2020/08/04

35犬種の避妊去勢手術ガイドライン2 犬種別A〜B


まずはアルファベット順にA〜Bで始まる犬種について具体的な数字をご紹介していきます。ここで言うガンは血管肉腫、肥満細胞種、骨肉腫、リンパ腫のどれかを指します。また関節障害は股関節形成不全、前十字靭帯断裂、肘関節形成不全のどれかです。

上記のガンと関節障害の他に、乳腺腫瘍(2歳以前の避妊手術で予防効果が高いと言われる)、子宮蓄膿症(避妊手術で完全に予防できる)、尿失禁(避妊手術後に発症する場合がある)についても触れられています。ただしこれらの疾患は10歳以降に顕著に増加するのですが、このデータでは10歳以上の犬がほとんど含まれていないため、データとして限界があると研究者自身が述べています。

また各ガイドライン内で挙げられている疾患の発病率は、この研究対象集団(カリフォルニア大学デイビス校大学病院で診断された犬たち)の中での比率で、犬種全体の疾患の発病率ではないことにご注意ください。


オーストラリアンキャトルドッグ

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研究対象となったのは1,037頭、内訳は未去勢のオス261頭、去勢済みのオス189頭、未避妊のメス298頭、避妊済みのメス289頭
  • オス、メス共に避妊去勢手術の有無に関わらず関節障害の顕著な発病はなかっ
  • オス、メス共に避妊去勢手術の有無に関わらずガンの発病率は5%未満だっ
  • 未避妊のメスで乳腺腫瘍を発病したのは1%、28歳の間に避妊手術をした場合では4%(原文では28ヶ月となっているのですがタイポと思われます
  • 未避妊のメスで子宮蓄膿症の発病率は2
  • 避妊手術後の尿失禁の発生は見られなかっ
  • この犬種では避妊去勢手術と関節障害およびガンとの関連が見られないため、手術を受ける場合は獣医師と相談して個別に時期を決定することを推


オーストラリアンシェパード



研究対象となったのは440頭、内訳は未去勢のオス93頭、去勢済みのオス135頭、未避妊のメス76頭、避妊済みのメス136頭

  • オス、メス共に避妊去勢手術は関節障害のリスクの明らかな増加には関連していなかった
  • 未去勢のオスではガンの発病率が9%、未避妊のメスではガンの発病率は1%とかなりの差があった
  • オスが去勢手術をした場合にもガンの発病率の増加は見られなかった
  • 未避妊のメスでの乳腺腫瘍の発病はゼロだったが、28歳での避妊手術では8
  • 未避妊のメスで子宮蓄膿症の発病率は5
  • 尿失禁の発生は早期(おそらく6ヶ月齢以前)に避妊した場合で1
  • 推奨されるガイドラインは、オス犬では去勢手術によるリスクの増加が見られなかったので獣医師と相談の上個別に決定。メス犬では6ヶ月齢以降の避妊手術を推奨。(乳腺腫瘍の数字を見ると6ヶ月以降2歳未満が良いのでは?と思われますが)

  ビーグル

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研究対象は256頭、内訳は未去勢のオス42頭、去勢済みオス82頭、未避妊のメス45頭、避妊済みメス87頭
  • 未去勢のオスの関節障害発病の割合が2%に対し、1歳未満での去勢手術を受けたオスでは15%に増加している
  • メスでは避妊処置の有無にかかわらず関節障害は発病していなかった
  • オスメス共に避妊去勢済みでガン発病の増加は見られなかった
  • 避妊済み未避妊共に乳腺腫瘍の発病は見られなかった
  • 未避妊のメスで2例の子宮内膜症があった。
  • 尿失禁の発生は早期(おそらく6ヶ月例以前)に避妊した場合で2
  • 推奨されるガイドラインは、オス犬の去勢手術は1歳以降。メス犬ではリスクの増加は見られなかったので獣医師と相談の上個別に決定


バーニーズマウンテンドッグ

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研究対象は235頭、内訳は未去勢のオス59頭、去勢済みオス74頭、未避妊のメス37頭、避妊済みメス65頭

  • 未去勢のオスの関節障害発病の割合が4%に対し、2歳未満での去勢手術を受けたオスでは24%に増加している
  • メスの関節障害では6ヶ月齢以前に避妊手術をした場合は未避妊に比べて3倍超増加している
  • オスメス共に避妊去勢無しのガン発病率は9%、去勢済みのオスではガンの増加は見られなかったが、メスでは6ヶ月齢以前の避妊手術で2倍に増加している
  • 避妊済み、未避妊共に乳腺腫瘍の発病は見られなかった
  • 未避妊のメスで5%に子宮内膜症があった。
  • 尿失禁の発生は見られなかった
  • 推奨されるガイドラインは、オス犬の去勢手術は2歳以降、メス犬では関節障害、ガン共に増加は著しくはないので獣医師と相談の上個別に決定(「著しくはない」というのは、それぞれ3倍と2倍になっているが件数自体が少ないという意味。でも6ヶ月齢以降が無難な気がしますよね)



ボーダーコリー 

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研究対象は399頭、内訳は未去勢のオス105頭、去勢済みオス85頭、未避妊のメス88頭、避妊済みメス121頭
  • オスメス共に避妊去勢手術の有無は関節障害の明らかな増加に関連していない
  • 未去勢のオスのガンの発病率2%に対し、1歳未満での去勢手術では13%に増加している
  • 未避妊のメスではガンの発病が見られなかったのに対し、1歳未満の避妊手術では11%に増加している
  • 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病は1
  • 未避妊のメスの子宮内膜症発病は4
  • 避妊済みメスの尿失禁の発生は1例のみ
  • 推奨されるガイドラインは、オスメス共に避妊去勢手術は1歳以降


ボストンテリア

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研究対象は292頭、内訳は未去勢のオス75頭、去勢済みオス67頭、未避妊のメス54頭、避妊済みメス96頭
  • オスメス共に避妊去勢手術の有無にかかわらず関節障害を発病した犬は0
  • 未去勢のオスのガンの発病率5%に対し、1歳未満での去勢手術では12%に増加している
  • メスの場合、避妊手術によるガン発病リスクの増加は見られなかった
  • 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病は2
  • 未避妊のメスの子宮内膜症発病は7
  • 避妊済みメスの尿失禁の発生は2
  • 推奨されるガイドラインは、オス犬の去勢手術は1歳以降、メス犬では関節障害、ガン共に増加は見られないので獣医師と相談の上個別に決定


ボクサー

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研究対象は761頭、内訳は未去勢のオス220頭、去勢済みオス203頭、未避妊のメス128頭、避妊済みメス210頭
  • オスメス共に避妊去勢手術による関節障害の増加は見られない
  • 未去勢のオスのガンの発病率17%に対し、2歳未満での去勢手術では32%に増加している
  • 未避妊のメスのガンの発病率11%に対し、2歳未満での避妊手術では20%に増加している
  • 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病は見られなかった
  • 未避妊のメスの子宮内膜症発病は2
  • 避妊済みメスの尿失禁の発生は1
  • 推奨されるガイドラインは、オスメス共に避妊去勢手術は2歳以降


ブルドッグ

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研究対象は558頭、内訳は未去勢のオス198頭、去勢済みオス156頭、未避妊のメス90頭、避妊済みメス114頭
  • 未去勢のオスの関節障害発病率は7%、未避妊のメスでは5
  • 関節障害は、6ヶ月齢未満での去勢手術でオス15%、同じく6ヶ月齢未満での避妊手術でメス18%(ただし件数自体が少ないため有意性は認められていない)
  • 避妊去勢をしていない場合、オスメスどちらもガンの発病率は67%で、手術をしても有意な増加は見られなかった
  • 未避妊のメスのガンの発病率11%に対し、2歳未満での避妊手術では20%に増加している
  • 未避妊のメスの乳腺腫瘍発病率は12
  • 未避妊のメスの子宮内膜症発病は2
  • 避妊済みメスの尿失禁は見られなかった
  • 推奨されるガイドラインは、オスメス共に避妊去勢手術の時期は獣医師と相談の上で個別に決定。関節障害について慎重になるなら6ヶ月齢以降。


頭文字C以降の犬種はまた順次アップしていきます。




《参考URL》
Assisting Decision-Making of Age of Neutering for 35 Breeds of Dogs:Associated Joint Disorders, Cancers, and Urinary Incontinence.
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2020.00388/full

2020/07/23

UCデイビス校獣医学部による35犬種の避妊去勢手術ガイドライン

避妊去勢手術と特定の疾患のリスク

2014年、アメリカの獣医師や心理学者、統計学者などの研究チームによってヴィズラの避妊去勢手術の有無、手術の時期、ガンの発病率の関連について大規模なインターネットアンケート調査が行われました。集められた2,500頭以上の犬のデータから、ヴィズラでは避妊去勢手術を受けた個体にガンの発病率が高いという結果が発表されました。

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この情報を初めて聞いた時のショックとザワザワした気持ちは忘れられません。(その理由は後述)

その後、カリフォルニア大学(UC)デイビス校獣医学部によって特定の犬種の避妊去勢手術と疾患の関連についての研究が発表されました。ゴールデンレトリーバー、ラブラドール、ジャーマンシェパード では避妊去勢手術を受けた個体で未処置の犬と比べてガンと関節疾患の発病率が有意に高いこと、特に6ヶ月齢以前に手術を受けた時のリスクの高さが指摘されました。
UCデイビス校は10年にわたってこの研究を続けており、さらに対象の犬種を広げてデータの分析を行っています。

同研究チームは2020年7月に35犬種について、避妊去勢手術が影響を及ぼすと考えられるガン(血管肉腫、肥満細胞腫、骨肉腫、リンパ腫)関節疾患(股関節形成不全、前十字靭帯断裂、肘関節形成不全)のリスクを小さくするため手術の時期に関するガイドラインを発表しました。
これには同校の獣医学教育病院で過去15年の間に検査や診察を受けた数千頭の犬のデータが使用されました。


ガイドラインが発表された犬種と注目点

35の犬種は以下の通り(カタカナ表記ですが、アルファベット順です)

  • オーストラリアンキャトルドッグ
  • オーストラリアンシェパード
  • ビーグル
  • バーニーズマウンテンドッグ
  • ボーダーコリー
  • ボストンテリア
  • ボクサー
  • ブルドッグ
  • キャバリアキングチャールズスパニエル
  • チワワ
  • コッカースパニエル
  • コリー
  • コーギー
  • ダックスフンド
  • ドーベルマンピンシャー
  • イングリッシュスプリンガースパニエル
  • ジャーマンシェパード 
  • ゴールデンレトリーバー
  • グレートデーン
  • アイリッシュウルフハウンド
  • ジャックラッセルテリア
  • ラブラドールレトリーバー
  • マルチーズ
  • ミニチュアシュナウザー
  • ポメラニアン
  • トイプードル
  • ミニチュアプードル
  • スタンダードプードル
  • パグ
  • ロットワイラー
  • セントバーナード 
  • シェトランドシープドッグ
  • シーズー
  • ウエストハイランドホワイトテリア
  • ヨークシャーテリア

各犬種ごとのガイドラインは別にアップしますが、全般的に注目したい点がいくつかあります。


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避妊去勢手術によって関節障害が発症するリスクは犬のサイズに関係しており、小型犬では手術によって関節障害のリスクが高まることはない

⧫小型犬種では、避妊去勢手術によってガン発病のリスクが高くなることはほとんどないが、上記リストのうち小型犬2犬種でガンの発病率が高くなっていた。
小型犬で避妊去勢手術とガン発病の関連が見られたのはボストンテリアのオスとシーズーのメス
それぞれ逆の性別では手術とガンの関連は見られなかった。ボストンテリアのオスは1歳になる前に去勢手術を受けた場合、シーズーのメスは2歳になる前に避妊手術を受けた場合にガン発病のリスクが高くなっていた。

⧫大型犬種では避妊去勢手術は関節障害発症リスクに有意に関連しているが、超大型犬種であるグレートデーンとアイリッシュウルフハウンドでは、手術を受けた時期がいつであろうと関節障害のリスクには影響が見られなかった。

ドーベルマンのオスでは、1歳での去勢でガン発病リスクがやや上昇、2〜8歳の去勢でさらに上昇という例外的なパターンが見られるため、1歳未満での去勢または去勢無しが推奨されている。

ゴールデンレトリーバーのメスでは、避妊手術の年齢がいつであってもガン発病のリスクが高くなる。

⧫全般的な傾向では、大型犬において手術をする時期についての注意が必要。多くはオス1歳以降、メス2歳以降が推奨されている。


犬の避妊去勢には社会的な問題という側面もある

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このガイドラインはこれから犬を迎えたいと考えている方、愛犬の避妊去勢について悩んでいる方にとって心強い指針になることと思います。
かかりつけの獣医師と話し合う際のツールとしても重宝なものになるでしょう。

一方で、以前に数犬種での研究が発表された時もそうでしたが、既に愛犬の手術を済ませた方が後悔したり落ち込んだりということがあるかもしれません。
しかし既に処置の済んだ手術によってリスクが高くなることを知っていれば獣医師と相談して対策を考える際にも、この情報は役立つものです。将来のリスクに備えてペット保険を見直す際の目安にもなります。

またこの研究はガンと関節障害のリスクをメインにしたものですが、避妊去勢手術で予防できる疾患もあることは忘れてはいけない点です。
2020年6月にワシントン大学の病理学者が発表した家庭犬の寿命についての統計では、避妊去勢手術をした犬の方が未処置の犬よりも平均寿命が長いという結果も出ています。

研究結果は単純に「だから避妊去勢をするべきではない」または「するべきである」と結論を出すものではなく、個々の犬にとっての最良を選ぶための有効なデータです。

「個々の犬にとっての最良」という点をもう少し掘り下げて考えてみましょう。

犬にとっての最良を決める時、医学的なデータだけでなく、もしも処置しないでアクシデントで子犬が産まれた場合の社会的な影響も考慮する必要があります。

今の日本ではアクシデントで子犬が産まれるべきではありません。
ましてや遺伝病や血統の知識のない素人が興味本位や小遣い稼ぎのために繁殖に手を出すのは言語道断です。
本来あってはならない子犬の誕生を完全に予防できる環境であるかどうかも、処置をするかしないかの重要なチェックポイントです。
もちろんこれは病気やその治療の研究をする科学者の守備範囲ではありません。
だからこそ、科学で判ったことを一般の飼い主に伝える時には『社会的な側面』を抜きにしてはいけないと私は考えています。

一番最初に書いたヴィズラの研究結果が発表された時に気持ちがザワザワしたのは「科学的な情報、しかも一般向けにかいつまんだものだけを読んで、やっぱり避妊去勢なんてしない方がいいんだ!という無責任な層が増えたら...」と考えずにいられなかったから。
それから間を置かずにゴールデン、ラブ、Gシェパードの研究が発表された時にはザワザワなんてもんじゃなかったですよ。

その頃私が心配していたのは個人レベルでの素人繁殖やアクシデントだったのですが、これらの研究結果を大規模保護団体が都合よく解釈して避妊去勢を行わないなどという、想像のはるか斜め上(いや、はるか斜め下)を行くような事態まで起こってしまって、犬の避妊去勢の社会的な側面を無視することの罪深さをまざまざと思い知りました。

このUCデイビスの研究のような避妊去勢のリスクの話になると、保護犬を迎えた人が「うちの犬は迎えた時に有無を言わさずに手術をされていた」と憤慨される声を聞くことがあります。
しかし保護犬の場合は存在そのものが社会的な問題ですから、その犬からさらに行き先のない犬が増えるようなことは社会的にあってはならない、つまり避妊去勢は最優先事項です。

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犬の避妊去勢の話になると、つい熱くなってしまいました😓

毎度同じことを繰り返していますが、普通の家庭犬でアクシデントでうっかり交配してしまうリスクを完全にコントロールできるなら、避妊去勢をするか否かは飼い主さんの判断することです。
ここで紹介したような研究は、その判断のための大切な要素です。

決して避妊去勢手術で健康を害することがあっても仕方がないと言っているわけではありません。
この件については、ぜひ以前に書いたこの記事も併せてご覧になってみてください。






長くなってしまったので、各犬種のガイドラインは別の記事で追い追いアップしていきます。



《参考URL》

Evaluation of the risk and age of onset of cancer and behavioral disorders in gonadectomized Vizslas
https://avmajournals.avma.org/doi/abs/10.2460/javma.244.3.309?journalCode=javma

Assisting Decision-Making of Age of Neutering for 35 Breeds of Dogs:Associated Joint Disorders, Cancers, and Urinary Incontinence.
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2020.00388/full

Lifespan of companion dogs seen in three independent primary care veterinary clinics in the United states
https://cgejournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40575-020-00086-8

2020/06/10

ドッグフードの『ヒューマングレード』具体的にはどういうこと? 

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“ヒューマングレードのドッグフード”

プレミアムフードと呼ばれる、価格が高めで原材料のこだわりをアピールしているフードの中には「ヒューマングレードです」とうたっているものも多いですね。

けれどそれらのフードの全てが『ヒューマングレードのペットフード』と呼べるかと言うと、厳密には違うのです。
このブログのタイトル「アメリカの犬たち」の通り、以下に書くのは全てアメリカの話ですが、日本でもアメリカ産のフードは広く利用されていますし、AAFCOの基準を採用しているメーカーも多いので、参考になさってください。

ヒューマングレードという言葉の意味は人間用の基準が適用されているということですが、もっと平たく言うとヒューマングレード=「食用(人間が食べることができる)」という意味です。
つまりヒューマングレードではない製品は「非食用(動物は食べることができるが人間の食用にはできない)」ということです。

昔、ニコが家に来てまだ1〜2年目の頃「だいじなニコが食べるものだから自分でも食べてみよう」とドッグフードをかじってみたりトリーツを食べてみたりしていたのですが、上記のような理由でヒューマングレードではないものを試食してみるのはお勧めしません。
(そんなことする人はあんまりいませんけれどね😅)


ヒューマングレードフードと表示しても良い条件とは

人間が食べることができるというのは、単に人間の食用の原材料を使っているというだけでは十分ではありません。
米国食品医薬品局(FDA)および米国農務省(USDA)が定める次の要件が満たされていればフードのラベルにヒューマングレードと表示することが許可されます。


  • 製品の全ての原材料が人間の食用に適していること
  • 製品の製造、梱包、保管が連邦規則第21条第110章に則って行われていること。  
人間の「食用」の製品は栄養価と安全性の両方を保つよう処理、輸送、保管されています。一方「非食用」の製品は栄養価や輸送保管中の品質の維持のための要件が食用よりもずっと緩くなります。
原材料だけでなく、製造ラインや製品のパッケージ、輸送保管方法にいたるまで人間の食品と同じ基準が適用されている場合に限り、「この製品はヒューマングレードです」と表示することができます。

つまりヒューマングレードのペットフードは、そうでないフードに比べて安全性が高いと言えます。(または安全である可能性が高い)
この厳しい基準のためヒューマングレードのペットフードを名乗ることができる製品はあまり多くはなく、価格はかなり高くなります。


ヒューマングレードとペットフードグレード

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「あれ?でも最近フードの説明でヒューマングレードってよく見かけるようになったけど?」と思われました?
よく見かけるのは製品そのものはヒューマングレードと呼ぶ基準を満たしていないけれど、原材料は人間の食用に適したものを使っているという製品です。

このヒューマングレードとペットフードグレードの差と言うのがまた曖昧なんですねえ。

鶏肉を例にとって見てみましょう。
ペットフードグレードの鶏肉というのはスーパーで売っているような胸肉やもも肉を切り取った後の鶏ガラです。鶏ガラと言うにはかなり肉が多く残っているものと考えてください。
(これに内臓肉や頭などを加えて高温加熱して脂を搾り、挽いて粉末にしたものがチキンミールです。ミールの場合は使用される肉の規定がまた少し違うのは、以前にも書いた通りです。)

フードの原材料一覧で鶏肉とかチキンとか書かれている製品では、肉が多く付いた鶏ガラが使われている場合が多いようです。
原材料の表示でわざわざ「骨抜きチキン」と書いてある場合は、鶏ガラではないですよという意味ですね。

「ヒューマングレードの鶏肉使用」と表示した場合は、精肉が使われています。
またヒューマングレードだからといってオーガニック(農薬不使用)というわけでもありません。

また、ペットフードグレードの鶏肉を使っている製品の品質が低いとは限りません。
ヒューマングレードの鶏肉を使った製品は高品質の場合が多いですが、ヒューマングレードの原材料使用がフードの品質を保証するわけではありません。


結局は総合的に判断することが大切

ちょっとまとめてみましょう。
ヒューマングレードのペットフードというのは、原材料の全てと製品管理や輸送保管など全てが人間の食品と同じ基準で製造されているという意味です。
価格もかなり高くなり、フリーズドライ、調理済みチルドタイプ(ホームメイドタイプを冷蔵で販売)、生食用冷凍パックなどが多いです。

ドライフードや缶詰フードで「ヒューマングレードの原材料使用」と表示されている場合、原材料(全てまたは一部)だけが人間の食用に適したものということです。

ヒューマングレードを標榜していなくても、高い品質のドッグフードはあります。ヒューマングレードの原材料使用という表示に必要以上に惑わされないことも大切です。

結局のところは原材料全体をよく吟味して判断しなくてはいけないということですね。

《参考URL》
https://thesciencedog.com/2019/01/15/tastes-like-chicken/
https://thesciencedog.com/2020/05/20/human-grade-dog-foods-some-science/

2020/02/28

ヴィックトリー・ドッグたちのストーリー3

前回の記事の最後に「次回に書きます」と書いたのが11月半ば。
その後、2月下旬まで放置されていたこのDogs in the U.S.のブログ😓😓😓

書く書く詐欺もたいがいにしなさいよ!ですね。すみません🙇




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前回はマイケル・ヴィックの敷地から保護(と言うよりも証拠物件として押収)された犬たちが、アニマルシェルターに預けられ関係者たちがその後の処遇に頭を悩ませていたところ、相談されたアメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)の動物行動学者が犬の行動評価をスタートさせたというまで書きました。
前回のお話はこちら
前々回はこちら


犬たちの行動と反応を査定

ASPCAの責任者だったDr.Zは行動評価のためのチームを編成しました。
チームのメンバーはASPCA所属の動物行動学者や獣医師、そして北カリフォルニアのピットブルレスキューの主宰ドナ・レイノルズ氏とティム・レイサー氏の計10人でした。

テストはASPCAで保護犬の評価をする時に行われている手法で実施されました。


1. まずは犬の行動を観察。一匹ずつテストの場に連れてきて「落ち着いている」「緊張している」「攻撃的」などの評価を下す。


2. 担当者が犬の体を撫でて反応を観察。問題がなければ足を持つなど、もう少し踏み込んだ接触をして観察。


3. ロープやリングなどおもちゃを手にして遊びに誘う。うまく遊ぶことができるか、最後に速やかに遊びを止めることができるかを観察。


4. ボウルに入れたフードを与え、食べている最中に
ゴム製の手の模型を使ってボウルを引き離し反応を見る。

5. フードよりもさらに嗜好性の高いブタ耳などを与え、同じことをして反応を見る


6. 犬のぬいぐるみと、幼児の等身大の人形を近づけ攻撃性を示すかどうかを観察


さらにBADRAPの2人から、彼らが使っている以下の手法も加えることが提案されました。


  • ケージの金網越しに犬に近づき、反応を観察
  • ぬいぐるみではなく、本物の犬を近づけて反応を観察
  • 犬の顔にそっと息を吹きかけて反応を観察



テストの手法について解説

ここでちょっと、上記のテストについて解説します。
この評価が行われたのは2007年のことですので、ASPCAのテストが現在は使われていない古いものです。

上記4〜6の「食べているものを取り上げて反応を見る」「犬のぬいぐるみや等身大の人形を近づけて反応を見る」のテストで観察される反応は、実際の犬の行動を反映しておらず、犬の攻撃性の指標として有効ではないという研究の結果が出ています。
2010年代初頭からこれらの研究が、複数の動物行動学者や心理学者によって次々に発表されて来ました。

そもそもシェルターというストレスの多い環境で暮らしている犬の行動を一回のテストで評価するというのは無理な話ですし、犬にとっては文字通り生きるか死ぬかの分かれ目にもなり得るのですから、不確かな指標を使っていたのはひどい話です。

現在のASPCAは当団体の施設だけでなく、全国の保護施設向けに次のようなアドバイスをしています。


  • わざわざテストの場を設けての行動評価は行わない
  • 犬が持ち込まれた時には元の飼い主から犬の情報をできる限り多く聞き出す
  • 施設のスタッフは犬を観察して日頃の行動を把握し、情報を共有する
  • 望ましくない行動を見せた犬に対して、スタッフの対応を全員が理解して統一する
  • 望ましくない行動がある犬を譲渡する場合はその情報をきちんと開示して飼い主への指導を行う

また「おもちゃを見せて遊びに誘う」というのも、この当時の闘犬場から保護された犬たちへの理解の足りなさをよく表しています。
闘犬のために自家繁殖されて、闘うための訓練(という名の虐待)と実戦しか知らない犬たちにおもちゃを見せてもその意図は伝わりません。
そもそも彼らには「遊ぶ」という概念すらなかったと思われます。

以前にも書きましたが、この当時は闘犬の証拠品として押収された犬は裁判が終われば殺処分になるのが普通だったので、元闘犬の行動評価をしたことがある人がいなかったのです。

この査定の場にBADRAPのお二人がいたことは犬たちにとって本当にラッキーなことでした。
そしてASPCAのDr.ZがBADRAPのお二人の意見を取り入れてくれたのも本当に良かった。

ちなみにDr.Zはこんなサンタクロースみたいなお方です。


いよいよ一匹ずつのテスト、その結果は?

さて、いよいよ最初の犬のテストです。
犬たちのハンドラーは全てBADRAPのティム・レイサー氏が務めました。

Dr.Zの目標は49匹の犬の10%つまり5匹の犬にリハビリテーションを受けさせ、家庭犬として譲渡することでした。
ドナさんとティムさんも5匹を目標としていました。

そしてチーム一同が見守る中連れてこられた最初の1匹は人間に対して全く攻撃性を示しませんでした。
と言うより、何の反応も示しませんでした。
おもちゃを見せても反応は無し、食べているものに手を出しても攻撃性は見られませんでした。
長い間虐待されていたせいで、刺激に対して反応しないでやり過ごすことを身につけてしまっていたのかもしれません。

しかし犬舎から他の犬を連れて来て対面させた時、その犬は嬉しそうに尻尾を振り、礼儀正しく匂いを嗅ぎ合うことができました。
つまり『合格』です。幸先の良いスタートを切りました。

その後も合格が続き、当初の目標の5匹にあっという間に達し、さらに合格の犬は増えて行きました。

犬たちは複数のシェルターに分かれて収容されていたので、他のシェルターでも同じようにテストが繰り返されました。

ハンドラーのティムさんの呼びかけや優しく吹きかけられた息に嬉しそうに反応する犬、怯えるあまり全ての行動を放棄して地面にぺったりと這いつくばってしまう犬、そしてもちろん攻撃的な態度を示す犬もいました。

(※注 地面にぺったりと這いつくばってしまう犬は「パンケーキ」と呼ばれました。パンケーキ状態になってしまう犬はかなり多かったのですが、後にこれらの犬はバベシア症にかかっており、身体がだるくて起き上がれなかった可能性が高かったことが判りました。
怪我をした傷口を手当てもせずに放置されていた犬たちはダニの格好の標的となって、バベシア症を患っている犬はとても多かったのです。)

全ての犬のテストが終わった時点で、Dr.Zは犬たちの選別基準を決めました。
Dr.Zのチームはテスト結果をかなり寛大に評価してくださったものと思われます。
少なくとも攻撃性を見せたら一発アウトというようなものではありませんでした。

選別基準は次の5つで、全ての犬は5つの基準のどれかに分けられます。

  1. 預かりボランティアのもとへ行く
  2. 警察犬など法執行機関で働く犬となる
  3. 保護施設へ行き、そこでリハビリ後譲渡先を探す
  4. 終生を保護施設で暮らす
  5. 殺処分
1は最も評価の高かった犬たちで、16匹が該当しました。
2は評価の高かった犬のうち、適性があると思われる2匹。
(ただしこの2匹も最終的には普通の家庭犬として譲渡されました。)
3は問題行動はあるものの、適切な施設でリハビリが可能と思われる犬たちで、20匹でした。
4は攻撃行動が多く見られ、家庭犬に適さない犬たちで10匹が該当。
そして5の殺処分には1匹だけが該当してしまいました。

殺処分以外の方法がないと判断されたのは黒いメス犬で、繰り返し繰り返し繁殖に使われた跡がうかがわれました。
酷い環境での虐待と度重なる出産で、その犬は身体だけでなく精神もボロボロになっていました。
目につくものすべてを激しく攻撃しようとしたその犬は、ティム・レイサーさんの手に負えない唯一の犬でした。

苦痛しか知らなかった彼女の一生はペントバルビタールナトリウムの点滴によって幕を閉じました。
センチメンタルに聞こえるかもしれませんが、彼女が今度は生まれ変わって普通の幸せな犬として生きていることを心の底から願います。

犬たちに名前をつける

目標と予想を大きく上回る48匹の犬たちにセカンドチャンスが与えられることになりました。
それはすなわち、犬たちの今後について決定権を持つ責任者が必要になるということです。Dr.Zは動物に関連する法律に精通しインディアナの大学の法学部で教鞭をとるレベッカ・ハス教授を責任者として推薦し、ハス氏はこの任務を受けました。

レベッカ・ハス氏はとてつもない重圧と多忙な日々に身を投じることとなりました。彼女がその任務の一番最初にしたこと、それは犬たちに名前をつけることでした。

ヴィックの犬舎でもほとんどの犬は名前を付けられておらず、シェルターに保護されてからもチェサピーク54902とかハノーバー29といった風に、シェルターの地名と番号だけで識別されていたのです。
しかし彼らは1匹1匹名前をもらい、それぞれにオスカー、ローズ、ウバ、スイートピー、アーニーとなりました。

後にBADRAPのドナさんが「あの黒い犬に名前をつけてあげなかったことを今も悔やんでいます。せめて名前をつけて天国に送り出してやればよかった。」と語っていました。
いつまでもあの黒い犬のことを心に留めていてくれる人がいるということに少しだけ救われた想いになったのを覚えています。

こちらは行動評価の際にハンドラーの役目を引き受けたティム・レイサー氏。
イタズラ小僧がそのまんま大人になったようなティムさんです。


次回からは(今度はこんなに間を置かない!)いよいよ1匹ずつのストーリーを紹介していきます。



《参考URL》
https://www.aspca.org/about-us/aspca-policy-and-position-statements/position-statement-shelter-dog-behavior-assessments

2019/11/12

ヴィックトリー・ドッグたちのストーリー2

これはヤミ闘犬摘発に協力お願いのポスター。
ポスターの主であるのがThe Humane Societyであるのは皮肉だね。


前回から随分と間が空いてしまいました。

マイケル・ヴィックというNFLのスーパースターがいて、そのヴィックが幼馴染やいとこたちと、影でヤミ闘犬に手を出していて、成績の奮わない犬を残酷な方法で殺害していたこと。
2007年4月、それが明るみに出て、51匹のピットブルが保護されたというところまでをサラッと紹介しました。

2007年と言えば、我が家にはまだニコだけしかいなくて、私も犬を巡る社会問題などについて本当に無知でした。
それでもこのニュースは大スキャンダルとして連日報道されていたし「酷い話だなあ」とは思っていました。
でも後にThe Lost Dogsを読んだ時に、実態は報道されていたよりもずっと残酷で、犬たちに課せられていた負担は想像を絶する重さだったことを知りました。

51匹のピットブルたちの行方

4月25日の家宅捜索の際に保護された51匹のピットブルたちは「証拠物件」として扱われました。
ピットたちの体についた傷跡や生々しい怪我も全て「証拠」となります。
ですからヴィックの刑が確定するまで、証拠は厳しく「保管」されることになります。
(同時にビーグルやロットワイラーも保護されたのですが、この犬たちは闘犬には使われていなかったため普通の保護犬として扱われ、比較的早く新しい家族に譲渡されました。)

証拠物件である犬たちの所有権は、事件があった自治体のサリィ郡に移されました。
このような場合は公営シェルターでの保管が通常ですが、51匹という異例の数のため、犬たちは他の自治体のシェルターにも協力を頼み、6カ所に分けて預けられました。


サリィ郡のシェルターは本来の保管者であるにも関わらず、犬たちにとっては最も環境の悪い施設だったそうです。
このシェルターに預けられていた13匹の犬のうち2匹が、収監中に命を落としています。
原因などについての記録は残っておらず、真相は今もわからないままです。元々身体状態の良くない犬もいたので、そういうことがあっても不思議ではないのですが、せっかく助けの手が差し伸べられたところだったのに、楽しいことを何も知らないままこの世を去った2匹のことを思うと胸が締め付けられます。

その後、サリィ郡シェルターの犬たちは他の施設に移動となりました。
6カ所の施設に預けられた犬たちは、予定も計画もないままにシェルターの犬舎で過ごすことになり、その状態は9月上旬まで続きました。
施設によって、ボランティアなど人手が十分だったところもあれば、寝るところと食事を与えられるだけというところもあったようで、この数カ月は犬たちの精神状態に様々な影響を及ぼしたようです。

逮捕劇から判決までの人間たちの動き

犬たちが各シェルターの犬舎で無為な日々を過ごしていた数ヶ月の間、この事件に関連する人間たちの周囲にはめまぐるしい動きがありました。

ヴィックに先んじて逮捕された仲間は、有罪を認めると共にヴィックに関する証言も行い、それに伴ってヴィックも有罪判決を受けました。
但し、当時の法律では彼らが有罪となったのは違法な闘犬とそれにまつわる賭博などについてのみで、犬の殺害についてはカウントされませんでした。

ヴィックは所属していたチームを解雇され、ナイキなどのライセンス契約も打切りとなり、さらに犬たちのケアにかかる費用92万8千ドルの支払いが命じられました。
(後にヴィックは自己破産を申告しましたが、高級車や高級住宅地の自宅などの所有を理由に却下されています。)

ヴィックの弁護士は減刑ましてや無罪判決などという無理なことを求めれば、法廷で長期間争っているうちに身体的な選手生命が尽きてしまう、それよりも早期に罪を認めて服役し選手としての復帰を考えた方が良いという方針でした。

一方、ヴィック逮捕の立役者である地元保安官と政府機関の捜査官は、当初事件を管轄していたサリィ郡地方検事から嫌がらせとも言えるような仕打ちを受けていました。
地元出身のスタースポーツ選手を犯罪者とすることに対しての風当たりは、他の地域では想像もできないほど強いものだったようです。

この事態を重く見た保安官と捜査官は、ヴィックの裁判に先んじて事件の管轄をサリィ郡地方検事局ではなく米国連邦地区検事局に移すよう尽力しました。
ヴィック贔屓の色が濃かった地方検事とは違い、新しい管轄となった連邦検事は事件に関わった全ての被告に実刑を科すべきだと考えていました。
2007年8月27日にヴィックに下された判決は心情的には決して十分だとは思えない2年弱の懲役でしたが、当時の法律の範囲では上出来と言えるものでした。

犬たちの処遇を巡って動いた人々

捜索から判決までの間に、様々な人々が様々な活動をしていました。
中でも重要な役割を果たしたのは動物法医学者のメリンダ・マーック博士でした。彼女は殺害された犬たちの検視を手がけました。残念ながら犬の殺害の件については起訴されなかったのですが、検視の結果と目撃者の証言が一致したことは被告たちの有罪判決に大きく貢献しました。
(マーック博士については、dog actuallyで記事にしたことがあります。

さて事件の管轄が連邦検事局になったことから、犬たちの所有権もサリィ郡からアメリカ政府へと移りました。
しかし闘犬の裁判が連邦検事局の管轄となった前例は無く、裁判後の犬たちの処遇をどうするべきか頭を悩ませた連邦検事はマーック博士に相談を持ちかけました。博士がアメリカ動物虐待防止協会(以下ASPCA)の所属であったことから、同協会の動物行動学者のトップであるザウィストウスキー博士が紹介されました。
Dr.Zの愛称で呼ばれる博士は、まずは49匹の犬の査定をしようと引き受けました。

処遇に頭を悩ませると言うことは、この連邦検事マイク・ギル氏の頭には犬たちを無条件に殺処分にするという選択は無かったんですね。

当時、闘犬に使われたことのある犬は社会に出すには危険すぎるという理由で、証拠としての役目を終えた後は殺処分にするのが通例でした。
しかし2007年の春から夏にかけてこの事件が報道され続けたせいで、犬たちの存在は多くの市民や動物保護団体に知られており、全米から多くの嘆願書が連邦検事局に届いていたそうです。

中でも群を抜いて熱心に働きかけたのが、北カリフォルニアのオークランド市で活動しているピットブルのレスキューグループBADRAPの主宰ドナ・レイノルズ氏でした。
彼女は犬たちの命を助けてくれというだけでなく、BADRAPがピットブルのレスキューに費やした実績を資料として提出し、犬たちのリハビリに参加させて欲しいというものでした。ギル検事の元に届いた資料は手紙と言うより、小包というボリュームだったそうです。

一方対照的に、犬たちは全頭殺処分にするべきだと主張した団体もありました。
その1つはASPCAと双璧を成すアメリカ最大の動物保護団体The Humane Societyでした。

同団体の代表は「マイケル・ヴィックの犬たちは全米で最も攻撃的で獰猛なピットブルです。この国にはもっと大人しくて良い家庭犬の候補となるピットブルがたくさんいる。そんな犬でさえ譲渡先が見つからず殺処分になることもあるのです。私たちはヴィックの犬は全頭殺処分にすることを強く勧めます。」と声明を出しました。
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もう1つ、過激な行動で知られる団体PETAは裁判所の周辺でヴィックの酷い所業をアピールするデモを行いながら、犬たちは全頭殺処分にするべきだという主張をしていました。
広報担当者のコメントは「闘犬に使用された犬にはリハビリテーションという選択肢はあり得ません。彼らは殺処分にすることが最も人道的な選択だと考えます。」というものでした。
PETAという団体は譲渡やリハビリと言った活動は一切していないにも関わらず、何を根拠に殺処分を推すのか全く分かりません。
😡😡😡😡😡😡😡

The Humane Societyはこの声明に対して批判を受けたのか、この1年ほど後には闘犬の現場から保護された犬に関する方針を変更しました。
適切な査定の後にリハビリテーションを行い、家庭犬として最適と認められれば譲渡対象とするというものです。
同団体については、かなり後になりますがまたその活動について取り上げたいと思います。
PETAは全く変わっていません。ヴィックの犬たちのその後の活躍についても口を閉ざしたままです。
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たとえ数匹だけでも助けられるなら...

連邦検事は闘犬についても保護犬のリハビリについても、全く知識は持っていませんでした。
しかしこれだけ世間の注目を集めた犬たちを人道的に扱うことで、今後似たような状況で保護された犬たちの扱いを変えるターニングポイントになれるのではないかと考えていました。

49匹のうちの数匹、たとえ1匹だけでも殺処分を免れることができれば万歳だと思っていたそうです。

そして9月上旬、犬たちがいるバージニア州にASPCAのDr.Zと行動評価チームがやって来ました。
チームのメンバーは10名、うち6名がASPCAに所属する動物行動学者、そして2名はBADRAPのドナ・レイノルズ氏と彼女のパートナーでBADRAP設立者のひとりティム・レイサー氏でした。

このメンバーが犬たちがいるシェルターを訪ねて、1匹1匹査定をしていきました。
行動評価の様子と結果は次回に詳しく紹介します。


この動画はこの秋スタートのスポーツドキュメンタリー番組の予告編です。
どうやらマイケル・ヴィックの事件が取り上げられるようで、取材者がヴィックの犬舎があった場所を訪れています。
取材されているのは、49匹の犬の1匹だったチェリーを家族に迎えたご一家と、ヴィックの捜査に当たった政府機関のノール捜査官です。


次回は犬たちの査定と、何匹かの犬について書こうと思います。
その後はそれぞれの犬がたどった軌跡をご紹介していく予定です。

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