2019/01/08

「立ち止まって、肉球を嗅ごう」


2016年11月に書いた記事です。

dog actuallyに書いた記事の中ではちょっと異色のもので、ニコとニヤのことについて自分の思うところを書いたものです。SMILESブログよりもちょっと改まった感じですが、好きな記事のひとつでした。

本当は去年の11月に再掲載すればよかったのですが、あの頃いろんなことが重なって記念日のことをブログに書くことも、このブログも後回しになっていました。
そんな自分の余裕のなさに、ニコもニヤも自分も年をとったのだなあと、ここに書いてあることが尚更心にグッとのしかかってくる気がします。

だけど大丈夫!今日も元気に肉球を嗅ごう!






(以下dog actually 2016年11月14日掲載記事より) 

11月はわが家の犬たちの家族記念日月間だ。匹の犬たちはどちらも11月に家族に迎えた。
シェルター出身の保護犬であるうちの犬たちの正確な誕生日はわからないので、わが家にやって来た日は推定で決められた便宜上の誕生日よりも大切な日だ。
その記念日も今年は先住犬のニコが11回目、後から来たニヤが9回目を迎えて、重ねた月日の分だけズシリと重みを増してきた。


しみじみとありがたいことだと思うのだが、うちの犬たちは今のところ大きな怪我や病気をしたことがない。
だから差し迫った危機感とともに彼らを失う恐怖を感じたことはまだない。
それなのに心のどこかで漠然と「あとどのくらい一緒にいられるだろう」と逆算しているところがある。

思えば、11年前に推定生後6ヶ月のニコを迎えた時に「さあ、これから15年(いや18年くらい?いやいや20年でもいいな、なんて思いながら)責任重大だねえ」と家人と笑いあった時から、心のすみっこの逆算時計は動き出していたのだろう。

犬が若いうちは、そんな漠然とした思いなど気にも留めずに過ごしていたものだ。けれどこの数年のうちに、いつもの公園や散歩コースで知り合った犬たちの訃報を聞くことが増えていった。訃報だけでなく、病気の治療の話、手術や安楽死の決断などのシリアスな話題もよく耳にする。そんな時には「自分だったらどうするだろう?」と頭の中で様々なシミュレーションをして、真剣に考え込むことも多い。
訃報や闘病の話に触れて、自分に引き寄せて考える機会をもらうことは私にとってはとてもありがたいことだ。
何かしらの決断をして、その話をする飼い主さんを見ていると、愛犬のために真剣に考えて出した結論はどんな結果であれ正解なのだと思う。

他の人の経験に触れ、自分も大好きだった馴染みの犬たちが目の前からいなくなる経験を繰り返して、少しずつ心の準備が始まっている。
一方で、どんなに手を尽くしてもどんな選択をしても、犬たちを見送ったあとには必ず後悔が残ることもわかっているし覚悟もしている。

犬と暮らすことは、いつも心のすみっこで見送る時のことを考えて準備しながら生きているようだとよく思う。おかしな習慣だとも思うけれど、犬を残して自分が先に行くわけにはいかないので、それでいいのだ。

心のどこかでいつも見送る準備をしていると言っても、決して後ろ向きにウジウジしているわけではない。
記念日のズシリと来る重みも心地良く、犬と一緒に過ごす時間はどんな時も幸せだ。むしろ心の中の逆算時計のおかげで、今手の中にある幸せをいっそう強く噛み締めていられる。

Stop and smell the rosesという言い回しがある。直訳すると「立ち止まってバラの香りを感じよう」だが、「少し肩の力を抜いて、人生の美しい部分に感謝して楽しもうよ」という意味で使われる。
私にとってはまさに犬と過ごす時間を表すような言葉だ。

顔に白いものが目立ち始めた犬たちと過ごすなんでもない日常は、感謝して思い切り楽しむべき人生の美しい部分。

バラの香りよりも、ポップコーンみたいなあの匂いの方が幸せのイメージが強いのは犬バカゆえ。

「Stop and smell the paws 立ち止まって、肉球を嗅ごうよ。」

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