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2021/04/21

NKLA(NO-KILL Los Angeles) を目指して

ロサンゼルス市がNO KILLシティになった!という記事を書くにあたって、先にこの2013年に書いた記事をアップしておこうと思います。

この写真のピットブルもこのシェルターで保護されている犬です。テーブル型のベッドは通気性が良く清潔に保ちやすくクッション性も優れているため、シェルターでの定番になっている印象です。





(以下dog actually 2013年10月7日掲載記事より)
10月はAdopt-A-Shelter-Dog Month(シェルターの犬を家族に迎えよう月間)です。それにちなんで、今日はロサンゼルスに出来た一番新しい私営アニマルシェルターの紹介をいたします。


このシェルターは、アメリカでも屈指の大きな動物保護団体BEST FRIENDS ANIMAL SOCIETYのロサンゼルス支部によって運営されています。ベストフレンズは2012年の4月に「NKLA=NO-KILL Los Angeles」のスローガンを打ち立てて、様々な活動を始めました。
 2017年までにロサンゼルス市を殺処分ゼロの街にするという目標を掲げて、動物の譲渡会や資金調達のためのイベント、避妊去勢手術の提供、条例改正のための活動などを精力的に行っており、その中でもNKLA運動の目玉とも言えるのが、8月にオープンしたNKLAペットアダプションセンターです。
ロサンゼルスでベストフレンズが運営するアニマルシェルターについては、2012年の2月にオープンしたベストフレンズペットアダプション/避妊手術センターのことを過去の記事で紹介したことがあります。去年オープンしたこの施設は、自治体の施設を保護団体の出資で運営するという新しい試みがなされ、その後も順調に続いています。
そして先日オープンしたNKLAアダプションセンターは、直接の管理運営はベストフレンズではあるけれど、ロサンゼルス市で活動する60以上の保護団体やレスキューグループとの協力で成り立っています。これらの団体は、パートナーという名で呼ばれています。
施設は持っていても規模が小さくて収容できる動物が少ない、動物の送迎や預かりボランティアの人数が少なくてうまく回らない、イベントを行っても集客力が小さいなど、小規模なレスキューグループの悩みは尽きません。そのような団体の情報を一括してまとめ、ボランティアのネットワークを繋ぎ合わせてそれぞれの負担を小さくし、保護活動を円滑に進めて行こうという方針で、アダプションセンターはその統括センターの役割も果たしています。

⇡犬エリアに入ると、さらにこのようにドアで仕切られた部屋に分かれており、1部屋に8つ程の犬舍が設けられている。ドアの隣に設置されているコンピューターにはパートナーの団体が保護している動物達の情報が収められており、シェルター内で気に入った動物がいなかった場合にも、その場で検索できるようになっている。建物全体に空気清浄設備が完備されていて、動物のニオイはほとんどと言っていいくらい感じられない。

このシェルターでは、犬60~90頭、猫35~65頭の収容が可能です。彼らは基本的には、パートナーの団体が預かりボランティアを見つけられなかったり施設がいっぱいで保護できなかったなどの理由でここに来た動物達です。
建物の中には動物達のための施設の他、引き取り希望者との面会室、ゆったりとしたロビー、動物関連の書籍やDVDを揃えたライブラリー、会議室や講義室が設けられ、パートナー団体の譲渡会やセミナーなどに活用されています。
シェルターの所在地はサンタモニカ大通りのすぐ近くでロサンゼルス市の中心地。ハイウェイの出口からも近く、人を集めるのに申し分のない立地です。


⇡小規模なグルーミングサロン程度のケア施設も完備しており、犬達は皆、清潔で綺麗にグルーミングされている。動物のケアをするのはボランティアのプロのトリマーさん達。犬舍内にはフレームタイプのベッド(クッション性・通気性に優れ、衛生的に保ち易い)と毛布、おもちゃが備えられている。犬のサイズや性質により、1犬舍に1頭の場合もあれば、2頭がルームシェアしている場合もある。私の訪問中にもボランティアの人達が入れ替わり立ち替わり出入りして、犬達を順番に散歩に連れ出していた。

ロサンゼルス市におけるシェルターの動物の殺処分率は、順調に減少しています。昨年12月には殺処分率が16%を切りました。この数字には怪我や病気で治療が不可能な動物の安楽死も含まれますので、NO-KILL LAは決して夢物語ではなく、実現可能な目標として射程距離内に入っています。
今年に入ってからも、殺処分率は少しずつながらも順調に減って来ています。これはシェルターへの動物の持ち込みが減って来たことと、シェルターの動物の譲渡率が高くなってきたことの両方の理由によります。シェルターへの持ち込みが減ったことは経済が回復基調になって来たことも関係するのですが、避妊去勢手術の提供が増えたことも大きな理由です。譲渡率のアップは言うに及ばず、ベストフレンズがロサンゼルスのホームレスアニマル達に及ぼしたインパクトは、本当に大きなものです。

《参考サイト》
http://nkla.org/

2021/04/18

シェルターへの犬の持ち込みに「待て!」をかけるプログラム

2014年に書いた記事です。
これは再掲載する予定はなかったんですよ。
だけど今日yahooニュースで「沖縄の那覇で初めて犬の殺処分ゼロ達成、引っ越しするが連れていけないなどの理由での引き取りは断っている」という記事を目にして怒り心頭になってツイートしたら「でも保健所に持ち込んで来た人を説得するってどうしたらいいんだろうね」というツイートも見かけたので「そう言えば、LAの介入プログラムをかいたことがある」と古い引き出しをゴソゴソするように引っ張り出してきた次第です。

この団体は今も2014年当時と同じように活動をしています。ただコロナ禍のせいでサウスLA周辺は以前にも増してひどいことになっており、ホームレスの人たちも激増、寄付金も集まりにくい状況になっていると思います。

明日わずかながらこの団体に寄付しよう。



(以下dog actually 2014年9月16日掲載記事より)


2013年4月、ロサンゼルス市の公営シェルターのひとつサウスLAシェルターにおいて、自治体の機関であるシェルターと、そこに動物を持ち込む市民の間に動物保護団体が介入する新しいプログラムが開始されました。どうにかして動物がシェルターに置いて行かれることを食い止め、動物と飼い主にとってのより良い選択がなされるようにと始まったこのプログラムの内容をご紹介します。

まず最初にサウスLAシェルター周辺の環境を説明いたしますと、このエリアは4世帯に1世帯の世帯収入が貧困と定義されるラインを下回っており、平均世帯収入もロサンゼルス市の他の地域に比べてたいへん低いものです。高等教育を受けた住民の割合は1割に満たず、犯罪率は低下傾向にあるとは言え多くの面で厳しいエリア、それがサウスLAです。
こういった環境ですから、シェルターに動物が持ち込まれる理由の多くが経済的な事情から来ています。また動物に避妊去勢手術を施さずに子犬や子猫が産まれてしまった、犬にトレーニングを受けさせたことがないという飼い主も主流です。

そのサウスLAの公営シェルターと非営利動物保護団体Downtown Dog Rescue(DDR)及びFound Animalsがパートナーとなって開始したのが、最初に述べた介入プログラムです。プログラムの運営の中心となっているのはアマンダ・カザレス氏。
プログラムに関わる非営利団体のメンバーの中で給与を受け取って働いているのは彼女ひとりで、その他はボランティアの人々によって実施されています。カザレス氏の給与はFound Animalsから支払われています。

カザレス氏はシェルターの入り口にブースを設けて、動物を持ち込んできた人々の話を聞きます。
持ち込まれる動物の大多数は犬で、その理由は「アパートの契約の更新時に犬を飼うなら追加の保証金を払うように言われたが経済的に困難」「犬が吠えたり、攻撃的になったりするのでこれ以上飼い続けられない」など様々です。
プログラムでは犬と飼い主が一緒に暮らし続ける事を第一の目標として問題の解決を目指します。

犬のためのアパートの保証金250ドルが支払えない高齢の飼い主のためには団体の基金から保証金が負担されました。経済的困難が原因で犬をシェルターに持ち込む飼い主のためには、他にリードやカラー、ドッグフードなどの提供が実施されており、これらは団体への寄付金でまかなわれています。
脱走を繰り返す犬や、外飼いで通りかかる人に攻撃的な犬のためには家の周りにフェンスを設置したり、丈夫な犬小屋を提供したりもします。
こうしてまずは犬が飼い主と一緒にいられるようにした上で、団体で定期的に行われている無料のドッグトレーニングのクラスに犬と飼い主に通ってもらい、なぜ問題行動が起きるのか、なぜ運動や社会化が必要なのかということを教育していきます。
トレーニングを行うのはプロのドッグトレーナー。このような時間と技術の寄付は一般的に広く行われています。

医療費が支払えないという理由でシェルターに持ち込まれる動物も多くいます。治療が可能で適切な処置さえすれば犬と飼い主が一緒に暮らせる場合には、同プログラムのパートナーになっている動物病院を紹介して、低料金や分割払いでの治療を提供しています。
高齢や重症で回復が望めないと医師が判断した場合には、病院で飼い主に見守られながらの安楽死の処置を無料で行います。
これら金銭的な援助が生じた場合、飼い主には出来る範囲の負担とシェルターや団体でのボランティア活動をお願いする場合もあります。

それでもどうしても飼い主が動物を手放さざるを得ない場合には、DDRとFound Animalsが新しい飼い主または一時預かりを見つけるまでの間の数日間だけでも動物を手元に置いてもらうよう交渉し、動物がシェルターに入ることなく新しい家庭に移動できるよう手を尽くします。

プログラムの開始当初は年間で400頭の動物のシェルター持ち込みを食い止める事が目標とされていました。しかし開始から1年後の成果は予想を大きく上回って、実に2,041頭の動物のシェルター持ち込みを食い止めることができたそうです。内訳は犬1,789頭、猫241頭、うさぎ11頭です。

プログラム開始後最初の数ヶ月は、動物の持ち込みを食い止めるという目標自体は順調に達成していったもののカザレス氏を始めスタッフへの負担も大きく、厳しい財政状態からポケットマネーの持ち出しもある状態でした。
しかしこの画期的なプログラムがロサンゼルスタイムスやハフィントンポストなどのメジャーなメディアで取り上げられ注目を集め始めると、寄付や協力の申し出が多く寄せられるようになりました。
一番大きなものではアメリカ動物虐待防止協会からの資金バックアップによるクリニックの開設です。これは低所得者向けに無料の避妊去勢手術やワクチン接種を提供するもので、外飼いや飼育放棄での無計画な繁殖や病気の蔓延を防ぐために大きな役割を果たします。
またDDRとFound AnimalsはNKLAのネットワーク(過去記事参照)にも参加しており、このネットワークによって里親や一時預かり、搬送ボランティアを見つける事がとても容易になりました。
現在サウスLAの介入プログラムでは、シェルターの入り口で待っているだけではなく、地域の戸別訪問を行って犬の問題行動に悩んでいる人に無料トレーニングの案内をしたり、飼い犬や飼い猫の出産を繰り返している人に無料クリニックの紹介を積極的に進めています。人々がシェルターへ足を向ける前に問題を解決していこうというわけです。

ただ単にシェルターへの持ち込みを拒否したり説得して動物を連れて帰ってもらうだけでは根本的な問題は解決しません。世話をしてもらえない状態で手元に置かれる動物にとっても悲劇ですし、酷い場合には引き取ってもらえないならと山や路上に捨てる例も多くあります。
このサウスLAシェルターの保護団体介入プログラムは具体的にどうすれば持ち込みを食い止める事ができるのかを示して見せることで、他の地域のシェルター運営にも大きく影響を与え同種のプログラムも開始されています。

今年の6月に集計されたロサンゼルス市のアニマルシェルターにおける過去1年の殺処分率は約25%(治療不能な病気や怪我のための安楽死を含む)、毎年順調に低下し続けています。この数字にサウスLAシェルター介入プログラムが果たした役割が小さくないことは確かです。

2020/09/16

犬や猫の避妊去勢は社会の問題でもある

 この記事の前にカリフォルニア大学デイビス校が発表した犬種ごとの避妊去勢手術と特定の疾患の関連及び手術のガイドラインの研究について6回に分けて書きました。

言うまでもなく、当該の犬種と暮らしている方やこれから迎えようと考えている方にとっては貴重な情報です。
そして「うちの犬は雑種だからどう考えたら良いか分からない」と思う方がいても当然で、雑種犬の体重別のガイドラインというのもありがたい情報だと思います。

けれど、特に最後の雑種犬の体重別ガイドラインをまとめながらどうしても引っかかると言うか、うっすらとわだかまる感じが離れずにいました。

そのわだかまりの理由ははっきりと分かっています。
雑種犬と言えば、その大半を占めるのは保護犬です。アメリカにおいて保護犬と避妊去勢手術は切っても切れないものですから「体重20kg以上の犬の避妊去勢手術は生後1年を過ぎてから」とタイプしながら、そんなこと言われても無理なものは無理じゃないさと悪態をついたりしていたのでした😓
避妊去勢手術をしなければ譲渡ができない保護犬の手術を1年や2年待っていたら、公営シェルターなら飼育する場所がなくなって殺処分になるかもしれない。預かりボランティアの家で保護されている場合、1年も2年も預かっている間のその家庭は他の犬を預かれない。預かり先を確保できないと殺処分になる犬が出る可能性もある。
保護犬の避妊去勢手術を年単位で保留することは、あっという間に犬たちの命を脅かすことにつながります。

                                             Image by 41330 from Pixabay 


殺処分を減らすために尽力して来た先人たち

うちの2匹の犬たちが保護犬であるため、思い入れがあるのも確かですが、ほぼ10年に渡って犬の記事を書くうちに読んだり、時にはお目にかかったりして来た、犬猫の殺処分を減らすために尽力されて来た方々の功績が頭に浮かんだということもあります。

70年代初頭、ロサンゼルス市は1960年に統計を取り始めて以来最高に達する数の犬猫の殺処分を行いました。その数は1年で11万頭以上。
ロサンゼルス市はアメリカで初めて公共サービスとして低価格の犬猫避妊去勢手術を提供し始めました。

公共サービスだけでなく、のちにアメリカの犬猫避妊去勢手術の師匠とも言える存在となったW.マーヴィン・マッキー獣医師が低価格の避妊去勢専門クリニックをオープンしたのが70年代中頃でした。
マッキー獣医師は1頭でも多くの動物を手術できるよう簡便でスピーディーな手術法を考案し、その方法を録画したDVDを世界中の動物保護施設に無料で配布しました。
日本を代表する動物保護団体であるアニマルレフュージ関西にもDVDが配布され、2012年に見学に伺った際にエリザベス・オリバーさんからそのコピーを頂いたのが、私がマッキー獣医師のことを知ったきっかけでした。

マッキー獣医師は早期の手術を推奨してこられました。21世紀の現在の獣医学では、それは必ずしも正しいとは言えないようです。
しかし1971年に年間11万頭以上の犬猫が殺処分されていたロサンゼルス市では、マッキー獣医師をはじめとする先人たちの努力によって2019年の殺処分数は年間3200頭を下回っています。LAの公営シェルターに連れてこられた犬猫の約90%は生きてシェルターを出て譲渡、預かり、返還されています。

新しい研究結果にはもちろん敬意を表し尊重したいと思います。しかし先人の辿ってこられた軌跡もまた敬意を持って憶えておきたいと思うんですよ。

ちなみに猫に関しては、現在も6ヶ月齢以前の避妊去勢手術が重要であると考えられています。犬と違って猫は生後6ヶ月ですでに妊娠出産する能力があるからです。

マッキー獣医師については以前にdog actuallyで詳しく書いた記事があります。


なぜ代替方法に言及しない?

以前にアレクサンドラ・ホロウィッツ博士が犬の避妊去勢手術について待ったをかけるコラムを発表した時に「大事なのはするかしないかだけじゃないんだよ」という記事を書いたことがあります。

性ホルモンの分泌を残したまま生殖能力だけを取り除く医療処置はいくつかあります。
(以前に書いた内容は少しアップデートが必要になっているので、また改めて紹介します)
UCデイビス校は、従来の避妊去勢手術による疾患の可能性をこれだけ述べているのに、なぜそのような代替の方法について言及しないんだろう?
これが私がわだかまりを感じていたもう1つの理由です。

それが論文の直接のテーマでないことは承知していますが、「保護犬は法律で手術が義務付けられていることもあり」という記述はあるのに、代替方法については何もない。

従来の方法が健康を害する可能性があるというなら、代わりの方法がありますよくらいのことは教えてくれても良さそうなものなのにねえ。


最後に

何度も同じことを書いていますが、犬や猫の避妊去勢は社会の問題でもあるという側面があります。
アメリカでも避妊去勢手術と疾患の関連が発表されて以来、犬猫の過剰頭数問題に取り組んで来た人たちと、医療関係者の間で議論が続いています。

アメリカでは多くの州で個人の自家繁殖を制限する法律があり、そのためにごく普通の一般家庭で飼い犬に子供を産ませることはほとんどありません。一般家庭でそんなことをするのはホビーブリーダーと呼ばれる犬種保存のために真剣に取り組んでいる人か(もちろん許可証を取っている)、全く反対に規制なんて気にも留めずに小銭を稼ぐために自家繁殖をするバックヤードブリーダーというちょっとまずい人々です。
(州法や条例が緩い所もあるので、悪びれずにアクシデントの繁殖を繰り返すような“普通の人々”もいるにはいる)

一方、日本ではペットの自家繁殖に何の制限もありません。そんな状態で「避妊去勢手術は健康に影響が出る」という情報が中途半端に蔓延すると、どうなるだろうか?😨


だから私は微力ながらも、避妊去勢手術と疾患の関連について書いた時には、このようにくどいくどい注釈を毎度毎度付け足しています。



《参考URL》



2019/02/27

カナダの先住民居留地で成功しつつある野犬対策

このブログはタイトルの通り、アメリカの犬のことをメインに書いているのですが、今回はカナダのお話です。ちょっと例外。


カナダのシクシカ地区の野犬対策


(photo by SandeepHanda )



日本でも多くの地域で野犬の増加が問題になっていると聞きます。
そして絶望的に大きく失敗している広島を始めとして、何か効果的な対策を講じた自治体というのはまだ耳にしたことがありません(私の勉強不足で、有ったらごめんなさい。)

ここで紹介するのはカナダの先住民居留地での野犬対策です。
先住民居留地というのは、古い言い方ではカナダ・インディアン、現在はファースト・ネーションと呼ばれているカナダの先住民の人たちのために政府が定めた特別居住区です。
カナダ全体のファースト・ネーションの約半数の人々が居留地に住んでいるのだそうです。

その居留地の一つ、アルバータ州の都市カルガリーの東に位置するシクシカ居留地がこのお話の舞台です。

この地域の人々の犬との付き合い方は昔ながらの放し飼いです。犬の所有者はあいまいな感じで、犬たちは居留地の中を自由に歩き回り、地域全体でゆるーく犬を見ているというものだそうです。

しかし数百年前にファースト・ネーションの人々だけがこの地に住み、犬と共に狩りなどをしていた時代のようには、犬と人の共存は機能しなくなっています。

放し飼いの犬たちはあちこちで子供を産み、所有者のいない野犬となって増え続けてしまいました。
放し飼いの犬も野犬も一緒になってうろつき、ゴミなどを漁るようにもなりました。
そして2016年には子供の被害を含む、野犬による深刻な事故が相次いで、シクシカの法務機関が対策に乗り出しました。


Alberta Spay Neuter Task Force

自治体の機関が対策を立てるに当たって最初に行ったことは、先住民居留地の犬たちを専門にしている犬の保護団体『Alberta Spay Neuter Task Force=アルバータ避妊去勢任務部隊』(以下ASNTF)に連絡を取り相談することでした。

ASNTFは一般からの寄付金だけで運営しているNPOです。2008年以来、8つの避妊去勢専門クリニックを建てて安価な避妊去勢手術を提供し続けています。

ASNTFは自治体の依頼を受けて、パートナーとしてシクシカ居留地の野犬対策に立ち上がりました。

対策は、国際コンパニオンアニマルマネージメント白書が推薦する方法と、同団体の経験および専門知識に基づいて、5つのそれぞれに違う方向から立てられました。


・法による規制

これは犬に関する法律を作ることと、その法を執行していく組織を作ることの2つの柱から成ります。

シクシカ居留地内の犬は全て鑑札登録されることが義務付けられました。登録さえすれば今のところは、従来通り犬の放し飼いは認められています。
鑑札登録で個体識別がし易くなり、飼い主がいないことがわかった犬は捕獲して保護施設に入れられました。
法を執行する機関として動物ケア&コントロール官が制定され、上記の任務に当たっています。
ASNTFはこれらの活動の指導とトレーニングを提供しました。

・住民への教育

犬との付き合い方、飼育の仕方について住民の意識向上のための教育はASTNFが行いました。
地域のイベントにはブースを出して参加し、デモンストレーションを行いました。また地元の教育者と協力して学校のためのカリキュラムやプログラムを作成し実施しました。
大人向けの教育プログラムも作成し戸別訪問で野犬対策の説明なども行いました。

・避妊去勢の徹底

ASNTFはこの地区にも避妊去勢クリニックを開いて、住民向けに安価な手術を提供しています。
また犬の鑑札登録の際、犬が避妊去勢手術を受けていれば登録料が無料になるようにして、避妊去勢率を上げるようにしています。
所有者のいない犬たちも、保護施設で避妊去勢手術を受けます。

・保護施設への収容

鑑札登録をしていない犬、そして咬傷事故歴のある犬は保護施設に収容されました。
犬たちはここでリハビリテーションを受けて、新しい家庭へとリホームされます。
リホームが難しいと判断された犬は、別の協力保護団体のサンクチュアリ施設で生涯を過ごします。

・食料資源へのアクセスを制限

ASNTFは、放し飼いの犬たちには飼い主が決まった場所で決まった時間に給餌するようプログラムを設計しました。フードも保護団体から提供されます。
またコミュニティ全体に犬が荒らせないゴミ容器を設置し、犬が拾い食いすることを制限できるようにしました。
家庭で給餌されればゴミを漁らずに済むし、ゴミを漁っている時に人間に追い払われればエサを奪われると思って咬みつく事故にも繋がりますから、これは大切なことです。

(photo by Activedia )


成果

上記のような取り組みの結果、2017年は犬の咬傷事故は前年比32%減少しました。数字に現れている部分だけではなく、住民の多くが「以前よりも安心して道を歩けるようになった」と感想を述べています。

ASNTFはこの成果について「ただ犬を捕獲して収容するだけでも、避妊去勢するだけでもこの結果は出せなかったでしょう。多角的な方向から取り組むことが成功のポイントです。中でも住民への教育は我々の活動の焦点と言えます。」と述べています。


この多角的な方向からの総合的な取り組みというのは日本の(失敗している)自治体には見られないものです。
何もこれと同じ方法を取らなくてはいけないと言うのではありません。
けれども、自治体は何も新しいことに取り組まずに、特定の保護団体に機械的に犬を送り続ける方法では状況が改善しないことは明白です。

野犬と言えば、悪名高いのはロシアやルーマニアですが、伝え聞くところでは片っ端から殺処分するのが彼らの方法です。しかし野犬の問題が解決に向かっているとは言えないようです。
これらの国の野犬がたいへん危険なのは、人間から犬への暴力的な扱いも理由の一つではないかと思います。

シクシカ地区で咬傷事故が減ったのも、犬側の問題よりも人間への教育が功を奏したのではないでしょうか。
犬への正しい接し方を教育する一方で、この地域の昔からの文化である犬の放し飼いという部分には寛容であることも、この対策の注目すべき点だと思います。

文化や背景が全く違う外国のやり方を全面的に目標にするよりも、いろいろな事例をたくさん知って消化することは大切です。

カナダのこの例は、日本の自治体にも参考になるところが大いにあるのではないかと考えます。


2019/01/05

繋がれて生きる犬

2016年に書いた記事の再掲載です。

自分が住んでいる場所の関係で、アメリカの動物保護活動や法律についてコラムにすることが多いのですが、何度もしつこいくらいに書いているとおり、アメリカは決して動物保護の先進国ではありません。

けれども、動物保護活動ということに関しては実にユニークな多様性があると常々感じています。
色々と事情や環境が違うので、今すぐ日本で取り入れることはできなくても「こういう視点もあるんだ」というウェイクアップコールになればいいなと思って、紹介する記事を書いています。

このDDBという団体もユニークな活動をする団体のひとつです。
寄付金を集めて大きな施設を作り、犬をただ引き取り続けることを動物保護活動だと考える人が増えて欲しくない、そんな思いを込めての再掲載です。



(photo by vicart26 )


(以下dog actually 2016年9月5日掲載記事より)

インターネットで、写真にちょっとボケたセリフを付けて楽しむお笑いサイトがありますね。先日「犬のお笑いセリフ」というのが目に入ったので覗いてみたら、ほとんどは楽しく笑わせてもらったのですが、ひとつ「ふーむ、やっぱりそうか。」と考え込んでしまったものがありました。

それは、ちょっと嫌がる様子の柴犬の両前足を飼い主が軽く握っている写真に「大丈夫だよ。隣のドーベルマンは繋いであるから怖くないんだ。さあ散歩に行こう。」というセリフのついたものでした。

ドーベルマンが怖い犬のアイコンになっていること、そしてそのドーベルマンは庭先に繋がれているという前提が当たり前に笑いのネタになっていること。多分、犬と暮らしていない人が作った作品なのだろうなと思いつつ「犬は繋いで飼うもの」という考えは未だに一般的なのだと改めて感じた次第です。

私が住んでいるカリフォルニア州では、3時間以上連続して犬を繋いだり、クレートに閉じ込めておくことは州法で禁止されています。ですから近所では、庭仕事をする飼い主さんを木陰に繋がれて眺めている犬をたまに見かけるのがせいぜいです。
とは言っても、すべての人が法律を守るわけではないし、そもそもそういう規制のない州や自治体も多くあります。地域によっては庭に小さな小屋と鎖に繋がれた犬がポツンと1日中過ごしている光景が珍しくないこともあります。そういう繋がれて孤独に生きる犬たちを助けようというNPO団体と、その活動を紹介したいと思います。

団体の名はDogs Deserve Better(=犬たちはもっと良い暮らしに価する。以下DDB)DDBの活動は2002年、最初の犬を鎖から解放したことから始まります。
DDBのメインの活動は鎖に繋がれた犬の生活を、もっと犬らしいものに改善することです。DDBの救済の対象となるのは、24時間外に繋ぎっぱなしで散歩にも連れて行ってもらっていない犬たちです。屋外で暮らしていても暑さ寒さをきちんと防ぐ犬舎があり、フェンスに囲われた庭で運動をしているような犬は対象外です。

彼ら自身の調査活動や近隣住民の通報などから、つなぎ飼いの犬の飼い主の元に出向き、説得をすることから活動は始まります。庭にフェンスがないので繋いでおかなくては仕方がないという場合には、フェンスを提供して少なくとも庭のフェンス内では犬が自由に動けるようにする場合も多々有ります。躾が出来ていないので家の中に入れられないという場合にはハウストレーニングを1から提供し、適切なトレーニングと運動を指導します。

(photo by BlazingFirebug )

犬を屋外でつなぎ飼いしている家庭では、多くの場合犬にほとんど医療費をかけておらず、避妊去勢手術も施されていません。
低料金の避妊去勢手術、無料の健康診断とワクチン摂取の提供をする場合もあります。これらの資金はすべて団体への寄付金で賄われています。(多くの犬はフィラリア陽性と慢性の関節炎に侵されています。)

こういった直接のレスキュー活動だけでなく、さまざまなイベントを通して地域への啓蒙教育活動も行っています。犬は群れで生きる社会的な生き物です。飼い主である人間とも他の犬ともほとんど接触せずに繋がれたままの生活は犬としてあるべき姿とはかけ離れています。また全く社会化されないままにストレスを溜め込んだ犬は、咬傷事故を起こす可能性がたいへん高く危険な存在でもあります。

アメリカ疾病予防管理センターの統計では、つなぎ飼いの犬による咬傷事故件数は、つながれていない犬の2.8倍にのぼるとされています。「犬のつなぎ飼いは誰のためにもならない」という基本的な教育を広めていくことは時間はかかるけれど、社会にとっても犬にとっても確実に効果が望める方法です。
難しいことは置いておいて、群れのメンバーであるはずの家族から離れたところで、撫でられもせず楽しいことも目新しいこともなくポツンと繋がれて生きることの辛さを想像しただけで、それが間違っているってわかりますよね?と私は言いたい。
DDBでは「近所でつなぎ飼いの犬を見かけて、何とかしたいと思った時のために」として、メッセージを書いたドアハンガーやチラシなども準備しています。DDBに直接出向いて説得して欲しいとリクエストがあった場合にも、犬の飼い主には通報者の名前は伝わらないようになっています。

DDBの説得を受けて「それならもう犬はいらない」と犬を手放す飼い主も珍しくはないようです。その場合は犬を引き取って、必要な医療処置を全て施した後で新しい家族を募集します。
引き取られたラッキーな犬たちはThe Good Newz Rehab Centerという広大な敷地の施設で、リハビリを受けながら新しい家族を待っています。
実はこの施設、プロフットボール選手のマイケル・ヴィックがヤミ闘犬と動物虐待を行って大きなニュースになったその場所です。
悪名高き「訳あり物件」となっていた敷地を買い取って、犬のリハビリ保護施設にするとは心憎いですね。

日本でも、犬は室内で飼うことがかなり浸透してきていますが、暑い日も寒い日も家の外で鎖に繋がれている犬の姿も地域によっては多く見受けられます。
外飼いで避妊去勢の処置もされていない犬は、行く先もないままに生まれてきて殺処分や野犬となる犬の原因のひとつです。
DDBには日本の動物保護について、行政が参考にするべき点があるのではないでしょうか



【参考サイト】

2018/07/04

殺処分を減らすためにアメリカが選んだ方法

これは2012年に書いた記事で、いま読み返すとずいぶんと青臭くて恥ずかしい感じです。特に最後のNO KILLのくだりとかね。

この記事で紹介したマーヴィン・マッキー獣医師は現在も現役で活躍しておられます。マッキー先生がロサンゼルスの犬猫の殺処分数を減らすために立ち上がった1970年代に比べると、動物医療の研究も進み変化した部分もありますが、保護して譲渡するだけでなく「蛇口を締めることの大切さ」を訴えかけ働きかけた功績は、今の日本の現状にとって大いに参考になると思います


(以下dog actually 2012年3月掲載記事より)

前々回に書いた記事「ARK訪問記」で、大阪能勢町にあるアニマルレフュージ関西(ARK)さんを訪れた折のことでした。
私が「ロサンゼルスから来ました」と自己紹介をすると、アーク代表のエリザベス・オリバーさんが「ロサンゼルスにはマッキー先生がいますね。犬や猫の不妊手術の第一人者ですよ。マッキー先生は本当にユニークですごい人です。」と、ある獣医師のお話をして下さいました。

マッキー先生ことW・マーヴィン・マッキー氏は現在70代ながら現役で活躍されている獣医師です。
1976年にロサンゼルス市内に最初の避妊去勢手術専門のクリニックを開業し、現在は3軒のクリニックを運営しています。彼のクリニックは避妊去勢手術のみに特化することで、低価格で、より多くの手術を提供することに主眼が置かれています。

最初のクリニックが開業した1970年代はアニマルシェルターの動物の暗黒時代でもありました。ロサンゼルスだけでなく、アメリカのどこのシェルターも行き場のない動物でいっぱいで、貰い手のない動物達は次々に殺処分。

1971年にはロサンゼルス市では11万頭以上の犬と猫が殺処分されました。これは1960年に統計を取り始めて以来最悪の数字で、さすがに行政側がなんとかしなくてはと腰を上げた最初の年となりました。

LA市がとった方法はとにかく無制限に産まれて来る犬や猫の数を減らすことでした。そのためにアメリカで初めて公共サービスとして低価格での犬猫の避妊去勢手術のためのクリニックを設置したのです。

マッキー獣医師もその流れに乗る形で76年に最初のクリニックを開業するとともに、ペットの頭数過剰問題に積極的に取り組み始めました。

獣医師仲間と共同で次々に避妊去勢手術クリニックを開業し、公営私営を問わずアニマルシェルターと積極的に協力し合って、シェルターにいる動物は必ず避妊去勢手術を施してから新しい里親に引き渡すというシステムも確立していきました。
現在は自治体と協力して、一定の所得以下の飼い主は申請をすれば無料で避妊去勢手術が受けられるシステムも出来ています。



(illustration by PaliGraficas )


マッキー獣医師のアニマルバースコントロールクリニックの手術料金は70ドルです。
他には特別車両を使った移動式クリニックというのも多く、定期的に地域を巡回して手術を受け付けているシステムもあります。
自治体による移動クリニックは無料の場合が多く、そうでない場合も30ドル〜50ドルというのが相場です。

マッキー獣医師のクリニックでは1日平均40頭の動物の避妊去勢手術が行われます。この数字を可能にしているのはマッキー獣医師が発案した安全で簡便な手術法です。この手術法をアメリカ全土の獣医師に広めるための活動も幅広く行われて来ました。その一環として実施されたのが、実際の手術の様子を録画し多くの獣医療関係者に無料で配布することです。
(アークさんにもこの手術方法のDVDのコピーが用意されておりました。マッキー獣医師の活動は今やアメリカ国内に留まらず、ヨーロッパ、日本、オーストラリア、ブラジル、メキシコなど多くの地域に広まっています。)

これらの活動が開始された1970年代にはアメリカ全土で避妊去勢手術を施された犬の率は10%未満でした。猫にいたってはさらに酷く、その率は1%以下。
ロサンゼルス市を皮切りに全国で始まった避妊去勢手術の普及が功を奏し、現在では手術を施された犬の率は全体の3分の2以上に、猫は80%以上が手術済みとなっています。

そしてその結果、ロサンゼルス市では2007年に犬猫の殺処分数が史上最低の15,009頭にまで抑えられました。史上最悪だった1971年から見れば86%の減少です。

アメリカ全土で見れば、1970年には年間2000万頭の犬猫が殺処分されていたのですが、2011年には約300万頭にまで減少させることができました。(残念ながら08年と09年にはリーマンショックに端を発した極端な景気の悪化により、シェルターに連れて来られる動物の増加、シェルターから引き取られる動物の減少が起こり、殺処分数は増加してしまいました。2010年以降は再び緩やかに減少基調に戻っています。)
しかもASPCA(アメリカ動物虐待防止協会)によると、この40年の間に家庭で飼育されているペットの数そのものは約2倍に増えています。

確かに年間300万頭の犬猫が殺処分されているのは莫大な数字であり、まだまだ改善していかなくてはいけないことがたくさんあります。しかし避妊去勢手術の徹底によって殺処分数は確実に減らして行けることは実証されました。


(photo by jaminriverside )

先にも述べたように、アニマルシェルターや動物保護団体から動物を引き取る場合は、避妊去勢手術済みであることが大前提です。
しかし、ペットショップやブリーダーから購入した動物にまで避妊去勢手術を徹底させるためにアメリカはどのような方法を取ったでしょうか?
それは手術をすることで金銭的なメリットを発生させることです。

アメリカのほとんどの自治体では、犬を飼う際にドッグライセンスという名の犬の登録をしなくてはいけません。ライセンスは毎年更新しなくてはならず、その際にライセンス料を支払います。このライセンス料が、手術をしていない動物は手術済みの動物に比べて3〜5倍高くなります。

例えばロサンゼルス市の場合、手術済みの犬はライセンス料が年間20ドルであるのに対し、避妊去勢手術をしていない場合は100ドルになります。
ロサンゼルス市は避妊去勢手術の徹底に関しては厳しめで、条例には「原則としてペットには避妊去勢手術を施さなくてはならない。」と書かれています。
プロのブリーダーや、医療上の問題で手術ができない場合は所定の手続きを踏んで手術の延期または免除が認められます。

毎年支払うライセンス料で差を付けて、避妊去勢手術を受けさせることを徹底するというわけです。料金や差額については自治体によってかなりまちまちですが、ペットに避妊去勢処置をしないでいると毎年余分な出費があるというやり方はどの自治体も同じです。
こうして望まれずに産まれて来る命を減らすことが出来れば、シェルターの動物の環境も改善され、シェルターを訪れる人も増えます。訪れて悲しい気持ちになるような場所には人は集まらないですからね。

そしてネバダ州のリノ市のように公営シェルターながらNO KILLポリシーを掲げる所も出て来ました。これらリノのシェルターではNO KILL移行後は以前に比べて、犬の譲渡が51%増、猫の譲渡は2倍近くにまで増えました。

まだまだ殺処分ゼロに向けての道は遠いけれど、確実に良い方向には向かっています。いつの日かアメリカ全土のシェルターがNO KILLに変わることを願って、様々な活動に目を向けて行きたいと思います。

犬の避妊去勢、いろんな角度から

2016年に書いた記事です。この記事を書いた少し前に、犬の避妊去勢手術とガンや関節炎との関連についての論文が複数発表され、dog actuallyでも紹介されたという経緯があります。

それらの関連は無視できない問題ですし、特定のガンなどの発症率の高い犬種と暮らす人なら知っておきたい知識です。

けれども、そういう情報が発表されると見出しだけ見て本文は読まず「やっぱり避妊去勢とか不自然よねえ」という層に心底ウンザリもしていました。
そして避妊去勢無しでは成り立たない保護犬レスキューの世界を無責任に非難する人々や、安直な自家繁殖の格好の言い訳にする人々へのジリジリするような危機感も感じていました。

そんな「ウンザリ」や「危機感」への自分なりの返答として書いた部分もある記事です。

2018年7月現在、ウンザリもジリジリも解決どころか増幅しているんですけれどね😞😞😞


(photo by mariabostrom0 )


(以下dog actually 2016年6月13日 掲載記事より)
犬の避妊去勢と言えば、ほとんどの人は外科的な手術を思い浮かべることと思います。しかし医学の進歩とともに、手術以外の方法で避妊去勢をする方法も開発されています。アメリカのオレゴン州ポートランドには、手術以外の避妊去勢方法をバックアップするNPO団体があります。

団体の名はAlliance for Contraception in CATS&DOGS(「猫と犬の避妊法のための同盟」とでも訳しましょうか。以下ACC&D)。ACC&Dは直接犬や猫を保護して活動をするのではなく、ASPCAをはじめとするアメリカの主だった保護団体や保護基金、アメリカ以外の国の35団体、各地の獣医師団体、獣医学の研究施設、多数の小規模保護団体らのパートナーとして啓蒙教育活動を行っています。

アメリカでは犬に避妊去勢手術を施すことはとても一般的です。ロサンゼルスのように基本的に避妊去勢が条例で義務付けられている自治体も少なくありません(健康上の問題がある場合や許可を受けたブリーダーは例外)
各州政府や自治体が率先して避妊去勢を推進してきたために、過去40年の間に犬猫の殺処分数は10分の1以下に減少しています。

しかし健康上の理由などで手術を受けることができない動物、経済的な理由などで手術よりも簡便な方法が求められる地域などもあります。ACC&Dは「アメリカだけでなく、世界中各地で犬猫の頭数過剰問題を解決し、不幸な形でこの世を去る犬猫を減らすために避妊去勢を推進する。」という理念のもと、そのような手術以外の方法が必要な所に「こんな方法もある」という橋渡し役を務めています。

さて、気になる「手術以外の避妊方法」ですが、現在3つの
方法が取られています。

●Zeuterin/EsterilSol

これはどちらも製品として販売されている医薬品の名前です。生後3ヶ月以上のオス犬を対象にした方法で、アルギニンによって中和したグルコン酸亜鉛を犬の両方の睾丸に注射します。処置は一度だけ、鎮静剤のみの使用で全身麻酔は必要ありません。
処置により睾丸で精子が作られなくなり、避妊成功率は99.6%と発表されています。アメリカでは2014年2月から実用化されており、現在アメリカ食品医薬品局で認可されている唯一の犬の避妊薬です。

●Suprelorin

これも製品名です。生後6ヶ月以上のオス犬を対象にした方法で、性ホルモンの作用を阻害する物質をマイクロチップのように皮下に埋め込むことで、成分が継続的に供給されて効果を発揮します。
性腺を除去してしまう外科手術と異なり、性ホルモンのテストステロン値が未処置の場合の50%程度は分泌されるため、猟犬など去勢によって能力が低下することを危惧する場合にも勧められています。現在はオーストラリア、ニュージーランド、EU諸国において認可されています。


●黄体ホルモン擬似物質の投与

犬猫/オスメスの両方を対象にしており、注射または経口で投与します。黄体ホルモンが分泌されると性腺刺激ホルモン放出ホルモンが分泌されなくなりますが、擬似物質の投与で同じ働きをさせる方法です。アメリカでは副作用の懸念などから推奨されていませんが、複数の国では実際に使用されています。


(photo by framirezle0 )

どのような医療処置にもリスクと利益の両方があるように、これらの方法も手放しでどんな動物にも勧められるというものではありません。
けれども1番目に挙げたZeuterinなどはアメリカ国内の過疎地域、アフリカ諸国、南米諸国など、通常の動物病院が極端に少なくワゴン車の移動動物病院のみが頼りというような場所では、手術よりもずっと簡便なこの方法が犬の頭数過剰問題や野良犬の問題を解決するのに大きく貢献しています。

猫に対する手術以外の避妊方法も改善や開発が進めば、TNRや地域猫活動が容易になっていくことでしょう。このように犬や猫の避妊去勢処置は、社会全体の問題であることもしばしばあります。よく「アメリカでは頭ごなしに避妊去勢を勧めている」と、ややもすれば批判的な言葉を目にすることもありますが、犬猫の頭数過剰や殺処分を社会全体の問題として捉え、確実に成果を上げてきたのが現在のアメリカが取った方法です。そして現在の日本も、社会全体を見渡した時には避妊去勢の処置は不要とは言えない状態だと思います。

もちろん個々の家庭の愛犬たちが避妊去勢処置をするかどうかは、飼い主がリスクと利益を考えて結論を出すべき問題ですが、この「社会全体を見渡す」ことで変化することもあるのではないでしょうか。
避妊去勢手術が健康に及ぼす影響などが発表されるとレスキュー活動をしている人たちが批判されたりなどというのはその変えなくてはいけない最たるもので、どうかいろんな角度から広い視野で見渡す人が増えて欲しいと切に願います。

避妊去勢手術を受けたことで罹患率が高くなる病気もあるし、手術をすることでリスクが低くなる病気もある。
そしてそれ以前に、野放しの繁殖の結果として殺処分になる動物たちがいる。

ACC&Dがアメリカ国内だけでなく、アフリカや南米諸国の社会情勢や宗教、文化までを視野に入れて不幸な犬が増えないように運動している様を知り、犬の避妊去勢をいろんな角度から考えることで新しく見えてくることもあるのではないかと考えています。

2018/04/16

See the Dog Not the Story

「すべての犬はみんな違う。犬を個として考える。」
これはとても大切なテーマで犬を迎える時に心しておかなくてはいけないことなのですが、同時に「犬という生き物」「○○という犬種」という意識も必要です。

どちらか一方だけではコミュニケーションはうまくいかない。

ビシッと上手に説明できないので、繰り返し手を替え品を替えて、書いていきたいと思っているテーマです。

まずは過去記事の「See the Dog Not the Story」をご紹介します。
タイトルのこの言葉、座右の銘のひとつにしたいくらい(笑)

そしてこの過去記事が、次の書き下ろし記事のテーマにもつながっています。



(以下dog actually 2015年9月14日掲載記事より)

保護犬を家族に迎える時、これだけは心に留めておいたほうが良いという大切なことってなんだろう?と考えてみたいと思います。

保護犬を迎えるにあたって気をつけることと言っても、犬の境遇、性格、受け入れる側の環境、その他諸々は千差万別。すべての例に当てはまる注意事項なんてありません。(またはあり過ぎます。)でも、どんな場合でも心しておくべきことをひとつだけ挙げるとしたら......なんだと思いますか?
複数の保護犬を家族に迎えた経験のある方、保護活動に携わっている方、経験豊富な皆さんが頭に浮かべたことはすべてが正解であると思います。

私が紹介したいと思ったのは、先日カレン・B・ロンドン博士のブログで目にした言葉です。ロンドン博士は動物行動学者/ドッグトレーナーであり、同じく動物行動学者であるパトリシア・マッコーネル博士との共著で成犬の保護犬を家族に迎える時のノウハウをまとめた本も出版している保護犬のエキスパートでもあります。
ロンドン博士が挙げていた言葉は「See the Dog, Not the Story」というもの。直訳すれば「犬を見よ、ストーリーではなく」となりますが、「犬が抱えている過去のお話に捉われるのではなく、その犬自身に注目しよう」ということです。
この言葉は前述のマッコーネル博士との共著に取り掛かっていた時期に、マッコーネル博士が自身のブログで「保護犬を迎える時に大切なことって何だろう?」と読者に問いかけ、意見を募った中で両博士がベストだと感じたものでした。
ひとくちに保護犬と言っても、生まれついての野良だった犬、パピーミルから保護された元繁殖犬、多頭飼い崩壊現場からきた犬、ごく普通に愛されていた家庭犬だったけれど飼い主と死別してしまったなど背景は様々です。どんな環境から来た犬であるのかを知っておくことは対応の仕方を考えるための情報としては有効ですが、いつまでもそこに捉われていては、犬のリハビリの進み具合や成長を見落とすことにもつながります。

たとえ過酷な状況にいた犬であっても、新しい環境できちんとした生活を始めると感情も行動も日々変わっていきます。また同じ現場から保護された犬であっても、それぞれの性格や体力により受けた影響もそれぞれに違います。
犬が抱えているストーリーにのみ注目していると、いつまでたっても「この子は以前虐待を受けていた可哀想な子なんですよ。」と過保護になって犬の社会化を妨げてしまったりする例も少なくありません。
「この犬はこういう犬だ」と決めつけることなく、今現在のその犬の状態に注目して対応することは保護犬に限らず、すべての犬にとって大切なことです。しかし保護犬を家族に迎える場合、ややもすると「可哀想な犬を救うのだ」という部分にのみ力を入れ過ぎてしまうこともありがちです。
もし、これから譲渡会などに行って保護犬たちに会ってみようとお考えでしたら、ぜひSee the Dog, Not the Storyを意識なさってみてください。それだけで、そこにいる団体の人やボランティアの方々に向ける質問の内容も、そして犬たちを見る目も変わってくるかと思います。

【参考サイト】
See the Dog, Not the Story / The BARK

2018/02/28

ケンワージー選手と韓国の犬


この記事の一つ前に2014年のソチオリンピックの時に、オリンピック選手たちが現地の保護犬をアダプトしたことを書いた記事を再掲しています。
その時、選手たちの中で一番最初に野良犬を保護して何とかアメリカに連れて帰れるように手を尽くしたのが、スキーフリースタイルのガス・ケンワージー選手でした。

彼はソチ五輪の後に自身がゲイであることをカミングアウトして、フィギュアスケートのアダム・リッポン選手とともに初めてゲイをオープンにしてオリンピックに参加する選手として注目されました。

私にとってはガス・ケンワージーと言えば「ああ、あの犬連れて帰ってきた子ね」という認識だったのですが、このカミングアウトの件で、彼は一躍LGBTの人々や彼らの支援をする人の間でも注目を集める存在になりました。

今回の平昌オリンピックでも、現地の犬たちを憂うメッセージなどを発信していたガス君ですが、すべての競技が終わった後に、インスタグラムに次のようなポストがアップされました。

A post shared by gus kenworthy (@guskenworthy) on

今朝マットと僕は、ここ韓国に17000以上ある犬農場のうちの一軒を訪れた。胸がつぶれそうだった。
国中で250万匹の犬が、考えられる限り最悪の環境で食料として育てられている。
わかってる、犬肉を食べることは韓国の文化の一部だという議論は承知の上だ。僕自身は個人的に犬食には賛同できないけれど、ここで西洋的な理念の押し付けをするのは違うだろうということには同意する。だけど、この動物たちの扱いはまったく非人道的なんだ。
文化というものは決して残虐行為の身代わりや隠れ蓑にされるべきじゃない。

僕たちが訪れた農場の犬たちの環境は他の場所に比べれば「まだ良い方だ」と言われた。だけど、ここの犬たちだって栄養不足で肉体的に虐待され、ハリガネの床の小さい檻に詰め込まれて、凍りつく冬の寒さと夏の猛暑に晒されている。

屠殺の時が来たら、他の犬が見ている目の前で20分間も苦しみながら感電死させられる。
それぞれの信条がどうであれ、この犬たちは僕の国でペットと呼ばれている生き物と何も違わない。犬たちの中にはかつてはペットだったのに、盗難されて犬肉の取引市場で発見された例さえある。

ラッキーなことに、僕らが訪れた農場は国際動物愛護協会の尽力と間違いに気づいた農家の人の協力によって完全に閉鎖されることになっている。ここにいる約90匹の犬たちは全員がアメリカとカナダに運ばれて、新しい家庭を見つけることになる。

僕は1枚目の写真の可愛い子犬をアダプトした。(名前はビーモに決めた)ビーモはワクチン接種を終えたら2週間くらいでアメリカに来て僕と暮らす予定だ。この子を最高に幸せにしてあげるのが待ちきれないよ。
だけどこの国ではまだ何百万匹もの犬たちが助けを必要としている。
今回の訪問が韓国の犬肉取引の非人道的な面に目を向けてもらうためのきっかけになればと願っている。
同時に僕の国アメリカにも何百万匹もの犬たちが暖かい家庭を待ってることも知ってほしい。


最初に名前が挙がっているマットというのは今回応援に同行したガス君の恋人です。

彼のポストではちらりと名前が出ているだけですが、今回ケンワージー選手が韓国の犬肉取引について言及するようになったバックには国際動物愛護協会(Humane Society International)の存在があります。
ソチの時はたまたまガス君が見つけた野良犬の親子に餌をあげてるうちに情が移って離れがたくなったという、言ってみれば無邪気な子供みたいな行動だったのが、今回はいきなり政治的で深刻な問題になっていますから、背景があって納得です。

愛護協会は以前から韓国の犬肉取引について改善を求めていたそうですが、今回ガス君の渡韓前に「犬肉取引市場の改善について協力してくれないか」と接触があったそうです。

ガス君「え?そんなこと言われても僕は全然そういうこと知らないし」と戸惑ったようですが、協会から話を聞くうちに心が動いたのだとか。

(ちょっとね〜、この辺りは「だいじなだいじな試合前の選手にそんな繊細な問題押し付けるなよHumane Society、だから私はあんた達が好きになれないし寄付もしたくないんだ。」って思ったんですけれどね。まあ、これは私の個人的な感想です。)

ガス君が訪れた「閉鎖が決まっている犬農場」は愛護協会が費用を払って、キノコの栽培工場に業種替えをすることで農場主と交渉が成立しているそうです。
さすがは超大規模保護団体、とんでもない資金力ですね。同じような交渉は他の農場とも成立したり進行中だったりするようです。
この点も賛否両論あるかもしれませんが、私は資金力や知名度のある団体がある程度強引にことを進めるのは「限度さえわきまえれば(ここが難しいんだけどね)有りは有りかな」と思います。とても際どいラインだなあと思うけれど、実際に助かっている動物がいるわけで、人間の生活も脅かしていないわけですからね。

インスタグラムのポストの中でも、インタビューでも、ガス君は「韓国の文化をどうこういうつもりはないし、西洋文化だけが正しいと言ってるわけじゃない。」と強調しています。大切なことですね。
犬の保護の話をすると必ずと言っていいほど「じゃあ牛や豚は食べてもいいのか」と言う人が出てきますが、今回のガス君や愛護協会の焦点はそこじゃないですからね。
ポイントは「食べるために育てたり屠殺するにも、守るべき人道的なラインというものがある」というところです。
これは牛や豚などの家畜動物の飼育や屠殺に対しても、同じように運動している人がいて、正式に研究している人々がたくさんいる問題です。

動物を取り巻く環境のことを気にして情報に接している人にとっては当然のように知っていることでも、普段そういうことと縁のない人々にとっては有名スポーツ選手のこのような行動で何か小さな変化が起きることがあるかもしれません。

単純に「ガス君いい人だね〜、犬もよかったね〜」というだけで済まされず、多くの人にとって何かを考えるきっかけになればいいなと思います。


《参考サイト》
http://people.com/pets/winter-olympics-gus-kenworthy-rescues-dog/

ソチの野良犬とオリンピック選手達

前回の冬季オリンピックの時の記事ですねえ。
この記事、2014年の年間の記事の中でもアクセス数が上位のものだったので感慨深いです。多分、犬のこととは別にオリンピックやスポーツファンの人が検索ワードから来てくれたせいでしょうね。


(以下dog actually 2014年3月3日掲載記事より)


By Andrey from Russia (Stray dogs) [CC-BY-2.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/2.0)], via Wikimedia Commons

世界中の人々の様々な思いをのせて、ソチ冬季オリンピックが幕を閉じたのは記憶に新しいところです。ここアメリカでも国に帰ってきた選手達の動向が伝えられていますが、その中でも犬好きの目を引くのは、ソチで保護された野良犬をアダプトしてきた選手達の話です。

ソチの野良犬の問題は、オリンピック開催前から大きく報道されていました。オリンピック施設建設のための宅地整備で引越しをしなくてはならなかった多くの家族が置き去りにしていった犬達が自然繁殖で数が増え、街には野良犬が溢れた状態になっていました。(ロシアでは犬の去勢避妊処置は一般的ではありません)
それでも、あちこちで施設の建設工事が行われているうちは、犬達は作業員の人達から残飯をもらったりして生活していたのですが、工事が終わって作業員がいなくなると犬達だけが残され、さらに収集のつかない状態となりました。ソチ市はオリンピック開催までに野良犬の問題を解決しなくてはと、犬を殺処分して駆除するという手段に出て、世界の多くの動物保護団体から非難の声を浴びることとなりました。
結果、ロシア当局が野良犬の収容施設を作ったことと、ロシアの企業家オレグ・デリパスカ氏が私財を投じて大規模シェルターを作ったことで、オリンピックの開幕前に、野良犬問題はなんとかかんとか形を整えたように見えました。
しかし、犬を飼うと言えば番犬にするのが目的で純血種のジャーマンシェパードやピットブルが好まれる傾向の強いソチにおいて、シェルターで保護されている雑種犬達の貰い手を見つけることは、たいへん難しいのは目に見えていました。そこで地元で犬の保護活動をしている団体は、オリンピックを機に世界中から集まる人々に、ソチの犬をアダプトすることを考えて欲しいと訴えてきました。

そのような状況の中、アメリカ代表のオリンピック選手の中で一番最初に名乗りを上げたのは、スキースロープスタイルの銀メダリスト、ガス・ケンワージー選手でした。

ケンワージー選手は、オリンピックメディアセンターのセキュリティテントの下で暮らしている母犬と4匹の子犬を見つけました。見かねた彼は選手村に5匹の犬を連れて行こうとしたのですが、村への動物の持ち込みは禁止されているため、毎日食べるものを持ってそこに通ったと言います。
しかし、オリンピックが終わりテントが撤去されると犬達の居場所が無くなることに気が気ではなくなった彼は、SNSに子犬達の写真をアップして「この子達をアメリカに連れて帰るにはどうしたらいいだろう?」と問いかけました。多くの反響の中に、前述の企業家オレグ・デリパスカ氏からのコンタクトがありました。デリパスカ氏は、ロシアからアメリカに犬達を輸送するためのワクチン接種や書類の手続きの手助けを申し出てくれました。
ケンワージー選手は帰国を延期して手続きにあたり、5匹の犬達は現在健康チェックの最終段階で、ケンワージー選手のホームタウンのコロラド入りを待っています。
ケンワージー選手の他にも、スノーボードクロスのリンゼイ・ジャコベリス選手、アイスホッケーチームのデビッド・バッケス選手、ライアン・ミラー選手、ケビン・シャッターカーク選手、スキーハーフパイプのブリタ・シガニー選手、ボブスレーとスケルトンのプレス担当のアマンダ・バード氏が、ソチの犬を新しい家族に迎えてアメリカに帰国しました。

中でも、アイスホッケーのバッケス選手は自身が引き取った犬だけでなく、他の行き場のない犬達の受け皿となるシェルターも探しています。シェルター探しは、バッケス選手と奥様のケリーさんが立ち上げて活動しているAthletes for Animalsというチャリティ団体を通じて行っています。
家のない動物達を助けるために作られたAthletes for Animalsは直接動物を保護したり里親募集活動をしているわけではありませんが、責任を持って動物を飼うこと、シェルターの保護動物をアダプトすることなどの教育啓蒙活動や、各地のシェルターの資金援助のための募金イベントなどを通じて動物保護を支援しています。バッケス選手の呼びかけで集まった様々な分野の人気スポーツ選手がこのような活動をすることで、保護活動に対する注目度や浸透度が高くなり、特に未来を担う子供達への良いお手本になるという大きなメリットがあります。
こちらはAthletes for Animalsの立ち上げの際のプロモーションビデオです。アメリカのスポーツファンなら「おおおおっ!」と息をのむような豪華メンバーが顔を揃えています。

「アメリカの地元にも家のない犬達はたくさんいるのに、何も外国の犬を連れて来なくても」という声も確かにありますが、人気のあるスポーツ選手が家のない犬を引き取ったというニュースのおかげで、アメリカの地元の保護動物に目を向ける人が増えることもまた事実です。
ロシアの地元の大小様々な団体も、残された犬達を救うために努力を続けていますし、Humane Society Internationalではソチの犬達のための募金と里親申込も受け付けています。世界中どこであれ、一頭でも不幸な犬が減って温かい家庭に迎えられるならそれで良しだと思いますし、一人でも多くの人が身近にいる保護動物に注目してくれるようになればと思います。

2018/02/04

今年はドッグボウル !

(photo by ArtificialOG )

今日はスーパーボウルサンデーで、その名物裏番組パピーボウルの放送日です。パピーボウルはひとつ前の記事で紹介したとおり。

↑の記事でチラッと書いたように今年は例年とはちょっと違うんですよ。

それは何かというと、パピーボウルの前日に『ドッグボウル』が放送されたこと!

ドッグボウルに登場したのは2歳〜15歳(平均年齢7歳)の50匹の成犬たち。11の州の15の保護団体やシェルターから集めらた保護犬たちです。
パピーボウルと同じようにミニチュアのフットボールコートで犬たちが交代で遊ぶ姿が放送されます。

シェルターやレスキューグループにいるパピーは極端な話、特にプッシュしなくても貰い手が見つかります。一匹の子犬を巡って複数の希望者が競い合うことも珍しくありません。

一方で成犬、なかでもシニア犬を希望する人は多くありません。このマイナーなブログを読んでくださっている方の多くはディープなドッグラバーだと思います。そんな読者の皆さんにシニア犬の可愛らしさや、成犬のつきあい易さを説いたところで「釈迦に説法」「何を今さら」ですよね。
けれど世間ではまだまだ「子犬から育てないと懐かない」という子犬信仰も根強いし、成犬を引き取るという発想が全くない人もたくさんいます。

テレビ番組で成犬が遊ぶ姿を放送するというのは、そういう層の人々に「成犬という選択肢もあるんだよ」とアピールする有効な方法です。


これはアニマルプラネットのサイトで紹介されているドッグボウルに出演した犬たち。
この子は13歳のチワワのドスさん。たまらん味わい♪
(image via animalplanet.com )

こちらをクリックするとリンク先に飛んで全員の写真が見ていただけます。
みんないかにも性格の良さそうな可愛い犬たちです。

実は今回番組に出演した50匹の中にはすでに新しい家族が決まっている犬もいます。
なぜなら彼らの役割は、子犬とは違う成犬のおだやかさを多くの人に見てもらうことが優先だからです。各保護施設から厳選されてやって来たエリートたちなんですね。

番組の制作者や司会者も「パピーボウルと違って、やたらに取っ組み合ったりしないし収録がおだやかでスムーズだったよ」と語っています。

もちろん全ての成犬がおだやかで扱いやすいわけではないけれど、年齢を重ねた保護犬の中にはそんな犬がたくさんいること、子犬だけに目を向けていては見つからない宝物があることを知らせるきっかけになればいいなと思います。


そして、この動画はドッグボウルが紹介されたニュース番組。

見るときっと頬がゆるんでニヤニヤしちゃいますので、公共の場では避けることをお勧めします(笑)

従来の不妊化手術と性腺温存型不妊化手術を比較

pic by  Mohamed_hassan from Pixabay 犬の不妊化手術(避妊去勢)の新しい流れ 犬の不妊化手術は飼い主にとって「どうする?」 の連続です。 10年ほど前に不妊化手術による健康上の影響についての研究結果が発表されるようになってからは、さらに悩みも増...