2017/05/24

優良犬市民検定(ゆうりょういぬしみんけんてい)

初出はdog actually 2011年5月9日。日本でもグッドシチズンテストという名前で同様のテストがあることを知ったのは、この記事を書いた後のことでした。

日本でのテストは社団法人優良家庭犬普及協会が運営する認定試験で、日本の家庭犬向けにアレンジされています。

テーマに選んだCANINE GOOD CITIZEN TESTのことを知ったのは自分のブログであるSMILES@LAでも紹介したジム・ゴーラント著The Lost Dogsを読んだのがきっかけ。
本の主人公である、マイケル・ヴィックの元から保護されたピットブルたちが一般家庭に譲渡されるための条件のひとつが、このテストに合格することというものでした。
ちょっと本題から逸れてしまうけれど、このThe Lost Dogsは私の中のベストのひとつで、dog actuallyの記事を書く上でも大きな影響をくれた一冊です。


(以下、dog actually 2011年5月9日掲載記事より)


本日のタイトル、「なんだそれは?」と思われたかもしれませんね。これは私が勝手につけた日本語訳で、今日ご紹介しようと思うCANINE GOOD CITIZEN TEST(CGCテスト)のことです。
CGCテストは、アメリカンケネルクラブ(AKC)が「全ての犬が地域に受け入れられるための良いマナーを身につけられるように」という目的で作ったプログラムの一環です。犬の飼い主にとっての躾や訓練の指針となり、犬がどのように振る舞うべきかの基準となっています。
テストを受けるためには、AKCが開催するCGCテスト対策教室に参加してトレーニングを受けるか、しかるべきトレーナーについて訓練を受けます。 飼い主さん自身にスキルがあれば、自分で訓練をしてもかまいません。そうしてテストを受ける準備が整ったと思ったらAKCに受験の申し込みをします。テス トは会場に集まって行われる場合もあれば、試験官が公園等の指定の場所に出向いて来てくれて個別に行われる場合もあり、地域によって様々です。テストに合 格すれば、立派な合格証書が送られて来ます。
このCGCテストは色々な場面で、犬の行動と飼い主の資質を判断するための基準に使われていま す。例えば、多くのセラピードッグの訓練団体は訓練を受けるための前段階として、CGCテストに合格していることを条件にしています。またアパートなどの 集合住宅で犬を飼う場合、CGCテストに合格している犬のみOKという例もあります。持ち家の住宅保険でもテストに合格していれば保険料の割引があるとい う会社もあるようです(ただし、これらのアパートや住宅保険に関してはかなり進歩的な例です。実際には単純に犬種によって入居を断られたり、保険加入を断 られたりする例も多々あります)。
これら民間の事柄だけでなく、公的機関でもこのテストを犬を判断する際の基準に取り入れています。例をあ げれば、2007年に全米を驚愕させたNFLのスター選手マイケル・ヴィックが違法闘犬と動物虐待で逮捕された事件で、保護された元闘犬達を保護団体から 一般家庭に譲渡する際、裁判所から出された条件として、CGCテストに合格させることというものがありました。このテストはそれほどに信頼され、権威のあ るものなのです。
試験の内容を具体的に紹介しましょう。日本で犬と暮らしている方々にも参考になる部分が多くあるかと思います。
まず、テストを受ける前に飼い主さんは「責任ある飼い主としての誓約書」にサインをしなくてはなりません。飼い主としての責任は、犬を家族に迎えるという気持ちを持ったところからもう始まっています。
誓約書の内容は次のようなものです。

私は下記のことを含む犬の健康に関して責任を持ちます

  • 定期的な健康診断とワクチン接種
  • 適切な栄養の食餌と清潔な水
  • 毎日の運動と定期的な入浴やグルーミング

私は犬の安全に関して責任を持ちます

  • 適切な高さのフェンス等で犬を管理し、公共の場ではリードを使い、自由に走り回らせることはしません
  • IDタグ、タトゥー、マイクロチップなどで犬の身元が確実にわかるようにしておきます
  • 犬と子供が同席する場合には常に監視下に置くようにします

私は自分の犬が他者の権利を侵害することを看過いたしません

  • 近所を自由に走り回らせることはしません
  • 庭やホテルの部屋などで他者の迷惑となる吠え行為をさせません
  • ホテル、路上、公園等公共の場では必ず犬の排泄物を拾い、処理します
  • ハイキングエリア、キャンプ場など自然環境の中においても必ず犬の排泄物を拾い処理します

私は犬の生活の質に関して責任を持ちます

  • 基礎的な訓練は全ての犬にとって利益をもたらすことを理解します
  • 自分の犬に適切な配慮と遊び時間を確保します
  • 犬を飼うということは時間と手間をかける義務と覚悟が必要なことを理解します


そしてテストの内容は以下の通り。全てのテストはオンリードで実施されます。
テスト1:好意的な他者を受け入れること
他者が日常的なシチュエーションでハンドラー(飼い主)に話しかけて来る事を受け入れるか。
テスト2:静かに座って撫でられること
ハンドラーと一緒にいる時に、好意的な他者に撫でられる事を受け入れるか。
テスト3:検査やグルーミング
獣医師やグルーマー等から検査やグルーミングを受ける事を進んで受け入れるか。
テスト4:屋外での歩行
短距離の歩行で、リードが弛んだ状態で犬をコントロールして歩く事ができるかどうか。
テスト5:人混みでの歩行
最低3人以上の人間が立っている場所を、静かにコントロールされた状態で歩く事ができるかどうか。
テスト6:座れと伏せのコマンドとその場で停止すること
ハンドラーの座れと伏せのコマンドに従うことができるか。さらにハンドラーの指示でそのままの姿勢で停止することができるか(停止は座れでも伏せでも、どちらでも良い。)
テスト7:呼ばれれば来ること
約3m離れた所からハンドラーに呼ばれた時に、ハンドラーの所に来る事ができるか。
テスト8:他の犬に対しての反応
他の犬に対して礼儀正しく振る舞う事ができるか。
テストは2組の人/犬のチームが、約6m離れたところで人間同士が互いに手を振り挨拶を交わす。同様に約3mの距離でも同じ事をして犬の反応を見る。
テスト9:騒音などに対しての反応
試験官が2種類の騒音や状況を選んで、犬が怯えたりパニックになったりせずに平静でいられるかを観察する。騒音の例は太い鎖を地面に落とす音、犬の横で台車を押す、杖を倒す音、また時には犬の側で人間がジョギングをして反応を見る事もある。
テスト10:飼い主以外の信頼できる人間といる時の態度
試験官がハンドラーから犬を預かりリードを持った状態で、飼い主は犬の視界から3分間姿を消す。その間静かに礼儀正しく待っていられるかどうか。
飼い主心得と言い、テストの内容と言い、これらが全て実践されていたら素晴らしいだろうなあと軽くため息が出ます。つまり、実際のアメリカの犬事情も決して理想的とは言えないわけです(少なくとも私の知っている限りでは。郊外の住宅地である我が家の近所はザッと見た感じで6-7割の家が犬を飼っているように思いますが、きちんと犬をコントロールして歩いている飼い主さんは大体半分くらい。統計をとったわけではなくて、私が日々感じているだけですが)。
せっかくの良いプログラムなので、必ずしもテストを受けなくても、この精神がもっと普及すれば良いなと願う次第です。

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