2019/03/05

短頭種の犬たちの健全性と福祉のために、オーストラリアの獣医師が訴えること


前回の記事はカナダの話でしたが、今回のはオーストラリアの獣医師の話題です。
「アメリカの犬たち」という看板に偽り有りですみません😅



photo by StockSnap


短頭種の犬の健康問題

2008年にイギリスのBBCが『Pedigree Dogs Exposure』(NHK放送時邦題『イギリス 犬たちの悲鳴 ブリーディングが引き起こす遺伝病』)を放送して以来、行き過ぎた犬種スタンダードや犬の健康を無視したブリーディングのせいで、純血種の犬の間に生まれながらの疾患や障害が蔓延していることが知られるようになってきました。

オーストラリアでは2016年にRSPCA(王立動物虐待防止協会)と獣医師協会が共同で、短頭種の犬の健康問題についての啓蒙キャンペーンが行われました。
そして今年2019年の初頭に、科学誌『Animals』に9名の獣医師が連名で、短頭種の健康がどれほど害されているかを具体的に示した論文を発表しました。
短頭種の中でも特にその傾向が顕著なパグ、イングリッシュブルドッグ、フレンチブルドッグ、ボストンテリアが多く取り上げられています。

また科学誌を購読する層よりもさらに一般的な飼い主に声を届けるために、ネット上で一般向けの記事を書き、無料での再利用を許可しました。
その内容をご紹介していきます。

慢性的な呼吸困難

短頭種の犬の健康の問題の中でも、特に深刻で数も多いのが呼吸に関するものです。
「短頭種気道症候群」または「短頭種気道閉塞症候群」と呼ばれるものですが、英語の頭文字を取って以降はBOASと表記します。
短頭種の犬はマズルの長い犬に比べてずっと口の中のスペースが狭くなっています。そこに鼻、舌、軟口蓋、歯が押し込まれているため、自動的に気道が狭くなり、呼吸に影響を及ぼしています。
姿勢や運動などで十分に酸素が取り入れられないと、BOASが起こります。

BOASの主な症状は以下のようなものです。
  • ゼーゼーヒューヒューという呼吸音
  • 呼吸困難
  • 吐き気
  • チアノーゼ
  • 異常な体温上昇
  • 失神
気温が高くなると、犬は舌を出してハアハアすることで体温調節を行いますが、短頭種の犬がそれをすると上気道が腫れて呼吸ができなくなり、生命に関わるリスクが高くなります。
パグ、フレンチブル、イングリッシュブルでは、他の犬種に比べてこの上気道障害が起こるリスクが3.5倍にもなると言われています。
多くの航空会社が短頭種の犬の搭乗を断っているのはこのためです。

起きて運動している時だけでなく、短頭種の呼吸問題は睡眠中にも続きます。
気道が塞がるのを避けるために、座ったまま眠ったり、おもちゃなどを咥えたまま眠ったりする犬も少なくありません。短頭種の犬の約1割は口を開けたままでないと寝ることができないのだそうです。

呼吸の問題は酸素を取り入れられないだけでなく、二酸化炭素を十分に排出できないことにもつながり、血中の二酸化炭素濃度が高くなることでphバランスが崩れ酸性血症を起こす恐れもあります。


問題は呼吸だけにとどまらない



呼吸の他にも極端に短い頭蓋骨のせいで起こる健康上の問題があります。
外見からわかりやすいのは目の問題です。パグは目が飛び出しているので目を怪我しやすいというのはよく言われますが、短頭種の犬ではその顔の形状のせいで瞼を完全に閉じられない障害が起こります。それが角膜腫瘍の原因となり失明につながる場合もあります。
短頭種の犬700匹を対象にした研究では、31匹に角膜腫瘍が発見されたのだそうです。これは短頭種以外の犬の約20倍の割合になります。

顔周辺だけでなく、脊髄奇形や歩行障害も、これら短頭種の犬の大きな問題です。ブルドッグやボストンテリアのチャームポイントと考えられているクルンと巻いた尻尾スクリューテイルは脊髄の変形によって起こったものです。
またパグの3匹に1匹は神経障害から来ると思われる歩行障害があるという研究結果も出ています。この神経障害も極端に短い頭蓋骨から来ていると考えられます。

顔のシワは皮膚疾患の温床となりやすく、それを搔こうとして飛び出した目を怪我するという二重の弊害も起こりがちです。

出産時にもその頭蓋骨の形が問題になります。短頭種の犬の出産では帝王切開が一般的で、フレンチブルやボストンテリアでは約8割、イングリッシュブルドッグでは約9割が帝王切開となります。

短頭種の犬は麻酔時のリスクも他の犬種よりも高くなるのですが、皮肉なことに手術を必要とする事態が多く起こるのも短頭種の犬たちです。

身体的な問題だけでなく、短頭種の短い顔は行動上の問題にも繋がっています。
マズルのある犬が恐怖を感じた時や、相手に近づくなという表現で唇を持ち上げ歯を見せる表情、短頭種の犬は構造上あの表情ができません。
これは犬同士のコミュニケーションにとって大きな障害となります。

また顎の形のせいで咀嚼能力が低下しています。犬にとって何かを噛むことはストレス軽減にもつながる行動なので、犬のストレスコントロールにも影響を与えます。

これは2016年にRSPCAが制作した短頭種の犬の健康に警鐘を鳴らす動画です。
1:28で示される犬の頭蓋骨をみると、この形がいかに不自然なのかが良くわかります。
1:33で登場する100年前のパグとブルドッグの姿もご覧ください。
                                        

にも関わらず!短頭種は人気犬種

書いているだけで、短頭種の犬たちが気の毒で泣けてきそうです。
けれども、飼い主でさえこれらの健康問題がここまで深刻なことだと知らなかったり、犬が変わった座り方をしたり不器用に歩く姿を「かわいい」で済ませて障害だと気づいていなかったりする例も少なくないのです。

そして新しく犬を飼おうとする人が、パグやフレンチブルの愛らしい顔に魅せられて購入するために、山のような健康問題を抱えた犬が次々に繁殖されています。

イギリスのケネルクラブUKKCでは2007年から現在までの間に、フレンチブルドッグの登録数は3104%増、パグは193%増、イングリッシュブルドッグは96%増になっているそうです。

オーストラリアのアANKCでは、フレンチブル11.3%増、パグ320%増、イングリッシュブルドッグ324%増となっています。

さらに購入者の好みは「より鼻ペチャで、より小型の犬」というトレンドを作り、商業ブリーダーがそれに応えて、より多くの健康問題を背負わされた犬を作り出しています。
                                
短頭種の中でも特に問題が顕著なパグ、フレンチブル、イングリッシュブル、ボストンテリアが話題の中心になっていますが、キャバリアキングチャールズスパニエルやペキニーズなど、他の短頭種の犬もここに挙げたような問題に無縁ではありません。

獣医師に期待される役割とは

Animals誌に論文を発表した獣医師たちは、獣医師なかでも開業医にとって、特定の犬種の問題を大きく取り上げることの難しさを指摘しています。

その難しさを一言で言えば「顧客が離れてしまう」これに尽きます。
病院に来る犬の中には当然短頭種の犬たちもたくさんいます。その飼い主さんたちにすれば、ここに書いたようなことを突きつけられれば、責められているような気持ちになったり、不快に思う人もいるでしょう。
それで多くの顧客が離れてしまえば、開業医などは死活問題です。

論文の著者である獣医学博士たちは、豪ニューサウスウェールズ州の獣医師の宣誓文を引用しています。
「動物福祉、動物と人間の健康、獣医療サービスの利用者と地域社会の利益のために獣医科学を倫理的かつ良心的に実践する」
この宣誓に基づいて、ブリーディングが原因で起きる犬の健康問題を指摘し、改善に手を尽くすことは職業上の義務であるとしています。

具体的には、これから犬を飼おうという人へは教育やアドバイスを。
短頭犬種の飼い主に対しては、すべての病気や障害の可能性を伝え、ライフスタイルの改善や予防のアドバイスをすること。そしてアクシデントで妊娠が起きないように避妊去勢処置を勧めること。

顧客に短頭種のブリーダーがいる場合には、健全なブリーディングのための教育や指導を行うこと。
ブリーダーが非協力的な場合、獣医師はケネルクラブと協力しての介入が可能なのだそうです。

短頭種の犬の他にも

人間が「愛らしい」と思う姿に近づけるために、犬としての健全性を犠牲にされている短頭種の犬たち。

彼らはあまりにもその問題が数多く顕著なために、行き過ぎた犬種スタンダードの代表的な例としてしばしば取り上げられます。
けれど短頭種だけでなく、バセットハウンドやダックスフンドの長い胴、ジャーマンシェパードの極端に傾斜した背中など、機能を無視した犬種スタンダードの犠牲になっている犬は多く存在します。

また猫ではスコティッシュフォールドは、人間が作り出した悲劇の最たるものです。
折れ曲がった耳が可愛らしいからと、折れ耳の猫を選択して繁殖させ猫種として固定させたものです。
しかし折れ耳は遺伝子の変異で起こった軟骨の奇形であり、その影響は耳だけでなく手足にも現れ、歩行障害や痛みに生涯苦しむ猫を作り出す結果になりました。

この問題について知る人、考える人が1人でも多く増えていくことを心から望みます。
一朝一夕に片の付く問題ではありませんが「可愛いからと言って何をやってもいいなんてことはないんだよ」と声を大にして伝えたいと思います。


《参考URL》


2019/02/27

カナダの先住民居留地で成功しつつある野犬対策

このブログはタイトルの通り、アメリカの犬のことをメインに書いているのですが、今回はカナダのお話です。ちょっと例外。


カナダのシクシカ地区の野犬対策


(photo by SandeepHanda )



日本でも多くの地域で野犬の増加が問題になっていると聞きます。
そして絶望的に大きく失敗している広島を始めとして、何か効果的な対策を講じた自治体というのはまだ耳にしたことがありません(私の勉強不足で、有ったらごめんなさい。)

ここで紹介するのはカナダの先住民居留地での野犬対策です。
先住民居留地というのは、古い言い方ではカナダ・インディアン、現在はファースト・ネーションと呼ばれているカナダの先住民の人たちのために政府が定めた特別居住区です。
カナダ全体のファースト・ネーションの約半数の人々が居留地に住んでいるのだそうです。

その居留地の一つ、アルバータ州の都市カルガリーの東に位置するシクシカ居留地がこのお話の舞台です。

この地域の人々の犬との付き合い方は昔ながらの放し飼いです。犬の所有者はあいまいな感じで、犬たちは居留地の中を自由に歩き回り、地域全体でゆるーく犬を見ているというものだそうです。

しかし数百年前にファースト・ネーションの人々だけがこの地に住み、犬と共に狩りなどをしていた時代のようには、犬と人の共存は機能しなくなっています。

放し飼いの犬たちはあちこちで子供を産み、所有者のいない野犬となって増え続けてしまいました。
放し飼いの犬も野犬も一緒になってうろつき、ゴミなどを漁るようにもなりました。
そして2016年には子供の被害を含む、野犬による深刻な事故が相次いで、シクシカの法務機関が対策に乗り出しました。


Alberta Spay Neuter Task Force

自治体の機関が対策を立てるに当たって最初に行ったことは、先住民居留地の犬たちを専門にしている犬の保護団体『Alberta Spay Neuter Task Force=アルバータ避妊去勢任務部隊』(以下ASNTF)に連絡を取り相談することでした。

ASNTFは一般からの寄付金だけで運営しているNPOです。2008年以来、8つの避妊去勢専門クリニックを建てて安価な避妊去勢手術を提供し続けています。

ASNTFは自治体の依頼を受けて、パートナーとしてシクシカ居留地の野犬対策に立ち上がりました。

対策は、国際コンパニオンアニマルマネージメント白書が推薦する方法と、同団体の経験および専門知識に基づいて、5つのそれぞれに違う方向から立てられました。


・法による規制

これは犬に関する法律を作ることと、その法を執行していく組織を作ることの2つの柱から成ります。

シクシカ居留地内の犬は全て鑑札登録されることが義務付けられました。登録さえすれば今のところは、従来通り犬の放し飼いは認められています。
鑑札登録で個体識別がし易くなり、飼い主がいないことがわかった犬は捕獲して保護施設に入れられました。
法を執行する機関として動物ケア&コントロール官が制定され、上記の任務に当たっています。
ASNTFはこれらの活動の指導とトレーニングを提供しました。

・住民への教育

犬との付き合い方、飼育の仕方について住民の意識向上のための教育はASTNFが行いました。
地域のイベントにはブースを出して参加し、デモンストレーションを行いました。また地元の教育者と協力して学校のためのカリキュラムやプログラムを作成し実施しました。
大人向けの教育プログラムも作成し戸別訪問で野犬対策の説明なども行いました。

・避妊去勢の徹底

ASNTFはこの地区にも避妊去勢クリニックを開いて、住民向けに安価な手術を提供しています。
また犬の鑑札登録の際、犬が避妊去勢手術を受けていれば登録料が無料になるようにして、避妊去勢率を上げるようにしています。
所有者のいない犬たちも、保護施設で避妊去勢手術を受けます。

・保護施設への収容

鑑札登録をしていない犬、そして咬傷事故歴のある犬は保護施設に収容されました。
犬たちはここでリハビリテーションを受けて、新しい家庭へとリホームされます。
リホームが難しいと判断された犬は、別の協力保護団体のサンクチュアリ施設で生涯を過ごします。

・食料資源へのアクセスを制限

ASNTFは、放し飼いの犬たちには飼い主が決まった場所で決まった時間に給餌するようプログラムを設計しました。フードも保護団体から提供されます。
またコミュニティ全体に犬が荒らせないゴミ容器を設置し、犬が拾い食いすることを制限できるようにしました。
家庭で給餌されればゴミを漁らずに済むし、ゴミを漁っている時に人間に追い払われればエサを奪われると思って咬みつく事故にも繋がりますから、これは大切なことです。

(photo by Activedia )


成果

上記のような取り組みの結果、2017年は犬の咬傷事故は前年比32%減少しました。数字に現れている部分だけではなく、住民の多くが「以前よりも安心して道を歩けるようになった」と感想を述べています。

ASNTFはこの成果について「ただ犬を捕獲して収容するだけでも、避妊去勢するだけでもこの結果は出せなかったでしょう。多角的な方向から取り組むことが成功のポイントです。中でも住民への教育は我々の活動の焦点と言えます。」と述べています。


この多角的な方向からの総合的な取り組みというのは日本の(失敗している)自治体には見られないものです。
何もこれと同じ方法を取らなくてはいけないと言うのではありません。
けれども、自治体は何も新しいことに取り組まずに、特定の保護団体に機械的に犬を送り続ける方法では状況が改善しないことは明白です。

野犬と言えば、悪名高いのはロシアやルーマニアですが、伝え聞くところでは片っ端から殺処分するのが彼らの方法です。しかし野犬の問題が解決に向かっているとは言えないようです。
これらの国の野犬がたいへん危険なのは、人間から犬への暴力的な扱いも理由の一つではないかと思います。

シクシカ地区で咬傷事故が減ったのも、犬側の問題よりも人間への教育が功を奏したのではないでしょうか。
犬への正しい接し方を教育する一方で、この地域の昔からの文化である犬の放し飼いという部分には寛容であることも、この対策の注目すべき点だと思います。

文化や背景が全く違う外国のやり方を全面的に目標にするよりも、いろいろな事例をたくさん知って消化することは大切です。

カナダのこの例は、日本の自治体にも参考になるところが大いにあるのではないかと考えます。


2019/01/27

犬のこと、バカって言う人がバカ!



(photo by skeeze )

このブログも含めていろんなところで「頭のいい犬種ベスト10」のような文章に異を唱えて来ています。
先日も「大型犬は小型犬に比べて頭が良いのか?」という文章を読んで「またくだらないことを」と思っていたところでした。
その文章とはブリティッシュ・コロンビア大学の心理学教授のスタンリー・コーレン博士が、科学誌「アニマル・コグニション」に掲載された「犬の脳の大きさと認知機能に関連はあるのか?」という内容の論文について書いたものでした。

コーレン博士、犬関連の学術記事が多いサイコロジー・トゥデイに寄稿しているので、私も彼の記事はちょくちょく目にするのですが「賛成できんなあ」と思うことが多いんですよね〜。

さて、前述のコーレン博士の文章に「大型犬は小型犬よりも頭がいいかと言う問いがある。確かに私の著書『犬の知性』でも作業と従順性の知性をランク付けしたところ上位20%に入っていた小型犬はパピヨンだけだった」という一文があり、なんじゃそれは!?と思って、ちょこっと検索してみたら出てきたのが「Dumbest Dog Breeds(バカな犬種)」というリストでした。(これは他の人がそう呼んでいるだけで、コーレン氏自身がそう言ったわけではない。)

スタンリー・コーレン博士という人は1994年にThe Intelligence of Dogs-犬の知性という本を著しており、そこに120の犬種の知能ランキングというものが掲載されているらしい。
😑
コーレン氏の言うところの知能とは次の三つ
1. 本能的な知能ー牧畜や狩猟のように、そのために育種されたタスクを実行する能力
2. 適応の知能ー自主的に問題を解決し、以前の経験から学ぶ能力
3. 作業及び従順の知能ー人間によって教えられたことを学ぶ能力

なるほど、ここまでは特に異論はありません。
けれど、本の中では何故か3番目の作業及び従順の知能だけが高い順からリストアップされているそうです。
私はこの本を読んでいないので、あまりどうこうとは言いませんが、この25年も前に出版された本の中のリストはいまだに色々なところで引用されており、その多くは私と同じく「はぁ?なんじゃそれは?」と批判的な論調です。

『犬の知性』が出版されてから、この25年の間に犬の認知機能に関する研究は大きく進み、新しく判ったことがあったり過去に発表されたことが覆ったりしています。
それなのに他の研究者による最近の論文について、四半世紀前の自著のデータをあたかも周知の事実のように堂々と書いているのは科学者として恥ずかしくないか?コーレン氏。

参考までに書きますと、コーレン博士による「作業及び従順の知能」が高い犬種のベスト10は

  1. ボーダーコリー
  2. プードル
  3. ジャーマンシェパード
  4. ゴールデンレトリーバー
  5. ドーベルマン
  6. シェトランドシープドッグ
  7. ラブラドールレトリーバー
  8. パピヨン
  9. ロットワイラー
  10. オーストラリアンキャトルドッグ
おなじみの感じですね。
でもボーダーコリーが従順かと問われたら「そうじゃない個体もいっぱいいるよ」と言いたくなるけどね。
従順じゃないからダメということではなくて「この指示に従う価値があるかどうか?」を自分で考えて判断するようなところがある気がします。
意地の悪い言い方をすれば、ボーダーコリーに認められる人でなければ飼えないような。

他の犬種だってみんなそんな単純なものじゃないですよね。
全部「賢い犬だから〜」って能天気に飼い始めたら痛い目に遭う犬種ばかりだ。まあそれはどんな犬でもそうですけどね。

(photo by Capri23auto )


そして、問題の最下位からの10犬種。これが色々なところで「じゃあこの犬たちは頭の悪い犬ワースト10だとでも言うのか?」と長年に渡って批判されているわけです。
  • アフガンハウンド
  • バセンジー
  • ブルドッグ
  • チャウチャウ
  • ボルゾイ
  • ブラッドハウンド
  • ペキニーズ
  • ビーグル
  • マスティフ
  • バセットハウンド
もうね「ふざけんな」ですね(笑)
頭が悪いとは言ってないとしても、ランキング付ければ下位ができるのは当たり前。しかもそのランキングの根拠も乏しいと来ては、怒ってもいいよね?

リストの10犬種のうち3つがサイトハウンド。アフガンハウンド、バセンジー、ボルゾイの3犬種。視力が優れていて目の端に動くものを見つけるのが得意で独立心に富む彼ら。確かに従順とは程遠く訓練はしにくいでしょうが、独立した自主性の高さは知性の証ですよね。

そしてセントハウンドも3犬種。ブラッドハウンド、ビーグル、バセットハウンドですね。
彼らはその素晴らしい性能の嗅覚を使って獲物をとことん追い詰め主人に知らせるというのに、作業と従順の知能が低いですって?ちょっと!あなたの知能は大丈夫か?って言いたくなります。

残りのブルドッグ、チャウチャウ、ペキニーズ、マスティフは頑固さに定評のある犬種で訓練をするには忍耐が必要です。でもそれは知能が低いこととイコールではないですよね。むしろ全然関係ない。失礼にもほどがある。

でも上で私が書いたような、犬種ごとに「こんな特徴があって、こんな性質」と一括りにすることもやっぱり無理があるんですよ。

犬は人間との長い共同生活の中で、働く目的に合わせて選択育種されて作り上げられて来た生き物ですから、犬種ごとの傾向は当然あります。
けれど例えばラブラドールでも、盲導犬と爆発物探知犬ではその適性が全く逆です。盲導犬の落第生の中から探知犬候補をスカウトして来る団体もあるほどです。
でも誰も盲導犬と爆発物探知犬はどちらが賢いか?なんて言いませんよね。

以下はコーレン博士と同じく、サイコロジー・トゥデイに寄稿している環境学と進化生物学者のマーク・ベコフ博士の言葉です。

「犬であれ他の動物であれ知能というものにはいくつもの種類がある。そしてもちろん個体差というものがある。
賢さにも種類があり、誰が一番賢いかなど決められない。皆それぞれの環境に賢く適応したのだ。」


↑これが全てですよね。
以前に「頭のいい犬種ベスト10?冗談じゃない!」という記事を書きましたが、今回はさらに悪くて「ふざけんな」なんて言ってしまいました。

でも犬の知能を一元的に捉えて、それをランキングにするなんて本当に馬鹿げていて、なんの役にも立たないことです。

最後にちょっと小学生みたいなことを言わせて。
犬のことをバカって言う人間が一番バカですーっ!







2019/01/08

「立ち止まって、肉球を嗅ごう」


2016年11月に書いた記事です。

dog actuallyに書いた記事の中ではちょっと異色のもので、ニコとニヤのことについて自分の思うところを書いたものです。SMILESブログよりもちょっと改まった感じですが、好きな記事のひとつでした。

本当は去年の11月に再掲載すればよかったのですが、あの頃いろんなことが重なって記念日のことをブログに書くことも、このブログも後回しになっていました。
そんな自分の余裕のなさに、ニコもニヤも自分も年をとったのだなあと、ここに書いてあることが尚更心にグッとのしかかってくる気がします。

だけど大丈夫!今日も元気に肉球を嗅ごう!






(以下dog actually 2016年11月14日掲載記事より) 

11月はわが家の犬たちの家族記念日月間だ。匹の犬たちはどちらも11月に家族に迎えた。
シェルター出身の保護犬であるうちの犬たちの正確な誕生日はわからないので、わが家にやって来た日は推定で決められた便宜上の誕生日よりも大切な日だ。
その記念日も今年は先住犬のニコが11回目、後から来たニヤが9回目を迎えて、重ねた月日の分だけズシリと重みを増してきた。


しみじみとありがたいことだと思うのだが、うちの犬たちは今のところ大きな怪我や病気をしたことがない。
だから差し迫った危機感とともに彼らを失う恐怖を感じたことはまだない。
それなのに心のどこかで漠然と「あとどのくらい一緒にいられるだろう」と逆算しているところがある。

思えば、11年前に推定生後6ヶ月のニコを迎えた時に「さあ、これから15年(いや18年くらい?いやいや20年でもいいな、なんて思いながら)責任重大だねえ」と家人と笑いあった時から、心のすみっこの逆算時計は動き出していたのだろう。

犬が若いうちは、そんな漠然とした思いなど気にも留めずに過ごしていたものだ。けれどこの数年のうちに、いつもの公園や散歩コースで知り合った犬たちの訃報を聞くことが増えていった。訃報だけでなく、病気の治療の話、手術や安楽死の決断などのシリアスな話題もよく耳にする。そんな時には「自分だったらどうするだろう?」と頭の中で様々なシミュレーションをして、真剣に考え込むことも多い。
訃報や闘病の話に触れて、自分に引き寄せて考える機会をもらうことは私にとってはとてもありがたいことだ。
何かしらの決断をして、その話をする飼い主さんを見ていると、愛犬のために真剣に考えて出した結論はどんな結果であれ正解なのだと思う。

他の人の経験に触れ、自分も大好きだった馴染みの犬たちが目の前からいなくなる経験を繰り返して、少しずつ心の準備が始まっている。
一方で、どんなに手を尽くしてもどんな選択をしても、犬たちを見送ったあとには必ず後悔が残ることもわかっているし覚悟もしている。

犬と暮らすことは、いつも心のすみっこで見送る時のことを考えて準備しながら生きているようだとよく思う。おかしな習慣だとも思うけれど、犬を残して自分が先に行くわけにはいかないので、それでいいのだ。

心のどこかでいつも見送る準備をしていると言っても、決して後ろ向きにウジウジしているわけではない。
記念日のズシリと来る重みも心地良く、犬と一緒に過ごす時間はどんな時も幸せだ。むしろ心の中の逆算時計のおかげで、今手の中にある幸せをいっそう強く噛み締めていられる。

Stop and smell the rosesという言い回しがある。直訳すると「立ち止まってバラの香りを感じよう」だが、「少し肩の力を抜いて、人生の美しい部分に感謝して楽しもうよ」という意味で使われる。
私にとってはまさに犬と過ごす時間を表すような言葉だ。

顔に白いものが目立ち始めた犬たちと過ごすなんでもない日常は、感謝して思い切り楽しむべき人生の美しい部分。

バラの香りよりも、ポップコーンみたいなあの匂いの方が幸せのイメージが強いのは犬バカゆえ。

「Stop and smell the paws 立ち止まって、肉球を嗅ごうよ。」

2019/01/05

繋がれて生きる犬

2016年に書いた記事の再掲載です。

自分が住んでいる場所の関係で、アメリカの動物保護活動や法律についてコラムにすることが多いのですが、何度もしつこいくらいに書いているとおり、アメリカは決して動物保護の先進国ではありません。

けれども、動物保護活動ということに関しては実にユニークな多様性があると常々感じています。
色々と事情や環境が違うので、今すぐ日本で取り入れることはできなくても「こういう視点もあるんだ」というウェイクアップコールになればいいなと思って、紹介する記事を書いています。

このDDBという団体もユニークな活動をする団体のひとつです。
寄付金を集めて大きな施設を作り、犬をただ引き取り続けることを動物保護活動だと考える人が増えて欲しくない、そんな思いを込めての再掲載です。



(photo by vicart26 )


(以下dog actually 2016年9月5日掲載記事より)

インターネットで、写真にちょっとボケたセリフを付けて楽しむお笑いサイトがありますね。先日「犬のお笑いセリフ」というのが目に入ったので覗いてみたら、ほとんどは楽しく笑わせてもらったのですが、ひとつ「ふーむ、やっぱりそうか。」と考え込んでしまったものがありました。

それは、ちょっと嫌がる様子の柴犬の両前足を飼い主が軽く握っている写真に「大丈夫だよ。隣のドーベルマンは繋いであるから怖くないんだ。さあ散歩に行こう。」というセリフのついたものでした。

ドーベルマンが怖い犬のアイコンになっていること、そしてそのドーベルマンは庭先に繋がれているという前提が当たり前に笑いのネタになっていること。多分、犬と暮らしていない人が作った作品なのだろうなと思いつつ「犬は繋いで飼うもの」という考えは未だに一般的なのだと改めて感じた次第です。

私が住んでいるカリフォルニア州では、3時間以上連続して犬を繋いだり、クレートに閉じ込めておくことは州法で禁止されています。ですから近所では、庭仕事をする飼い主さんを木陰に繋がれて眺めている犬をたまに見かけるのがせいぜいです。
とは言っても、すべての人が法律を守るわけではないし、そもそもそういう規制のない州や自治体も多くあります。地域によっては庭に小さな小屋と鎖に繋がれた犬がポツンと1日中過ごしている光景が珍しくないこともあります。そういう繋がれて孤独に生きる犬たちを助けようというNPO団体と、その活動を紹介したいと思います。

団体の名はDogs Deserve Better(=犬たちはもっと良い暮らしに価する。以下DDB)DDBの活動は2002年、最初の犬を鎖から解放したことから始まります。
DDBのメインの活動は鎖に繋がれた犬の生活を、もっと犬らしいものに改善することです。DDBの救済の対象となるのは、24時間外に繋ぎっぱなしで散歩にも連れて行ってもらっていない犬たちです。屋外で暮らしていても暑さ寒さをきちんと防ぐ犬舎があり、フェンスに囲われた庭で運動をしているような犬は対象外です。

彼ら自身の調査活動や近隣住民の通報などから、つなぎ飼いの犬の飼い主の元に出向き、説得をすることから活動は始まります。庭にフェンスがないので繋いでおかなくては仕方がないという場合には、フェンスを提供して少なくとも庭のフェンス内では犬が自由に動けるようにする場合も多々有ります。躾が出来ていないので家の中に入れられないという場合にはハウストレーニングを1から提供し、適切なトレーニングと運動を指導します。

(photo by BlazingFirebug )

犬を屋外でつなぎ飼いしている家庭では、多くの場合犬にほとんど医療費をかけておらず、避妊去勢手術も施されていません。
低料金の避妊去勢手術、無料の健康診断とワクチン摂取の提供をする場合もあります。これらの資金はすべて団体への寄付金で賄われています。(多くの犬はフィラリア陽性と慢性の関節炎に侵されています。)

こういった直接のレスキュー活動だけでなく、さまざまなイベントを通して地域への啓蒙教育活動も行っています。犬は群れで生きる社会的な生き物です。飼い主である人間とも他の犬ともほとんど接触せずに繋がれたままの生活は犬としてあるべき姿とはかけ離れています。また全く社会化されないままにストレスを溜め込んだ犬は、咬傷事故を起こす可能性がたいへん高く危険な存在でもあります。

アメリカ疾病予防管理センターの統計では、つなぎ飼いの犬による咬傷事故件数は、つながれていない犬の2.8倍にのぼるとされています。「犬のつなぎ飼いは誰のためにもならない」という基本的な教育を広めていくことは時間はかかるけれど、社会にとっても犬にとっても確実に効果が望める方法です。
難しいことは置いておいて、群れのメンバーであるはずの家族から離れたところで、撫でられもせず楽しいことも目新しいこともなくポツンと繋がれて生きることの辛さを想像しただけで、それが間違っているってわかりますよね?と私は言いたい。
DDBでは「近所でつなぎ飼いの犬を見かけて、何とかしたいと思った時のために」として、メッセージを書いたドアハンガーやチラシなども準備しています。DDBに直接出向いて説得して欲しいとリクエストがあった場合にも、犬の飼い主には通報者の名前は伝わらないようになっています。

DDBの説得を受けて「それならもう犬はいらない」と犬を手放す飼い主も珍しくはないようです。その場合は犬を引き取って、必要な医療処置を全て施した後で新しい家族を募集します。
引き取られたラッキーな犬たちはThe Good Newz Rehab Centerという広大な敷地の施設で、リハビリを受けながら新しい家族を待っています。
実はこの施設、プロフットボール選手のマイケル・ヴィックがヤミ闘犬と動物虐待を行って大きなニュースになったその場所です。
悪名高き「訳あり物件」となっていた敷地を買い取って、犬のリハビリ保護施設にするとは心憎いですね。

日本でも、犬は室内で飼うことがかなり浸透してきていますが、暑い日も寒い日も家の外で鎖に繋がれている犬の姿も地域によっては多く見受けられます。
外飼いで避妊去勢の処置もされていない犬は、行く先もないままに生まれてきて殺処分や野犬となる犬の原因のひとつです。
DDBには日本の動物保護について、行政が参考にするべき点があるのではないでしょうか



【参考サイト】

2018/12/27

年末のご挨拶と来年の所信表明



なんと!前回の更新が9月30日という、とんでもないご無沙汰ぶりです。

締め切りのあるものが優先になってしまって、Dogs in the U.S.がついつい後回しになっておりました。

書きたいことは色々あるので、来年は無理のない範囲でもう少し頻繁に書いていけたらと思っています。


元々このブログは閉鎖になってしまったdog actuallyにアップしていた私の記事を再掲載するという目的で始めたものです。

dog actuallyの記事は自分にとっては思い入れのあるものですが、再掲載に当たって読み返していると「今これを再掲載する意味があるだろうか?」と感じたものも少なくありませんでした。

昔、会社で仕事をしていた時に毎日毎日新聞やら企業レポートやらを読みまくって情報武装に明け暮れていました。一方で何度も言われていたのが「情報は出した瞬間から腐り始める」というものでした。

ビジネスの世界の情報の速さは確かにその通りの印象でした。
犬に関する情報はそこまで極端ではないものの、やはり他の全ての情報と同じように賞味期限があります。

どんなに時間が経とうと変わらない核の部分というものはあります。例えば「ブランベルの5つの条件」などがそうですね。

けれど犬の行動学や栄養学、トレーニングの方法などは研究が進めば見直されて変わって行く部分もありますし、動物保護の世界や法律などは時代に合わせて変化していきます。

そのような中、古い情報の再掲載をすることに「ちょっと違うかもしれないな」という思いが強くなっていたことも、更新が滞っていた理由の一部ではあります。



来年は、過去記事の掲載と共に「アメリカの犬たち」という部分をより意識した文章を書いて行きたいと思っています。

とは言っても、日本語で書く媒体ですから日本の皆さんに楽しんでいただけることは大前提です。

以前にガジェット通信で書いていた『犬おぼえがき』のようなエッセイもこのブログに時々書くつもりでおります。
覚えておきたい犬の思い出が頭の中にいっぱいになってきたから、アウトプットしておきたいという思いがあるので。

「所信表明」なんて大仰なタイトルをつけてしまいましたが、このブログに関する来年の心づもりです。

2018年も読んでくださってありがとうございました。

来年もSMILES@LA共々、どうぞよろしくお願い申し上げます。

2018/09/30

FDA警告とグレインフリーフードと心臓病


(image by GDJ )

2018年7月にアメリカ食品医薬品局(FDA)が発表した「獣医療機関から犬の拡張型心筋症(DCM)の症例が増えていると報告が届いている。患者の犬に共通していたのは、エンドウ豆、レンズ豆、ひよこ豆その他豆類やポテトを主原料とするフードを食べていることだった」という警告が出されたことはご存知の方も多いかと思います。

この件はアメリカでも大きな騒ぎとなり、ドッグフード市場はちょっとしたパニックに陥りました。

上記原材料はグレインフリー(穀物不使用)フードに使われていることが多いため「グレインフリーのフードを食べると心臓病になる!」と言うヒステリックな情報が飛び交いました。

日本でもFDAの最初の警告は犬関連のサイトなどで取り上げられましたが、その後の追加など詳細は届いていないですよね?
もっと早くに紹介できれば良かったのですが、なかなか手が回らず遅くなってしまいました。

前回の記事で紹介した「犬と炭水化物」についての考察を書かれたリンダ・ケイス氏の書かれた文章とFDAの追加情報をベースに、私の考えたところも交えて書いていきます。


最初にクリアにしておきたいこと

  • 最初の警告には「エンドウ豆、レンズ豆、その他の豆類、ポテト、これらのたんぱく質、デンプン、繊維などの成分が原材料一覧の前半に多く列記され、それらが主成分であることを示しているフード」と書かれており、グレインフリーのフードという言葉は出て来ていません。
  • さらにFDAは上記原材料と拡張型心筋症(DCM)の因果関係についても「今の所わからない」と発表しています。
  • FDAは最初の発表では症例の件数に言及していませんでしたが、のちに「最初の発表時には犬30件猫7件の心臓病が散発的に報告された」と述べています。また獣医学心臓医のコミュニティでは約150件の報告が寄せられているとのことです。
  • FDAの発表では具体的なメーカーやブランド名については一切触れられていません。

注目すべきはグレインではなくタウリン

FDAの最初の発表の後、アメリカの犬ブロガーや獣医師が無分別に「グレインフリーのフードが危ない」と書き立てたために、大げさ過ぎたり不確かだったりする情報が独り歩きしています。

リンダ・ケイス氏は犬情報サイトWhole Dog Journal に、この拡張型心筋症と食餌の関連について詳しいレポートを寄稿しています。
私がここで書いていることはケイス氏の記事から得た知識や情報を参照しています。彼女の書いたものが、たくさん読んだ記事の中で最も冷静で、過去の研究で明らかになっていることをベースにしており、公平だったからです。
また、自分自身がFDAの発表を読んだ時に感じたり考えたりしたことと共通する部分もありました。

今回FDAが特定の原材料とDCMの関連を取り上げていますが、DCMにはタウリン欠乏症が大きく関係しています。
簡単に言えばタウリンが欠乏すると心臓は健康な機能を保てなくなります。
今回FDAに報告された犬も血中のタウリン濃度が低下している犬が多く、タウリンの補充が有効だったことが判っているそうです。

実はドッグフードの原料とタウリン欠乏症の関連については、過去にも取り上げられ因果関係が明らかになっているものも多いそうです。
それを元に考えると、今回の豆類やポテト類のことも見えてくることがあります。

                              
(photo by ulleo )



タウリンの再利用、タウリンの排出

タウリンというのはアミノ酸の一種ですが、多くの場合は肉類に含まれているシステインとメチオニンという2種類のアミノ酸を使って体内で合成されます。

過去15年間で、犬のタウリン欠乏については「ラム&ライスフード」「大豆をベースにしたフード」「米ぬか(ライスブラン)」「ビートパルプ」「高繊維フード」との関連が取り上げられています。


「ラム&ライスフード」については、原材料のラムミール(ラム肉ではない。ラムの枝肉から人間用の食肉を取り分けた後の、肉・骨・腱・脂肪などを細かく挽き加熱〜乾燥させたもの)の加工の過程でタンパク質が高温加熱で損傷し、システインとメチオニンがタウリン合成に利用できない状態になったと推測されています。(推測であって、証明
はされていない)またタンパク質を高温加熱した時に発生する物質はタウリンを分解する腸内細菌を増加させることが判っています。

大豆をベースにしたフードは、脱脂大豆をタンパク源として使っているフードです。肉や魚には天然のタウリンが含まれていますが植物性のタンパク質にはタウリンは含まれません。


また体内に取り込まれたタウリンは胆汁と結合して小腸に分泌され消化活動を助けるのですが、そのタウリンは本来はまた体内に戻って再利用されます。しかしその時に腸内に米ぬか、ビートパルプ、セルロース(不溶性食物繊維)が大量にあると、タウリンを便と一緒に排出してしまいます。これらの繊維源が低タンパク質のフードに含まれると犬の血中タウリンレベルを低下させることは、最近の研究で明らかになっているそうです。


これらのタウリン欠乏を起こさせると考えられる要因は複雑に絡み合っており、単純に「ラム&ライス」のフードを食べると心臓が悪くなる!というものではありません。ここに遺伝的な要素や、犬種特有の体質なども加味されて疾患へとつながるので、単純に「〇〇が含まれるフードはダメ」という主張は意味がないわけです。


今回FDAが問題にした原材料では、エンドウ豆やレンズ豆は植物性タンパク質が豊富な食材です。ですからこれらが多く含まれ、その分肉や魚が少ないフードではタウリン欠乏の一要素になり得ます。
またエンドウ豆、レンズ豆、ヒヨコ豆、その他豆類はどれも不溶性の食物繊維が豊富でもあります。
FDAが発表したリストの中のポテトにはジャガイモだけでなくスイートポテトも含まれます。スイートポテトも食物繊維が豊富な食品です。ジャガイモは不溶性の食物繊維はそれほど多くありませんが、含まれるデンプン質の一部が犬には消化しにくく食物繊維と似た働きをするのだそうです。

しかし、原材料一覧にこれらの食材が含まれていれば全てが危険というわけではありません。これらの原材料が使われているが、動物性のタンパク質も複数の種類が多く使われているフードや、問題の材料が使われてはいても原材料一覧の下位にある場合にはそれほど心配する必要はないと思われます。


グレインフリーに罪はない?


(photo by MartinPosta )

FDAの発表があった後、(あまり質のよろしくない)ブロガーや、フードや食事に関する知識があるとは思えない獣医師が「グレインフリーのフードは危険」と騒ぎ、中には特定のメーカーやブランドを非難する文章がネット上に溢れました。

そして非難されるメーカーやブランドは決まって小規模に高品質フードを作っている会社でした。


しかし、この騒ぎの最中にスーパーやペットショップで目につくフードの原材料一覧を片っ端から読んでいくと、グレインフリーのプレミアムフードどころか、動物性タンパク質が極端に少ないようなタイプのフードにも豆類やポテトが使われているものがたくさんありました。

また、FDAにDCMの症例が増えていると報告を出したのは心臓専門医を多く抱える循環器系専門病院でした。愛犬にそのような高度医療を受けさせる飼い主がグレインフリーのプレミアムフードを食べさせていても何の不思議もないのでは?と私は感じています。
(グレインフリーが本当に良いかどうかは別として)
反対に、スーパーで山積みになっている超低価格フードを食べている犬が心臓を悪くしても、気づかれることなく「寿命かな?」と亡くなっていくことがあっても不思議ではないと思うのです。
経済的なことを言うのは嫌らしい感じがしますが、統計を取ってみるとそうなるのではないかなと言う推測です。

しかし、そもそもグレインフリーが今までもてはやされて来たことには私は疑問を感じていました。犬は何千年にも渡って人間から穀物を与えられていたはずだからです。

......というわけで、豆類やポテトが含まれることが危険というわけではなく、フードの原材料一覧をよく見てバランスを考えてみてください。

そして、該当するフードを食べていても食べていなくても、何か具合が悪そうなことがあれば、迷わず病院に行ってくださいね。


《参考URL》











2018/09/05

犬と炭水化物、ブログThe Science Dogより


(photo by 137859 )


犬の食餌のことを考える時、手作りであれドッグフードであれ、常に悩ましく論争になりがちな問題のひとつが『炭水化物=でんぷん質』ですね。

「犬は本来肉食なのだから炭水化物は必要ない」「肉食である犬に炭水化物を与えることは体の負担になる」こんな意見もあれば、また一方で「犬は人間と長い年月一緒に暮らす間に炭水化物を消化できるように進化して来た」「エネルギー源としての炭水化物はある程度必要」という意見もある。

私はうちの犬たちには、炭水化物は常に与えて来ました。長い年月の間に何度か「え、やっぱりあんまり食べさせないほうがいいのかな?」と迷って炭水化物を減らし、犬たちの体重を適正に保てなかったこともありました。

そんな紆余曲折を経て、自分自身の中では結論が出ているのですが、この論争は相変わらずあちこちで火の手を上げています。

つい先日、普段よく読んでいるブログに「なるほど」と思った記事に出会いました。
ブログの名はThe Science Dog 著者はリンダ・P・ケイス氏、ドッグトレーナーで獣医学栄養士でもありサイエンスライターとして犬のトレーニングと栄養学について多くの記事を書いている人です。
(アメリカでの獣医学栄養士は、獣医師の資格を得た後にさらに大学で教育を受けて学位を取得しなくてはいけない難易度の高いものです。)

ケイス氏の文章を以下にまとめてみましたのでご覧ください。


(photo by Ella87 )


「犬と炭水化物」

このテーマが引き合いに出される時、必ず上がる2つの主題があります。

『犬は肉食動物であり、食餌に炭水化物は必要ない』?

この主題の前半は間違い、後半は本当です。
犬は雑食性の動物です。犬と雑食という言葉はしばしば議論の火元となりますが、雑食というのはただ単にその生き物が動物由来のものと植物由来のものを食べ、その両方から必要な栄養素を摂取できるという意味です。


「雑食性」という言葉は、犬が捕食者ではないとか、肉を食べることを好まないという意味はありません。肉からも野菜からも栄養素を得ることができる身体能力だけを表します。


後半部分に移りましょう。これはその通り、犬は栄養学的には炭水化物を摂取する必要はありません。
しかし調理済の炭水化物はとても消化の良いエネルギー源となり得ます。これはつまり犬の食餌に炭水化物が含まれているとそれがエネルギー源に回され、食餌中のタンパク質はエネルギー源となる必要がなくなり、身体組織の構築や修復、免疫系の支援のために利用できることを意味します。
したがって犬の食餌に一定の量の炭水化物が含まれることにはメリットがあると言えます。

 『犬は効率的に炭水化物を消化することができない』?

これは明らかに間違いです。犬は人間と同様に調理された炭水化物を効率よく消化します。

米、麦、トウモロコシなどを挽いて生の状態で犬に与えたときの消化率は約60%ですが、同じものを加熱調理した場合は消化率は100%近くまで上がります。


犬と炭水化物の消化については、2013年にスウェーデンのウプサラ大学のエリック・アクセルソン博士が、家畜化に関連する犬の遺伝的な変化を明らかにした論文を発表しています。


キーとなるのはAMY2Bと命名された遺伝子です。この遺伝子のコピー数は、膵臓で分泌するデンプン分解酵素の膵アミラーゼと関連します。
単純に言ってしまうと、AMY2Bという遺伝子のコピー数が多ければ、膵アミラーゼの分泌も多くなり、より高い炭水化物の消化能力を持つということです。
平均すると、犬のAMY2B遺伝子はオオカミの約7倍も多いことが判っています。人間が調理した穀類を食べ、犬がその残飯を食べていたことから、犬の身体は炭水化物を消化しやすい形に進化していったのだろうと考えられています。

このように、犬は炭水化物を消化吸収することができ、かつ炭水化物を摂取するメリットもあります。
しかし、それは犬が炭水化物の割合が高い食事を摂る方が良いということではありません。


ではどんなバランスの食餌が犬にとって理想的なのか?

近年の栄養学では、多くの鳥類、魚類、哺乳類など幅広い種の生き物が、たんぱく質・脂肪・炭水化物が一貫して含まれる食べ物を自ら選択し、健康に最適と思われる摂取量を調整してバランスを取っていると言われています。

犬よりも先に研究されたイエネコの場合、猫たちは一貫してタンパク質と脂肪が多く炭水化物が少ない食事を選択することが判明しました。これは野生のネコ科動物と一致しています。

犬の場合、自主的に食べ物を選択させると脂肪およびタンパク質が多く炭水化物が少ない食事を選びました。
エネルギー量の割合で言えば、犬の選択は30〜38%のタンパク質、59〜63%の脂肪、3〜7%の炭水化物でした。ただし、実験開始当初はこのように高脂肪の食餌を好んだのですが、数日のうちに脂肪の割合が減りたんぱく質の割合が増えていきました。

犬が食事の栄養素の割合を選択できるようにする実験を10日間行った時、彼らはカロリーを過剰に摂取する傾向があり、平均すると10日間で約1.5kgの体重の増加があったそうです。


また、同じことをオオカミで実験すると炭水化物が1%しかない食べ物を選んだということです。




総合すると......

  • 犬は先祖のオオカミ(および現代のオオカミ)と比べて、炭水化物をよりよく消化することができます。
  • この消化能力のアップは、遺伝子の変化で膵アミラーゼ(消化酵素)の産生が増えたことも一因です。
  • そのため犬は調理された炭水化物を非常に効率的に消化します。
  • 犬の食生活に一定レベルの炭水化物を含めることは、効率の良いエネルギー源となり、タンパク質の有効利用にもつながります。
  • 犬は選択肢を与えられると、炭水化物が少なくタンパク質と脂肪が多い食事を優先的に選択します。このタイプの食餌を制御なしの自己選択で与えた場合、過剰消費と体重増加につながる可能性があります。




しかし、上記の情報のいずれも「犬が炭水化物を摂取しないこと」または「犬が一定量の炭水化物を摂取すること」が、犬の活力、健康状態を維持する能力、慢性的な健康問題の発症や寿命の長さになんらかの影響を与えるという証拠にはなりません。

また犬がタンパク質や脂肪が多く炭水化物が少ない食事を好むという事実は、そのような食餌がより健康的であるとか病気を予防する証拠であると混同してはなりません。
現時点では、私たちは単に知らないのです。

以上、緑の字の部分がケイス氏のブログを要約したものです。
「犬と炭水化物」について、きちんと判明していることと、未だ判っていないことがはっきりと述べられているので、情報の整理にも役立つのではないかと思います。

犬は他の動物に比べてあまりにも長く人間と一緒に暮らしているので、犬たち自身も食べ物の理想のバランスには自覚がないように見えますね。

この記事に先駆けて再掲した「犬に穀物、与えるべきか?避けるべきか?」を最初にdog actuallyにアップした時SNSなどで「だから結局どっちなの!?」というコメントがいくつか付いたことがありました。

でも生き物の体の問題は白か黒か、ゼロか100かでスパッと割り切れるものではないのです。
ケイス氏の文章はそのことをよく表していると思います。

やたらと炭水化物の割合が高い市販のフードも、「犬に炭水化物?とんでもない!」という極端な意見も、個々の犬に目を向けることを忘れている気がします。



下のリストはケイス氏が参照した論文です。興味のある方は読んでみてくださいね。

参照 The Science Dog ~Dogs and Carbs, Its Complicated 


  1. Axelsson E, Ratnakumar A, Arendt ML, et al. The genomic signature of dog domestication reveals adaptation to a starch-rich diet. Nature 2013; 495:360-364. https://www.nature.com/articles/nature11837
  2. Arendt M, Fall, T, Lindblad-Toh K, Axelsson E. Amylase activity is associated with AMY2B copy numbers in dogs: Implications for dog domestication, diet and diabetes. Animal Genetics 2014; 45(5):716-22. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24975239
  3. Arendt M, Cairns KM, Ballard JWO, Savolainen P, Axelsson E. Diet adaptation in dogs reflects spread of prehistoric agriculture. Heredity 2016; 117(5):301-396. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27406651
  4. Reiter T, Jagoda E, Capellini TD. Dietary variation and evolution of gene copy number among dog breeds. PLOSone 2016; 11(2):e0148899. https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0148899
  5. Hewson-Hughes AK, Hewson-Hughes VL, Miller AT, et al. Geometric analysis of macronutrient selection in the adult domestic cat, Felis catus. Journal of Experimental Biology 2011; 214(Pt6):1039-51. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21346132
  6. Hewson-Hughes AK, Colyer A, Simpson SJ, Raubenheimer D. Balancing macronutrient intake in a mammalian carnivore: disentangling the influences of flavor and nutrition. Royal Society of Open Science 2016; 3:160081. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27429768
  7. Hewson-Hughes AK, Hewson-Hughes VL, Colyer A, et al. Geometric analysis of macronutrient selection in breeds of the domestic dog, Canis lupus familiarisBehavioral Ecology 2013; 24(1):293-304. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23243377
  8. Roberts MT, BErmingham EN, Cave NJ, Young W, McKenzie CM, Thomas DG. Macronutrient intake of dogs, self-selecting diets varying in composition offered ad libitum. Journal of Animal Physiology and Nutrition 2018; 102(2):568-575. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29024089

従来の不妊化手術と性腺温存型不妊化手術を比較

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