2018/03/13

ドッグフードから検出された殺処分用の麻酔薬

(screenshot from http://www.gravytraindog.com )

1ヶ月ほど前になりますが、テレビを見ているとドッグフードから動物の殺処分に使われる麻酔薬ペントバルビタールが検出されたというニュースが流れました。

とんでもないことだしショッキングだと報道されるのも当然なのですが、ペットフードにまつわることを色々読んでいると「ああ、そういうこともあるだろうなあ」と感じてしまいました。よくある扇動的なサイトではなくて、FDA(Food and Drug Administration アメリカ食品医薬品局)やAAFCO(アメリカ飼料検査官協会)が公表しているペットフードに関する規定と市場に出回っているフードを見て考えたら、少なくともテレビCMやパッケージでうたわれているフードの素晴らしさが真実じゃないことくらいはわかります。

Gravy Trainのフード

さて、今回薬物が検出されたのはGravy Trainというブランドの缶詰フード。日本では発売されていません。
予想はしていたけれど、このフードものすごく安いです。一番安いところだと1缶45セントくらいで買える。
原材料を見ると、さてどこから手をつけたらいいか?というくらい、何も良いところがない。
原材料の一番最初にあがっているのは大豆ミール。これは大豆油を搾った残りを挽いたもの。
その次がミート副産物。何の肉か書いていないけれど、副産物の場合ミートだけで済ませて良いのは牛・豚・羊・山羊の4種に限られるので、それらの肉の内臓と血液と骨が主なはず。
その次は小麦粉で、その次が動物性脂肪。何の動物の脂肪か書かれていません。この辺り怪しいですね。
そして堂々とビーフの名前が書いてある割に、この次にようやくビーフの名前が出てきます。これは缶のラベルにwith BEEFと書かれている通り「with と書けば3%ルール」が適用されて、ビーフは全体の3%含まれていればOKなんですね。
(この記事の前に過去記事をあらかじめ再掲載しておいたのは、これに関連するから)

でも、どんなに理想から遠くかけ離れていても、犬が食べて命を落とすようなものでなければいいんですよ。

大問題なのは、動物を殺処分するための薬物が混入して、命を落とした犬がいるということ。しかも、それが見つかった過程がまた酷い。



↑ABC7ニュースのサイトに飛ぶので、興味のある方はご覧ください。

薬物はどこから混入した?

薬物混入が発覚したのは、被害者の家族とテレビ局とそのパートナーの研究所の調査のおかげでした。メーカーが自主的に発見してリコールしたからではないんですね。

きっかけは2016年の年末にGravy Trainのフードを食べた、ある家庭の犬たちが苦しみ始めて1匹が命を落としてしまったこと。

飼い主さん家族はフードの残りを専門の研究所に送って調査をしてもらい、亡くなった犬の体は獣医学の病理学者に検視を依頼しました。

そうして検出されたのが、前述したペントバルビタール。動物の殺処分に使われる麻酔薬です。(麻酔薬だけど、量の調整で殺処分に使われる。)
この薬が使用されるのは犬・猫・馬に限り、食用にされる牛や羊などに使用することは禁止されています。

この調査はワシントンDCのABC局と局がパートナーとして依頼した研究所に引き継がれました。
24ブランド62サンプルの缶詰フードにペントバルビタールが含まれていないかを検査を繰り返しました。1つのブランドに付き、違うロット、違う購入先などの条件で検査が行われました。
その結果、あらゆる条件で繰り返し薬物が検出されたのが前出のGravy Trainでした。15の缶を検査して薬物が含まれていたのが9缶。実に60%がアウト!

過去記事で「FDAは動物飼料に使うミールには屠殺以外の方法で死んだ動物を使うことを許している」と書きましたが、正確には「ミールの規定に屠殺された動物の肉という指定はない」なんですね。
言ってみれば、FDAはメーカーのために規制の抜け道を作り、メーカーはそれをありがたく使っているというわけ。

屠殺された以外の動物というのは、事故や病気で死んだ動物という意味ですが、そういう動物を引き取る専門業者というものがあり、食用の家畜動物も、殺処分になった犬・猫・馬もどちらも扱っているという業者も少なくないようです。
まだあくまでも推測ですが、多分そうやって回収した後ペットフードメーカーに卸すもののなかに殺処分になった動物が混ざってしまったのが、薬物混入の原因ではないかと言われています。(手違いなのか、故意なのかはまだわかりません。)

テレビ局がこれらの検査結果を報道したのが先月のことで、ここまで来てメーカーはようやく製品の回収を始めました。
2016年末の被害者の後にも命を落とした犬がいて、その家族がメーカーに苦情を申し立ててもいたのに、メーカーによる調査もリコールも行われなかったんですね。
被害家族には製品の割引クーポンが送られて来たという笑えない冗談みたいなオチまでついています。

メーカーもようやく自社による調査を始めたようですが、詳細はまだ伝えられていません。また続報があれば更新します。

この問題といっしょに、有名な療法食のブランドのことも書こうかと思っていたのですが、長くなり過ぎたので、それは明日にします。

フード選びは本当に悩ましい。高ければ安心というわけではないけれど、安すぎるものはやっぱりどう考えても安全面で不安が残りますね。
ラベルの読み方も知っておかないと、わからないことがたくさんあります。
明日はそのラベルの読み方についてちょっと掘り下げてみます。


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