2018/02/28

ケンワージー選手と韓国の犬


この記事の一つ前に2014年のソチオリンピックの時に、オリンピック選手たちが現地の保護犬をアダプトしたことを書いた記事を再掲しています。
その時、選手たちの中で一番最初に野良犬を保護して何とかアメリカに連れて帰れるように手を尽くしたのが、スキーフリースタイルのガス・ケンワージー選手でした。

彼はソチ五輪の後に自身がゲイであることをカミングアウトして、フィギュアスケートのアダム・リッポン選手とともに初めてゲイをオープンにしてオリンピックに参加する選手として注目されました。

私にとってはガス・ケンワージーと言えば「ああ、あの犬連れて帰ってきた子ね」という認識だったのですが、このカミングアウトの件で、彼は一躍LGBTの人々や彼らの支援をする人の間でも注目を集める存在になりました。

今回の平昌オリンピックでも、現地の犬たちを憂うメッセージなどを発信していたガス君ですが、すべての競技が終わった後に、インスタグラムに次のようなポストがアップされました。

A post shared by gus kenworthy (@guskenworthy) on

今朝マットと僕は、ここ韓国に17000以上ある犬農場のうちの一軒を訪れた。胸がつぶれそうだった。
国中で250万匹の犬が、考えられる限り最悪の環境で食料として育てられている。
わかってる、犬肉を食べることは韓国の文化の一部だという議論は承知の上だ。僕自身は個人的に犬食には賛同できないけれど、ここで西洋的な理念の押し付けをするのは違うだろうということには同意する。だけど、この動物たちの扱いはまったく非人道的なんだ。
文化というものは決して残虐行為の身代わりや隠れ蓑にされるべきじゃない。

僕たちが訪れた農場の犬たちの環境は他の場所に比べれば「まだ良い方だ」と言われた。だけど、ここの犬たちだって栄養不足で肉体的に虐待され、ハリガネの床の小さい檻に詰め込まれて、凍りつく冬の寒さと夏の猛暑に晒されている。

屠殺の時が来たら、他の犬が見ている目の前で20分間も苦しみながら感電死させられる。
それぞれの信条がどうであれ、この犬たちは僕の国でペットと呼ばれている生き物と何も違わない。犬たちの中にはかつてはペットだったのに、盗難されて犬肉の取引市場で発見された例さえある。

ラッキーなことに、僕らが訪れた農場は国際動物愛護協会の尽力と間違いに気づいた農家の人の協力によって完全に閉鎖されることになっている。ここにいる約90匹の犬たちは全員がアメリカとカナダに運ばれて、新しい家庭を見つけることになる。

僕は1枚目の写真の可愛い子犬をアダプトした。(名前はビーモに決めた)ビーモはワクチン接種を終えたら2週間くらいでアメリカに来て僕と暮らす予定だ。この子を最高に幸せにしてあげるのが待ちきれないよ。
だけどこの国ではまだ何百万匹もの犬たちが助けを必要としている。
今回の訪問が韓国の犬肉取引の非人道的な面に目を向けてもらうためのきっかけになればと願っている。
同時に僕の国アメリカにも何百万匹もの犬たちが暖かい家庭を待ってることも知ってほしい。


最初に名前が挙がっているマットというのは今回応援に同行したガス君の恋人です。

彼のポストではちらりと名前が出ているだけですが、今回ケンワージー選手が韓国の犬肉取引について言及するようになったバックには国際動物愛護協会(Humane Society International)の存在があります。
ソチの時はたまたまガス君が見つけた野良犬の親子に餌をあげてるうちに情が移って離れがたくなったという、言ってみれば無邪気な子供みたいな行動だったのが、今回はいきなり政治的で深刻な問題になっていますから、背景があって納得です。

愛護協会は以前から韓国の犬肉取引について改善を求めていたそうですが、今回ガス君の渡韓前に「犬肉取引市場の改善について協力してくれないか」と接触があったそうです。

ガス君「え?そんなこと言われても僕は全然そういうこと知らないし」と戸惑ったようですが、協会から話を聞くうちに心が動いたのだとか。

(ちょっとね〜、この辺りは「だいじなだいじな試合前の選手にそんな繊細な問題押し付けるなよHumane Society、だから私はあんた達が好きになれないし寄付もしたくないんだ。」って思ったんですけれどね。まあ、これは私の個人的な感想です。)

ガス君が訪れた「閉鎖が決まっている犬農場」は愛護協会が費用を払って、キノコの栽培工場に業種替えをすることで農場主と交渉が成立しているそうです。
さすがは超大規模保護団体、とんでもない資金力ですね。同じような交渉は他の農場とも成立したり進行中だったりするようです。
この点も賛否両論あるかもしれませんが、私は資金力や知名度のある団体がある程度強引にことを進めるのは「限度さえわきまえれば(ここが難しいんだけどね)有りは有りかな」と思います。とても際どいラインだなあと思うけれど、実際に助かっている動物がいるわけで、人間の生活も脅かしていないわけですからね。

インスタグラムのポストの中でも、インタビューでも、ガス君は「韓国の文化をどうこういうつもりはないし、西洋文化だけが正しいと言ってるわけじゃない。」と強調しています。大切なことですね。
犬の保護の話をすると必ずと言っていいほど「じゃあ牛や豚は食べてもいいのか」と言う人が出てきますが、今回のガス君や愛護協会の焦点はそこじゃないですからね。
ポイントは「食べるために育てたり屠殺するにも、守るべき人道的なラインというものがある」というところです。
これは牛や豚などの家畜動物の飼育や屠殺に対しても、同じように運動している人がいて、正式に研究している人々がたくさんいる問題です。

動物を取り巻く環境のことを気にして情報に接している人にとっては当然のように知っていることでも、普段そういうことと縁のない人々にとっては有名スポーツ選手のこのような行動で何か小さな変化が起きることがあるかもしれません。

単純に「ガス君いい人だね〜、犬もよかったね〜」というだけで済まされず、多くの人にとって何かを考えるきっかけになればいいなと思います。


《参考サイト》
http://people.com/pets/winter-olympics-gus-kenworthy-rescues-dog/

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