2018/02/28

ソチの野良犬とオリンピック選手達

前回の冬季オリンピックの時の記事ですねえ。
この記事、2014年の年間の記事の中でもアクセス数が上位のものだったので感慨深いです。多分、犬のこととは別にオリンピックやスポーツファンの人が検索ワードから来てくれたせいでしょうね。


(以下dog actually 2014年3月3日掲載記事より)


By Andrey from Russia (Stray dogs) [CC-BY-2.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/2.0)], via Wikimedia Commons

世界中の人々の様々な思いをのせて、ソチ冬季オリンピックが幕を閉じたのは記憶に新しいところです。ここアメリカでも国に帰ってきた選手達の動向が伝えられていますが、その中でも犬好きの目を引くのは、ソチで保護された野良犬をアダプトしてきた選手達の話です。

ソチの野良犬の問題は、オリンピック開催前から大きく報道されていました。オリンピック施設建設のための宅地整備で引越しをしなくてはならなかった多くの家族が置き去りにしていった犬達が自然繁殖で数が増え、街には野良犬が溢れた状態になっていました。(ロシアでは犬の去勢避妊処置は一般的ではありません)
それでも、あちこちで施設の建設工事が行われているうちは、犬達は作業員の人達から残飯をもらったりして生活していたのですが、工事が終わって作業員がいなくなると犬達だけが残され、さらに収集のつかない状態となりました。ソチ市はオリンピック開催までに野良犬の問題を解決しなくてはと、犬を殺処分して駆除するという手段に出て、世界の多くの動物保護団体から非難の声を浴びることとなりました。
結果、ロシア当局が野良犬の収容施設を作ったことと、ロシアの企業家オレグ・デリパスカ氏が私財を投じて大規模シェルターを作ったことで、オリンピックの開幕前に、野良犬問題はなんとかかんとか形を整えたように見えました。
しかし、犬を飼うと言えば番犬にするのが目的で純血種のジャーマンシェパードやピットブルが好まれる傾向の強いソチにおいて、シェルターで保護されている雑種犬達の貰い手を見つけることは、たいへん難しいのは目に見えていました。そこで地元で犬の保護活動をしている団体は、オリンピックを機に世界中から集まる人々に、ソチの犬をアダプトすることを考えて欲しいと訴えてきました。

そのような状況の中、アメリカ代表のオリンピック選手の中で一番最初に名乗りを上げたのは、スキースロープスタイルの銀メダリスト、ガス・ケンワージー選手でした。

ケンワージー選手は、オリンピックメディアセンターのセキュリティテントの下で暮らしている母犬と4匹の子犬を見つけました。見かねた彼は選手村に5匹の犬を連れて行こうとしたのですが、村への動物の持ち込みは禁止されているため、毎日食べるものを持ってそこに通ったと言います。
しかし、オリンピックが終わりテントが撤去されると犬達の居場所が無くなることに気が気ではなくなった彼は、SNSに子犬達の写真をアップして「この子達をアメリカに連れて帰るにはどうしたらいいだろう?」と問いかけました。多くの反響の中に、前述の企業家オレグ・デリパスカ氏からのコンタクトがありました。デリパスカ氏は、ロシアからアメリカに犬達を輸送するためのワクチン接種や書類の手続きの手助けを申し出てくれました。
ケンワージー選手は帰国を延期して手続きにあたり、5匹の犬達は現在健康チェックの最終段階で、ケンワージー選手のホームタウンのコロラド入りを待っています。
ケンワージー選手の他にも、スノーボードクロスのリンゼイ・ジャコベリス選手、アイスホッケーチームのデビッド・バッケス選手、ライアン・ミラー選手、ケビン・シャッターカーク選手、スキーハーフパイプのブリタ・シガニー選手、ボブスレーとスケルトンのプレス担当のアマンダ・バード氏が、ソチの犬を新しい家族に迎えてアメリカに帰国しました。

中でも、アイスホッケーのバッケス選手は自身が引き取った犬だけでなく、他の行き場のない犬達の受け皿となるシェルターも探しています。シェルター探しは、バッケス選手と奥様のケリーさんが立ち上げて活動しているAthletes for Animalsというチャリティ団体を通じて行っています。
家のない動物達を助けるために作られたAthletes for Animalsは直接動物を保護したり里親募集活動をしているわけではありませんが、責任を持って動物を飼うこと、シェルターの保護動物をアダプトすることなどの教育啓蒙活動や、各地のシェルターの資金援助のための募金イベントなどを通じて動物保護を支援しています。バッケス選手の呼びかけで集まった様々な分野の人気スポーツ選手がこのような活動をすることで、保護活動に対する注目度や浸透度が高くなり、特に未来を担う子供達への良いお手本になるという大きなメリットがあります。
こちらはAthletes for Animalsの立ち上げの際のプロモーションビデオです。アメリカのスポーツファンなら「おおおおっ!」と息をのむような豪華メンバーが顔を揃えています。

「アメリカの地元にも家のない犬達はたくさんいるのに、何も外国の犬を連れて来なくても」という声も確かにありますが、人気のあるスポーツ選手が家のない犬を引き取ったというニュースのおかげで、アメリカの地元の保護動物に目を向ける人が増えることもまた事実です。
ロシアの地元の大小様々な団体も、残された犬達を救うために努力を続けていますし、Humane Society Internationalではソチの犬達のための募金と里親申込も受け付けています。世界中どこであれ、一頭でも不幸な犬が減って温かい家庭に迎えられるならそれで良しだと思いますし、一人でも多くの人が身近にいる保護動物に注目してくれるようになればと思います。

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