリカのほとんどの自治体では、犬を飼う際にドッグライセンスという名の犬の登録をしなくてはいけません。ライセンスは毎年更新しなくてはならず、その際にライセンス料を支払います。このライセンス料が、手術をしていない動物は手術済みの動物に比べて3〜5倍高くなります。

例えばロサンゼルス市の場合、手術済みの犬はライセンス料が年間20ドルであるのに対し、避妊去勢手術をしていない場合は100ドルになります。
ロサンゼルス市は避妊去勢手術の徹底に関しては厳しめで、条例には「原則としてペットには避妊去勢手術を施さなくてはならない。」と書かれています。
プロのブリーダーや、医療上の問題で手術ができない場合は所定の手続きを踏んで手術の延期または免除が認められます。

毎年支払うライセンス料で差を付けて、避妊去勢手術を受けさせることを徹底するというわけです。料金や差額については自治体によってかなりまちまちですが、ペットに避妊去勢処置をしないでいると毎年余分な出費があるというやり方はどの自治体も同じです。
こうして望まれずに産まれて来る命を減らすことが出来れば、シェルターの動物の環境も改善され、シェルターを訪れる人も増えます。訪れて悲しい気持ちになるような場所には人は集まらないですからね。

そしてネバダ州のリノ市のように公営シェルターながらNO KILLポリシーを掲げる所も出て来ました。これらリノのシェルターではNO KILL移行後は以前に比べて、犬の譲渡が51%増、猫の譲渡は2倍近くにまで増えました。

まだまだ殺処分ゼロに向けての道は遠いけれど、確実に良い方向には向かっています。いつの日かアメリカ全土のシェルターがNO KILLに変わることを願って、様々な活動に目を向けて行きたいと思います。

犬の避妊去勢、いろんな角度から

2016年に書いた記事です。この記事を書いた少し前に、犬の避妊去勢手術とガンや関節炎との関連についての論文が複数発表され、dog actuallyでも紹介されたという経緯があります。

それらの関連は無視できない問題ですし、特定のガンなどの発症率の高い犬種と暮らす人なら知っておきたい知識です。

けれども、そういう情報が発表されると見出しだけ見て本文は読まず「やっぱり避妊去勢とか不自然よねえ」という層に心底ウンザリもしていました。
そして避妊去勢無しでは成り立たない保護犬レスキューの世界を無責任に非難する人々や、安直な自家繁殖の格好の言い訳にする人々へのジリジリするような危機感も感じていました。

そんな「ウンザリ」や「危機感」への自分なりの返答として書いた部分もある記事です。

2018年7月現在、ウンザリもジリジリも解決どころか増幅しているんですけれどね😞😞😞


(photo by mariabostrom0 )


(以下dog actually 2016年6月13日 掲載記事より)
犬の避妊去勢と言えば、ほとんどの人は外科的な手術を思い浮かべることと思います。しかし医学の進歩とともに、手術以外の方法で避妊去勢をする方法も開発されています。アメリカのオレゴン州ポートランドには、手術以外の避妊去勢方法をバックアップするNPO団体があります。

団体の名はAlliance for Contraception in CATS&DOGS(「猫と犬の避妊法のための同盟」とでも訳しましょうか。以下ACC&D)。ACC&Dは直接犬や猫を保護して活動をするのではなく、ASPCAをはじめとするアメリカの主だった保護団体や保護基金、アメリカ以外の国の35団体、各地の獣医師団体、獣医学の研究施設、多数の小規模保護団体らのパートナーとして啓蒙教育活動を行っています。

アメリカでは犬に避妊去勢手術を施すことはとても一般的です。ロサンゼルスのように基本的に避妊去勢が条例で義務付けられている自治体も少なくありません(健康上の問題がある場合や許可を受けたブリーダーは例外)
各州政府や自治体が率先して避妊去勢を推進してきたために、過去40年の間に犬猫の殺処分数は10分の1以下に減少しています。

しかし健康上の理由などで手術を受けることができない動物、経済的な理由などで手術よりも簡便な方法が求められる地域などもあります。ACC&Dは「アメリカだけでなく、世界中各地で犬猫の頭数過剰問題を解決し、不幸な形でこの世を去る犬猫を減らすために避妊去勢を推進する。」という理念のもと、そのような手術以外の方法が必要な所に「こんな方法もある」という橋渡し役を務めています。

さて、気になる「手術以外の避妊方法」ですが、現在3つの
方法が取られています。

●Zeuterin/EsterilSol

これはどちらも製品として販売されている医薬品の名前です。生後3ヶ月以上のオス犬を対象にした方法で、アルギニンによって中和したグルコン酸亜鉛を犬の両方の睾丸に注射します。処置は一度だけ、鎮静剤のみの使用で全身麻酔は必要ありません。
処置により睾丸で精子が作られなくなり、避妊成功率は99.6%と発表されています。アメリカでは2014年2月から実用化されており、現在アメリカ食品医薬品局で認可されている唯一の犬の避妊薬です。

●Suprelorin

これも製品名です。生後6ヶ月以上のオス犬を対象にした方法で、性ホルモンの作用を阻害する物質をマイクロチップのように皮下に埋め込むことで、成分が継続的に供給されて効果を発揮します。
性腺を除去してしまう外科手術と異なり、性ホルモンのテストステロン値が未処置の場合の50%程度は分泌されるため、猟犬など去勢によって能力が低下することを危惧する場合にも勧められています。現在はオーストラリア、ニュージーランド、EU諸国において認可されています。


●黄体ホルモン擬似物質の投与

犬猫/オスメスの両方を対象にしており、注射または経口で投与します。黄体ホルモンが分泌されると性腺刺激ホルモン放出ホルモンが分泌されなくなりますが、擬似物質の投与で同じ働きをさせる方法です。アメリカでは副作用の懸念などから推奨されていませんが、複数の国では実際に使用されています。


(photo by framirezle0 )

どのような医療処置にもリスクと利益の両方があるように、これらの方法も手放しでどんな動物にも勧められるというものではありません。
けれども1番目に挙げたZeuterinなどはアメリカ国内の過疎地域、アフリカ諸国、南米諸国など、通常の動物病院が極端に少なくワゴン車の移動動物病院のみが頼りというような場所では、手術よりもずっと簡便なこの方法が犬の頭数過剰問題や野良犬の問題を解決するのに大きく貢献しています。

猫に対する手術以外の避妊方法も改善や開発が進めば、TNRや地域猫活動が容易になっていくことでしょう。このように犬や猫の避妊去勢処置は、社会全体の問題であることもしばしばあります。よく「アメリカでは頭ごなしに避妊去勢を勧めている」と、ややもすれば批判的な言葉を目にすることもありますが、犬猫の頭数過剰や殺処分を社会全体の問題として捉え、確実に成果を上げてきたのが現在のアメリカが取った方法です。そして現在の日本も、社会全体を見渡した時には避妊去勢の処置は不要とは言えない状態だと思います。

もちろん個々の家庭の愛犬たちが避妊去勢処置をするかどうかは、飼い主がリスクと利益を考えて結論を出すべき問題ですが、この「社会全体を見渡す」ことで変化することもあるのではないでしょうか。
避妊去勢手術が健康に及ぼす影響などが発表されるとレスキュー活動をしている人たちが批判されたりなどというのはその変えなくてはいけない最たるもので、どうかいろんな角度から広い視野で見渡す人が増えて欲しいと切に願います。

避妊去勢手術を受けたことで罹患率が高くなる病気もあるし、手術をすることでリスクが低くなる病気もある。
そしてそれ以前に、野放しの繁殖の結果として殺処分になる動物たちがいる。

ACC&Dがアメリカ国内だけでなく、アフリカや南米諸国の社会情勢や宗教、文化までを視野に入れて不幸な犬が増えないように運動している様を知り、犬の避妊去勢をいろんな角度から考えることで新しく見えてくることもあるのではないかと考えています。

2018/06/23

ペットフードメーカーに対する集団訴訟 2


前回のチャンピオンペットフードに対する訴訟の話題の続きです。

チャンピオン社の反応と、その後の対応

さて、訴えられたチャンピオン社の反応はどのようなものだったでしょうか。
3月19日にFacebookにて発表された声明では冒頭から「データの曲解に基づいた根拠のないもの」としています。

またアカナとオリジンのフードは、2つの第三者機関によって検査を受けており、高い基準の安全性を保っているとも述べています。


ごく微量の重金属についても説明がされています。
これらは自然界に鉱物として存在する微量の金属が、原材料を通じて製品に含まれているものだと言うことです。どんな農作物でも水産物でも微量の重金属を含んでいます。
原告からの訴状の中にもある通り、製品中に含まれるとされる重金属は米国食品医薬品局の上限基準を大幅に下回るもので、自然界の食品に含まれている範囲のものです。

また私の個人的な見解で恐縮ですが、私にはこのチャンピオン社の言葉は納得のいくものに思えます。

同社はこの訴訟を受けて、翌月4月13日に訴訟の却下の申し立てを行っています。
つまり全く取り合わないという姿勢を取ったわけですね。

言うまでもないことですが、製品のリコールの予定もありません。

ちなみにチャンピオンペットフード社は本国カナダとアメリカにおいては一度もリコールをしていません。2008年にオーストラリアにおいてのみリコールが行われていますが、これはオーストラリアがペットフードに対してガンマ線照射を義務付けており、同社がこの処置をしていなかったためです。同社はガンマ線照射はオーストラリア以外の国では行っていません。


参考までに日本の農林水産相や厚生労働省が農作物や水産物に含まれる自然由来のヒ素やカドミウム について説明しているサイトをリンクしておきます。
今回のペットフードの件とは関係がないのですが、微量の重金属は自然由来で日本の農作物にも普通に含まれているということの説明です。




訴訟はリコールとは別のものだということ




ある企業に対して集団訴訟が起きたという時、それが即「ここの製品は危険だ!」ということにつながるわけではありません。

海外のことなので、なかなか詳細が掴みにくいとは思いますが、もしご自分が利用している製品なら、冷静にその背景を調べてみることをお勧めします。

企業が製品をリコールした場合には、それは企業側が製品に問題があることを認めているわけですから、問題の所在は明らかです。

この点をしっかりと認識して、大切な愛犬の食べるものを見極めたいですね。


消費者が訴訟を起こせるのは悪いことじゃない

今回取り上げた、オリジンとアカナのフードに対する訴訟は、具体的な健康被害の報告もないし、根拠も非常に怪しいもので、私自身は取るに足らないことだと思っています。
最初に書いたように「訴訟は誰にでも起こせる」のです。

けれど消費者が企業を相手取って訴訟を起こすことができるのは悪いことではありません。損害を被った場合には訴訟を起こすことは正当な権利ですし、これができない社会は恐ろしいです。

例えば2015年に起きたネスレピュリナ社に対する集団訴訟。
(これはSMILES@LAに書いたことがあります。「ネスレピュリナ社ドッグフードの集団訴訟の件」


ピュリナのベネフルというフードを食べた後に具合が悪くなって命を落とした犬が1400匹以上、腎機能障害など深刻な健康被害の報告は数千件に上るという大規模な集団訴訟でした。

これ、本当に本当に腹立たしいのですが具合の悪くなった犬たちを診察した獣医師の証言は「毒物の専門家ではないので信頼性に乏しい」として無効にされ、最終的にピュリナ社が勝訴しました。
超大企業が全力をあげて弁護団を結成して対策を講じたのだと思います。

それでは訴訟を起こしたことは無駄だったのか?というと決してそうではないと思います。ピュリナのベネフルはその後もずっと「最低のフード」の地位を確立しっぱなしですし、この集団訴訟が世間に与えたインパクトは意味のあるものでした。

今回のチャンピオンペットフード社に対する訴訟と比べてみると、いろいろなことが見えてきます。


おわりに


アカナやオリジンのフードを買っている方は多いので、参考になればと思いこの記事を書きました。

このようなことがあると「何を信じればいいの?」と思われる方もいるかもしれません。
私自身は「自分の感覚を信じるしかない」と考えています。そのためにもペットフードの原材料一覧の読み方、それぞれの材料名が意味するところを勉強することが必要です。

私がお勧めしたいのは、とにかく色々なフードの原材料一覧を読みまくることです。
グリーンドッグさんなどは扱うフードの基準が明確で全てのフードの原材料が全部オンライン上で読めます。事あるごとに読んでいると、色々なことがだんだんクリアになってきます。
このブログにもフードのラベルが意味するところを説明した記事がありますので、ぜひ参考になさってください。

また各メーカーのリコールの有無や履歴も調べるとすぐにわかるので、フード選びの参考になさってください。

ところで、この記事のパート1でも「どれくらいおかしいかと言うと、ピュリナ社のフードが5つ星なんです」なんてことを書いたり、この記事でもピュリナの訴訟の件を例にしたり「そんなにピュリナが嫌いか?」と思われたかもしれません。

嫌いです。全く信用できないと思っています、個人的にね。

2018/06/21

ペットフードメーカーに対する集団訴訟 1



今年の3月、チャンピオンペットフードというメーカーが消費者から集団訴訟を起こされたとのニュースが報道されました。

チャンピオンペットフードと言われてもピンと来ないかもしれませんが、プレミアムフードの『オリジン』と『アカナ』のメーカーと言うと「あ〜、あの......えっ!?」という反応になる方も多いのではないでしょうか。

高品質でこだわりの原材料のフードとして、愛犬のために吟味を重ねる飼い主さんが選ぶタイプのフードですから驚きますよね。

最初に、この訴訟とフードについて私の個人的な意見を述べさせていただくと
「私がこのフードを買っていたとしたら、この訴訟のことはそれほど気にしないし、これからも買い続けると思う」です。
今このフードをお店で買ってきてうちの犬たちに食べさせられるか?と聞かれたら「余裕で食べさせられる」と答えます。

では、以下に詳しい背景をご紹介していきます。



チャンピオンペットフードが訴えられた理由

そもそもチャンピオン社はどんな理由で訴えられたのでしょうか?

最初に訴えを起こしたのは3名の消費者で「チャンピオンペットフード社の製品であるオリジンとアカナのドッグフードにはヒ素・水銀・鉛・カドミウムなどの有害な重金属と、内分泌かく乱物質であるビスフェノールAが含まれている。同社のフードは新鮮で自然な原材料を使用しているという虚偽の表示をしている。」というのが訴訟の理由です。

原告のうちの一人は「過去4年間オリジンまたはアカナのフードを愛犬に食べさせていたが、具合が悪くなった」と述べています。(ただし具体的な病名や医療記録は提出されていない。)

「最初に訴えを起こした」と書いた通り、その後も同様の内容で別の消費者グループからも訴訟が起きています。いずれもペットの具体的な健康被害の内容は示されていません。
(オリジンやアカナの製品が原因と思われる健康被害の報告もありません。)

一番新しい訴訟は6月にファイルされたもので「高品質のプレミアムフードだと宣伝されていたから高い価格でも購入したのに、虚偽の表示をしていたとのことなので弁済して欲しい」という内容です。(「え?マジっすか?」って思いますよね。)

ここで覚えておきたいのは「訴訟は誰でも起こすことができる」ということです。



訴訟のベースになっている数字はどこから?


訴えの内容が書かれた訴状には、オリジンとアカナの製品それぞれに含まれるとするヒ素、水銀、鉛、カドミウム、BPAの数値を一覧にしたものが添付されています。

フードに含まれるそれらの重金属とやホルモン様物質の数値が訴訟の理由になっているわけですが、全ての数字は米国食品医薬品局が安全基準として定めている「これ以上含まれると安全ではない」という数値を大きく下回っています。
例えば、ヒ素は米国政府が定める安全基準の数値は食品1kgあたり12.5mgが上限とされていますが、チャンピオン社の製品の平均値はフード1kgあたり0.89mgでした。
カドミウム は安全基準が1kgあたり10.0mg、チャンピオン製品平均1kgあたり0.09mg
鉛は安全基準が1kgあたり10.0mg、チャンピオン製品平均1kgあたり0.23mg
水銀は安全基準が1kgあたり0.27mg、チャンピオン製品平均1kgあたり0.02mg

BPAについては、缶詰フードから検出されるならわかるのですが、訴訟の対象になっているドライフードから検出されるのは考え難く、???な部分です。

これらの数値を測定したとされるのはクリーンラベルプロジェクトというNPO団体です。
この団体は、同じ名前のウェブサイトで独自に行なった様々な製品の検査をベースにして、星の数でレーティングを行なっています。
このレーティングについては、今回の訴訟問題以前からペットフード関連の有名Webサイトや、さらには経済誌フォーブズなどでも判定基準の不透明さや不可解さが疑問視されていました。

どのくらい不可解かというと、クリーンラベルプロジェクトにおいてはピュリナのドッグフードのほとんどに最高評価の5つ星がついています。
原材料一覧を見たらため息しか出ないような、ピュリナブランドの中でも最安ランクの製品も星5つ。

そしてこのサイトで最低評価の1つ星には、アカナとオリジンのほとんどの製品、ロータス、GO!、HALOなど、通常のペットフード評価サイトで最高ランクの常連のブランドが並びます。

同サイトのレビューはこちらで見ていただけます。

そしてその評価の根拠となっている「独自に行なった調査の数値」は一切公開されていません。そこが他社数社から不透明さを指摘されている所以ですね。

つまり、オリジンとアカナの製品についての訴訟の根拠になっている数字の出どころが信頼の置けるものとは思えないのが、一番最初に書いた私の個人的な意見の理由です。


ちょっと長くなりそうなので、製品中の重金属についてや、チャンピオンペットフードの対応や声明、消費者が企業を相手取って行う訴訟についてなど、明日続きを書きます。


訴訟全文はこちら

2018/05/29

科学が見つけた「犬の魅力のピーク」と、科学では割り切れない「感情」

5月半ばの頃、ニュースサイトのAnimalやNatureといったカテゴリーや犬関連のサイトで多く取り上げられていた、ちょっと興味深いリサーチがありました。

それは『犬の魅力がピークになる時期』についてのリサーチと仮説でした。
感情に任せて言えば「犬は一生を通じてずっと魅力的」とか「今そこにいるその時が常に一番」なわけですが、リサーチ自体はとてもおもしろいものなので先にご紹介します。


『犬の魅力』リサーチの背景


(photo by JACLOU-DL)


リサーチを行ったのはアリゾナ州立大学の心理学者クライブ・ワイン博士。犬とオオカミの行動についての研究をしている人です。

オオカミの子供は生まれてから約2年間は母親や父親を含む群れのメンバーとして暮らすのだそうです。その期間の子オオカミは世話をしてもらい、独立のための訓練を授けられる立場です。

一方、犬はどうでしょうか。ワイン博士が研究しているのは飼い主のいない野良犬です。博士の同僚が研究しているバハマのストリートドッグを観察すると、子犬のそばにいるのは母犬だけ。そして子犬が生後2ヶ月くらいの時に母犬は母乳を与えることを止め、子犬のそばを離れるのだそうです。(ええっ!?って感じですよね。でも母犬も自分が生き延びるためにはそれがきっと限界なのでしょうね。)

バハマのストリートの子犬の約8割は1歳を迎えることができないそうです。

生き残ったラッキーな子犬たちは何が幸いしたのか?人間の庇護を受けるために可愛らしい姿形でいるという作戦が功を奏したのではないか?という疑問がリサーチの背景にあります。


犬はどの時期がいちばん魅力的か?


(photo by Alexas_Fotos )


リサーチはワイン博士が教鞭をとっているフロリダ大学の学生51人の協力を得て行われました。
この記事のトップの画像のカネ・コルソ、2番目の画像ジャックラッセルテリア、3番目の画像のホワイトシェパードの3犬種を対象に、1犬種につき12〜14枚の白黒写真が用意されました。
写真は出生直後から生後7ヶ月までの間のすべて違う週齢のものです。

写真を見せられた学生は「まったく魅力的ではない」から「非常に魅力的である」のスライダーで、それぞれの週齢の写真をランク付けしていきます。
結果は出生直後は『魅力スコア』が低く週齢が進むにつれてスコアが上がって行きました。魅力のスコアがピークだったのは、カネ・コルソが6.3週齢、ジャックラッセルが7.7週齢、ホワイトシェパードが8.3週齢で、10週齢以降はどんどんスコアが下がっていったとのことです。
「非常に魅力的」だとランク付けされた時期の週齢が、野良犬の親が母乳を与えるのをやめる時期とほぼ一致しています。

これだけでは「犬は母犬から離れた後に人間の庇護を受けるチャンスを得るために、その時期に可愛らしさのピークが来るように進化した」という結論は出せませんが、なかなかおもしろい結果ですね。

出生直後は母犬がいるので人間にアピールする必要はないし、生後半年くらいになれば自分で生きる力もついてくるので人間にアピールする姿ではなくなるのだろうとのことです。
スコアをつけたのが全員大学生というのはデータとして偏っていますし、犬種も3種類だけという少数なので、今後これらの点を改善したリサーチ、また写真ではなくビデオを使ってのリサーチなどをしていく予定だそうです。
また子猫やオオカミについての「人間が可愛いと感じるピーク」のリサーチが行われることも期待されています。


だけど、やっぱり犬は一生魅力的じゃない?



(photo by vargazs )

生後8週くらいの子犬は確かに文句なしに可愛らしいです。
たいていの幼齢の哺乳類は姿形も目も顔も丸っこくて、自然と庇護欲をかき立てるようになっていますから、それは当然ですね。

でも犬への愛のある人なら「それでもやっぱり犬生のどのステージでも魅力的だよ」と思いますよねえ。
そういう自然の戦略を超えたところで「成犬もたまらなく魅力的だ」とか「老犬のかわいさは格別」などと感じる人間の「感情」ってなかなかすごいじゃないか!と改めて思います。
(同時に「子犬の可愛い時期を過ぎたらもう飽きた」なんて言って世話をしなくなるような人間は原始的な感情しかないんだなと黒いことも思ったり。)

この記事の犬種の写真を選ぶ時、わざと成犬の写真を選んだのですがみんな魅力的ですよね。
1枚目のカネ・コルソはたまたま子犬と成犬がいっしょに写っている写真があったのでそれを選びましたが、子犬の後ろの成犬がいい味わいです。

実験に使用された写真の一部は、下記のワシントンポストの記事で見ることができます。
3犬種各々の「出生直後・スコアピーク時・生後半年前後」の写真です。

https://www.washingtonpost.com/news/animalia/wp/2018/05/19/puppies-cuteness-peaks-right-when-they-need-humans-most-study-finds/?noredirect=on&utm_term=.b999e976be1f


リサーチ全文はこちら
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/08927936.2018.1455454

2018/04/17

頭のいい犬種ベスト10?冗談じゃない!


犬に関する情報サイト、巷に溢れかえっていますね。情報の質は玉石混交(正直、「玉」を探すのが難しいのが現状)

そういう数多のサイトの情報で私が「石」だと思うもののひとつが「頭のいい犬種ベスト10」とか「IQの高い犬種ベスト5」とかいうものです。

そういうランキングに無縁のミニピン。でもズル賢いんですよ。


こういう見出しを見るたびに苦々しい気持ちになるのですが、これがまたあちこちで目にしますね。日本語の情報だけじゃなくて、英語の犬サイトでも同じ。

「訓練がしやすい犬種」とか「独立心の強い犬種」とか言うならまだわかるんですが、こういう場合の「頭がいい」って人間に都合がいいと言うことですよね。

......と、常々腹立たしく思っていたら、私の大好きなマーク・ベコフ博士が動物の知性について素敵なコラムを書いてらしたので、それをご紹介します。

ベコフ博士はコロラド大学の環境学と進化生物学の教授で、動物福祉や動物の感情について多くの論文を発表してらっしゃいます。
特に犬についての実験や観察はおもしろくて興味深いものが多いです。


知能の種類はひとつだけではない


ベコフ博士のコラムが掲載されていたのはPsycology Today。
コラムの冒頭でブライアン・ヘア博士の言葉を紹介しています。

ヘア博士は犬の知能や認知機能についての著書があり、犬の認知機能研究センターの設立者でもあります。
2013年のサイエンティフィック・アメリカンのインタビューからの引用です。

「犬の心について人々が持っている最大の思い違いは何でしょうか?」

それは『頭のいい犬』と『頭の悪い犬』がいると思っていることです。未だにこんな知能に関する一次元的な解釈があるんですよ。知能というものがたったひとつの種類しかないとでも言うようなね。」


(インタビュー全文はこちら

ヘア博士の言葉がすべてですよね。「頭がいい」とか「賢い」っていろんな種類がある。

ニコとニヤだって、何か目的を達成したい時のアプローチの仕方、頭の使い方が全然違う。でもどっちが賢いとかバカだとかでなく、ただ違うんです。

ベコフ博士のコラム全文を訳すと随分長くなるので、要約して以下にご紹介しますね。


犬であれ他の動物であれ「知能」というものにはいくつもの種類がある。
そしてもちろん個体差というものがある。
「それぞれに違う」というのは自然界のルールだ。「違いがある」ということは決して例外ではない。

「知能」とは一般的に、知識を獲得して、それを使い、さまざまな状況に適応する能力のことを指す。生きるために必要なことを実行して生き残るためのものだ。

例えば、メキシコのストリートの野良犬たち。
食べ物を素早く盗むことに長けた者、敵から逃げるのがうまい者、人間に愛想をふりまいて食べ物をもらう者、皆それぞれに知能を使っている。
私がフォスターとして預かった犬の中には、私たち家族や飼い犬の食べ物を鮮やかに素早く盗んでいく者もいた。
彼らのうち誰が一番賢いかなど決められない。皆それぞれの環境に賢く適応したのだ。
しかし人間の都合から言えば彼らはバカ犬だ。

ある犬を他の犬よりも賢いとかバカだとか決めつけることは、それぞれを個体として認識する機会を失い、犬それぞれの本当の姿を見誤ることにつながる。



犬に求めるもの、犬が望むもの


アリゾナ州立大学の犬研究者ワイン博士は「頭のいい犬というのは時に厄介なものだ」と述べる。
「年中動き回って、すぐに退屈し、しょっちゅうトラブルを巻き起こす。私たちが犬に求めるものは頭がいいかどうかよりも、その犬がどれだけ愛情深いかどうかだ。」

ちょっと待って!すべての犬は厄介になり得る。でもそれは彼らの知能の程度のせいではない。
すべての犬は愛情深い。それは知能とは無関係だ。

犬の頭がいいとか、愛情深いとかに価値を置くことは、我々が犬に対して何を求めているのかを反映している。犬が何者であるか、犬が何を望んでいるかは反映していない。
犬が厄介になるのは、人間が犬の言わんとすることを理解していないからだ。

それでもなお、人は私に問う。
「では本当にバカみたいな振る舞いをする犬はどうですか?本当に頭の悪い犬というのはいないんですか?」


ハンガリーの解剖学者János Szentágothai博士の言葉を借りよう。
「頭の悪い動物などいない。あるのは乏しい観察力と拙い設計の実験だけだ。」
(動物の知能の研究では、実験を行いその間の観察から結論を出す。)


イルカとカラス、カナヅチとノコギリ


そしてまた、この種の質問も非常によく聞かれる。
「犬は猫よりも頭がいいですか?」「鳥は魚より賢いですか?」

動物はそれぞれの種の遺伝子の乗り物として、自分がしなくてはならないことをする。それだけだ。

そして数多くの人間以外の生き物が、さまざまな形で人間よりも優れている点があることも覚えておかなくてはならない。
異なる種の比較は意味がない。イルカとカラスのどちらが賢いかという問いは、カナヅチとノコギリはどちらが優れた道具かと問うようなものだ。

犬をそれぞれの「個」として見る


犬をバカと呼ぶことは間違っているし、異なる種の知能を比べることは無意味だ。
これらはキャッチーで人目を引くための手段として使われていることは承知している。しかしそれはただ紛らわしく、誤解を定着させていくだけだ。
そういう考え方や言葉をやめて、犬を「個」として見てほしい。

ある犬が頭が悪いとかバカだと呼ぶことは、犬が何かを習得するのに時間がかかったり、人間の望む結果が得られないことへの言い訳だ。
人間の方が努力して、犬を理解し受け入れることで犬の行動も変わるのだ。

同じ親から生まれた子犬たちも、生まれた瞬間から驚くほどそれぞれに違う。気質、身体能力、新しいことを習得するスピード、何が優れている劣っているということではない。それぞれに違うやり方で生き残るための作戦を立てている。

多くの人に犬の感情や認知能力の研究や進化の歴史を学んでほしいと思う。知ることで理解が深まり、犬と人間の絆が強く深くなる。
それぞれの個としての違いを受け入れ尊重することで、より良い関係を築いていけるのだ。



「頭のいい犬種ランキング」のようなものを目にするたびに感じていたモヤモヤをすっきり振り払えるようなコラムだったので、ぜひ紹介したいと思っていたんですよ。

そういうランキングの定番であるボーダーコリーの頭の良さと、介助犬の代表であるラブラドールの頭の良さの種類は全然違いますよね。
同じラブラドールでも、介助犬に適した能力と爆発物探知犬に適した能力は全く反対だそうですし。

ベコフ博士やヘア博士の言葉や考えが、たくさんの人に広まってほしいと心から思う次第であります。


《参考サイト》
https://www.psychologytoday.com/us/blog/animal-emotions/201803/my-own-dog-is-idiot-she-s-lovable-idiot







2018/04/16

See the Dog Not the Story

「すべての犬はみんな違う。犬を個として考える。」
これはとても大切なテーマで犬を迎える時に心しておかなくてはいけないことなのですが、同時に「犬という生き物」「○○という犬種」という意識も必要です。

どちらか一方だけではコミュニケーションはうまくいかない。

ビシッと上手に説明できないので、繰り返し手を替え品を替えて、書いていきたいと思っているテーマです。

まずは過去記事の「See the Dog Not the Story」をご紹介します。
タイトルのこの言葉、座右の銘のひとつにしたいくらい(笑)

そしてこの過去記事が、次の書き下ろし記事のテーマにもつながっています。



(以下dog actually 2015年9月14日掲載記事より)

保護犬を家族に迎える時、これだけは心に留めておいたほうが良いという大切なことってなんだろう?と考えてみたいと思います。

保護犬を迎えるにあたって気をつけることと言っても、犬の境遇、性格、受け入れる側の環境、その他諸々は千差万別。すべての例に当てはまる注意事項なんてありません。(またはあり過ぎます。)でも、どんな場合でも心しておくべきことをひとつだけ挙げるとしたら......なんだと思いますか?
複数の保護犬を家族に迎えた経験のある方、保護活動に携わっている方、経験豊富な皆さんが頭に浮かべたことはすべてが正解であると思います。

私が紹介したいと思ったのは、先日カレン・B・ロンドン博士のブログで目にした言葉です。ロンドン博士は動物行動学者/ドッグトレーナーであり、同じく動物行動学者であるパトリシア・マッコーネル博士との共著で成犬の保護犬を家族に迎える時のノウハウをまとめた本も出版している保護犬のエキスパートでもあります。
ロンドン博士が挙げていた言葉は「See the Dog, Not the Story」というもの。直訳すれば「犬を見よ、ストーリーではなく」となりますが、「犬が抱えている過去のお話に捉われるのではなく、その犬自身に注目しよう」ということです。
この言葉は前述のマッコーネル博士との共著に取り掛かっていた時期に、マッコーネル博士が自身のブログで「保護犬を迎える時に大切なことって何だろう?」と読者に問いかけ、意見を募った中で両博士がベストだと感じたものでした。
ひとくちに保護犬と言っても、生まれついての野良だった犬、パピーミルから保護された元繁殖犬、多頭飼い崩壊現場からきた犬、ごく普通に愛されていた家庭犬だったけれど飼い主と死別してしまったなど背景は様々です。どんな環境から来た犬であるのかを知っておくことは対応の仕方を考えるための情報としては有効ですが、いつまでもそこに捉われていては、犬のリハビリの進み具合や成長を見落とすことにもつながります。

たとえ過酷な状況にいた犬であっても、新しい環境できちんとした生活を始めると感情も行動も日々変わっていきます。また同じ現場から保護された犬であっても、それぞれの性格や体力により受けた影響もそれぞれに違います。
犬が抱えているストーリーにのみ注目していると、いつまでたっても「この子は以前虐待を受けていた可哀想な子なんですよ。」と過保護になって犬の社会化を妨げてしまったりする例も少なくありません。
「この犬はこういう犬だ」と決めつけることなく、今現在のその犬の状態に注目して対応することは保護犬に限らず、すべての犬にとって大切なことです。しかし保護犬を家族に迎える場合、ややもすると「可哀想な犬を救うのだ」という部分にのみ力を入れ過ぎてしまうこともありがちです。
もし、これから譲渡会などに行って保護犬たちに会ってみようとお考えでしたら、ぜひSee the Dog, Not the Storyを意識なさってみてください。それだけで、そこにいる団体の人やボランティアの方々に向ける質問の内容も、そして犬たちを見る目も変わってくるかと思います。

【参考サイト】
See the Dog, Not the Story / The BARK

2018/03/25

愛犬に寄る年波


先月からニヤの体調のことで気ぜわしい日々が続いて、自分が書いたこの記事のことを思い出していました。

「寄る年波って本当にそうだわ〜。なんか気がついたらものすごく潮が満ちて焦りまくってる気分。」と思いながら読み返して感慨にふけっていました。

2017年2月の記事ですからほんの1年ほど前のことなのですが、この後もっと頻繁にニコニヤのお腹の調子に悩まされることになるとは、この時は想像していなかったなあ。

幸いお腹の方は、野菜類に火を通すようにしてから落ち着いていますが、ニヤの関節炎や心臓肥大という別の「波」が来ているのは、ブログに書いている通り。

この文章はdog actuallyの記事としてはちょっと異色で、ニコのことを詳しく書いたものですが、SMILESのブログよりは少しあらたまった感じで自分でも好きなものです。

下のニコの写真は1枚目が2017年の2月、2枚目が今年のもの。
比べるとマズルが白くなっているけれど「なんだ、あんまり変わってないじゃない」と思ったのは悪あがきかな(笑)



(以下dog actually 2017年2月6日掲載記事より)








『寄る年波』というのは「年が寄る」と「波が寄る」をかけた言葉だそうだ。
 毎日の生活の中では変わっていないつもりでも気がつくと年を取ったなあと実感するあの感じは、じわじわと波が満ちてくる(あるいは引いていく)感じとよく似ていて、昔の人はうまいことを言うものだと感心する。
自分のこともそうなのだが、私が今ここで書いているのは、もちろんうちの犬のことだ。
うちのニコが先日お腹を下した。ただ下しただけなら1日ほど絶食して重湯に塩ひとつまみとカモミールをパラパラ入れたものだけ飲ませておけば、翌日にはたいてい治っているのだが、先日は下したところに結構な量の血が混じっていたので「これはすぐに病院に行かなくては!」と少し焦った。何しろ自分の犬が血便をしたなんて初めての体験だったもので。
血液検査も検便も特に異常は見当たらなくて、本犬も体はピンピン元気だったので「たいしたことはないでしょう」と抗生剤をもらって帰ってきた。
便も翌々日にはすっかり元に戻って「本当にたいしたことなかった......。」と拍子抜けしたのだった。
ニコは9歳あたりまでほとんど下痢をしたことがなかった。一度だけドッグパークで2匹のハウンドに挟み撃ちで襲われた日の夜にストレスからか下痢をしたことがあったが、それっきりだ(幸い大きな怪我はなかった。)
だが9歳になった頃から1年に1~2回はお腹が緩くなるようになってきた。昔は「鋼鉄の胃腸」なんて呼んでいたのだが、今はアルミの胃腸くらいになった感じだ。
思えば、10歳になった頃に「いよいよ本格的にシニアか」と思ったものの、運動量も食餌の量も変わらないし足腰の衰えなども全く感じないのでちょっと油断していたかもしれない。
1月の下旬は雨が多くて気温の低い日が続いていたので、体を温める食材を意識するとか小型のヒーターを出してくるとか気を配るべきだった。
今回は犬の神様が「ちょっと気持ちを引き締めるために赤いのを混ぜておこうか」と手配をしてくださったのだと思っておこう。
毎年冬の時期には体重が減りがちになるので食餌の量も調整するのだが、1日の絶食と翌日のお粥食で体重もまた減ってしまった!


当たり前だけれど、愛犬のことは毎日見ている。
何か変わったことがないかと目で見て手で触って匂いも嗅いで注意をしている。
だけど毎日見ているからこそ見落としてしまうこともあり得る。
加齢は『寄る年波』なのだ。波のようにジワジワと来るかと思うと、突然ザッパーンと来ることもある。

幸いブログを書いているおかげで、何年前のいつ体調を崩したかとか、その頃の外見はどんな風だったのかはいつでもすぐに見返すことができる。毎日の観察では気がつきにくい事柄を確認するためにも、意識して古い記録に目を通すようにしようと肝に銘じた。
ブログだけでなく、今は手軽に記録を残せるSNSもいろいろあるし、写真もスマホで気軽に撮影して整理しておける。そういう形で愛犬の日々を記録しておくことは健康管理の上でも本当にお勧めだ。何も公開して人に読んでもらう必要はない。写真を撮って、気がついたことや起こったことを箇条書きで書いておくだけでいい。
愛犬の毎日の記録はそういう実用的な意味合いもあるのだが、私はこれを「老後の楽しみ」とも呼んでいる。
いつか自分がもっと年をとった時に、ニコやニヤと過ごした時間をゆっくりと味わうための記録でもある。犬と自分、両方に寄ってくる年波とうまく付き合っていくために今日もいそいそと記録をつけていこう。

2018/03/13

ヒルズ・ドッグフードの原材料一覧にある「ブドウ」の表記

犬に食べさせてはいけない食べ物のリストに必ず入っている「ブドウ」
玉ねぎやチョコレートの次くらいにはメジャーな危険食べ物ですよね?

それがドッグフードの原材料に使われていたら?
しかも原材料一覧にしっかりと表記されていたら?
「え?なんで?」って思いますよね。さらにそれが療法食のメーカーとしてよく知られているヒルズのフードだと言うと、驚かれる方も多いのではないでしょうか。

ブドウやレーズンがなぜ犬や猫にとって危険なのかというメカニズムは今のところ明らかになっていません。けれどもブドウまたはレーズンを食べて腎不全が起こった例は多数報告されています。
どうしてそんなものがわざわざ原材料に使われているのでしょうか?


ヒルズ・サイエンスダイエットとブドウ

ペットフードに関する情報をかなり冷静に伝えるTRUTH about pet food.comというサイトがあります。ヒルズのドッグフードのブドウ問題は、あるペット用品店オーナーが顧客から「ドッグフードにブドウが入ってるけど大丈夫?」と質問を受け、各所に問い合わせをした経緯として掲載されていたものです。

ペット用品店オーナーはペットフードの原材料に関する法規や規制にたいへん造詣の深い人で、サイトに問い合わせる以前に食品医薬品局(FDA)、ヒルズ社にも問い合わせをしていました。

原材料の一覧にGrape(ブドウ)が含まれていたのは、サイエンスダイエットの小型犬成犬用、同じく小型犬7歳以上用、もうひとつはプリスクリプションダイエット(療法食)ブレーンエイジングケア用でした。

日本で販売されているサイエンスダイエットの同じ種類のものを確認したら、こちらも確かに原材料一覧の真ん中あたりにブドウの表記がありました。
療法食ではブレーンエイジングケアというものは日本のサイトでは見つかりませんでした。

こちらが、同社のサイトに掲載されている原材料一覧です。
トリ肉(チキン、ターキー)、トウモロコシ、小麦、米、動物性油脂、トリ肉エキス、植物性油脂、亜麻仁、ポークエキス、トマト、柑橘類、ブドウ、ホウレンソウ、ミネラル類(ナトリウム、カリウム、クロライド、銅、鉄、マンガン、セレン、亜鉛、ヨウ素)、ビタミン類(A、B1、B2、B6、B12、C、D3、E、ベータカロテン、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、 コリン)、アミノ酸類(タウリン)、酸化防止剤 (ミックストコフェロール、ローズマリー抽出 物、緑茶抽出物) 
 https://www.hills.co.jp/dog-food/sd-adult-small-and-toy-breed-dog-food-dry より

FDA、ヒルズ社、AAFCOとのやりとりの経緯

さて元々の情報がアメリカのものですので正確に書きますと、アメリカのパッケージに原材料として表記されていたのはDried Grape Pomaceという名称でした。Pomaceというのは搾りかすです。ジュースなどを搾った後のブドウの搾りかすを乾燥させたものです。

(日本のペットフードの原材料の表記ではミールも副産物も「肉」と表記してもOKなのと同様に、乾燥させた搾りかすもブドウと表記しているようですね。同様に「トマト」「柑橘類」と書かれているのも英語表記ではDried Pomace。ジュースなどを搾ったあとの繊維を乾燥させたものです。)

件のショップオーナーは、まず食品医薬品局(FDA)のサイトでDried Grape Pomaceというものが「安全と認められる動物飼料原材料のリスト」に含まれているかを確認しました。
答えは「NO」 FDAが安全と認めている原材料ではないということです。

次にヒルズ社に問い合わせをしたそうです。
回答は「すべての原材料は安全なものです」というもので、「ブドウとブルーベリーの混合エキスの安全性について」という研究のリンクが添付されていたそうです。
はい、率直に言って「話にならない」ですね。

そこでショップオーナーはTRUTH about pet food.comに連絡を取り、サイト管理者がAAFCOに問い合わせをしました。
AAFCOとはアメリカ飼料検査官協会の頭文字を取った略称で、すべての動物飼料の表記や原材料の規定をしている公的な機関です。

AAFCOではペットフードの原材料としてDried Grape Pomaceというものの定義を規定しておらず、それはすなわち原材料として使用してはならないということです。
ペットフードに使われる原材料はAAFCOが定義を規定しているものしか使用できないことになっています。ブドウの前に表記されているトマトDried Tomato Pomace や柑橘類Dried Citrus Pulpは定義が規定されていて、使用が認められているものです。

ヒルズ社の工場があるケンタッキー州の農業省はヒルズ社に連絡を取り、原材料からブドウを取り除くことと、パッケージの表記を訂正することを指導する予定だそうです。指導に従わない場合には同製品を流通から撤退させることが命令されます。




(photo by HG-Fotografie )


なぜわざわざブドウを使ったのかは謎のまま

ヒルズ社への問い合わせの結果は上記のようなものですし、農業省からヒルズ社への指導の結果はまだ一般にはわからない状態ですので、なぜドッグフードにブドウが使われたのかはわからないままです。
(キャットフードには使われていません。)

犬に食べさせてはいけないと言われる食品なのにドッグフードに使われることがあるものと言えば、アボカドとニンニクがあります。
しかしこれらは危険のメカニズムが明らかになっていて、安全な種類や使用量が明確なので、メーカーがリスク管理をすれば栄養面などのメリットが享受できるものです。
しかしブドウはなぜ健康被害が出るのかがわかっていないので、管理のしようがありません。

個人的にはヒルズのフードは、動物性たんぱく質がミールという形でしか使われていないこと(日本語ではチキンとかビーフとか書かれていますが、中身はミールです。)と、穀類の量が多すぎると感じるので、うちの犬たちに食べさせようとは思いません。
でも健康被害が出るかもしれず、AAFCOが使用を認めていない原材料を使うというのは、別の次元の話ですよねえ。

アメリカでは前述したような措置が取られるようですが、日本では指導などはないと思います。(改めて調べておきます。)
危険な可能性のあるフードを食べさせたくないという方は、このブドウの件を心に留めておいてくださいね。

《参考URL》

ドッグフードから検出された殺処分用の麻酔薬

(screenshot from http://www.gravytraindog.com )

1ヶ月ほど前になりますが、テレビを見ているとドッグフードから動物の殺処分に使われる麻酔薬ペントバルビタールが検出されたというニュースが流れました。

とんでもないことだしショッキングだと報道されるのも当然なのですが、ペットフードにまつわることを色々読んでいると「ああ、そういうこともあるだろうなあ」と感じてしまいました。よくある扇動的なサイトではなくて、FDA(Food and Drug Administration アメリカ食品医薬品局)やAAFCO(アメリカ飼料検査官協会)が公表しているペットフードに関する規定と市場に出回っているフードを見て考えたら、少なくともテレビCMやパッケージでうたわれているフードの素晴らしさが真実じゃないことくらいはわかります。

Gravy Trainのフード

さて、今回薬物が検出されたのはGravy Trainというブランドの缶詰フード。日本では発売されていません。
予想はしていたけれど、このフードものすごく安いです。一番安いところだと1缶45セントくらいで買える。
原材料を見ると、さてどこから手をつけたらいいか?というくらい、何も良いところがない。
原材料の一番最初にあがっているのは大豆ミール。これは大豆油を搾った残りを挽いたもの。
その次がミート副産物。何の肉か書いていないけれど、副産物の場合ミートだけで済ませて良いのは牛・豚・羊・山羊の4種に限られるので、それらの肉の内臓と血液と骨が主なはず。
その次は小麦粉で、その次が動物性脂肪。何の動物の脂肪か書かれていません。この辺り怪しいですね。
そして堂々とビーフの名前が書いてある割に、この次にようやくビーフの名前が出てきます。これは缶のラベルにwith BEEFと書かれている通り「with と書けば3%ルール」が適用されて、ビーフは全体の3%含まれていればOKなんですね。
(この記事の前に過去記事をあらかじめ再掲載しておいたのは、これに関連するから)

でも、どんなに理想から遠くかけ離れていても、犬が食べて命を落とすようなものでなければいいんですよ。

大問題なのは、動物を殺処分するための薬物が混入して、命を落とした犬がいるということ。しかも、それが見つかった過程がまた酷い。



↑ABC7ニュースのサイトに飛ぶので、興味のある方はご覧ください。

薬物はどこから混入した?

薬物混入が発覚したのは、被害者の家族とテレビ局とそのパートナーの研究所の調査のおかげでした。メーカーが自主的に発見してリコールしたからではないんですね。

きっかけは2016年の年末にGravy Trainのフードを食べた、ある家庭の犬たちが苦しみ始めて1匹が命を落としてしまったこと。

飼い主さん家族はフードの残りを専門の研究所に送って調査をしてもらい、亡くなった犬の体は獣医学の病理学者に検視を依頼しました。

そうして検出されたのが、前述したペントバルビタール。動物の殺処分に使われる麻酔薬です。(麻酔薬だけど、量の調整で殺処分に使われる。)
この薬が使用されるのは犬・猫・馬に限り、食用にされる牛や羊などに使用することは禁止されています。

この調査はワシントンDCのABC局と局がパートナーとして依頼した研究所に引き継がれました。
24ブランド62サンプルの缶詰フードにペントバルビタールが含まれていないかを検査を繰り返しました。1つのブランドに付き、違うロット、違う購入先などの条件で検査が行われました。
その結果、あらゆる条件で繰り返し薬物が検出されたのが前出のGravy Trainでした。15の缶を検査して薬物が含まれていたのが9缶。実に60%がアウト!

過去記事で「FDAは動物飼料に使うミールには屠殺以外の方法で死んだ動物を使うことを許している」と書きましたが、正確には「ミールの規定に屠殺された動物の肉という指定はない」なんですね。
言ってみれば、FDAはメーカーのために規制の抜け道を作り、メーカーはそれをありがたく使っているというわけ。

屠殺された以外の動物というのは、事故や病気で死んだ動物という意味ですが、そういう動物を引き取る専門業者というものがあり、食用の家畜動物も、殺処分になった犬・猫・馬もどちらも扱っているという業者も少なくないようです。
まだあくまでも推測ですが、多分そうやって回収した後ペットフードメーカーに卸すもののなかに殺処分になった動物が混ざってしまったのが、薬物混入の原因ではないかと言われています。(手違いなのか、故意なのかはまだわかりません。)

テレビ局がこれらの検査結果を報道したのが先月のことで、ここまで来てメーカーはようやく製品の回収を始めました。
2016年末の被害者の後にも命を落とした犬がいて、その家族がメーカーに苦情を申し立ててもいたのに、メーカーによる調査もリコールも行われなかったんですね。
被害家族には製品の割引クーポンが送られて来たという笑えない冗談みたいなオチまでついています。

薬物が検出されたのはGravy Trainブランドのみだったのですが、このメーカーのもっと高額の製品では日本でも発売されているものがあります。
ナチュラルバランス、ネイチャーズレシピで、ナチュラルバランスは私もニコニヤに買ったことがあるのでちょっとショックでした。
今お手元にこれらのフードがあるという方、これらのブランドからは薬物は検出されていませんので、ひとまずはご安心を!

メーカーもようやく自社による調査を始めたようですが、詳細はまだ伝えられていません。また続報があれば更新します。

この問題といっしょに、有名な療法食のブランドのことも書こうかと思っていたのですが、長くなり過ぎたので、それは明日にします。

フード選びは本当に悩ましい。高ければ安心というわけではないけれど、安すぎるものはやっぱりどう考えても安全面で不安が残りますね。
ラベルの読み方も知っておかないと、わからないことがたくさんあります。
明日はそのラベルの読み方についてちょっと掘り下げてみます。


2018/03/12

アメリカンドッグフードの表示規定2

長かったので2つに分けた記事の後半です。
本文の中でも書いていて、繰り返しになりますが、
ミールや副産物が使われている=4Dミートが使われているではありません!

他の部分にも目を向けて、総合的にフードの品質を判断することが大切です。


(以下dog actually 2012年4月23日掲載記事より)
(photo by Counselling )



さて、先にあげたルールのパーセンテージの規定にはミールや副産物は含まれないと書きました。ではミールや副産物ってなんでしょう?牛肉や鶏肉などの肉との違いは?
FDAでは牛肉や鶏肉など「肉」の定義を「屠殺された動物の筋組織」としています。

「ミール」の定義は「血液、毛、角、皮、胃、腸、またその内容物を除いた動物の組織を加工したもの」としています。
なんだかちょっとオドロオドロしい感じで、イメージが湧きにくいですね。

ミールはペットフードのパッケージの原材料一覧の中ではチキンミールやラムミールという形で表示されているのが普通です。AAFCOの定義では「細かく挽き、乾燥させた動物の組織。血液、毛、ひづめ、角、皮、胃腸とその内容物は含まない。」としています。簡単に言えば肉を挽いて乾燥させたものですね。フィッシュミールの場合は丸ごとの魚を細かく挽いて乾燥させたものを言います。
これらミールは上記ルールのパーセンテージの規定外ですが、フードの原材料の中でタンパク源としての大きな役割を果たしています。

副産物(by-product)は食肉副産物とかチキン副産物という形で表示されます。
AAFCOは食肉副産物を「肉以外の動物の組織。肺、脾臓、腎臓、脳、肝臓、血液、骨、胃、腸、その内容物を含む。ただし毛、角、歯、ひづめは含まない。」としています。チキン(家禽)副産物は「肉以外の家禽の組織。頭、首、足、卵管内容物、腸を含む。ただし羽は含まない。」としています。

このミールと副産物、「プレミアム」と呼ばれるフードでは使っていないことを大きく宣伝に使ったり、フードの選び方指南等では副産物は避けましょうと言われているのもよく目にします。実際に原材料一覧を見て副産物が使われていないフードを選んでいる方も多いのではないでしょうか。

しかし食餌を手作りしている方などでは、わざわざ鶏の頭や足を買って来て与えたり、内臓肉を取り寄せたりしている人もたくさんいます。それとフードに含まれる副産物とでは何が違うのでしょうか?
それはFDAが定める規定の違いです。FDAは動物向けの飼料のミールや副産物には「屠殺以外で死んだ動物の組織」を使うことを許可しています。人間の食料としては流通することができない、病気や事故で死んだ食肉動物(いわゆる4Dミート)ということですね。
誤解のないように書いておくと、全てのミールや副産物が病気や事故で死んだ食肉動物から作られているというわけではありません。普通に食肉用に屠殺された動物の肉や内臓肉を使っている製品も多くあります。そこは製造している会社を信用するしかないところです。

ところで今回この記事を書くにあたり、日本で販売されているドッグフードの原材料一覧を色々見て驚いたことがありました。
それはアメリカと日本両方で販売している同じ製品で、アメリカの原材料にはby-productとあるのに日本の原材料表では「副産物」の文字を見ることが非常に少なかったこと。アメリカと日本で処方を変えている?そんなことをしたら値段が3倍にも4倍にもなってしまうはず。

答えは簡単。日本での原材料表示は鶏肉も鶏肉副産物もチキンミールも全部一緒にして「鶏肉」「チキン等肉類」というような書き方が許されているから。
2009年6月からペットフード安全法が施行されていますが、こんな言葉のトリックもたくさんあります。肉の種類の後に「等」「類」などと付いていない表示のフードもありますし、副産物を使っていることをきちんと表示しているフードもあります。

その辺りをきちんと見極めて選んでいくのは消費者の仕事。日本であれアメリカであれ、愛犬の為に目を光らせていたいものです。

殺処分を減らすためにアメリカが選んだ方法

これは2012年に書いた記事で、いま読み返すとずいぶんと青臭くて小っ恥ずかしい感じです。特に最後のNO KILLのくだりとかね。 この記事で紹介したマーヴィン・マッキー獣医師は現在も現役で活躍しておられます。マッキー先生がロサンゼルスの犬猫の殺処分数を減らすために立ち...