その後、2月下旬まで放置されていたこのDogs in the U.S.のブログ😓😓😓
書く書く詐欺もたいがいにしなさいよ!ですね。すみません🙇
Image by OpenClipart-Vectors from Pixabay
前回はマイケル・ヴィックの敷地から保護(と言うよりも証拠物件として押収)された犬たちが、アニマルシェルターに預けられ関係者たちがその後の処遇に頭を悩ませていたところ、相談されたアメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)の動物行動学者が犬の行動評価をスタートさせたというまで書きました。
→前回のお話はこちら
→前々回はこちら
犬たちの行動と反応を査定
ASPCAの責任者だったDr.Zは行動評価のためのチームを編成しました。チームのメンバーはASPCA所属の動物行動学者や獣医師、そして北カリフォルニアのピットブルレスキューの主宰ドナ・レイノルズ氏とティム・レイサー氏の計10人でした。
テストはASPCAで保護犬の評価をする時に行われている手法で実施されました。
1. まずは犬の行動を観察。一匹ずつテストの場に連れてきて「落ち着いている」「緊張している」「攻撃的」などの評価を下す。
2. 担当者が犬の体を撫でて反応を観察。問題がなければ足を持つなど、もう少し踏み込んだ接触をして観察。
3. ロープやリングなどおもちゃを手にして遊びに誘う。うまく遊ぶことができるか、最後に速やかに遊びを止めることができるかを観察。
4. ボウルに入れたフードを与え、食べている最中にゴム製の手の模型を使ってボウルを引き離し反応を見る。
5. フードよりもさらに嗜好性の高いブタ耳などを与え、同じことをして反応を見る
6. 犬のぬいぐるみと、幼児の等身大の人形を近づけ攻撃性を示すかどうかを観察
さらにBADRAPの2人から、彼らが使っている以下の手法も加えることが提案されました。
- ケージの金網越しに犬に近づき、反応を観察
- ぬいぐるみではなく、本物の犬を近づけて反応を観察
- 犬の顔にそっと息を吹きかけて反応を観察
テストの手法について解説
ここでちょっと、上記のテストについて解説します。
この評価が行われたのは2007年のことですので、ASPCAのテストが現在は使われていない古いものです。
上記4〜6の「食べているものを取り上げて反応を見る」「犬のぬいぐるみや等身大の人形を近づけて反応を見る」のテストで観察される反応は、実際の犬の行動を反映しておらず、犬の攻撃性の指標として有効ではないという研究の結果が出ています。
2010年代初頭からこれらの研究が、複数の動物行動学者や心理学者によって次々に発表されて来ました。
そもそもシェルターというストレスの多い環境で暮らしている犬の行動を一回のテストで評価するというのは無理な話ですし、犬にとっては文字通り生きるか死ぬかの分かれ目にもなり得るのですから、不確かな指標を使っていたのはひどい話です。
2010年代初頭からこれらの研究が、複数の動物行動学者や心理学者によって次々に発表されて来ました。
そもそもシェルターというストレスの多い環境で暮らしている犬の行動を一回のテストで評価するというのは無理な話ですし、犬にとっては文字通り生きるか死ぬかの分かれ目にもなり得るのですから、不確かな指標を使っていたのはひどい話です。
現在のASPCAは当団体の施設だけでなく、全国の保護施設向けに次のようなアドバイスをしています。
- わざわざテストの場を設けての行動評価は行わない
- 犬が持ち込まれた時には元の飼い主から犬の情報をできる限り多く聞き出す
- 施設のスタッフは犬を観察して日頃の行動を把握し、情報を共有する
- 望ましくない行動を見せた犬に対して、スタッフの対応を全員が理解して統一する
- 望ましくない行動がある犬を譲渡する場合はその情報をきちんと開示して飼い主への指導を行う
また「おもちゃを見せて遊びに誘う」というのも、この当時の闘犬場から保護された犬たちへの理解の足りなさをよく表しています。
闘犬のために自家繁殖されて、闘うための訓練(という名の虐待)と実戦しか知らない犬たちにおもちゃを見せてもその意図は伝わりません。
そもそも彼らには「遊ぶ」という概念すらなかったと思われます。
以前にも書きましたが、この当時は闘犬の証拠品として押収された犬は裁判が終われば殺処分になるのが普通だったので、元闘犬の行動評価をしたことがある人がいなかったのです。
この査定の場にBADRAPのお二人がいたことは犬たちにとって本当にラッキーなことでした。
そしてASPCAのDr.ZがBADRAPのお二人の意見を取り入れてくれたのも本当に良かった。
ちなみにDr.Zはこんなサンタクロースみたいなお方です。
ちなみにDr.Zはこんなサンタクロースみたいなお方です。
いよいよ一匹ずつのテスト、その結果は?
さて、いよいよ最初の犬のテストです。
犬たちのハンドラーは全てBADRAPのティム・レイサー氏が務めました。
Dr.Zの目標は49匹の犬の10%つまり5匹の犬にリハビリテーションを受けさせ、家庭犬として譲渡することでした。
ドナさんとティムさんも5匹を目標としていました。
そしてチーム一同が見守る中連れてこられた最初の1匹は人間に対して全く攻撃性を示しませんでした。
と言うより、何の反応も示しませんでした。
おもちゃを見せても反応は無し、食べているものに手を出しても攻撃性は見られませんでした。
長い間虐待されていたせいで、刺激に対して反応しないでやり過ごすことを身につけてしまっていたのかもしれません。
しかし犬舎から他の犬を連れて来て対面させた時、その犬は嬉しそうに尻尾を振り、礼儀正しく匂いを嗅ぎ合うことができました。
つまり『合格』です。幸先の良いスタートを切りました。
その後も合格が続き、当初の目標の5匹にあっという間に達し、さらに合格の犬は増えて行きました。
犬たちは複数のシェルターに分かれて収容されていたので、他のシェルターでも同じようにテストが繰り返されました。
ハンドラーのティムさんの呼びかけや優しく吹きかけられた息に嬉しそうに反応する犬、怯えるあまり全ての行動を放棄して地面にぺったりと這いつくばってしまう犬、そしてもちろん攻撃的な態度を示す犬もいました。
(※注 地面にぺったりと這いつくばってしまう犬は「パンケーキ」と呼ばれました。パンケーキ状態になってしまう犬はかなり多かったのですが、後にこれらの犬はバベシア症にかかっており、身体がだるくて起き上がれなかった可能性が高かったことが判りました。
怪我をした傷口を手当てもせずに放置されていた犬たちはダニの格好の標的となって、バベシア症を患っている犬はとても多かったのです。)
全ての犬のテストが終わった時点で、Dr.Zは犬たちの選別基準を決めました。
Dr.Zのチームはテスト結果をかなり寛大に評価してくださったものと思われます。
少なくとも攻撃性を見せたら一発アウトというようなものではありませんでした。
選別基準は次の5つで、全ての犬は5つの基準のどれかに分けられます。
- 預かりボランティアのもとへ行く
- 警察犬など法執行機関で働く犬となる
- 保護施設へ行き、そこでリハビリ後譲渡先を探す
- 終生を保護施設で暮らす
- 殺処分
1は最も評価の高かった犬たちで、16匹が該当しました。
2は評価の高かった犬のうち、適性があると思われる2匹。
(ただしこの2匹も最終的には普通の家庭犬として譲渡されました。)
3は問題行動はあるものの、適切な施設でリハビリが可能と思われる犬たちで、20匹でした。
4は攻撃行動が多く見られ、家庭犬に適さない犬たちで10匹が該当。
そして5の殺処分には1匹だけが該当してしまいました。
殺処分以外の方法がないと判断されたのは黒いメス犬で、繰り返し繰り返し繁殖に使われた跡がうかがわれました。
酷い環境での虐待と度重なる出産で、その犬は身体だけでなく精神もボロボロになっていました。
目につくものすべてを激しく攻撃しようとしたその犬は、ティム・レイサーさんの手に負えない唯一の犬でした。
苦痛しか知らなかった彼女の一生はペントバルビタールナトリウムの点滴によって幕を閉じました。
センチメンタルに聞こえるかもしれませんが、彼女が今度は生まれ変わって普通の幸せな犬として生きていることを心の底から願います。
犬たちに名前をつける
目標と予想を大きく上回る48匹の犬たちにセカンドチャンスが与えられることになりました。それはすなわち、犬たちの今後について決定権を持つ責任者が必要になるということです。Dr.Zは動物に関連する法律に精通しインディアナの大学の法学部で教鞭をとるレベッカ・ハス教授を責任者として推薦し、ハス氏はこの任務を受けました。
レベッカ・ハス氏はとてつもない重圧と多忙な日々に身を投じることとなりました。彼女がその任務の一番最初にしたこと、それは犬たちに名前をつけることでした。
ヴィックの犬舎でもほとんどの犬は名前を付けられておらず、シェルターに保護されてからもチェサピーク54902とかハノーバー29といった風に、シェルターの地名と番号だけで識別されていたのです。
しかし彼らは1匹1匹名前をもらい、それぞれにオスカー、ローズ、ウバ、スイートピー、アーニーとなりました。
後にBADRAPのドナさんが「あの黒い犬に名前をつけてあげなかったことを今も悔やんでいます。せめて名前をつけて天国に送り出してやればよかった。」と語っていました。
いつまでもあの黒い犬のことを心に留めていてくれる人がいるということに少しだけ救われた想いになったのを覚えています。
こちらは行動評価の際にハンドラーの役目を引き受けたティム・レイサー氏。
次回からは(今度はこんなに間を置かない!)いよいよ1匹ずつのストーリーを紹介していきます。
《参考URL》
https://www.aspca.org/about-us/aspca-policy-and-position-statements/position-statement-shelter-dog-behavior-assessments
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