2018/01/22

ダンバー博士の犬の咬傷事故査定基準表

2012年に書いた記事ですが、この犬の咬傷の査定基準は今もまだ知名度が高くないと思うので、シェアなどしていただけると嬉しいです。

当時の記事では書いていないのですが、レベル1やレベル2の場合は犬の訓練だけでなく人間の訓練でかなりの数が防止できると思います。
人間が不躾に犬に触ろうとしたり、良かれと思ったことが犬にとってはとても不快なことだったりすると、イライラした犬が警告を発するというのはよくあることですね。
犬が発しているサインを読み取ることの大切さはもっともっと広めなくてはと思う今日この頃。


(以下dog actually 2012年7月2日掲載記事より)


(Image by Newhaircut)

Dr.イアン・ダンバーと言えば、犬の陽性強化訓練法の第一人者として日本でも多くの著書が翻訳され、講演も数多く行われているのでよくご存知の方が多いでしょう。
獣医師/動物行動学者であるダンバー博士は、1980年に当時はまだ珍しかった子犬向けのトレーニングスクールを設立して早い時期からの子犬の社会化の重要性を訴え続け、1993年にはペットドッグトレーナーの協会も設立しました。
現在は講演などで世界中を飛び回る一方、犬に関する様々な情報を提供するサイトDog Star Dailyの運営、同じく犬の情報サイトであるDogTime.comへの寄稿など精力的な活動を続けていらっしゃいます。
今日はそのダンバー博士が作成された6段階の「犬の咬傷事故査定基準表」をご紹介いたします。


レベル1

攻撃的な行動を見せるが、犬の歯と人の皮膚の接触は無い。

レベル2

犬の歯が人の皮膚に接触するが、歯による刺し傷は生じていない。
犬の歯が皮膚の上で動いたことにより、皮膚に深さ2.5mm未満の切り傷と少量の出血はあるが、皮膚に歯は突き立てられていない。

レベル3

1回の咬みつきにより1〜4カ所の歯による刺し傷が生じているが、どの傷も犬の犬歯の半分の深さには至らない。あるいは一方向への裂傷が見られる。
(被害者が咬まれた手を引いた、飼い主が犬を引き離した、犬が飛び上がって咬み、降りる際の重力がかかったなどの理由が考えられる。

レベル4

1回の咬みつきにより1〜4カ所の歯による刺し傷が生じており、そのうち少なくとも一カ所は犬の犬歯の半分以上の深さに至る。咬み傷の周囲に打撲傷が見られる。(犬が咬みついた後、そのまま数秒間押さえつけていたため)
または両方向への裂傷が見られる。(犬が咬みついた後、そのまま頭を振り回したため。)

レベル5

複数回の咬みつきにより、レベル4相当の傷が2カ所以上見られる。または、レベル4相当以上の傷を与える咬傷事故を複数回起こしている。

レベル6

被害者が死亡。

(Image by Indiamos)
全ての咬傷事故のうち99%以上を占めるのは、上記のレベル1とレベル2だと言われています。このレベルの事故を起こした犬は、危険な攻撃性があると言うよりも臆病であったり度の過ぎたやんちゃが原因である場合がほとんどです。これは根気づよく訓練を繰り返すことで、十分に修復が可能で再発も防止できるレベルです。

しかし、人を怪我させたという点にのみ焦点を当ててしまうと、非常に多くの飼い主がそれだけで犬をシェルターに連れて行って手放してしまいます。
そしてシェルターでは事故歴のある犬に引き取り手が見つかる率はたいへん低く、その結果、犬は殺処分になってしまうのです。

これでは十分に更正可能な軽犯罪で死刑になってしまうようなもので、犬にとって非常にアンフェアです。社会にとっても、飼い主の手で修復できる問題なのに税金を使ってシェルターに収容したり殺処分にするというのは、賢い選択とは言えません。
そのようなことのないように、査定をするための客観的な基準を設けることがとても重要なのです。

多くの動物保護団体でもこのダンバー博士の査定基準を採用しており、咬傷事故を起こしてしまった犬の、その後のリハビリの可能性を探るスケールとしています。

日本の場合はシェルターではなく保健所に連れて行かれると、もうそこで望みは完全に断たれます。それだけにこのような明確な査定基準の必要性はさらに高いと言えるでしょう。
また反対に、レベル4くらいの深刻なケースであるのに周囲が軽く判断してしまって、その後の十分な対策や訓練を行っていない場合もあります。これも明確な基準があれば、事の重大さがわかりやすくなります。

ちなみにダンバー博士は、レベル3では飼い主が厳格にルールを守った上で長い時間と忍耐を持って犬の訓練をすれば、修復と再発防止が可能としています。
レベル4では犬の危険度がグンと上がり、犬のプロフェッショナルが飼い主になることが望ましく、更に来客などの折には犬を鍵のかかる部屋に隔離、外出時にはマズルの着用と、厳しい制限を求めています。訓練によって修復できる見込みは非常に低いとしています。
そしてレベル5とレベル6では犬の安楽死処分が勧められています。
レベル4以上の犬の処遇については賛否の分かれるところだとは思いますが、今回はこのような基準があるという点にフォーカスしたいと思います。

どんな犬であっても絶対に咬まないとは言えません。このような査定基準を使うことがないのが一番ですが、もしもの時に冷静に客観的に対処できるよう、心に留めておきたいと思います。

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