日本とは事情が違うので話のタネにお楽しみくださいという部分と、国を問わず参考になる部分があるので、それぞれのスタンスでお楽しみいただけたらと思います。
(以下 dog actually 2011年7月18日掲載記事より)
(photo by Amy Gahran )
アメリカで最も迷子の犬が増える日、それは7月4日の独立記念日です。どこの州のどの街でも大きな花火大会が催され、個人でもロケット花火などで大騒ぎする人が増えるこの日は臆病な犬達にとっては受難の日。さらにパーティーなどで飼い主さんの注意が甘くなるのも手伝って、花火の音に驚いて家を飛び出してしまい、迷子になってしまうというわけです。
日本でもこの時期は雷や花火大会などがあり、窓や玄関が網戸だけになることも多いので、やはり迷子犬が増えてしまうのではないでしょうか。
さて、アメリカにはそんな迷子のペットを探すスペシャリストが多く存在します。料金を受け取って捜索をする会社もあれば、ボランティアで捜索を請け負うNPO団体もあります。今日はそんなNPO団体の1つ、Missing Pet Partnershipをご紹介いたします。
Missing Pet Partnership(以下MPP)はワシントン州はシアトルにほど近い、フェデラルウェイという街で2008年に設立された団体です。創設者で代表のカット・アルブレヒトさんはカリフォルニアで警察犬の訓練やハンドラーを担当する警察官でした。ある時、警察犬の一頭が行方不明になった時、他の警察犬を使って捜索をしたのをきっかけに、迷子のペットを探す犬の訓練を思いついたそうです。
迷子のペットを探し出すことは、当事者の犬と飼い主さんはもちろんのこと、ペットが野生化してしまったり、繁殖してしまったりすることを防ぐという社会全体にとっての利益であるという意識がMPPの活動のベースになっており、団体の活動はすべて寄付金によって運営されています。
MPPでは犬だけでなく、迷子ペットの捜索をする人間のトレーニングも行っています。飼い主さんから依頼を受けて最初に動くのは犬達ではなくて、トレーニングを受けたボランティアの方々です。まず最初はペットがいなくなった地域の主要な交差点などに派手なネオンカラーの大きなポスターをいくつも貼付けます。一般によく見かけるのはA4サイズの用紙に印刷された張り紙ですが、これは多くの場合人の目に留まることなく見過ごされてしまいます。特大サイズのネオンカラーのポスターは人目を引く確率が格段に高いため、これだけで迷子ペットの目撃情報が寄せられ発見に至る例も多くあるそうです。その他に野生動物監視用のカメラを設置したり、安全な捕獲用トラップを設置したりして、ペットの捜索にあたります。
このような策を講じても迷子のペットが見つからない場合、捜索犬の登場となります。
ペット捜索犬は3つのカテゴリーに分けられています。
まずは「迷子猫捜索犬」。猫の捜索を専門にする犬達です。猫捜索犬は、捜索エリアの中でとにかく片っ端から猫を見つけ出していくように訓練されています。特定の迷子猫の匂いを追っていくのではなく、猫全般の匂いを追って探し出すというわけです。これは特定の匂いを探し出すよりも訓練が容易で捜索犬の育成がしやすいことと、迷い猫の行動の特性も関係します。犬が迷子になった場合、あちこちを動き回ることが多いのですが、迷子猫はたいていどこか家の近所に隠れて身を潜めている場合が多いそうです。ですから、家からあまり離れていない範囲の中で人間では探しにくいような場所を猫の匂いを追って探すだけで見つけることができるというわけです。
そして2番目が「ペットの匂い追跡犬」。迷子になったペットの匂いのついた物を嗅いで、同じ匂いを追跡していくというもの。迷子になった個体そのものを捜索していく方法です。主に犬が対象になりますが、時にはフェレットや馬もこの方法で捜索をします。匂いを追って行って、直接その動物にたどり着くことが出来なくても、動物が移動していった方向を知ることは捜索の大きな助けになります。見当違いな地域ではなく、実際に動物が移動したエリアでポスターやトラップを仕掛けることで、発見の確率は飛躍的にアップします。
3番目は 「2つの目的を兼用する捜索犬」。つまり、猫を片っ端から見つけ出して行く訓練と、匂いを追って行く訓練の両方を受けた捜索犬です。迷子になったのが外飼いの猫だった場合、犬のようにあちこちを放浪する可能性もあり、じっと隠れている猫を探すだけでは不十分なこともあるそうです。その時々で、どちらの能力も発揮できるよう訓練されたのがこの犬達です。
ところで、こうして放浪する犬を発見した時、その犬を捕まえることが第一の目的です。しかし不安な気持ちでいる迷子犬は見知らぬ人に追いかけられれば逃げるのが自然の摂理。迷子犬を見つけたら、追いかけずに食べ物などを見せて呼びかけ、犬の方からこちらに来るように仕向けるのが基本です。
しかし、それがうまくいかない場合に登場するのが、これまた犬なのです。
MPPでは、フレンドリーで多くの犬が尻尾を振って近づいて来るような犬を捜索の最終段階に同行させます。この犬達は「マグネットドッグ」と呼ばれ、迷子犬の警戒心を解き、保護を成功させるのに大きな役目を果たしています。
MPP代表のカットさんは警察犬訓練の経験を生かして、ペット捜索犬の訓練のノウハウをシステム化し、公式な認定証の発行も行っています。そして全米各地のペット捜索ビジネスやボランティアのグループと提携し、情報交換をしています。そして直近ではワシントン州キング郡のアニマルシェルターと提携して、アメリカのシェルターとしては初めての迷子ペット捜索チームを発足させました。彼らはこの動きが全米のシェルターに広がることを望んでいます。
こちらはカットさんが犬達を訓練する様子を紹介した動画です。
最後に、MPPが提唱する「ペットを迷子にしないための注意事項」をあげておきますね。
- マイクロチップを入れておく。
- ネームタグと鑑札のついたカラーは常に着用させておく。カラーは、しっかりした造りのハーフチョークなど、犬が何かに驚いたり怯えたりした時にすっぽ抜けないものを選ぶ。
- 車での移動時はクレートや犬用のシートベルトなどを利用する。
- 最近撮ったペットの写真を用意しておく。グルーミングの前後で見た目が大きく変わる犬は両方の写真を撮っておく。
- 撮った写真はかかりつけの動物病院のカルテに添付してもらっておく。
- 近所の人と顔見知りになっておく。ペットが近所をウロウロしている時、最初に頼りになるのは近所の人達です。そのためにも普段から犬が近所に迷惑をかけないようにしておくことが大切。
- 家の周りのフェンスの高さ、丈夫さをチェックしておく。穴を掘って脱走できないように対策をしておく。
- ドアや門が開いていても逃げていかないよう、呼べばすぐに来るように日頃から訓練しておく。
- ペットの匂いとDNAを採取して保管しておく。殺菌済みのラテックスの手袋などを付けて新品のガーゼで犬の背中、お腹、口を拭って、ジップタイプのビニール袋に入れ冷凍庫で保管しておく。さらに万が一DNA鑑定が必要な場合に備えて、毛根のついた毛と切った爪も別の袋に入れて冷凍庫で保管しておく。
最後の注意事項は日本の状況には当てはまらないかもしれませんね。
「うちの犬は迷子になんてならないから絶対大丈夫」とは決して言えません。日頃からの準備が万が一の時の運命を分けると肝に銘じて、我が家でも再度チェックと気持ちの引き締めです。
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